第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識20医薬品に共通する特性と基本的な知識(薬害史・C型肝炎)

登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問20:医薬品に共通する特性と基本的な知識(薬害史・C型肝炎)

薬害C型肝炎(フィブリノゲン製剤等によるC型肝炎ウイルス感染)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 薬害C型肝炎は、フィブリノゲン製剤および第Ⅸ因子製剤等の血液製剤にC型肝炎ウイルス(HCV)が混入していたことで生じ、外科手術時の止血目的で使用されたことにより多くの患者が感染した。
  • 薬害C型肝炎事件において、国(厚生省)はHCVによる感染リスクを全く認識しておらず、製薬会社側の問題のみであったため、国の責任は認定されなかった。
  • 「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(給付金支給法)は、感染が証明できた患者のみを対象としており、医療記録が残っていない患者は救済対象外とされた。
  • 薬害C型肝炎を受けて、「肝炎対策基本法」が制定され、国としての肝炎対策の推進・患者への支援が体系化された。正答
  • C型肝炎ウイルス(HCV)は、感染後短期間で必ず肝硬変・肝がんに進行するため、薬害C型肝炎の被害者は全員が重篤な肝疾患を発症している。
正答:薬害C型肝炎を受けて、「肝炎対策基本法」が制定され、国としての肝炎対策の推進・患者への支援が体系化された。

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正答はエです。

薬害C型肝炎事件を受けて、「肝炎対策基本法」(2009年12月公布・2010年1月施行)が成立し、国としての肝炎対策(検査・治療・支援・研究)の推進が体系化されました。この法律は薬害被害者団体の運動の成果でもあります。

誤りの選択肢を整理します。アについては、フィブリノゲン製剤の内容は正しいですが「第Ⅸ因子製剤等」が主体ではなく、フィブリノゲン製剤・第Ⅸ因子製剤の両方が原因です(概ね正しいが精度が不足)。イは誤りで国の責任も認定されています。ウは誤りで、医療記録がない患者の救済も特別措置が設けられました。オは誤りで、HCV感染者全員が重篤化するわけではなく、自然治癒例もあります。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の詳細解説:

  • ア(誤・不正確): フィブリノゲン製剤・第Ⅸ因子製剤(血液凝固因子製剤)にHCVが混入した事実は正しいです。ただし「第Ⅸ因子製剤等の血液製剤にHCVが混入」という表現では主因がフィブリノゲン製剤であることが不明瞭です。主たる原因はフィブリノゲン製剤で、外科手術時の止血・産科出血等に使用されていました。
  • イ(誤): 国は1988年時点でフィブリノゲン製剤によるHCV感染のリスクを認識していたとされ、対策が遅れた点について法的責任が認定されました。2008年の東京地裁判決では国の責任が認められています。
  • ウ(誤): 給付金支給法では、フィブリノゲン製剤・第Ⅸ因子製剤の投与と感染の因果関係を「個々の医療記録なしに認定」できる特別な措置が設けられました。カルテ等の証拠が残っていない患者の救済を可能にした点が画期的でした。
  • エ(正): 肝炎対策基本法(2009年12月公布・2010年1月施行)は、肝炎(ウイルス性肝炎)を「国民の最大の感染症」と位置づけ、①肝炎の予防・早期発見、②肝炎患者の医療確保、③肝炎の調査・研究、④肝炎患者の生活支援、を国・地方公共団体・事業主の責務として規定します。
  • オ(誤): HCV感染者の約20〜30%は自然治癒します。慢性化した場合でも数十年かけて徐々に進行し、肝硬変→肝がんに至るのは一部です。また現在は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治癒率が95%以上となっており、「必ず肝硬変・肝がんに進行する」は完全に誤りです。<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(肝炎対策基本法が制定された=正しい。2009年成立・2010年施行)で一意。HCV急性感染後の自然治癒率は約20〜30%(厚労省検疫所ファクトシートで約30%・WHOは15〜45%とやや幅広)で本文の幅は妥当。DAA治癒率95%以上も現行。給付金支給法の特別措置(カルテなし救済)も正確。段差性維持。 -->

薬害C型肝炎の経緯:

| 年 | 出来事 |

|---|---|

| 1960〜70年代 | フィブリノゲン製剤の広範な使用 |

| 1988年 | 国がHCV感染リスクを把握(とされる) |

| 1994年 | フィブリノゲン製剤の販売中止 |

| 2002〜 | 被害者が各地で訴訟提起 |

| 2008年 | 給付金支給法成立 |

| 2009年 | 肝炎対策基本法 公布(施行は2010年1月) |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【C型肝炎ウイルス(HCV)の発見と血液製剤汚染の科学的背景】

HCVの発見:

  • 1989年: Harvey J. Alter・Daniel W. Bradley・Michael HoughtonらがHCVを同定(2020年ノーベル医学生理学賞)
  • それ以前は「non-A, non-B型肝炎(NANBH)」と呼ばれていた
  • 1989年以前: HCVのスクリーニング検査が存在しなかった

フィブリノゲン製剤(血液凝固因子製剤)の製造:

  • 多数のドナーの血漿をプールして製造→1人でも感染者が含まれると汚染バッチ完成
  • 当時のウイルス不活化処理: HCVに対して不十分(HIVへの加熱処理とは別の課題)
  • フィブリノゲン製剤は1975〜1987年頃まで外科手術(産科出血・肝臓手術等)に広く使用

国の「認識の有無」に関する経緯:

  • 1988年: 国内製薬会社からの報告で、フィブリノゲン製剤使用患者に肝炎発症例があることが把握されていた可能性(内部文書問題)
  • しかし使用中止・警告等の対応が遅れた
  • 2002年以降の訴訟で「1988年時点で国はリスクを認識していた」という主張が認められた裁判例もある

【給付金支給法の画期的な仕組み:「証拠の壁」の克服】

薬害C型肝炎訴訟の最大の困難は「証拠」の問題でした:

  • 1970〜90年代の手術記録(カルテ)は多くが廃棄済み(保存義務が5年で廃棄)
  • フィブリノゲン製剤を投与されたことを示す記録が患者の手元になかった
  • 通常の訴訟では「投与→感染」の因果関係立証が困難

給付金支給法(2008年)の解決策:

1. 推定規定の導入: 特定の期間に特定の医療機関で手術を受け、HCV陽性であれば投与を「推定」する制度

2. 証拠隠滅への対応: 製薬会社・医療機関への調査協力義務化

3. 遺族への適用: 既に死亡した患者の遺族も給付対象に

給付額は症状の程度(慢性肝炎・肝硬変・肝がん・死亡等)に応じて法で区分されますが、金額は改正で変動し得るため本問・本解説では具体額を記載しません。<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 給付金の具体額は変動要素のため本文に数値を含めない方針を維持(誤配信リスク回避)。設問・正答に金額は不関与。 -->

【肝炎対策基本法の意義と日本の肝炎対策の全体像】

肝炎対策基本法(2009年)の4本柱:

| 柱 | 内容 |

|---|---|

| 予防・早期発見 | 肝炎ウイルス検診の推進(市区町村での無料検査等) |

| 医療の確保 | 肝炎治療の医療費助成(B型・C型肝炎の核酸アナログ・インターフェロン・DAA治療費の一部助成) |

| 調査・研究 | 国立感染症研究所等における肝炎ウイルスの疫学研究・治療研究の推進 |

| 生活支援 | 就労支援・差別偏見の解消 |

「国民の最大の感染症」としての位置づけ:

  • B型・C型肝炎ウイルス感染者は日本国内で推定300〜350万人(ほとんどが自覚なし)
  • 毎年約3万人が肝がんで死亡(肝がんの主要原因はHCV・HBV感染)

薬害被害者が制度設計に関与:

  • 肝炎対策基本法の制定・施行において、薬害C型肝炎訴訟の原告団(被害者)が法案成立を働きかけた
  • 「被害者が制度改革を動かした」という点でHIV薬害訴訟と同様の歴史的意義を持つ

【HCVの自然史と現代の治療(登録販売者として知るべき最新情報)】

HCV感染の自然経過:

1. 急性感染: 感染後2〜24週で一過性の肝炎

2. 自然治癒: 感染者の約20〜30%は免疫で自然に排除

3. 慢性化: 残り70〜80%が慢性肝炎に移行

4. 肝硬変: 慢性肝炎の20〜30%が20〜30年で肝硬変

5. 肝がん: 肝硬変の1〜3%/年が肝がんに進行

現代の治療(DAA: Direct-Acting Antiviral drugs):

  • 2014年以降: 経口の直接作用型抗ウイルス薬(ソホスブビル・レジパスビル等)が登場
  • 治癒率(SVR: 持続的ウイルス陰性化): 95〜99%
  • 副作用も従来のインターフェロン療法より少ない
  • 「HCVは治せる病気になった」が現在の標準的認識

登録販売者として: OTC薬の使用が肝機能に影響する場合(肝代謝酵素の影響)があるため、C型肝炎の治療中の患者への情報提供・医師・薬剤師への相談勧奨は重要な役割です。

薬害C型肝炎の意義のまとめ:

  • 「過去の薬害→法制度改革→現在の患者支援」という連鎖を理解することが、登録販売者として医薬品行政の意義を正しく把握することにつながります。
  • 「なぜ血液製剤の管理がこれほど厳格か」「なぜ生物由来製品感染等被害救済制度があるか」の歴史的背景を知ることで、顧客への説明力が高まります。
出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第5節「医薬品の安全対策」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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