登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問91:主な医薬品とその作用(ビタミン個別・横断テーマ)
ビタミンE・B群・Cに関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アビタミンEは水溶性ビタミンであり体内に蓄積されないため、大量摂取しても抗凝固薬(ワルファリン等)の効果に影響を与えることはなく、過剰症も生じない。
- イビタミンB₁(チアミン)が欠乏すると脚気(末梢神経障害・心不全)が生じ、重度の欠乏ではウェルニッケ脳症(意識障害・眼球運動障害・歩行失調)に至ることがある。正答
- ウビタミンB₁₂(シアノコバラミン)は植物性食品(野菜・果物・豆類)に豊富に含まれており、完全菜食(ビーガン)の人でも欠乏することはない。
- エビタミンCは脂溶性ビタミンであり体内の脂肪組織に長期間蓄積するため、毎日補給しなくても欠乏症(壊血病)を生じるリスクは低い。
- オビタミンB₆(ピリドキシン)は水溶性ビタミンであるが、大量・長期摂取では末梢神経障害(感覚神経障害)を引き起こすことがあり、過剰症が知られている。
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正答はイです。
ビタミンB₁(チアミン)が欠乏すると脚気(末梢神経障害・心不全・浮腫)が生じます。さらに重度の欠乏や急性欠乏ではウェルニッケ脳症(意識障害・眼球運動障害・歩行失調の三徴)に至ることがあります。
各ビタミンの特徴整理(試験頻出):
- E(脂溶性):抗酸化作用・過剰で抗凝固薬との相互作用・出血傾向
- B₁(水溶性):エネルギー代謝(解糖系補酵素)・欠乏=脚気・ウェルニッケ脳症
- B₁₂(水溶性):動物性食品にのみ存在・完全菜食で欠乏・巨赤芽球性貧血
- B₆(水溶性):水溶性でも大量長期摂取で末梢神経障害(過剰症あり)
- C(水溶性):欠乏=壊血病・過剰は腎結石リスク(一般には低毒性)
ビタミンE・B群・Cの比較表:
| ビタミン | 溶性 | 主な機能 | 欠乏症 | 過剰症 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|
| E(トコフェロール) | 脂溶性 | 抗酸化(脂溶性ラジカル捕捉)・生殖機能 | 溶血性貧血(早産児)・神経障害 | 抗凝固薬との相互作用・出血傾向 | ワルファリン効果増強に注意 |
| B₁(チアミン) | 水溶性 | ピルビン酸脱水素酵素補酵素(解糖→TCAサイクル) | 脚気・ウェルニッケ脳症 | 報告少ない | アルコール依存者で重度欠乏リスク |
| B₂(リボフラビン) | 水溶性 | FMN・FAD(酸化還元反応補酵素) | 口内炎・舌炎・皮膚炎・眼球充血 | 報告少ない(黄色尿で排泄) | 「フラビン」=黄色 |
| B₆(ピリドキシン) | 水溶性 | アミノ基転移反応補酵素(アミノ酸代謝) | 皮膚炎・貧血・神経炎 | 感覚神経障害(大量長期) | 過剰症がある水溶性ビタミン |
| B₁₂(シアノコバラミン) | 水溶性 | DNAメチル化・神経髄鞘維持・葉酸代謝 | 巨赤芽球性貧血・神経障害 | 報告少ない | 動物性食品にのみ存在 |
| C(アスコルビン酸) | 水溶性 | 抗酸化・コラーゲン合成・免疫 | 壊血病(出血傾向・歯肉炎) | 腎結石(シュウ酸尿)・下痢 | 高用量長期で腎結石リスク |
各選択肢の解説:
- ア(誤): ビタミンEは脂溶性ビタミンです。大量摂取で出血時間が延長することがあり、ワルファリン等の抗凝固薬と併用すると抗凝固効果が増強する可能性があります。「水溶性・蓄積なし・相互作用なし・過剰症なし」はすべて誤りです。
- イ(正): ビタミンB₁はTCA回路の入口酵素(ピルビン酸脱水素酵素)の補酵素であり、欠乏すると末梢神経障害・心不全(脚気)が生じます。急性・重度の欠乏ではウェルニッケ脳症(眼球運動障害・意識混濁・歩行失調)に至ることがあります。正しい記述です。
- ウ(誤): ビタミンB₁₂は動物性食品(肉・魚・卵・乳製品)にのみ含まれるビタミンです。植物性食品にはほぼ含まれないため、完全菜食(ビーガン)の人では欠乏のリスクが高く、巨赤芽球性貧血・神経障害が生じることがあります。「植物性食品に豊富・ビーガンで欠乏しない」は誤りです。
- エ(誤): ビタミンCは水溶性ビタミンであり、体内貯蔵量は比較的少なく(2〜3週間程度で枯渇)、毎日の摂取が必要です。「脂溶性・長期蓄積・補給不要」は誤りです。ビタミンC欠乏(壊血病)は歯肉出血・皮下出血・傷の治癒遅延を引き起こします。
- オ(正): ビタミンB₆は水溶性ですが、サプリメント等による大量・長期摂取で感覚神経障害(手足のしびれ・感覚鈍麻)を起こすことがあります。水溶性ビタミンでは珍しく過剰症(耐容上限量)が設定されている成分として試験に頻出です。なお日本人の食事摂取基準(2025年版)でもビタミンB₆には耐容上限量が定められています。<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): B₆の感覚神経障害の発症閾値は文献により幅があるため具体的mg数(500mg等)の断定を削除。「大量・長期摂取で感覚神経障害」「水溶性で例外的に過剰症あり・耐容上限量が設定」という事実に統一。 -->
【各ビタミンの分子機序・臨床的重要性と登録販売者が押さえるべき知識】
ビタミンB₁(チアミン)の詳細—脚気からウェルニッケ脳症まで:
チアミン(B₁)はチアミンピロリン酸(TPP)として以下の酵素の補酵素として機能します:
1. ピルビン酸脱水素酵素(PDH):ピルビン酸→アセチルCoA(解糖系→TCAサイクルへの入口)
2. α-ケトグルタル酸脱水素酵素(TCAサイクル中間体)
3. トランスケトラーゼ(ペントースリン酸経路)
チアミン欠乏の結果:
- ピルビン酸→乳酸の経路に偏る→乳酸アシドーシス
- TCAサイクル(有酸素代謝)が機能しない→脳・神経・心臓(高エネルギー需要臓器)が最初にダメージを受ける
脚気の病型:
- 末梢神経型(乾性脚気):末梢神経の髄鞘障害→感覚障害・筋力低下・腱反射消失
- 心臓型(湿性脚気):心筋エネルギー代謝障害→高拍出性心不全・浮腫
- ウェルニッケ脳症:脳(特に視床・中脳・小脳)が急性B₁欠乏に陥る→「眼球運動障害・失調・意識障害」の三徴
現代での高リスク群:アルコール依存症(吸収障害+代謝亢進)・術後・透析患者・ダイエット(極端な炭水化物制限)
ビタミンEの抗凝固薬相互作用の機序:
ビタミンE(α-トコフェロール)は:
- 脂溶性の強力な抗酸化剤(脂質ペルオキシドラジカルを捕捉→フリーラジカル連鎖反応を断ち切る)
- 高用量では血小板凝集の抑制・プロスタサイクリン合成促進→抗凝固薬(ワルファリン)の効果を増強
ワルファリンとビタミンEの相互作用:
- ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子(II・VII・IX・X)の合成を阻害
- ビタミンE大量摂取→ビタミンK₁の腸管吸収を競合的に阻害(機序の一つ)+プロスタサイクリン増加→INRが上昇
- 結果:出血リスクの増大(脳出血・消化管出血等)
登録販売者として:ワルファリン服用中の人にビタミンE含有製品(特に1日200 IU以上)を勧める場合は必ず医師・薬剤師への相談を促します。
ビタミンB₁₂欠乏の詳細—ビーガンと巨赤芽球性貧血:
ビタミンB₁₂の吸収経路(複雑):
1. 胃の壁細胞から内因子(intrinsic factor: IF)が分泌
2. B₁₂はIFと複合体を形成→回腸末端で吸収(B₁₂-IF受容体)
3. 肝臓に蓄積(体内蓄積量は2〜5年分)
欠乏の原因:
- 食事性:完全菜食(動物性食品なし)→食事中のB₁₂ゼロ→数年で欠乏
- 吸収障害:悪性貧血(IF産生低下・自己免疫)・胃切除後・回腸切除後・腸管吸収不全
ビタミンB₁₂欠乏の結果:
- 巨赤芽球性貧血:DNAメチル化・胸腺ピリジン合成障害→骨髄の巨赤芽球化→倦怠感・息切れ・動悸
- 亜急性脊髄連合変性症:脊髄後索・側索の脱髄→感覚障害・歩行失調
- 葉酸欠乏の巨赤芽球性貧血と鑑別が重要(葉酸補充でB₁₂欠乏の神経障害は改善しない)
ビタミンB₆の過剰症(水溶性ビタミンの例外):
ビタミンB₆(ピリドキシン・ピリドキサール・ピリドキサミン)は通常の食事量では安全ですが:
- 長期大量摂取(特にサプリメント)で末梢感覚神経障害が報告されています
- 感覚神経障害の症状:手足のしびれ・灼熱感・感覚鈍麻
- 原因:代謝産物(4-pyridoxic acid以外の経路)が感覚神経に毒性を示すとする説
登録販売者の実務対応:
| ビタミン | 特に注意が必要な場面 | 対応 |
|---|---|---|
| E | ワルファリン服用中・出血傾向がある人 | 高用量サプリ購入時に医師相談を促す |
| B₁ | アルコール多飲者・透析患者・ダイエット中 | 欠乏リスクを伝え、食事バランスを確認 |
| B₁₂ | 完全菜食・胃切除後・高齢者(吸収低下) | 欠乏のリスクを伝え医師受診を勧める |
| B₆ | 高用量サプリを長期服用 | 使用量・期間を確認し、しびれ等が出れば中止・受診 |
| C | 過量摂取・腎結石の既往 | 1日2,000mg以上は腎結石リスクあり。通常用量での使用を勧める |
ビタミン類は「自然だから安全」というイメージが強いですが、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は蓄積性過剰症があり、水溶性でもB₆は過剰症があるなど、量の管理が重要です。登録販売者として正確な知識を持って購入者に適切な情報提供ができることが求められます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 滋養強壮保健薬(ビタミン成分・B群・C・E) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。