登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問100:主な医薬品とその作用(胃腸薬)
胃腸薬に含まれる制酸成分の特徴に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア炭酸水素ナトリウム(重曹)は胃酸を中和して速効的に症状を緩和するが、中和の際に二酸化炭素が発生して胃を膨らませるため、高ナトリウム血症のリスクはなく、腎臓病の人にも自由に使用できる。
- イ酸化マグネシウムは制酸成分として胃酸を中和する作用と同時に、大腸内への水分引き込み(浸透圧効果)による瀉下作用も有するため、便秘を伴う胃不快感に適している一方で、腎機能低下者では高マグネシウム血症に注意が必要である。正答
- ウ水酸化アルミニウムゲルは胃酸を中和する制酸成分であり、長期服用しても腎機能・中枢神経への影響がなく、透析を行っている患者にも安全に使用できる。
- エ炭酸カルシウムは制酸成分として胃酸を中和するが、制酸作用が過剰になった場合にリバウンドとして胃酸分泌が増加する(酸リバウンド)ことは知られていない。
- オケイ酸マグネシウムはマグネシウムを含む制酸成分であるが、消化管からマグネシウムが全く吸収されないため、腎機能が低下した人でも高マグネシウム血症のリスクは一切なく、透析患者にも無制限に使用できる。
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正答はイです。
酸化マグネシウムは制酸作用(胃酸中和)と瀉下作用(腸管内への水分引き込み)の両方を持つ成分です。便秘を伴う胃の不快感に用いられる一方で、腎機能が低下している人ではマグネシウムイオンが体内に蓄積して高マグネシウム血症(嘔気・血圧低下・意識障害)を起こすリスクがあります。
ゴロ:「MgO(酸化マグネシウム)=制酸+下剤の二刀流。腎臓弱い人は注意」
誤りのポイント:ア(NaHCO₃は腎臓病に注意)、ウ(アルミニウム塩は透析患者に禁忌)が特に試験で問われます。
制酸成分の比較表:
| 成分 | 主な陽イオン | 中和速度 | 副作用・禁忌 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| 炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃) | Na⁺ | 速い | 腎臓病・心臓病(Na過剰)・代謝性アルカローシス | CO₂発生→げっぷ |
| 酸化マグネシウム(MgO) | Mg²⁺ | 中等度 | 腎機能低下→高Mg血症。下痢傾向 | 制酸+瀉下の二重作用 |
| 水酸化アルミニウムゲル | Al³⁺ | 中等度 | 便秘傾向。透析患者・腎不全→アルミニウム脳症 | 長期・大量で骨軟化症リスク |
| 炭酸カルシウム | Ca²⁺ | 速い | 高カルシウム血症(大量使用時)。酸リバウンドあり | CO₂発生。Ca補給兼用も |
| ケイ酸マグネシウム | Mg²⁺・ケイ酸 | 緩やか | Mg蓄積リスク(腎機能低下) | 吸着作用も有する |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)はNaが体内に吸収されるため、高ナトリウム血症・腎臓病・高血圧・心臓病の人では浮腫悪化・血圧上昇のリスクがあります。「腎臓病の人にも自由に使用できる」という記述は誤りです。
- イ(正): 酸化マグネシウムは制酸作用と浸透圧性下剤作用を兼ね備え、便秘を伴う胃腸不快感に適しています。腎機能低下者ではMg²⁺の腎排泄が低下して高マグネシウム血症のリスクがあります。正しい記述です。
- ウ(誤): 水酸化アルミニウムゲルは、腎機能が著しく低下している患者や透析患者では禁忌です。腎排泄が低下したAlが体内に蓄積し、透析脳症(アルミニウム脳症)・アルミニウム骨症・貧血を引き起こすことが知られています。「透析患者にも安全に使用できる」は誤りです。
- エ(誤): 炭酸カルシウムをはじめ、強力な制酸成分(特にCa含有)では酸リバウンド(Acid rebound)が起こることが知られています。胃酸が過剰に中和されると胃G細胞からのガストリン分泌が刺激されて、逆に胃酸分泌が亢進します。「知られていない」という記述は誤りです。
- オ(誤): ケイ酸マグネシウムは制酸作用と吸着作用を併せ持つマグネシウム系の成分ですが、マグネシウムを含むため腎機能が低下した人では高マグネシウム血症のリスクがあり、透析患者への使用にも注意が必要です。「マグネシウムが全く吸収されず高Mg血症のリスクは一切ない・透析患者に無制限に使用できる」という記述は誤りです。マグネシウムを含む制酸・瀉下成分(酸化マグネシウム・ケイ酸マグネシウム等)は、腎機能低下者では一律に高Mg血症に注意します。
【制酸成分の化学反応・副作用機序・透析患者への影響の詳細】
制酸反応の化学式と特徴:
各制酸成分の反応:
- 炭酸水素ナトリウム: NaHCO₃ + HCl → NaCl + H₂O + CO₂↑(CO₂発生→げっぷ。即効性大)
- 酸化マグネシウム: MgO + 2HCl → MgCl₂ + H₂O(CO₂非発生。中和能高)
- 水酸化アルミニウム: Al(OH)₃ + 3HCl → AlCl₃ + 3H₂O(穏やか)
- 炭酸カルシウム: CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + CO₂↑(CO₂発生)
炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)の詳細リスク:
腎機能正常者では余剰のNa⁺は尿中に排泄されますが、腎機能低下者・心不全では排泄が追いつかず:
- 高ナトリウム血症:口渇・神経過敏・痙攣(重症時)
- 代謝性アルカローシス:HCO₃⁻が過剰に吸収されることでpHが上昇→嘔気・頭痛・意識障害
- 浮腫・血圧上昇:Na貯留による
長期・大量使用の「ミルク-アルカリ症候群」:炭酸水素ナトリウム + カルシウム(ミルク)を大量・長期使用すると高カルシウム血症・高ナトリウム血症・代謝性アルカローシスが三徴として現れます(歴史的な疾患概念ですが現代でも一般用制酸薬の乱用で生じる事例があります)。
水酸化アルミニウムゲルと透析患者への毒性:
アルミニウム(Al³⁺)の毒性が問題になる背景:
- 腎機能正常者:Al³⁺の大部分は消化管で吸収されず、わずかに吸収されたAlも腎臓から排泄
- 腎機能低下・透析患者:Al³⁺の腎排泄が著しく低下→体内蓄積
透析脳症(アルミニウム脳症):1970〜80年代、透析患者への過剰なAl暴露(透析液・制酸薬)により記憶障害・言語障害・痙攣・認知症様症状を呈する重篤な神経障害が多発。現在は透析液からAlは除去されていますが、制酸薬(Al含有)の長期使用は禁忌とされています。
アルミニウム骨症(Al関連骨疾患):Al³⁺が骨芽細胞に毒性作用→骨石灰化障害。透析患者の腎性骨異栄養症悪化因子の一つとして重要。
酸化マグネシウムの高マグネシウム血症の詳細:
正常血清Mg濃度:0.65〜1.05 mmol/L(1.5〜2.5 mEq/L)
高Mg血症の症状(血清Mg値との対応):
- 軽度(>2.0 mmol/L):嘔気・嘔吐・倦怠感・顔面紅潮
- 中等度(>3.0 mmol/L):深部腱反射消失・筋力低下・徐脈・血圧低下
- 重度(>5.0 mmol/L):呼吸抑制・意識障害・心停止
腎機能低下者でのリスク:糸球体濾過率(GFR)<30 mL/min(CKD stage 4〜5)では経口Mg製剤の使用で高Mg血症リスクが明確に高まります。高齢者では加齢による腎機能低下(GFR低下)があることが多く、市販の胃腸薬・瀉下薬に含まれる酸化マグネシウムを長期使用する場合は腎機能確認が重要です。
酸リバウンドの機序詳細:
酸リバウンド(Acid Rebound)の発生機序:
1. 制酸成分により胃内pHが急速に上昇(pH >4.0)
2. 胃幽門部G細胞がpH上昇を感知→ガストリン分泌亢進
3. ガストリンが胃底腺の壁細胞H₂受容体・コレシストキニン受容体(CCK-B/ガストリン受容体)を刺激
4. 壁細胞H⁺-K⁺-ATPase(プロトンポンプ)の活性化→胃酸分泌増加
5. 制酸薬効果が切れると胃酸濃度が服用前より高くなる可能性
特にカルシウム含有制酸薬でリバウンドが顕著とされます(Cav²⁺が直接ガストリン分泌を刺激する可能性も指摘)。制酸薬の漫然とした使用・服用量増加が習慣化するリスクにつながります。
登録販売者の実務:制酸薬選択のポイント:
| 購入者の状況 | 避けるべき成分 | 推奨の相談対応 |
|---|---|---|
| 腎臓病・透析中 | Al含有(水酸化アルミニウム)・Mg含有(酸化マグネシウム) | 医師・薬剤師への相談を勧める |
| 高血圧・心臓病・浮腫 | NaHCO₃(炭酸水素ナトリウム)・高Na塩 | Na制限食との整合性確認 |
| 便秘傾向 | Al含有(便秘副作用) | Mg含有が相対的に向く |
| 下痢傾向 | Mg含有(瀉下作用) | Al含有または炭酸Ca系 |
| 長期・継続使用 | すべての制酸薬(酸リバウンド・依存) | 生活習慣の見直しと受診勧奨 |
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 旧・選択肢オ(「ケイ酸マグネシウムは制酸と吸着の両作用を持つ」)は手引き準拠で正しい記述(ケイ酸マグネシウムは制酸成分であり腸で吸着成分として働く)であり、正答イ(正しいもの)と二重正答になっていた。一意性確保のため、選択肢オを「Mgを含むが高Mg血症リスク一切なし・透析患者に無制限使用可」という明確な誤り(Mg含有成分は腎機能低下者で高Mg血症に注意)に改変し、standard解説も整合修正した。正答は変更なし(イ)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第4節「胃の薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。