衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問4:局所排気装置・保護具
局所排気装置に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア局所排気装置を構成する主な要素は、「フード→空気清浄装置→排風機(ファン)→ダクト→排気口」の順序で配置される。
- イ囲い式フードは、発生源を完全または部分的に囲うことにより有害物質を捕捉するタイプのフードであり、外付け式フードよりも大きな制御風速(吸込み速度)を必要とするため、排風量も外付け式より多くなる。
- ウ外付け式フードは、発生源から離れた位置に設置され、有害物質を吸い込む形で捕捉するタイプであり、囲い式フードより高い制御風速が必要であるが、囲い式より常に捕捉効率が高い。
- エ排風機(ファン)は、装置内の空気の流れを生み出す原動力であり、腐食性・爆発性の有害物質がある場合には、空気清浄装置の前段(上流側)に設置することが推奨される。
- オ局所排気装置のダクトの形状は、できる限り短く・曲がりの数が少なく・コーナー部分を緩やかなカーブにすることで、圧力損失(搬送エネルギーのロス)を減らすことができる。正答
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正しいのはオです。局所排気装置のダクト(空気の通り道)は短くして・曲がりを少なく・コーナーを緩やかにすることで、空気の流れの抵抗(圧力損失)が減り、排風機の電力消費が少なくなり、有害物質の搬送効率が上がります。これはダクト設計の基本原則です。
各誤りの要点: ア→局所排気装置の正しい順序は「フード→ダクト→空気清浄装置→排風機(ファン)→排気口」(排風機の前に空気清浄装置が来る)。イ→囲い式フードは発生源を囲うため、必要な制御風速・排風量が外付け式より小さい(「大きな制御風速・多い排風量を必要とする」は逆で誤り)。ウ→外付け式が「常に捕捉効率が高い」は誤り(囲い式の方が捕捉効率は高い)。エ→排風機は空気清浄装置の後段(下流側)に設置(腐食性物質が排風機を通過しないよう)。
局所排気装置の構成要素と正しい配置順序:
正しい配置順序: フード → ダクト → 空気清浄装置 → 排風機(ファン) → 排気口
この順序が重要な理由: 排風機(ファン)の前段に空気清浄装置を置くことで、腐食性・爆発性のガス・粒子が排風機を傷めることを防ぎ、浄化された空気を排気します。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 「フード→空気清浄装置→排風機→ダクト→排気口」の配置が誤り。正しくは「フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口」です。ダクトはフードから空気清浄装置まで有害物質を含む空気を搬送するための管路であり、フードの直後に続きます。
- イ(誤): 囲い式フードは発生源を囲むため、少ない風量・低い制御風速で有効に有害物質を捕捉できます。「外付け式より大きな制御風速・多い排風量を必要とする」は逆であり誤りです。一般に必要な制御風速・排風量は囲い式<外付け式の関係になります。
- ウ(誤): 外付け式フードは発生源から離れた位置にあるため、より高い制御風速(吸込み速度)が必要です。しかし「常に捕捉効率が高い」は誤りであり、実際は囲い式の方が捕捉効率が高い(囲い式>外付け式)。
- エ(誤): 排風機は空気清浄装置の後段(下流側)に設置するのが正しい(特化則・有機則等の規定)。腐食性・爆発性の有害物質を含む空気が排風機を通過しないようにするためです。「空気清浄装置の前段」は誤りです。
- オ(正): ダクト設計の原則: 短い・曲がりが少ない・コーナーが緩やか→圧力損失が少ない→排風機の消費電力の節約・安定した排気量の確保。
【理論的背景】
局所排気装置は、有害物質の発生源の近くに設置したフードで有害物質を含む空気を吸い込み、ダクトを通じて搬送・空気清浄装置で浄化・排風機で駆動・排気口から屋外に排出するシステムです。「作業者が有害物質に曝露される前に捕捉・除去する」という一次予防の工学的対策として最も重要な設備の一つです。
局所排気装置の設計における主要な指標:
- 制御風速(capture velocity): フード開口部または発生源位置での必要吸込み速度(有害物質を確実に捕捉するために必要)
- 搬送風速(transport velocity): ダクト内で粒子(ダスト・ヒューム)を沈降させずに搬送するために必要な風速(通常15〜20m/s以上)
- 排風量(Q): Q = A(フード開口面積)× V(制御風速)
囲い式と外付け式の比較:
- 囲い式(ブース型・ドラフトチャンバー等): 発生源を完全・ほぼ完全に囲う→少ない排風量で高い捕捉効率→制御風速は0.4〜1.0m/s程度
- 外付け式(スロット型・グリッド型・ラウンド型等): 発生源の近傍・側方・上方に設置→より高い制御風速が必要(0.5〜1.5m/s以上・有害物質によって異なる)
【実務・条文構造】
局所排気装置に関する法令規定(特化則・有機則等):
設置義務:
- 特定化学物質(第1・第2類)の屋内作業場・有機溶剤業務作業場等では局所排気装置の設置が義務(全体換気装置・プッシュプル型換気装置も選択可能)
排風機の設置位置規定(特化則・有機則・その他特別規則の共通規定):
- 腐食性のある物質・爆発性のある物質の場合: 排風機は空気清浄装置の後(下流)に設置(清浄後の空気を排風機が通過することで、排風機の腐食・爆発を防止)
- この規定はアとエの正誤判定の根拠になります
定期自主検査(特化則・有機則等):
- 実施頻度: 1年以内ごとに1回
- 検査項目: フードの損傷・ダクトの腐食・排風機の異常・制御風速の測定等
- 記録保存: 3年間
フードの種類と適切な選択(職場実務):
- 囲い式(グローブボックス・ドラフトチャンバー): 毒性の高い物質・放射性物質等に使用
- 外付け式(スロット型): 広い作業エリア・大型の作業対象物に使用
- プッシュプル型(吹き出し+吸込みの組合せ): 大きな浴槽・めっき槽等の表面からの発散制御
ダクト設計の基本原則:
1. 短く: ダクト長が短いほど摩擦による圧力損失が少ない
2. 曲がりが少ない: 曲がり部(エルボ)では急激な方向変換による圧力損失が大きい
3. コーナーを緩やかに: 大きな曲率半径(R/D≥2.0以上推奨)で曲がりの損失係数を小さくする
4. 断面積の急変を避ける: 急激な拡大・縮小は乱流発生→損失増大
5. 均一な流速: 分岐がある場合は各枝ダクトへの流量バランスを設計する
【試験での位置づけ】
局所排気装置問題の最頻出は「正しい配置順序(フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口)」「囲い式vs外付け式の制御風速比較(外付けの方が高い風速が必要)」「排風機の位置(空気清浄装置の後段)」「ダクト設計の基本(短く・曲がり少なく)」の4点です。アのような「配置順序の誤り(ダクトとクリーナーの順序入れ替え)」とエのような「排風機の位置(前後逆転)」は最頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口」という順序は、「食べ物が口から食道→胃→腸→出口」の食物の流れのアナロジーで覚えると定着します。有害物質(食べ物相当)は最初にフード(口)に入り、ダクト(食道)を通って空気清浄装置(胃・腸=処理して無害化)を経て、排風機(心臓のポンプ)で押し出されて、排気口(出口)から外に出ます。
- イ: 囲い式フードは発生源を囲い込むため、外乱気流の影響を受けにくく、少ない排風量・低い制御風速でも高い捕捉効率が得られます(必要な制御風速・排風量は囲い式<外付け式)。囲い式の代表例であるグローブボックスは、有毒物質・放射性物質を扱う実験・研究施設で使用される密閉型の設備で、操作はゴム手袋(グローブ)を通して行い、内部は密閉・陰圧に保たれます。
- ウ: 外付け式フードが「捕捉効率が低い」理由: 発生源からフードまでの距離に応じて吸込み速度が急激に低下します(スロット型の場合、距離が2倍になると速度は1/4以下に)。このため外付け式は発生源からの距離を極力短くすること・制御風速を高く設定することが重要です。
- エ: 排風機を空気清浄装置の前段に置いた場合のリスク: ①腐食性物質→羽根・ケーシングの腐食・損傷、②爆発性物質→排風機(電気モーター・摩擦)で着火・爆発、③粒子状物質→羽根への付着・閉塞・アンバランスによる振動。これらを防ぐために清浄後の空気を排風機が扱う設計になっています。
- オ: ダクトの圧力損失計算では、「直管部の摩擦損失+曲がり・分岐・拡大縮小の局部損失」の合計が総圧力損失になります。排風機の仕様(静圧・風量特性)はこの総圧力損失に対応できるように選定します。ダクトを短く設計することで必要な排風機能力(消費電力)が小さくなり、設備コスト・ランニングコストの両方が削減できます。
【根拠】医学的事実(確立した工業衛生工学)。局所排気装置の配置順序(フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口)・排風機の設置位置(空気清浄装置後段)・囲い式vs外付け式の制御風速比較は工業衛生工学の確立した知識。特化則・有機則等の装置設置規定も準拠。
【補足】正しい配置順序: フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口。排風機は空気清浄装置の「後段(下流)」に設置。外付け式は囲い式より高い制御風速が必要(捕捉効率は低い)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した工業衛生工学)。局所排気装置の構成・ダクト設計原則は工業衛生工学の確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。