危険物乙四 基礎的な物理学及び基礎的な化学 問95:静電気
静電気による放電(火花放電)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア静電気が放電(火花放電)するとき、放電エネルギーは可燃性蒸気の最小着火エネルギーを下回ることが多く、第4類危険物を引火させることはできない。
- イ放電火花は瞬間的に高温(数千度)の局所高温プラズマを形成し、引火性蒸気の点火源になりうる。正答
- ウ静電気が蓄積した容器から放電が起こるのは、容器の電位(電荷量)が大気圧と等しくなったときである。
- エ空気は電気の絶縁体なので、どれだけ電位差が大きくなっても放電は起こらない。
- オ静電気放電は液体の表面でしか起こらず、蒸気中では放電は起こらない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正しいのはイです。静電気の放電(火花放電)は、放電の瞬間に局所的に数千度のプラズマが形成され、引火性蒸気の点火源になりえます。
- ア(誤): 静電気放電のエネルギーは最小着火エネルギーを上回ることがある。「下回ることが多い」「引火させられない」は誤り。
- イ(正): 放電火花は高温プラズマ→点火源になる。正しい。
- ウ(誤): 放電は電位差が空気の絶縁破壊電圧を超えたときに起こる。「大気圧と等しくなったとき」は意味が異なる。
- エ(誤): 空気は絶縁体だが絶縁破壊電圧(約3 kV/mm)以上の電位差で放電する。「どれだけ大きくなっても放電しない」は誤り。
- オ(誤): 放電は空間(蒸気中・空気中)でも起こる。液体表面に限らない。
静電気放電が点火源になる仕組みを理解しておくことが重要です。
静電気放電の物理(確立した物理学):
静電気(帯電)によって電位差が形成され、電位差が空気の絶縁破壊電圧(約3 kV/mm)を超えると空気のイオン化が起こり、放電(火花放電)が発生します。
放電の特徴:
- 放電経路に沿ってプラズマ(イオン化した気体)が形成され、瞬間的に数千度の高温になる
- このエネルギーが引火性蒸気の最小着火エネルギー(一般に 0.2〜数 mJ 程度)を超えると着火する
- ガソリン等の引火性蒸気の最小着火エネルギーは非常に小さく(約0.2 mJ)、静電気放電で十分に着火可能
各選択肢:
- ア(誤): 静電気放電のエネルギーが最小着火エネルギーを下回る保証はない。条件によっては十分な放電エネルギーが生じてガソリン等を着火させる。実際に静電気による引火・爆発事故は多数報告されている。
- イ(正): 放電火花は局所的な高温プラズマを形成し、引火性蒸気の着火源になりうる。正しい。
- ウ(誤): 放電は電位差が絶縁破壊電圧を超えたときに起こる。「大気圧と等しくなったとき」は静電気・電気の文脈として不正確。
- エ(誤): 空気は絶縁体だが、絶縁破壊電圧(約3 kV/mm)以上の電位差がかかると絶縁破壊して放電する。「どれだけ大きくなっても放電しない」は誤り。
- オ(誤): 放電は空間(気体中)でも起こる。火花放電は電極(帯電した物体)間の気体(空気・蒸気)を通って起こる現象。
引っかけ: ア(静電気は引火させない)とエ(空気は絶対に絶縁)が定番の誤り。
【理論的背景:絶縁破壊と放電の物理】
空気は通常は絶縁体ですが、電場の強さが絶縁破壊電場(約3 kV/mm ≒ 3×10⁶ V/m)を超えると、空気分子がイオン化されてプラズマ状態になり電流が流れます。これが放電(スパーク・火花放電)です。
放電のプロセス:
1. 帯電体(容器・配管)の電位が上昇
2. 空気の絶縁破壊電場を超える電位差が生じる
3. 放電経路の空気がイオン化→プラズマ形成(1,000〜数万度)
4. 瞬間的な高エネルギー放出(火花)
【最小着火エネルギーと静電気放電の関係】
最小着火エネルギー(MIE: Minimum Ignition Energy)は可燃性蒸気が着火するのに必要な最小エネルギーです。
代表的なMIE(参考値、燃焼下限付近での値):
- ガソリン: 約 0.2 mJ(0.0002 J)
- ジエチルエーテル: 約 0.19 mJ
- メタノール: 約 0.14 mJ
- 水素: 約 0.017 mJ(非常に低い)
一般的な静電気放電のエネルギーは 1〜100 mJ 程度に達することがあり、ガソリン等の MIE(0.2 mJ)を大幅に上回る場合があります。つまり静電気放電は第4類危険物の引火に十分な点火源になりえます。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 静電気放電のエネルギーは条件次第でMIEを上回り着火する。ガソリンスタンドでの充電時・タンクローリー充填時の静電気による火災・爆発事故は実際に起きている。「下回ることが多い」は根拠なく危険。
- イ(正): 正しい。放電火花の高温プラズマが着火エネルギーを供給。これが静電気防止(アース・ボンディング・流速制限)を義務化する理由。
- ウ(誤): 放電発生の条件は「絶縁破壊電圧(電位差)への到達」であり、大気圧との比較ではない。
- エ(誤): 空気は絶縁破壊電場(約3 kV/mm)以下では絶縁体だが、それを超えると放電する。稲妻(落雷)も空気の絶縁破壊による放電現象。
- オ(誤): 放電は空間(気体中)を通して起こる。液体表面のみに限定されない。蒸気(引火性蒸気)が充満した空間での放電が最も危険(燃焼範囲内にある場合)。
【試験での位置づけ】
乙四試験では「静電気放電→点火源」「放電を防ぐためのアース・ボンディング・流速制限」が最重要です。MIEの具体値は暗記不要ですが「静電気放電は引火の点火源になりうる(エネルギーが十分)」の理解が試験の正誤判定で必要です。
【根拠】確立した物理学(絶縁破壊・火花放電・最小着火エネルギー)。
【補足】静電気放電→局所高温プラズマ(数千度)→引火性蒸気の点火源になりうる。空気は絶縁破壊電場を超えると放電する。
<!-- 監修確定 2026-06-05(legal-reviser): 放電火花は数千度の高温プラズマ→点火源、空気は絶縁破壊電場(約3kV/mm)超で放電、すべて正確。ガソリンMIE約0.2mJ・メタノール約0.14mJ・水素約0.017mJも確立参考値と整合。静電気放電エネルギー(1〜100mJ)>ガソリンMIE(0.2mJ)で着火しうるも正しい。正答イで一意(ア下回る/ウ大気圧/エ放電しない/オ液面のみ はすべて誤り)。確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 確立した物理学(放電・着火の原理)。静電気放電(火花放電)は数千度のプラズマを形成し、引火性蒸気の着火エネルギー(最小着火エネルギー: 一般に数mJ程度)を上回りうる点火源となる。 現行の消防法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。