衛生管理者 関係法令(有害業務) 問2:有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則(有機則)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有機溶剤は、第1種・第2種・第3種に区分されており、第1種有機溶剤(例: 二硫化炭素・四塩化炭素等)の容器には赤色で「有機溶剤」等の表示が義務付けられている。
- イ有機溶剤作業主任者の選任が必要なのは、屋内作業場で有機溶剤を使用するすべての作業(第1種・第2種・第3種問わず)である。
- ウ有機溶剤を使用する作業場における作業環境測定は、1年以内ごとに1回実施すれば足りる。
- エ有機溶剤業務に常時従事する労働者に対しては、雇入れ時・配置替え時および6か月以内ごとに1回、有機溶剤等健康診断を実施しなければならない。正答
- オタンク内・坑内等の屋内作業場に準ずる場所で第3種有機溶剤等を使用して行う作業は、有機則の規制が緩和されるため作業環境測定は免除される。
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正しいのはエです。有機溶剤業務に常時従事する労働者への有機溶剤等健康診断は雇入れ時・配置替え時・6か月以内ごとに1回が必要です(有機則第29条)。これは特化則の特殊健診と同様の頻度(6か月ごと)です。
各誤りの要点: ア→第1種有機溶剤の容器の色は赤色ではなく黄色(第2種=赤色・第3種=青色)。イ→第3種は屋内作業場での規制が一部異なり、作業主任者の選任義務は第1種・第2種が適用される作業場が原則(ただし適用除外の条件に注意)。ウ→作業環境測定は6か月以内ごとに1回(1年は誤り)。オ→タンク内等で第3種有機溶剤を使う場合でも規制の適用除外にはならない。
有機溶剤の区分と色別表示の整理:
| 区分 | 毒性の強さ | 容器の色 | 主な物質例 |
|---|---|---|---|
| 第1種 | 最も強い | 黄色 | 二硫化炭素・四塩化炭素・クロロホルム等 |
| 第2種 | 中程度 | 赤色 | アセトン・ベンゼン・トルエン・キシレン等(多数) |
| 第3種 | 比較的弱い | 青色 | ガソリン・軽油・石油ナフサ等 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 第1種有機溶剤の容器の色は「黄色」です(有機則第25条)。「赤色」は第2種の容器色です。色と区分の対応(黄・赤・青)は試験で繰り返し問われる暗記事項です。
- イ(誤): 作業主任者の選任が必要な作業の範囲は、有機則と安衛令を合わせて判断します。第3種有機溶剤のみを使用する作業は、一定の設備要件(タンク内・坑内等を除く)を満たす場合に規制が緩和される場合があります。「すべての作業(第1〜3種問わず)」という表現は正確ではありません。
- ウ(誤): 有機則の対象作業場における作業環境測定の実施頻度は「6か月以内ごとに1回」(有機則第28条)です。1年ごとでは不足です。
- エ(正): 有機則第29条の通り、有機溶剤業務に常時従事する労働者については、雇入れ時・配置替え時のほか、6か月以内ごとに1回の有機溶剤等健康診断を実施する義務があります。
- オ(誤): タンク内・坑内等の特定の場所で有機溶剤を使用する場合は、むしろより厳格な規制が適用されます(密閉空間では有機溶剤蒸気が高濃度に蓄積しやすいため)。作業環境測定の免除にはなりません。
【理論的背景】
有機溶剤は皮膚・粘膜への刺激性と揮発性(常温で蒸気を発生しやすい特性)により、吸入曝露による中枢神経抑制・肝障害・腎障害等の全身毒性を引き起こします。その種類は500種類以上に及び、工業的には洗浄剤・塗料溶剤・接着剤等として広く使用されています。
有機溶剤中毒の主要な毒性経路:
1. 吸入(最重要): 高い蒸気圧による蒸気の発生→肺胞からの吸収→血液を通じて中枢神経・臓器へ到達
2. 経皮吸収: 一部の有機溶剤は皮膚を透過して吸収される(ジメチルホルムアミド・二硫化炭素等)
3. 経口(実務上は稀)
第1種・第2種・第3種の区分基準: 許容濃度・毒性の強さ・主要な健康影響を総合的に評価した区分であり、第1種が最も厳格な規制に服します。二硫化炭素(第1種)は特に中枢神経・末梢神経・生殖毒性が強いことで知られています。
【実務・条文構造】
有機則の主要規制体系:
設備規制(有機則第4〜5条):
- 第1・2種有機溶剤使用の屋内作業場: 局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置のいずれかの設置が義務
- 第3種有機溶剤: 設備規制が一部緩和
作業主任者の選任(安衛令第6条・有機則第19条):
- 第1・2種有機溶剤業務(有機溶剤作業主任者技能講習修了者から選任)
- 第3種: タンク内・坑内等の特定の場所では選任義務あり・通常の屋内作業では義務が緩和される場合あり
容器の色別表示(有機則第25条):
- 第1種: 黄色 / 第2種: 赤色 / 第3種: 青色
(記憶法: 危険度高い=警戒色黄色・次が赤・最も低いが青)
作業環境測定(有機則第28条):
- 実施頻度: 6か月以内ごとに1回
- 記録保存: 3年間
有機溶剤等健康診断(有機則第29条):
- 対象: 有機溶剤業務に常時従事する労働者
- 実施時期: 雇入れ時・配置替え時・6か月以内ごとに1回
- 主な検査項目: 労働経歴調査・作業条件調査・自覚症状・他覚症状・尿中代謝物等
有機溶剤等健康診断の主要な生物学的モニタリング項目:
- 二硫化炭素: 尿中TTCA(2-チオチアゾリジン-4-カルボン酸)
- n-ヘキサン: 尿中2,5-ヘキサンジオン
- スチレン: 尿中マンデル酸
- トルエン: 尿中馬尿酸(ヒプル酸)
- キシレン: 尿中メチル馬尿酸
【試験での位置づけ】
有機則問題の最頻出は「容器の色別表示(黄=第1種・赤=第2種・青=第3種)」「特殊健診・作業環境測定の頻度(6か月ごと)」「作業主任者選任の対象区分」の3点です。アのような「第1種=赤色」という誤りは容器色の入れ替えという典型的な引っかけです。色の記憶は「1種は警戒色の黄色(最も危険)」と覚えると定着します。作業環境測定の頻度「6か月ごと」と定期健診「1年ごと」の混同も毎回登場します。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 容器の色別表示は作業者への警告として機能します。第1種(黄色)の物質を誤って第2種・第3種と同等の取扱いをすることを防ぐための視覚的区分です。実際の工場・作業場では色分けされたラベルと、SDSシート(安全データシート)の備え付けが義務付けられています。
- イ: 有機溶剤作業主任者は「特定有機溶剤混合物業務」(有機則が定義する業務)に従事する作業場で選任が必要です。適用除外(通達で定める一定の業務・設備要件を満たす場合)との区別は複雑であり、試験では「選任が必要/不要の典型例」として出題されます。
- ウ: 作業環境測定の6か月ごとという頻度は、有機溶剤の揮発性(季節・作業量によって濃度が変動しやすい)に対応するためです。夏季と冬季で気温・換気状況が異なり、環境中濃度が大きく変化することがあります。
- エ: 生物学的モニタリング(尿中代謝物測定)は、個人の実際の曝露量を評価する優れた指標であり、作業環境測定(空気中濃度)では評価できない経皮吸収や個人差を反映します。職業医・産業保健師による事後措置(曝露低減・保護具着用指導等)に活用されます。
- オ: タンク内作業(密閉空間での有機溶剤使用)は、換気が悪く高濃度の蒸気が蓄積しやすいため、一般の屋内作業場より規制が厳格になります。局所排気装置の設置・送気マスク着用・有機溶剤作業主任者の指揮等が求められます。
【根拠法令】有機溶剤中毒予防規則 第25条(容器の色別表示:第1種=黄色・第2種=赤色・第3種=青色)・第28条(作業環境測定6か月以内ごとに1回)・第29条(有機溶剤等健康診断:6か月以内ごとに1回)
【補足】第1種有機溶剤の容器は「黄色」(赤色は第2種)。健診・作業環境測定はどちらも6か月以内ごとに1回。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第29条(有機溶剤等健康診断)・第28条(作業環境測定)・第25条(容器の色別表示)・第6条・第14条(作業主任者)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。