労働衛生(有害業務)6第一種有害化学物質の分類と性状

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問6:有害化学物質の分類と性状

有害物質の形態および生体への影響に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • ヒューム(fume)とは、固体や液体の機械的な破砕・摩耗によって生じる固体粒子であり、粒径は数マイクロメートルから数百マイクロメートルの範囲である。
  • ミスト(mist)とは、液体の蒸気が冷却されて固体化した微粒子であり、切削油・農薬等の噴霧によって発生することが多い。
  • 有害物質の生体への侵入経路には、吸入・経皮・経口の3つがあるが、経皮吸収は一般に吸入に比べて量が少なく、すべての有機溶剤においてほぼ無視できる程度の曝露量となる。
  • 蒸気圧が高い物質ほど常温で揮発しやすく、空気中に高濃度の蒸気を発生させやすい。作業環境中の蒸気濃度は蒸気圧と密接に関連する。正答
  • 金属水銀(常温液体の水銀)は蒸気圧が低く揮発性がほぼないため、作業環境での吸入曝露リスクは極めて低い。
正答:蒸気圧が高い物質ほど常温で揮発しやすく、空気中に高濃度の蒸気を発生させやすい。作業環境中の蒸気濃度は蒸気圧と密接に関連する。

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正しいのはエです。「蒸気圧が高い物質ほど揮発しやすい(常温で蒸気になりやすい)」は物理化学の基本原則であり正しいです。例えば、エタノールはアセトンより蒸気圧が低く揮発しにくい、ジエチルエーテルは蒸気圧が非常に高く非常に揮発しやすい、という関係があります。

各誤りの要点: ア→ヒュームは高温で気化した物質が固体化した超微細粒子(機械的破砕はダスト)。イ→ミストは液体が微小液滴となったもの(固体化はヒュームの概念)。ウ→有機溶剤の中には経皮吸収が重要な物質がある(二硫化炭素・有機リン等)。オ→金属水銀は蒸気圧がある程度あり(特に夏場の高温環境)、吸入曝露リスクがあります。

標準試験対策の基準レベル

有害物質の形態分類の整理:

| 形態 | 定義 | 典型例 |

|---|---|---|

| ガス | 常温常圧で気体状態の物質 | 塩素・アンモニア・一酸化炭素 |

| 蒸気 | 常温常圧では液体・固体だが蒸発した気体 | 有機溶剤蒸気・水銀蒸気 |

| ミスト | 液体が微小液滴として浮遊したもの | 切削油ミスト・農薬噴霧 |

| ダスト | 固体の機械的破砕・摩耗・集塵で生じた粒子 | 木粉・石炭粉じん・小麦粉 |

| ヒューム | 金属等が高温加熱で気化し冷却・固化した超微細粒子 | 溶接ヒューム・酸化亜鉛ヒューム |

| スモーク | 有機物の不完全燃焼で生じた炭素粒子 | たばこ煙・工場排気 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): ヒュームは「機械的破砕・摩耗」ではなく、金属等が高温で溶融・気化し、空冷されて固体粒子として析出したものです。粒径は0.01〜1μm(非常に細かい)。溶接・金属溶融・鋳造での発生が典型。
  • イ(誤): ミストは「液体蒸気が冷却されて固体化」ではなく、液体が微小液滴(エアロゾル状態)として空気中に浮遊したものです。噴霧・撹拌・飛散等で生じます。「固体化」の記述が誤りです(固体化はヒュームの特徴)。
  • ウ(誤): 「すべての有機溶剤においてほぼ無視できる」は誤りです。経皮吸収が特に重要な有機溶剤・有害物質は多数あります(二硫化炭素・ジメチルホルムアミド・有機リン農薬・アニリン・フェノール等)。これらの物質では皮膚への直接接触・防護が吸入と同様に重要です。
  • エ(正): 蒸気圧は「物質が揮発して気体になる圧力の目安」であり、蒸気圧が高い物質ほど揮発しやすく(気化しやすく)、空気中に高濃度の蒸気を発生させます。これは物理化学の基本原則であり正しいです。
  • オ(誤): 金属水銀(液体の水銀)は常温でも一定の蒸気圧を持ちます。特に高温環境や蒸気圧が上昇する条件下(夏場・暖房が効いた室内等)では、吸入曝露のリスクが高まります。「蒸気圧が低く揮発性がほぼない」は誤りで、金属水銀の吸入曝露は神経毒性(振戦・神経精神症状)の原因になります。
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【理論的背景】

有害物質の形態(ガス・蒸気・ミスト・ダスト・ヒューム等)を正確に分類することは、適切な保護具の選択・局所排気装置の設計・作業環境測定の方法選択に直結する実務的に重要な知識です。各形態は生体への侵入経路・肺への沈着部位・毒性発現の速さに影響します。

生体への侵入経路の3つ:

1. 吸入(inhalation): 最も重要な経路。気道→肺胞→血液へ。揮発性ガス・蒸気・超微細粒子(1μm以下)は肺胞まで到達。

2. 経皮吸収(dermal absorption): 皮膚から浸透。脂溶性有機溶剤・有機リン農薬等で重要。

3. 経口(ingestion): 汚染した手での食事・誤嚥等。実務的には吸入・経皮に次いで管理すべき経路。

金属水銀の特性(重要):

  • 常温で液体(融点-38.8℃)
  • 蒸気圧(25℃): 0.00185mmHg(0.246Pa)→低いが0ではない
  • 作業環境での許容濃度: 0.025mg/m³(ACGIH TLV)→非常に低い(=少量でもリスクがある)
  • 密閉空間・高温環境では濃度が上昇するため、体温計工場・蛍光灯処理施設等での吸入曝露が問題

【実務・条文構造】

ヒューム・ダスト・ミストの粒径と肺内沈着部位:

| 粒径 | 沈着部位 | 代表的な物質 |

|---|---|---|

| 10μm以上 | 鼻腔・咽頭で捕捉・排出 | 粗い粉じん |

| 5〜10μm | 気管支・細気管支 | 一般ダスト |

| 1〜5μm | 終末細気管支・肺胞 | 呼吸性粉じん・ヒューム(最危険) |

| 0.01〜1μm | 肺胞沈着(ヒューム・超微粒子) | 溶接ヒューム・金属酸化物ヒューム |

| <0.01μm | 肺胞まで到達するが呼気で排出 | — |

ヒュームの特殊性:

  • 溶接ヒュームは2021年に安衛法の管理物質(特定化学物質第2類)に追加されました
  • 溶接ヒューム(鉄を主体とした金属酸化物)は肺線維症・鉄沈着症(溶接工肺)の原因
  • 特殊なヒューム: 金属熱(Zinc oxide fume fever)→酸化亜鉛ヒューム吸入→月曜病様の発熱・倦怠感

経皮吸収が重要な有害物質(一覧):

  • 有機溶剤: ジメチルホルムアミド(DMF)・二硫化炭素(CS₂)・エチレングリコール
  • 農薬: 有機リン系農薬(パラチオン・マラチオン等)・カルバメート農薬
  • 染料中間体: アニリン・ニトロベンゼン(メトヘモグロビン血症の原因)
  • 腐食性物質: フッ化水素・フェノール(高い経皮毒性)
  • 金属化合物: 一部のクロム化合物・有機鉛化合物

蒸気圧と作業環境濃度の関係:

  • 蒸気圧(Pa)= その温度での飽和蒸気濃度の上限を決定する
  • 高い蒸気圧の溶剤(ジエチルエーテル・ペンタン・アセトン等)は同じ使用量でも空気中に高濃度の蒸気を発生→曝露リスクが高い
  • 気化した蒸気の空気中濃度の計算式: C(ppm) = (蒸気圧/大気圧) × 10⁶

【試験での位置づけ】

有害物形態問題の最頻出は「ヒュームの定義(高温気化→冷却固化した超微細粒子・溶接ヒューム等)」「ミストの定義(液体の微小液滴)」「ダストの定義(機械的破砕・摩耗による粒子)」「蒸気圧と揮発性の正の関係」「経皮吸収が一部の有機溶剤で重要(無視できない)」の5点です。アのような「ヒューム=機械的破砕」という誤りは「ダスト」の定義をヒュームに当てはめた典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ヒュームの典型例として溶接ヒューム・亜鉛ヒューム(溶融亜鉛めっき)・鉛ヒューム等があります。粒径が非常に小さい(0.01〜1μm)ため、通常の防じんマスクのフィルターを通過する可能性もあり、高性能フィルター(DS3・RS3等)や電動ファン付き保護具が推奨される場合があります。
  • イ: ミストとガス・蒸気の区別は保護具の選択に直結します。切削油ミストには防じんマスク(粒子捕集)、有機溶剤蒸気には防毒マスク(吸収缶)が必要です。切削油ミスト+蒸気の混在場合は防毒防じん兼用マスクが必要。
  • ウ: 経皮吸収の実用的な重要性を示す事例: ① アニリン(染料製造)→経皮吸収によるメトヘモグロビン血症(酸素運搬障害)。② 有機リン農薬(農業従事者)→経皮・吸入両経路でのコリンエステラーゼ阻害→農薬中毒。③ 溶剤(ジメチルホルムアミド)→肝毒性の主要経路が経皮の場合。手袋等の皮膚保護具の重要性が理解されます。
  • エ: 蒸気圧の温度依存性(クラウジウス-クラペイロン式): 温度が上昇すると蒸気圧は指数関数的に増加します。夏場・高温作業環境では同じ有機溶剤でも作業環境濃度が冬場に比べて著しく上昇します。これが「夏季の作業環境測定が重要」な理由の一つです。
  • オ: 金属水銀の職業曝露の歴史: 感圧計・体温計・蛍光灯の製造・歯科アマルガム填塞作業等。近年は代替材料への転換が進んでいますが、廃蛍光灯の処理・旧設備の解体等での曝露が続く可能性があります。神経毒性(振戦・感覚異常・記憶障害)は「水俣病」の原因(メチル水銀:有機水銀)とは異なる経路・毒性ですが、金属水銀蒸気の吸入も慢性的に神経毒性を引き起こします。

【根拠】医学的事実(確立した物理化学・職業医学)。ヒューム・ミスト・ダストの定義は工業衛生学の確立した概念。蒸気圧と揮発性の関係は物理化学の基本原則。経皮吸収が無視できない有機溶剤の存在は職業医学の確立した知識。

【補足】ヒューム=高温気化→冷却固化した超微細粒子(機械的破砕はダスト)。蒸気圧が高い=揮発しやすい。経皮吸収はすべての有機溶剤で無視できるわけではない(二硫化炭素・有機リン等は重要)。金属水銀は蒸気圧があり吸入リスクがある。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した物理化学・職業医学)。蒸気圧と揮発性の関係・有害物形態の定義・経皮吸収は職業医学の確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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有害化学物質の分類と性状

科目別に解いて、衛生管理者に合格

関係法令・労働衛生・労働生理を260問。第一種・第二種対応。各問に根拠法令とAI解説(3レベル)付き。