行政書士 憲法 問53:憲法
教育を受ける権利(憲法26条)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア憲法26条2項は「義務教育は、これを無償とする」と定めており、最高裁判所はこれを「授業料のほか、教科書代・学用品代等一切の費用を国が負担することを意味する」と解釈している。
- イ最高裁判所は、旭川学テ事件(最大判昭51年5月21日)において、子供の教育の内容は親・教師・国のいずれの支配にも服さない「教育の自由」が絶対的に保障されるべきとして、国家による教育内容への関与は一切許されないと判示した。
- ウ憲法26条1項の「能力に応じて等しく教育を受ける権利」における「能力」とは、学習能力の差異による差別的取扱いを肯定するものではなく、財力・家庭環境ではなく学習の意欲・潜在的能力に応じて教育機会が等しく与えられるべきという意味に解されている。正答
- エ憲法26条2項の「義務教育」は、子どもが教育を受ける義務を課した規定であり、保護者には就学させる義務は課されていない。
- オ教育を受ける権利(憲法26条)は社会権の一つとして位置づけられ、国家が積極的に教育制度を整備・提供する義務を課すプログラム規定であるため、具体的権利としての効力は持たないとするのが最高裁判所の確立した立場である。
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憲法26条は①「能力に応じて等しく教育を受ける権利」(1項)と②「義務教育の無償」(2項)を保障しています。ウの「能力に応じて」の解釈として「財力・家庭環境ではなく学習の意欲・潜在的能力に応じて教育機会を与えるべき」という趣旨が判例・通説に沿っており正答です。アについて、最高裁は「義務教育の無償」とは「授業料の無償」を意味するとしており(最大判昭39.2.26)、教科書代等全費用の無償とは解していません(アは誤り)。エについて、「義務教育」の「義務」は子どもに課されるのではなく、保護者(親権者等)が子どもを就学させる義務(26条2項前段・教育基本法5条)です(エは「保護者に義務はない」としている点が誤り)。
憲法26条の論点を整理します。①「能力に応じて等しく教育を受ける権利」(1項):「能力」とは財力・社会的地位による差異ではなく、学習能力・意欲・潜在的能力によるという解釈が通説です(ウが正答の根拠)。これにより、経済的困難が教育機会を妨げることが平等原則(14条)とも連動して問題となります。②「義務教育の無償」(2項):最高裁(最大判昭39.2.26)は「無償」の範囲を「授業料の不徴収」と解し、教科書・学用品代等まで無償を要求するものではないと判示しました(アが「一切の費用を国が負担」とする点が誤り)。現在は法律(義務教育費国庫負担法・教科書無償措置法)によって教科書無償化が実現していますが、これは憲法26条2項の直接の要求ではなく立法政策によるものです。③「義務教育の義務」主体:26条2項の「義務教育」は「就学の義務」を保護者(親権者・後見人)に課すものであり、子どもが教育を受ける義務ではありません(エが「保護者には義務がない」とする点が誤り)。④旭川学テ事件(最大判昭51.5.21):国家による教育内容への関与は「一定の範囲内で許容される」と判示しており、「一切許されない」(イ)は正反対。
【理論的背景】
憲法26条の「教育を受ける権利」は、社会権の一類型として国家に積極的な教育制度の整備を要求する側面と、親・教師・国の間で「教育の自由(誰が教育内容を支配するか)」が争われる側面の二面性を持ちます。旭川学テ事件(最大判昭51.5.21)は、文部省(現文部科学省)の全国学力テスト実施の合憲性が争われた事件で、最高裁は「教育の自由」について次のような判断構造を示しました:①親の教育権は一定程度認められる、②教師の教授の自由も大学以外では一定程度認められるが完全ではない、③国家の教育内容への関与も一定の範囲で許容される(「一切許されない」のイは誤りの根拠)。この判決は「教育の国民的支配」と「教育への国家的関与」の調整を論じた重要判例です。
【実務・条文構造】
義務教育の無償(26条2項後段)について:最高裁(最大判昭39.2.26)は、義務教育の「無償」とは授業料の不徴収を意味し、教育に必要な一切の費用の無償化を憲法が要求するものではないと判示しました(アが「一切の費用を国が負担」とする点が誤りの根拠)。この判決により、憲法26条2項の「無償」の最低限の内容は「授業料の無償化」と確定しており、教科書無償・給食費の無償等は立法政策の問題となります。オについて、教育を受ける権利が「プログラム規定にすぎない」という命題は正確ではありません。生存権(25条)については「プログラム規定説・抽象的権利説・具体的権利説」の三説の対立がありますが、26条の教育を受ける権利についても、旭川学テ事件では「具体的権利としての側面も有する」という方向での判断がなされており、「純粋なプログラム規定として具体的効力を持たない」(オ)とするのは判例の立場と言えません。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での26条の出題ポイントは次の4つです。①「能力に応じて」の解釈:財力ではなく学習能力・意欲に応じた機会の平等。②「無償」の範囲:授業料の不徴収のみ(教科書代等は含まない・ただし立法で無償化されている)。③義務教育の義務の主体:保護者(親権者等)に課される就学義務(子どもの義務ではない)。④旭川学テ事件:国家の教育内容への関与は「一定範囲内で許容される」(一切禁止ではない)。典型的な引っかけは「無償=全費用無償(誤り)」「義務の主体は子ども(誤り)」「教育への国家関与は一切許されない(誤り)」です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。最高裁(最大判昭39.2.26)は「義務教育の無償」を授業料の不徴収に限定。「一切の費用を国が負担」は判例に反する解釈。
- イ: 誤り。旭川学テ事件(最大判昭51.5.21)は「教育内容への国家の関与は一定の範囲内で許容される」と判示した。「一切許されない」は判例と正反対。
- ウ: 正答。「能力に応じて等しく」の「能力」を「財力・家庭環境でなく学習能力・意欲・潜在的能力」と解する通説的解釈を正確に表現。経済的理由による教育機会の不平等が問題視されるという背景とも整合する正しい記述。
- エ: 誤り。「義務教育」の「義務」は、子どもに就学を義務付けるのではなく、保護者(親権者・後見人等)が子どもを学校に就学させる義務(就学義務)を定めたもの。「保護者には義務がない」という記述は誤り。
- オ: 誤り。教育を受ける権利(26条)が純粋なプログラム規定として具体的効力を持たないとするのは判例の確立した立場ではない。旭川学テ事件は26条を具体的な権利として論じており、「プログラム規定説」の採用を明示した判決ではない。生存権(25条)のプログラム規定説・抽象的権利説等との混同が生じやすい引っかけ。
【根拠条文】
日本国憲法 第26条第1項(教育を受ける権利)、第26条第2項(義務教育・無償)
教育基本法 第5条(義務教育・就学義務)
【参照判例】
旭川学テ事件(最大判 昭和51年5月21日):教育内容への国家関与の許容範囲
最大判昭和39年2月26日:義務教育の「無償」=授業料の不徴収に限定
【補足】
「無償=授業料のみ」「義務の主体=保護者」「旭川学テ=国の関与は一定範囲で許容」の3点を確実に押さえること。生存権のプログラム規定説と教育を受ける権利の性格を混同しないよう注意。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第26条(教育を受ける権利・義務教育の無償) 参照: 旭川学テ事件(最大判 昭和51年5月21日)、義務教育費国庫負担法に関する判例等 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。