登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問33:主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
去痰薬(去痰成分)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アグアイフェネシンは気道粘膜細胞を直接破壊することで粘液の粘稠度を低下させ、喀出を容易にする成分であり、妊婦にも安全に使用できる。
- イブロムヘキシン塩酸塩は気道の粘液分泌細胞に作用して低粘稠な分泌液の分泌を促進し、痰を薄めて排出しやすくする。正答
- ウカルボシステイン(L-カルボシステイン)はムコダイン様作用により、痰のジスルフィド結合を切断して粘性を低下させる直接的な粘液溶解作用を持つ。
- エエチルシステインは気道粘膜の分泌を抑制することで痰の産生量そのものを減少させる成分であり、痰のタンパク質の構造には作用しない。
- オグアイフェネシンは気道からの粘液分泌を抑制することで、過剰な痰の産生を抑えて咳を緩和する成分である。
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正答はイ(正しいもの)です。
ブロムヘキシン塩酸塩は気道の粘液分泌細胞(杯細胞)に作用して、サラサラした分泌液の分泌を増やし痰を薄める(希釈)ことで喀出を容易にします。
各成分の覚え方:
- グアイフェネシン:気道粘膜を刺激して分泌を促進(抑制ではない)
- ブロムヘキシン:低粘稠な分泌液を増やす→痰を薄める(正しい)
- カルボシステイン:ムコタンパクの構造に直接作用するというより、粘液成分の含量比を調整して粘性を下げる
- エチルシステイン:SH基でムコタンパクの結合を切り粘稠度を下げる(分泌抑制ではない)
ウ(カルボシステインの機序)とエ(エチルシステインを「分泌抑制」とする点)が誤りです。エチルシステインは分泌を抑えるのではなく痰の粘りけを減らす成分です。
去痰成分の作用機序比較:
| 成分名 | 分類 | 主な作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| グアイフェネシン | 気道液分泌促進 | 気道粘膜の刺激→漿液分泌促進→痰の希釈・線毛運動促進 | 過剰摂取で嘔気あり |
| ブロムヘキシン塩酸塩 | 気道液分泌促進 | 気道分泌細胞に直接作用→低粘稠分泌液産生促進 | 粘液産生正常化 |
| カルボシステイン | 粘液正常化薬 | シアル酸/フコース産生比率の正常化→粘性の改善(組成変化) | 直接切断ではなく「正常化」 |
| エチルシステイン塩酸塩 | 粘液溶解薬 | SH基(チオール基)によるジスルフィド結合(S-S)切断→粘性低下 | システイン誘導体・直接溶解 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): グアイフェネシンは気道粘膜を「破壊」するのではなく、粘膜細胞を刺激して漿液性(サラサラした)分泌液の産生を促進することで痰を薄めて喀出を助けます。また、妊婦への安全性は確立されていないため「妊婦にも安全」は誤りです。
- イ(正): ブロムヘキシン塩酸塩は気道の杯細胞(粘液分泌細胞)に直接作用して、低粘稠な分泌液(漿液性成分)の産生を促進します。これにより粘稠な痰が希釈されて排出しやすくなります(粘液溶解ではなく希釈・正常化)。
- ウ(誤): カルボシステインは手引き上「痰の粘りけを減少させる」成分の一つですが、エチルシステイン等のようにジスルフィド結合を直接切断する機序ではありません。カルボシステインの主な作用は気道粘液の組成を正常化すること(シアル酸とフコースの産生比率の改善)で、粘液の流動性を改善します。直接的なジスルフィド結合切断はN-アセチルシステイン・エチルシステインの機序であり、「カルボシステインがジスルフィド結合を切断する」という記述は誤りです。
- エ(誤): エチルシステインは「分泌を抑制して痰の産生量を減らす」成分ではありません。手引きでは、エチルシステイン・メチルシステイン・カルボシステイン等は「痰の中の蛋白質に作用してその粘りけを減少させる」グループに分類されます。エチルシステインはSH基(チオール基)が痰のムコタンパクのジスルフィド(S-S)結合を切断して粘稠度を低下させる成分であり、「分泌を抑制し痰のタンパク質に作用しない」という記述は誤りです。
- オ(誤): グアイフェネシンは粘液分泌を「抑制」するのではなく、分泌を「促進」して痰を薄めます。分泌抑制は去痰の目的と逆の作用です。
【気道粘液の生化学と各去痰成分の作用点の詳細】
気道粘液の組成と構造:
正常な気道粘液(気道表面液: Airway Surface Liquid, ASL)は2層構造を持ちます:
1. ゾル層(ペリシリアリー液): 線毛が浸る低粘稠液層(厚さ約7μm)。線毛の自由な運動を保証。
2. ゲル層(粘液層): 高粘稠なムチン(MUC5B・MUC5AC等)ゲル。吸入異物・細菌を捕捉。
正常な粘液輸送は線毛(毎分約1000回の拍動)がゲル層を口側へ移動させる「粘液線毛クリアランス(MCC)」で維持されます。
粘液の粘稠化の原因:
- ムチンのジスルフィド結合を介した高分子架橋形成→ゲル硬化
- 水分(ゾル層)の減少(気道乾燥・脱水)
- 炎症時のDNA・アクチンフィラメント混入(感染時)
各去痰成分の精密な作用機序:
1. グアイフェネシン(Guaifenesin)の機序:
- グアヤク(ユソウボク)樹脂由来の合成誘導体
- 気道粘膜上皮のイオンチャネルを介した漿液分泌促進(Cl⁻分泌→水分・Na⁺も分泌)
- ゾル層を増量→ゲル層の粘稠度を希釈・線毛拍動がゲルに届きやすくなる
- 刺激性催吐作用(大量では)→胃腸刺激
2. ブロムヘキシン(Bromhexine)の機序:
- 杯細胞・気管支腺に直接作用(受容体介在)
- 酸性多糖類(フコース・シアル酸等)の産生パターンを変化させてゲル粘性を低下
- ブロムヘキシンの活性代謝物はアンブロキソール(体内で変換)→アンブロキソールも去痰薬の有効成分として単独使用される
- サーファクタント(肺表面活性物質)産生を促進する副次効果
3. カルボシステイン(L-Carbocysteine)の機序:
- S-カルボキシメチル基を持つシステイン誘導体
- SH基のジスルフィド結合切断活性はほとんどない(NAC・エチルシステインと異なる)
- 杯細胞のシアル酸産生を増加させフコース産生を相対的に低下させる→「シアル酸型粘液」に変化→粘液の流動性改善
- 副鼻腔炎でも分泌を正常化する効果があり、鼻汁の排出改善にも有効
4. エチルシステイン(Ethylcysteine)の機序:
- L-システインのエチルエステル
- SH基(チオール基)による粘液ジスルフィド結合の直接切断(S-S + R-SH → 2×R-S-H)
- NAC(N-アセチルシステイン)と同様の粘液溶解機序
- 結合切断により大分子ムチンゲルが低分子化→粘稠度低下・流動性増大
カルボシステインとエチルシステインの実臨床での使い分け(参考):
| 病態 | 適した去痰薬 | 理由 |
|---|---|---|
| 粘液組成の異常(副鼻腔炎・慢性気管支炎) | カルボシステイン | 分泌腺の正常化作用 |
| 粘稠な痰が多い急性期 | エチルシステイン・グアイフェネシン | 直接溶解・希釈で即効性 |
| 痰が少なく乾いた咳 | ブロムヘキシン(分泌促進) | 漿液性分泌を増やして痰を出しやすく |
妊婦・授乳中への安全性(YMYL観点):
- グアイフェネシン:動物実験での催奇形性報告(高用量)→妊娠初期は特に慎重・使用前に医師相談
- ブロムヘキシン:胎盤通過・母乳移行あり→妊婦・授乳中は医師の指示のもとで使用
- カルボシステイン・エチルシステイン:安全性データが限られており、妊婦・授乳中は使用前に医師相談
登録販売者は去痰薬を希望する妊婦・授乳中の女性に対して、OTCでの自己判断使用を控えるよう指導し、必ず医師・薬剤師へ相談するよう促すことが重要です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【二重正答を是正】手引き(令和8年4月版)の去痰成分分類=(1)分泌促進系:グアイフェネシン・グアヤコールスルホン酸K・クレゾールスルホン酸K・ブロムヘキシン/(2)痰中タンパクの粘りけ減少系:エチルシステイン・メチルシステイン・カルボシステイン。これに照らすと、元の選択肢エ(エチルシステイン=S-S結合切断で粘稠度低下)は"正しい記述"であり、正答イ(ブロムヘキシン=分泌促進で痰希釈)と二重正答だった。→選択肢エを「エチルシステインは分泌を抑制して痰の産生を減らす/タンパク質に作用しない」という明確な誤り(実際は粘りけ減少系)に書き換え、beginner/standard解説も整合修正。正答イが一意に確定。カルボシステインのジスルフィド結合非切断(含量比調整型)の記述は手引き分類(粘りけ減少系の中の組成正常化型)と矛盾せず保持。妊婦への注意(グアイフェネシン等は使用前に相談)も妥当。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第2節「鎮咳去痰薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。