第5章 医薬品の適正使用・安全対策28医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「してはいけないこと」授乳婦別表)

登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問28:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「してはいけないこと」授乳婦別表)

一般用医薬品の添付文書の「してはいけないこと」における授乳婦への注意に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • ジフェンヒドラミン塩酸塩を含む睡眠補助薬は、授乳中の女性が使用しても乳汁中への移行量は無視できるほど少ないため、「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」は記載されない。
  • コデインリン酸塩水和物を含む鎮咳薬は、乳汁中に移行し乳児に過度の眠気等を引き起こすおそれがあるため、授乳中の女性は授乳を避けるよう添付文書に記載される。正答
  • センノシド(センナ由来の瀉下成分)は消化管から吸収されにくく、乳汁中に移行することはないため、授乳中の女性が使用する場合でも特段の注意を要しない。
  • ロートエキス(抗コリン成分)は乳汁分泌を促進するため、授乳中の女性に積極的に用いることができる成分として位置づけられている。
  • アスピリンを含む解熱鎮痛薬は、一般用医薬品においては15歳未満への投与制限はあるが、授乳中の女性が使用する場合の特別な記載義務はない。
正答:コデインリン酸塩水和物を含む鎮咳薬は、乳汁中に移行し乳児に過度の眠気等を引き起こすおそれがあるため、授乳中の女性は授乳を避けるよう添付文書に記載される。

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正答はイです。

コデインリン酸塩水和物(鎮咳成分)は、母乳を通じて乳児に移行します。乳児では代謝が未熟なため、コデインのモルヒネへの変換が過剰になる場合があり、過度の眠気・呼吸抑制などが生じるおそれがあります。そのため授乳中の使用は「授乳を避けること」と添付文書に記載されます。

ア(誤): ジフェンヒドラミンは母乳移行が確認されており(乳児に昏睡を起こすおそれ)、授乳中の使用では授乳回避の記載があります。ウ(誤): センノシドの代謝物は母乳に移行し、乳児の下痢の原因となることがあります。エ(誤): ロートエキスは「乳汁分泌を促進する」ことはなく、逆です。手引きでは母乳移行により乳児に頻脈を起こすおそれがあるため「授乳を避けること」の対象とされます(抗コリン作用で乳汁分泌が抑制されることもあります)。「積極的に用いることができる」は明白な誤りです。オ(誤): アスピリンも乳汁移行が確認されており、授乳中は注意が必要です。

標準試験対策の基準レベル

授乳中の使用で「授乳を避けること」が記載される主な成分(別表の重要ポイント):

| 成分 | 含まれる薬の種類 | 授乳回避の理由 |

|---|---|---|

| ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 睡眠補助薬・かぜ薬・抗ヒスタミン薬 | 母乳移行→乳児に昏睡を起こすおそれ |

| コデインリン酸塩水和物 | 鎮咳薬・かぜ薬 | 母乳移行→乳児への呼吸抑制・過度の眠気 |

| センノシド(センナ・ダイオウ) | 瀉下薬 | 代謝物が母乳移行→乳児の下痢 |

| ロートエキス | 胃腸薬・痔疾用薬 | 母乳移行により乳児に頻脈を起こすおそれ(手引き別表の理由)。なお抗コリン作用で乳汁分泌が抑制されることもある |

| アスピリン | 解熱鎮痛薬 | 母乳移行→乳児への血小板凝集抑制等のリスク |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): ジフェンヒドラミン塩酸塩は血液脳関門を通過しやすい第一世代抗ヒスタミン薬で、母乳へも移行します。手引きでは母乳移行により乳児に昏睡を起こすおそれがあるとして「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」が記載されます(選択肢アの「移行量は無視できるほど少ないため記載されない」は誤り)。
  • イ(正): コデインは肝臓でCYP2D6によりモルヒネに代謝されます。乳児はこの代謝酵素の個人差が大きく、超高速代謝者では高濃度のモルヒネが母乳中に移行し、乳児に重篤な影響を与えた事例が報告されています。
  • ウ(誤): センノシドは腸内細菌により加水分解されてレインアンスロンとなり、一部が吸収されて母乳中に移行します。乳児では腸蠕動を促進し、下痢を引き起こすおそれがあります。
  • エ(誤): ロートエキスが「授乳を避けること」の対象となる手引き上の主たる理由は、母乳移行により乳児に頻脈(心拍数増加)を起こすおそれがあるためです。選択肢の「乳汁分泌を促進するため積極的に用いることができる」は完全な誤りで、薬理学的にもロートエキスの抗コリン作用は乳汁分泌をむしろ「抑制」する方向です(授乳量が減少するリスク)。促進ではなく抑制、かつ授乳回避の主理由は乳児の頻脈、という二重の誤りを含む選択肢です。
  • オ(誤): アスピリンは母乳に移行します。乳児への血小板機能への影響から授乳中の注意記載があります。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【母乳移行の機序と授乳婦別表の体系的理解】

添付文書の「してはいけないこと」における授乳婦への注意は、単に暗記するのではなく、母乳移行の薬理学的機序と乳児側のリスクから体系的に理解することが重要です。

1. 薬物の母乳移行を決める因子

薬物が母乳に移行しやすい条件は以下のとおりです。

  • 脂溶性が高い: 乳汁は脂肪を多く含むため、脂溶性が高い成分ほど移行率が高い(ジフェンヒドラミン等の第一世代抗ヒスタミン薬は脂溶性が高い)
  • 分子量が小さい: 800Da以下の小分子は乳腺上皮細胞の間隙を通過しやすい
  • タンパク結合率が低い: 非結合型(遊離型)の薬物が乳汁に移行する
  • 弱塩基性: 乳汁はわずかに酸性(pH6.8〜7.1)で、弱塩基性薬物はイオントラップにより乳汁中に濃縮される

2. 各成分の移行機序と乳児リスクの詳細

コデイン(最重要・令和6年以降の改訂強化論点):

コデインはCYP2D6の基質であり、体内でモルヒネに代謝されます。CYP2D6の活性には個人差があり、「超高速代謝者(UM)」では通常の数倍のモルヒネが産生されます。授乳中の母がコデインを服用した場合、UMでは高濃度のモルヒネが母乳中に移行し、乳児に重篤な呼吸抑制が生じた死亡事例が欧米で複数報告されています(FDA・EMAが警告)。なお、12歳未満の小児への適用制限(後述のch5_29論点)とは別に、授乳中の母への使用制限も設定されています。

ジフェンヒドラミン(第一世代抗ヒスタミン薬):

第一世代抗ヒスタミン薬は脂溶性が高く、血液脳関門・胎盤・乳腺バリアをいずれも通過しやすい特性があります。母乳移行した成分が乳児の中枢神経系に作用し、過度の眠気・哺乳力低下・呼吸抑制を引き起こすおそれがあります。また、抗コリン作用も有するため乳児の口渇・排尿困難にも注意が必要です。

センノシド(瀉下成分):

センノシドは腸内細菌の作用でレインアンスロン(活性代謝物)に変換され、大腸の蠕動運動を促進します。この代謝物の一部が腸管から吸収され、乳汁中に移行します。乳児では腸管感受性が高く、母乳経由でのわずかな移行でも下痢を引き起こすおそれがあります。同様にダイオウ(大黄)由来のアントラキノン系成分も同様のリスクがあります。

ロートエキス(抗コリン成分):

ロートエキスはベラドンナアルカロイド(アトロピン等)を含む抗コリン成分です。手引きの「してはいけないこと」別表が示す授乳回避の主たる理由は、母乳に移行した成分が乳児に頻脈(心拍数増加)を起こすおそれがあるためです(ロートエキスを含む内服薬・外用痔疾用薬が対象)。これに加えて、抗コリン作用(副交感神経=分泌腺支配の遮断)により母体側の乳汁分泌が抑制されることもあります。試験では「乳児の頻脈」が別表上の理由として問われる点を優先して押さえます(「乳汁分泌を促進する」は誤り。促進ではなく抑制方向)。

3. 登録販売者の実務的対応

授乳中の購入者への適切な情報提供フロー:

1. 確認: 「現在授乳中ですか?」の確認は販売時の基本

2. リスク説明: 「この成分は母乳を通じてお子さんに影響する可能性があります」と具体的に伝える

3. 代替案提示: 授乳中でも使用可能な代替製品の提案(成分の選択)

4. 受診勧奨: 症状が重い場合や代替製品がない場合は医師・薬剤師への相談を促す

4. 試験対策:授乳回避の重要成分の覚え方

「授乳を避けること」が記載される成分と理由の対応(目安):

  • ジフェンヒドラミン → 乳児の昏睡等の中枢抑制/コデイン → 乳児の呼吸抑制・過度の眠気/センノシド・ダイオウ等の瀉下成分 → 乳児の下痢/ロートエキス → 乳児の頻脈/ヒマシ油 → 乳児の下痢(瀉下成分)/アスピリン等 → 乳児への影響
  • 各成分は「なぜ避けるのか(乳児に何が起きるか)」までセットで覚える。特にロートエキス=頻脈、コデイン=呼吸抑制、瀉下成分=下痢は混同しやすいので区別する。

登録販売者試験では「なぜ授乳を避けるのか」の理由(乳児に何が起きるか)まで問われることがあります。機序と合わせて記憶するよう徹底しましょう。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): YMYL突合済み。正答イ(コデイン=乳児の呼吸抑制・過度の眠気で授乳回避)で一意確定。重要修正=ロートエキスの授乳回避理由を手引き別表準拠で「母乳移行により乳児に頻脈を起こすおそれ」に是正(旧記述は「乳汁分泌抑制が主」と断定しており別表理由と不整合だった)。あわせてジフェンヒドラミンの理由を手引き準拠で「乳児に昏睡を起こすおそれ」に精緻化。選択肢エ(ロートエキスが乳汁分泌を促進する=誤り)の誤り性は維持。出典: 厚労省 手引き第5章別表「してはいけないこと(授乳婦)」。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「してはいけないこと」授乳婦別表) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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