危険物乙四 基礎的な物理学及び基礎的な化学 問96:静電気
第4類危険物の移液・充填時の静電気防止策に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア配管内の液体の流速を制限することで、摩擦による静電気の発生量を減らすことができる。
- イ移液前に配管や容器をアース(接地)し、ボンディング(等電位化)することで放電火花を防止できる。
- ウ作業場の湿度を一定以上(50〜70%程度)に保つことで、静電気の帯電量を低減できる。
- エ危険物を充填した直後に使用した計量棒(検尺棒)を即座にタンクに挿入することで、蓄積した静電気を安全に除去できる。正答
- オ導電性の靴(帯電防止靴)や作業着を着用することで、人体への静電気蓄積を防ぐことができる。
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誤っているのはエです。充填直後にタンク内へ計量棒を挿入すると、液面の静電気が未散逸の状態で放電(スパーク)が起き、引火性蒸気に点火する危険があります。一定時間待ってから計量を行うのが安全です。
- ア(正): 流速制限→静電気発生量を減らす。正しい。
- イ(正): アース+ボンディングで放電防止。正しい。
- ウ(正): 高湿度→帯電量低減。正しい。
- エ(誤): 充填直後の計量棒挿入は放電火花の危険がある。一定時間待つのが正しい。
- オ(正): 帯電防止靴・作業着で人体帯電を防ぐ。正しい。
危険物充填後はすぐに操作せず、静電気が散逸する時間を確保することが安全上重要です。
移液・充填時の静電気防止策(確立した物理学・安全指針):
| 防止策 | 効果 | 根拠 |
|---|---|---|
| 流速制限 | 発生量低減 | 摩擦による帯電量は流速に依存(速いほど多い) |
| アース・ボンディング | 放電防止 | 電位差をなくす・電荷を大地に逃がす |
| 加湿(湿度管理) | 帯電量低減 | 水分が電荷逃がしを促進 |
| 帯電防止靴・作業着 | 人体帯電防止 | 人体からの放電(着衣静電気)を防ぐ |
| 充填後の静置時間 | 帯電散逸 | 液中の電荷が中和・散逸するまで待つ |
各選択肢:
- ア(正): 流速が速いほど摩擦・乱流による電荷発生量が増加する。流速1m/s以下等の制限が推奨される場合がある。
- イ(正): アース(接地)で電荷を大地に逃がし、ボンディング(等電位化)で容器間の電位差をなくす。セットで実施するのが基本。
- ウ(正): 湿度50〜70%程度で帯電が著しく低下するとされる。乾燥した冬季に静電気事故が増える根拠。
- エ(誤): 充填直後はタンク内の液面(帯電した液体)に蓄積した電荷がまだ散逸していない。この状態で計量棒(導体)を挿入すると、液面との電位差で放電(スパーク)が起こりうる。一定時間(液体の静電気散逸時間:数分〜十数分)が必要。「安全に除去できる」は正反対の記述。
- オ(正): 人体への静電気蓄積(着衣・歩行)→放電(ドアノブで「バチッ」)が点火源になる可能性あり。帯電防止靴・作業着は有効な防止策。
引っかけ: エ(充填直後の計量棒挿入が安全)は実際に事故が起きるパターン。
【理論的背景:充填後静置時間の必要性】
液体(第4類危険物)がタンクに充填されると、充填中の摩擦・乱流によって液体中・液面に電荷が蓄積します。充填停止後、電荷は次第に散逸(中和・大地への移動)しますが、電気不良導体(有機液体)では散逸に時間がかかります。
静電気散逸時定数 τ = ε/σ(ε:誘電率、σ:電気伝導率)。有機液体の σ が非常に小さいため τ が長い(数分〜数十分に達することがある)。
この間(充填後の静置期間)にタンク内に導体(計量棒・サンプラー等)を挿入すると、帯電した液面と導体間に電位差→放電→引火性蒸気着火のリスクがあります。
石油業界・危険物安全大会のガイドラインでは「充填後30分(または輸送中の揺れがある場合はさらに)待ってから検尺(計量)する」等の指針が示されている場合があります(施設の種類・液体の種類によって異なる)。
【各防止策の物理的根拠】
1. 流速制限: 帯電量はおおむね流速の1.75〜2乗に比例するとされる(実験的知見)。低流速(1 m/s以下等)にすると帯電量が著しく低下。
2. アース+ボンディング: アース(Ground)は電荷を大地(無限容量の導体)に逃がす。ボンディング(Bonding)は2つの導体を接続して同電位にし、電位差による放電を防ぐ。タンクローリーの充填では必ずアース線とボンディングクリップを接続してから開弁。
3. 加湿: 相対湿度50%以上で静電気帯電が著しく低下(表面の水膜が電荷の移動経路になる)。
4. 帯電防止靴・作業着: 導電性素材(カーボン繊維・金属繊維入り)で人体帯電を防ぐ。通常の化学繊維作業着は帯電しやすい。
【各選択肢の発展補足】
- ア(正): 流速制限は発生量を根本的に減らす。アースでは除去しきれない場合の補完策でもある。
- イ(正): アース+ボンディングはセットで実施するのが原則(日本危険物安全大会の指導)。アースのみでは容器間の電位差が残ることがある。
- ウ(正): 加湿は冬季乾燥時の補完策として有効。ただし爆発性雰囲気(引火性蒸気)への水スプレーは不適切な場合もある(霧化水が点火源になりうる雰囲気では禁止)。
- エ(誤): 充填後の静置時間が必要(散逸時定数 τ)。直後の計量棒挿入は放電火花リスク。
- オ(正): 帯電防止靴・作業着の着用は危険物施設で義務・推奨されている防護具の一つ。
【試験での位置づけ】
乙四試験では「流速制限・アース・ボンディング・加湿・帯電防止靴」が正しい防止策として、「充填直後の容器内操作」が不適切な行為として出題されます。防止策の名称と根拠(なぜ有効か)をセットで記憶することで、正誤判定が確実になります。
【根拠】確立した物理学・危険物取扱い安全指針(静電気散逸時定数の概念)。
【補足】充填直後の計量棒挿入は放電→引火の危険あり(静置時間が必要)。流速制限・アース+ボンディング・加湿・帯電防止靴が正しい防止策。
<!-- 監修確定 2026-06-05(legal-reviser): 流速制限・アース+ボンディング・加湿・帯電防止靴は正しい静電気防止策。充填直後の計量棒挿入は液面帯電が未散逸で放電→引火の危険(静電気散逸時定数τ=ε/σ・有機液体はσ小でτ長い)も妥当。正答エ(充填直後の計量棒挿入で安全に除去は誤り)で一意。確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 確立した物理学・危険物取扱い安全指針。移液直後(液面が安定していない間)にタンク内に計量棒等を挿入すると、蓄積した静電気の放電火花が引火性蒸気に着火する危険がある。移液後は一定時間(数分〜十数分)経過して静電気が散逸・平衡してから計量を行うのが安全。 現行の消防法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。