行政書士 憲法 問54:憲法
衆議院の優越に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア法律案について衆議院が可決し参議院がこれを否決した場合、衆議院は出席議員の3分の2以上の多数で再可決することができ、この再可決により法律として成立する。正答
- イ予算について衆議院が可決し参議院がこれを否決した場合、両院協議会を開催することを要せず、衆議院の議決が国会の議決となる。
- ウ内閣総理大臣の指名において衆参両院が異なる議決を行った場合、両院協議会を開くことなく直ちに参議院の議決が国会の議決となり、この場合は衆議院の優越は一切認められない。
- エ条約の承認については衆議院の優越が認められており、衆議院が承認した後、参議院の承認が得られない場合(両院協議会でも不一致の場合)には、衆議院の承認だけで国会の承認とみなされる。ただし条約の批准(外交上の効力の発生)には参議院の同意が必要とされている。
- オ参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後、30日以内に議決しない場合、衆議院は参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
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衆議院の優越の条文を整理します。①法律案(59条):衆議院が可決→参議院が否決→衆議院が出席議員3分の2以上の多数で再可決→成立。アはこれを正確に表現しており正答です。②予算(60条):衆議院可決→両院協議会でも不一致(または参議院が30日以内に議決しない場合)→衆議院の議決が国会の議決となる(イは「両院協議会を要せず」としている点が誤り・開催を試みることが必要)。③内閣総理大臣の指名(67条):両院が一致しない場合→両院協議会→不一致の場合→衆議院の議決が優越。④条約(61条):予算に準じた手続き(60条2項を準用)→両院協議会経て不一致の場合に衆議院の承認が優越(エの後半「批准に参議院の同意が必要」は誤り・条約の批准権は内閣にある)。
衆議院の優越に関する主要規定を整理します。①法律案(59条):衆議院可決→参議院が「否決・60日以内に議決しない(参が否決とみなす権利)」→衆議院が再度可決(出席議員の3分の2以上)→法律として成立。アはこの手続きを正確に表現しており正答です。②予算(60条):衆議院可決→参議院が30日以内に議決しない場合 or 両院協議会で不一致→衆議院の議決が国会の議決。ただし「両院協議会を要せず」(イ)は誤りです。60条2項は「この場合においては、衆議院は、両議院の協議会の開催を求めることを必要とする」と定めており、両院協議会の開催を試みることが前提です。③条約の承認(61条):60条2項の予算に関する規定を準用。「批准に参議院の同意が必要」(エの後半)は誤りです。条約の批准(国際法上の効力発生)は内閣が行うものであり(73条3号)、国会の承認(61条)と区別されます。④内閣総理大臣の指名(67条):衆参両院が異なる議決→両院協議会(必須)→意見不一致→衆議院の議決が国会の議決となる(衆議院の優越)。ウは「両院協議会を開くことなく直ちに参議院の議決が国会の議決となり、衆議院の優越は一切認められない」としていますが、これは67条2項に正反対で誤りです(両院協議会は必須であり、優越するのは衆議院の議決です)。アが正答です。⑤「みなし否決」(59条4項):参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後「60日以内」に議決しないときは、衆議院は参議院が否決したものとみなすことができます。オは期間を「30日以内」としており、これは予算・条約・首相指名に関する参議院の議決期間(30日・10日)との混同による誤りです(法律案のみなし否決の期間は60日)。アが正答です。
【理論的背景】
日本国憲法は「二院制」を採用していますが、衆議院に優越的地位を与えています(衆議院の優越)。この背景には、衆議院議員が任期4年・解散あり・全国区的な代表性を持つのに対し、参議院議員は任期6年・解散なし・一定の安定性を持つという両院の性格の違いがあります。衆議院は「任意解散」という仕組みにより民意に対してより直接的に応答する院であることから、特に重要な事項(予算・条約・内閣総理大臣指名)について衆議院の議決を優先させるという設計がとられています。
【実務・条文構造】
衆議院の優越の一覧表(試験頻出データ):
| 事項 | 規定 | 優越発動の条件 | 両院協議会 | 期間 |
|---|---|---|---|---|
| 法律案 | 59条 | 参否決・受領後60日以内に議決なし(みなし否決) | 任意(衆院が求め得る) | 60日(休会中の期間は算入しない) |
| 予算 | 60条 | 参が30日以内に議決しない | 必要(開催を試みること) | 30日 |
| 条約承認 | 61条 | 参が30日以内に議決しない | 必要 | 30日 |
| 首相指名 | 67条 | 両院不一致 | 必要 | 10日以内 |
法律案(59条)の再可決要件は「出席議員の3分の2以上の多数」(アが正答の根拠)。「総議員の3分の2以上」ではなく「出席議員の3分の2以上」である点に注意(「出席議員」と「総議員」の混同が引っかけになる)。予算(60条)の「両院協議会を要せず直接衆議院の議決が優越」というのは誤りで、両院協議会の開催を「求めなければならない」(強制的に開催を試みること)が規定されています(イが誤りである根拠)。条約の批准(国際法上の効力発生)は内閣の権限(73条3号)であり、国会の承認(61条)とは別の手続きです(エの後半「批准には参議院の同意が必要」は誤り)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での衆議院の優越の出題ポイントは次の4つです。①法律案再可決要件:出席議員の3分の2以上(「総議員」ではない)。②予算・条約・首相指名:両院協議会が必要(「要せず」は誤り)。③予算・条約承認:参院が30日以内に議決しない場合→衆院優越。④首相指名:両院不一致→協議会→10日以内に衆院優越。「出席議員vs総議員」「両院協議会要否」「各事項の期間(10日・30日・60日)」が典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正答。59条2項の規定を正確に表現。「出席議員の3分の2以上の多数で再可決→法律として成立」は条文通り。なお、再可決の前に参議院に「まず送付した後」という手順が必要だが、本問の文脈では正確な記述として正答。
- イ: 誤り。予算(60条2項)は「この場合においては、衆議院は、両議院の協議会の開催を求めることを必要とする」と規定しており、両院協議会の開催を試みることが必要。「要せず」は誤り。
- ウ: 誤り。内閣総理大臣の指名で両院が異なる議決をした場合、67条2項は「両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が国会休会中の期間を除いて10日以内に指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」と定める。すなわち両院協議会は必須であり、優越するのは衆議院の議決である。ウの「両院協議会を開くことなく直ちに参議院の議決が国会の議決となり、衆議院の優越は一切認められない」は条文に正反対で誤り。
- エ: 誤り。後半の「批准に参議院の同意が必要」が誤り。条約の批准(国際法上の効力発生)は内閣の権限(73条3号)であり、国会の承認(61条)とは区別される。承認後の批准は内閣が行う。
- オ: 誤り。59条4項のみなし否決の期間は「60日以内」であり、オの「30日以内」は誤り。30日・10日は予算・条約・首相指名に関する参議院の議決期間であり、これらとの混同による引っかけ。法律案のみなし否決は受領後60日が正しい。
【根拠条文】
日本国憲法 第59条(法律案の衆議院優越・出席議員3分の2以上の再可決)、第60条(予算・両院協議会必要・30日)、第61条(条約承認・60条2項準用)、第67条(内閣総理大臣の指名・10日)
【補足】
法律案の再可決要件「出席議員の3分の2以上」と、予算・条約・首相指名の「両院協議会が必要」という2点は最重要暗記事項。各事項の期間(10日・30日・60日)も表形式で整理して覚えること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第59条(法律案の衆議院優越)、第60条(予算)、第61条(条約承認)、第67条(内閣総理大臣の指名) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。