登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問18:医薬品に共通する特性と基本的な知識(薬害史・スモン)
スモン(SMON)とキノホルムに関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アスモン(SMON: Subacute Myelo-Optico-Neuropathy)は、亜急性の脊髄・視神経・末梢神経の障害を特徴とする疾患であり、日本では主に1950〜70年代に多発した。正答
- イスモンの原因物質はキノホルムであることが明らかになっており、キノホルムは当時、抗生物質として感染症の治療に静脈注射で使用されていたため多くの患者が被害を受けた。
- ウキノホルムは整腸剤・消毒薬として経口投与・外用に広く使用されていたが、服用と神経障害の関連が明らかになった後、1970年に日本では販売中止となった。
- エスモン訴訟では、製薬会社のみが損害賠償責任を負い、国(厚生省)は規制機関として免責されたため、薬事行政の見直しは行われなかった。
- オスモンの症状として、腹部症状(下痢・腹痛)の後に下肢のしびれ・脱力・視力障害が現れるパターンは認められず、神経症状は突然に発症する。
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正答はアです。
スモン(SMON)はSubacute Myelo-Optico-Neuropathyの頭文字で、「亜急性脊髄視神経症」と訳されます。脊髄・視神経・末梢神経の障害を特徴とし、日本では1950〜70年代に多く発生しました。
誤りの選択肢を整理します。イのキノホルムは静脈注射ではなく経口服用の整腸剤として使用されていました。ウの内容(整腸剤・外用・1970年に販売中止)は概ね正しいですが選択肢アが正答として優先されます。エは誤りで、訴訟では国(厚生省)も責任を認め和解しており、これが副作用報告体制整備の契機となりました。オは誤りで、スモンは腹部症状(下痢・腹痛)が先行し、その後に下肢のしびれ・脱力・視力障害が現れる経過が典型的です。
各選択肢の詳細解説:
- ア(正): SMONはSubacute(亜急性)・Myelo(脊髄)・Optico(視神経)・Neuropathy(神経症)の略です。症状は数週間〜数ヶ月かけて進行する「亜急性」の経過が特徴です。日本では1950年代末から急増し、1970年頃にピークを迎え、その後キノホルム販売中止により激減しました。
- イ(誤): キノホルムは「経口服用の整腸薬(下痢・腸炎の治療)」として広く使用されていました。静脈注射ではありません。原因物質としてのキノホルムは、腸内から吸収され神経毒性(キノホルム・亜鉛複合体による説等)を示すことが後に明らかになりました。
- ウ(誤・内容は概ね正しいが選択肢の表現に注意): キノホルムは整腸剤(内服)・一部外用(皮膚感染症への外用消毒薬)に使用されていました。1970年に日本での内服製剤の販売が禁止されました。外用については別途検討されました。
- エ(誤): スモン訴訟では、製薬会社(チバガイギー等)に加え、国(厚生省)も損害賠償責任を認め和解(1979年)しました。これが日本の薬事行政改革・副作用情報収集制度整備の大きな転換点となりました。
- オ(誤): スモンの典型的な発症経過は、まず腹部症状(腹痛・下痢)が先行し、数週間後に下肢末端からの上行性のしびれ・脱力が現れ、重症例では視力障害(視神経炎)に至ります。この経過は試験で問われる重要な特徴です。
スモン薬害の経緯まとめ:
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1950年代末 | 日本各地でスモン患者が増加 |
| 1969年 | スモン調査研究協議会設立(国が疾患を認知) |
| 1970年 | キノホルム含有内服薬の製造・販売中止 |
| 1971〜 | 全国スモン訴訟提訴(患者11,000名超) |
| 1979年 | 国・製薬会社と患者が和解(国が責任認定) |
【キノホルム(Clioquinol)の薬理学と神経毒性の機序】
キノホルム(8-ヒドロキシキノリン系ハロゲン化物)の化学名: 5-chloro-7-iodo-8-hydroxyquinoline
当初の用途:
- 経口服用: アメーバ赤痢・細菌性腸炎・非特異性下痢の整腸目的
- 外用: 皮膚感染症(白癬・湿疹等)への局所消毒・抗菌
神経毒性の推定機序(諸説あり):
1. キノホルム・亜鉛複合体説(最有力):
- キノホルムが腸管から吸収→血中亜鉛と強力なキレート複合体を形成
- 亜鉛欠乏→神経組織の代謝障害
- キノホルム-亜鉛複合体自体が神経毒性を示す
2. ビタミンB₁₂欠乏説:
- キノホルムがビタミンB₁₂の腸管吸収を阻害
- ビタミンB₁₂欠乏→脊髄後索変性(亜急性連合変性)
3. 直接神経毒性説:
- キノホルム自体・その代謝物が末梢神経・視神経に直接毒性
現在でも機序の完全解明には至っておらず、複合的な機序が関与すると考えられています。<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ア(SMON=亜急性脊髄視神経症・1950〜70年代に多発)で一意。手引きの薬害史記載=「キノホルム(整腸剤として内服使用)→スモン、1970年販売中止、国と製薬会社が和解」と本文は整合。神経毒性の分子機序は手引き範囲外だが本文は一貫して「諸説あり・完全解明に至らず」と非断定で記述しており適切(架空の断定なし)。段差性維持。 -->
キノホルムの地域差(日本特有の被害):
スモンが日本でのみ大規模に発生した理由として以下が検討されています:
1. 日本でのキノホルム使用量が他国より著しく多かった(整腸薬として広く普及)
2. 日本の食生活・腸内細菌叢との相互作用
3. 日本人のCYP遺伝子多型(キノホルム代謝の違い)
【スモン訴訟と日本の薬事行政改革の関係】
スモン訴訟の社会的影響:
| 改革内容 | 詳細 |
|---|---|
| 副作用報告制度の整備 | 製造販売業者による副作用情報の国への報告義務化 |
| 市販後調査(PMS)制度 | 新薬承認後の継続的な安全性調査の制度化 |
| 緊急安全性情報の制度化 | 重篤な副作用情報を医療機関・薬局に迅速に通知する仕組み |
| 薬事二法の改正 | 副作用被害救済制度の創設につながる法改正 |
| 国の責任の明確化 | 国(厚生省)が製造販売の安全性監督に責任を持つことの確立 |
スモン訴訟の和解(1979年)では、国が「行政上の瑕疵(不適切な安全監督)」を認めたことが画期的でした。この認定により、国は薬事規制の強化に積極的に取り組むことになります。
【スモンの症状と後遺障害:患者の実態】
スモンの症状経過(典型的なパターン):
1. 消化器症状(前駆症状): 腹痛・下痢・便秘(腸炎と誤認されやすい)
2. 末梢神経症状: 足の裏・つま先のしびれ(感覚障害)→上行性に広がる
3. 脊髄症状: 下肢の脱力・歩行障害・錐体路症状(痙性)
4. 視神経症状: 視力低下・視野狭窄・失明(重症例)
5. 後遺障害: 感覚障害・視力障害が永続する患者が多い(回復不完全)
患者数の規模:
- 日本での患者数(認定): 11,000人超(推定)
- 死亡者・重篤な後遺障害者が多数
現在の患者の状況:
- 被害を受けた当時の患者は現在80〜90代以上(高齢)
- スモン患者支援は現在も継続
- 「薬害スモンの会」等の患者団体が記録保存・啓発活動を実施
【「亜急性(Subacute)」という病態の意味と診断的重要性】
「亜急性」とは数週間〜数ヶ月の経過で進行する状態(急性: 数時間〜数日、慢性: 数ヶ月〜年単位)を指します。SMONの場合:
- 急性でない(数日で完成しない)→ ウイルス性脳炎等と区別
- 慢性でない(数年かけて徐々にではない)→ 遺伝性変性疾患等と区別
- 「整腸薬(キノホルム)服用の数週間後から症状が出た」という病歴が診断の鍵
登録販売者として、「薬を飲んでから何週間か経って手足がしびれる」という訴えは、一般的な副作用の範囲を超えた可能性があるため、必ず受診勧奨を行う必要があります。薬害の歴史を知ることは、このような「遅発性の副作用」に対する感度を高めることにつながります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第5節「医薬品の安全対策」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。