登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問19:医薬品に共通する特性と基本的な知識(薬害史・生物由来製品)
薬害HIV訴訟・CJD訴訟および生物由来製品に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア薬害エイズ(HIV感染)は、血友病患者が非加熱の血液凝固因子製剤を投与されたことによりHIVに感染した薬害事件であり、日本では製薬会社と国(厚生省)が責任を認め和解した。
- イクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を引き起こした薬害は、ヒト乾燥硬膜(ヒト由来の硬膜補填材)にプリオンが混入していたことが原因であり、脳外科手術等で使用されたことにより感染が生じた。
- ウ生物由来製品感染等被害救済制度は、生物由来製品の使用による感染症等の被害に対する給付を目的とし、救済給付はPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が行う。
- エ薬害エイズ事件における被害の拡大は、当時のHIVスクリーニング検査が実施されておらず、加熱処理技術も存在しなかったために生じたものであり、国と製薬会社に過失はなかったとされている。正答
- オCJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)は、異常型プリオンタンパクが脳に蓄積する致死性の神経疾患であり、潜伏期間が数年〜十数年と長いことが特徴である。
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正答はエです。「加熱処理技術が存在しなかった・国と製薬会社に過失はなかった」は誤りです。
実際には、海外では加熱製剤の導入・HIV感染リスクへの警告が既になされていたにもかかわらず、日本では非加熱製剤の使用が継続されました。国(厚生省)と製薬会社は「情報収集・対策が遅れた」として過失を認め、訴訟で和解しています。
他の選択肢を確認します。アの血友病患者・非加熱製剤・和解は正しい事実です。イのCJD薬害がヒト乾燥硬膜(ライオドゥラ等)のプリオン混入によることは正しい記述です。ウの生物由来製品感染等被害救済制度とPMDAの関係は正しいです。オのCJDの特徴(プリオン・致死性・長潜伏期間)は正しい記述です。
各選択肢の詳細解説:
- ア(正): 薬害エイズは1980年代に多発。血友病患者に投与された非加熱の血液凝固因子製剤(第Ⅷ因子製剤等)にHIVが混入。日本では1996年に国(厚生省)と製薬会社(ミドリ十字等)が和解(国が責任認定)。被害者数: HIV感染者約1,800名以上(推計)。
- イ(正): CJD(医原性CJD)の薬害事件は、ヒト乾燥硬膜「ライオドゥラ」にプリオンが混入していたことが原因。1987年以前に同製品を使用した脳外科・脊椎手術患者に感染が発生。
- ウ(正): 生物由来製品感染等被害救済制度(薬機法に基づく)は、適正に使用した生物由来製品による感染症等の被害に対する救済給付を行い、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が窓口となります。
- エ(誤・正答): 1980年代初頭、米国CDC(疾病予防管理センター)はHIVによる血液製剤汚染のリスクを警告していました。加熱処理技術も存在しており(欧米では導入が進んでいた)、日本での非加熱製剤の継続使用は「知っていれば対応できた」段階での不作為とみなされました。国・製薬会社は過失を認めて和解しています。
- オ(正): CJDの潜伏期間は数年〜数十年に及ぶことがあります。異常型プリオン(PrPSc)は通常の感染症と異なり、核酸を持たずタンパク質のみで伝播する感染性物質です。
薬害HIV vs CJD 薬害比較:
| 項目 | 薬害HIV | CJD薬害 |
|---|---|---|
| 原因物質 | 血液凝固因子製剤(非加熱) | ヒト乾燥硬膜(ライオドゥラ等) |
| 感染源 | ヒト免疫不全ウイルス(HIV) | 異常型プリオン |
| 主な被害者 | 血友病患者 | 脳外科・脊椎手術患者 |
| 和解 | 1996年(国・製薬会社) | 2002年(国・製造会社) |
【HIV(ヒト免疫不全ウイルス)と血液製剤の薬害発生メカニズム】
1970〜80年代の血液製剤の製造:
- 血液凝固因子製剤(第Ⅷ因子・第Ⅸ因子等)は多数のドナーの血漿をプールして製造
- 1人でもHIV感染者のドナーが含まれると、そのバッチ全体が汚染される
- 当時は非加熱処理(血液成分の活性を維持するため)
タイムライン(重要):
- 1981年: AIDS(後天性免疫不全症候群)が米国で初めて正式に認識(CDC報告)
- 1982年: 血友病患者のAIDS症例が米国で報告→血液製剤との関連が示唆
- 1983年: HIVの同定(フランス・モンタニエ博士等)
- 1983〜84年: 米国では血液製剤の加熱処理を推進
- 1985年: 日本でもHIV抗体スクリーニング検査の導入・加熱製剤承認開始
- しかし1985年以降も非加熱製剤が在庫として使用された問題が残った
「過失」の認定根拠:
1. 血液製剤との感染リスクは1982年時点で医学的に示唆されていた
2. 加熱処理技術は当時既に存在していた(欧米で実用化)
3. 厚生省・製薬会社がこの情報を把握しながら対応が遅れた
【プリオン病(CJD)の科学的背景】
プリオン(Prion)の概念(S.B. Prusiner, 1982年; 1997年ノーベル医学生理学賞):
- 核酸(DNA/RNA)を持たず、タンパク質のみで「感染性」を示す異常型タンパク質
- 正常型PrPC(細胞表面に存在)が異常型PrPSc(βシート構造富化)に変換される
- PrPSc同士が凝集して脳に蓄積→スポンジ状の空洞(海綿状変性)→認知障害・運動障害・死亡
CJDの分類:
| 型 | 原因 | 頻度 |
|---|---|---|
| 孤発性CJD | 原因不明(散発性PrPSc変換) | 約85% |
| 遺伝性(家族性)CJD | PRNP遺伝子変異 | 約10〜15% |
| 医原性CJD | 汚染硬膜・脳下垂体抽出物・神経外科器具 | 稀 |
| 変異型CJD(vCJD) | BSE(牛海綿状脳症・狂牛病)との関連 | 主に英国 |
ライオドゥラ(Lyodura)による医原性CJD:
- ライオドゥラ: ドイツのB.Braun社が製造したヒト乾燥硬膜製品
- 1987年以前の製品: プリオン不活化処理が不十分だった可能性
- 日本での被害: ヒト乾燥硬膜の移植を介した医原性CJDが多数報告され、2002年に国・製造販売業者が和解(手引きの薬害史では患者数の暗記までは問われないため、本問では具体的人数を断定しない)<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(HIV薬害で国・製薬会社に過失なし=誤り。実際は加熱製剤・スクリーニングが利用可能だったのに対応が遅れ過失認定)で一意。当初の「数十名」は厚労省の累計報告(100名超規模)に照らし過小のため、患者数を断定しない記述に修正(手引きは薬害史の患者数断定を求めない)。CJD和解2002年・HIV和解1996年は手引き整合。段差性維持。 -->
プリオンの滅菌の困難さ:
- 通常の高温・紫外線・アルコール消毒ではプリオンは不活化されない
- 滅菌方法: 高温高圧(134℃・18分以上オートクレーブ)、1N水酸化ナトリウム(1時間)
- 外科手術器具の滅菌標準(特にCJD疑い患者への使用後)が問題になった
【生物由来製品感染等被害救済制度の法的根拠と給付の条件】
法的根拠: 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第四章の二
制度の特徴:
1. 対象: 薬機法に基づき承認された生物由来製品(血液製剤・ワクチン・ヒト由来の組織等)
2. 給付事由: 適正に使用したにもかかわらず生じた感染症等の健康被害
3. 除外: 不適正使用・過失がある製品(欠陥製品→PL法の対象)
4. 給付内容: 医療費・医療手当・障害年金・遺族年金・葬祭料
5. 給付窓口: PMDA(副作用被害救済制度と同じ窓口)
副作用被害救済制度との違い:
| 項目 | 副作用被害救済制度 | 生物由来製品感染等被害救済制度 |
|---|---|---|
| 対象製品 | 化学合成品等 | 生物由来製品(血液製剤・ワクチン等) |
| 対象事由 | 副作用 | 感染症(HIV・HCV・CJD等) |
| 制度創設背景 | 薬害全般 | 薬害エイズ・CJD薬害の教訓 |
【薬害の連鎖的影響:制度改革の実例】
薬害エイズ・CJD薬害が日本の医薬品行政に与えた影響:
1. 血液製剤の国内自給の推進: 献血血液の確保・輸入血液依存からの脱却
2. HIV感染者の全数把握と報告制度の整備
3. 生物由来製品の製造工程管理強化: ウイルス除去・不活化の義務化
4. 医薬品の緊急回収(リコール)制度の整備
5. PMDAの前身組織(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)の強化
「過去の薬害から何を学び、現在どう活かされているか」という観点は、登録販売者試験でも重要な視点です。現在の厳格な医薬品承認・市販後監視体制は、過去の薬害被害者の犠牲の上に成り立っています。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第5節「医薬品の安全対策」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。