登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問3:主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
漢方処方製剤に含まれる生薬成分と、その使用上の注意に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アマオウ(麻黄)を含む漢方薬は、血圧を下げる作用があるため、高血圧の人が積極的に使用することが推奨される。
- イカンゾウ(甘草)を含む漢方薬を長期・大量に使用しても、電解質バランスへの影響はなく、浮腫が生じることはない。
- ウ葛根湯はマオウを含むため、高血圧・心臓病・甲状腺機能亢進症・糖尿病の人は使用に注意が必要である。正答
- エ大黄(ダイオウ)を含む漢方薬は、便秘改善に用いられるが、妊婦が服用しても安全であり、授乳中も問題なく使用できる。
- オ漢方薬は天然由来の植物成分のみからなるため、化学合成された医薬品と異なり、副作用や相互作用が生じることはない。
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正答はウです。
葛根湯はマオウ(麻黄)を含み、マオウにはエフェドリン(交感神経刺激成分)が含まれます。エフェドリンは血圧や心拍数を上げる作用があるため、高血圧・心臓病・甲状腺機能亢進症・糖尿病の人は使用に注意が必要です。
アは誤りで、マオウは血圧を「上げる」方向に作用します。イは誤りで、カンゾウ長期使用は偽アルドステロン症(浮腫・高血圧・低カリウム血症)を起こします。エは誤りで、ダイオウ含有薬は妊婦禁忌・授乳中も注意です。オは誤りで、漢方薬にも副作用・相互作用があります。
漢方処方の主要生薬リスク対応表(頻出):
| 生薬 | 主な成分 | 禁忌・注意事項 | 代表漢方 |
|---|---|---|---|
| マオウ(麻黄) | エフェドリン | 高血圧・心臓病・甲状腺機能亢進症・糖尿病 | 葛根湯・麻黄湯・小青竜湯 |
| カンゾウ(甘草) | グリチルリチン酸 | 偽アルドステロン症(長期使用)・高血圧悪化 | ほぼ全漢方に含まれる |
| ダイオウ(大黄) | センノシド | 妊婦禁忌・授乳中注意・長期使用依存 | 防風通聖散・大黄甘草湯等 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): マオウに含まれるエフェドリンはα・β受容体を刺激する交感神経様作用を持ち、血圧を上昇させます。高血圧の人への使用は禁忌(または要注意)です。「血圧を下げる」という記述は正反対で誤りです。
- イ(誤): カンゾウに含まれるグリチルリチン酸は腸内細菌で加水分解されグリチルレチン酸になり、副腎皮質ホルモン様作用(アルドステロン様作用)を発揮します。長期・大量使用で偽アルドステロン症(ナトリウム貯留・カリウム排泄増加→浮腫・血圧上昇・低カリウム血症・脱力感・筋力低下)が生じます。「浮腫が生じることはない」は誤りです。
- ウ(正): 葛根湯はマオウ・カッコン・タイソウ・ケイヒ・シャクヤク・カンゾウ・ショウキョウを含みます。マオウ由来エフェドリンの交感神経刺激作用から、高血圧・心臓病(動悸・不整脈リスク)・甲状腺機能亢進症(代謝亢進に拍車)・糖尿病(血糖コントロールへの影響)の人は禁忌または要注意とされています。
- エ(誤): ダイオウ含有漢方は刺激性瀉下薬(センノシドが大腸を刺激し蠕動を促進)として機能します。妊婦では子宮収縮を促す可能性があり使用禁忌です。授乳中も母乳を介して乳児に影響が出る可能性があるため注意が必要です。
- オ(誤): 漢方薬は天然由来ですが、生薬成分は薬理活性を持つ化学物質であり、副作用(上記の偽アルドステロン症・マオウによる心血管系影響等)や他薬との相互作用が生じます。「天然だから安全」という思い込みは危険です。
【マオウとエフェドリンの交感神経刺激機序】
マオウ(Ephedra sinica等の生薬)の主要活性成分はエフェドリン(ephedrine)・プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)・メチルエフェドリンです。これらはアドレナリン様物質(sympathomimetic amine)で、以下の作用を持ちます:
1. 直接作用: α1・α2・β1・β2受容体を直接刺激
2. 間接作用: ノルエピネフリンの再取り込み阻害+放出促進
結果として:
- 心血管: 血圧上昇・心拍数増加・心収縮力増大(高血圧・不整脈・心疾患へのリスク)
- 気管支: β2刺激→気管支拡張(鎮咳・去痰効果の一因)
- 中枢: 覚醒・食欲抑制(乱用リスク)
- 甲状腺機能亢進症: 既存の代謝亢進・心拍増加に追加刺激をかける→危険
- 糖尿病: グリコーゲン分解(肝・筋)促進→血糖上昇作用
プソイドエフェドリンはOTCの鼻炎薬(血管収縮で鼻閉改善)にも単独で配合されています。
【偽アルドステロン症の機序と症状】
カンゾウのグリチルリチン酸→腸内代謝でグリチルレチン酸→11β-HSD2(コルチゾールを不活性化する酵素)を阻害→腎尿細管でコルチゾールが蓄積しアルドステロン様作用を発揮→ナトリウム貯留・カリウム排泄→以下の症状:
| 症状 | 機序 |
|---|---|
| 浮腫(むくみ) | Na+貯留→水分貯留 |
| 高血圧 | 血液量増加 |
| 低カリウム血症 | K+排泄増加 |
| 脱力感・筋力低下 | 低K+による筋膜電位異常 |
| 重篤例: 横紋筋融解症 | 重度の低K+→筋壊死 |
カンゾウはほぼすべての漢方処方に配合されているため、「漢方薬の長期使用=カンゾウ大量摂取のリスク」という観点が重要です。複数の漢方処方を同時に服用すると偽アルドステロン症のリスクが高まります。登録販売者は複数の漢方薬を同時購入する顧客に対してカンゾウ重複を確認する必要があります。
【ダイオウの薬理と妊婦禁忌の理由】
ダイオウ(大黄・Rheum palmatum等)の主要活性成分はセンノシド(sennoside A/B等のアントラキノン配糖体)です。経口摂取後、腸内細菌により大腸でセンナジン(aglycone)に加水分解→大腸粘膜への直接刺激+アクアポリン(水チャネル)阻害による水分再吸収減少→腸内水分増加・蠕動促進→瀉下効果。
妊婦禁忌の理由:
1. 腸管蠕動亢進→腹圧上昇→子宮収縮を誘発する可能性
2. センナジンの子宮平滑筋への直接収縮作用(動物実験での報告)
授乳中の注意: センナジンの一部が母乳に移行し、乳児に下痢・腹痛を引き起こす可能性があります。
【漢方薬の「天然だから安全」神話の否定と実務的意義】
「自然由来・漢方だから副作用がない」という誤解は広く浸透しており、登録販売者が直面する最も重要な誤解の一つです。手引きは明確に「漢方薬にも副作用がある」と記述しています。主要な漢方薬の副作用例:
- 小柴胡湯→間質性肺炎(肝疾患患者でインターフェロンとの併用時に頻度上昇・有名な薬害事例)
- マオウ含有薬→心血管系副作用・不眠
- カンゾウ大量→偽アルドステロン症
- 附子(ブシ)含有薬→心毒性(アコニチン)・しびれ
相互作用についても、カンゾウ含有漢方と利尿薬(低K+協奏)・強心配糖体(低K+で毒性増強)の組合せは危険です。「漢方は薬局で気軽に買えるから安全」という認識を崩すことが、登録販売者として顧客を守るうえで最重要の役割の一つです。
【試験頻出まとめ・成分→リスク対応の暗記法】
漢方薬の問題で狙われる「含有生薬→禁忌」のパターンは決まっています:
- マオウ含有(葛根湯・麻黄湯・小青竜湯)→高血圧・心臓病・甲状腺機能亢進症・糖尿病に注意
- カンゾウ含有(ほぼ全漢方)→長期使用で偽アルドステロン症・低K+血症
- ダイオウ含有(防風通聖散等)→妊婦禁忌・授乳注意
- ブシ(附子)含有→心毒性・しびれ
まず各生薬のリスクを覚え、次に代表的な処方に含まれているか判断できれば十分です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 致命的誤りなし。正答ウ「葛根湯はマオウ含有→高血圧・心臓病・甲状腺機能亢進症・糖尿病に注意」=正で正答一意。葛根湯の構成生薬(カッコン・マオウ・タイソウ・ケイヒ・シャクヤク・カンゾウ・ショウキョウ=7種)は手引き/一般用漢方処方の鑑別と一致。マオウ(エフェドリン・交感神経刺激)→交感神経興奮系疾患に注意、カンゾウ(グリチルリチン酸)→偽アルドステロン症(低K血症・浮腫・高血圧・脱力)、ダイオウ→妊婦・授乳注意、いずれも手引き第3章第15節と一致。「天然だから安全は誤り」も手引きの趣旨どおり。小柴胡湯+インターフェロンの間質性肺炎は手引きにも残る著名事例で記述適切。YMYL致命点なし。OKのまま配信可。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。