衛生管理者 関係法令(有害業務) 問5:粉じん障害防止規則(粉じん則)
粉じん障害防止規則(粉じん則)および関連法令に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア粉じん則において「特定粉じん作業」とは、粉じん則に列挙された特定の作業(トンネル掘削・岩石研磨等)であり、特定粉じん作業には粉じん作業主任者の選任が義務付けられている。正答
- イ粉じん作業を行う事業者は、当該作業場に係る粉じんの濃度測定を原則として6か月以内ごとに1回実施しなければならない。
- ウじん肺は、一定の粉じん(遊離けい酸含有粉じん・石綿等)を長期間吸入することによって肺に生じる線維増殖性変化であり、現在のところ完治させる方法はなく、進行性の疾患とされている。
- エじん肺法において、じん肺健康診断の結果は「じん肺管理区分」に区分され、管理4の場合は療養を要するとされる。
- オ粉じん則において、特定粉じん発生源に設ける局所排気装置・プッシュプル型換気装置は、定期自主検査として1年以内ごとに1回実施し、記録を3年間保存しなければならない。
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誤りはアです。粉じん則において「特定粉じん作業」に対して粉じん作業主任者の選任義務はありません。粉じん則は作業環境管理・局所排気装置の設置・呼吸用保護具の着用等を義務付けていますが、作業主任者の選任を独自に義務付けてはいません。「特定粉じん作業に粉じん作業主任者の選任が義務付けられている」という記述が誤りです。
特化則(特定化学物質)や有機則(有機溶剤)では作業主任者の選任が義務付けられていますが、粉じん則では作業主任者制度はないことを押さえましょう。
その他のイ(6か月ごとの濃度測定)・ウ(じん肺の不可逆性・進行性)・エ(管理4=療養)・オ(定期自主検査・記録3年)はすべて正しい内容です。
粉じん則の主な規制と作業主任者制度の有無の整理:
| 法令 | 作業主任者の選任義務 | 備考 |
|---|---|---|
| 特化則(特定化学物質) | あり(第1類・第2類) | 特定化学物質作業主任者技能講習修了者 |
| 有機則(有機溶剤) | あり(第1・2種が中心) | 有機溶剤作業主任者技能講習修了者 |
| 酸欠則(酸欠・硫化水素) | あり(第1種・第2種) | 各種技能講習修了者 |
| 粉じん則(粉じん) | なし | 作業主任者制度の規定なし |
| 石綿則(石綿) | あり | 石綿作業主任者技能講習修了者 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 粉じん則は作業主任者の選任制度を持たない(安衛令第6条の列挙にも粉じん作業は含まれない)。「特定粉じん作業に作業主任者の選任が義務」は誤りです。
- イ(正): 粉じん則第26条の通り、特定粉じん発生源を有する屋内作業場は6か月以内ごとに1回、粉じん濃度の作業環境測定が必要です。
- ウ(正): じん肺は粉じん吸入による肺組織の線維化(線維増殖性変化)であり、現在の医療では線維化を元に戻す治療法はなく、進行性疾患とされています(じん肺法の定義に合致)。
- エ(正): じん肺管理区分はじん肺法第4条で定められており、管理1〜4に分類されます。管理4は「著しいじん肺の所見があって、合併症にかかっているもの」で療養が必要とされます。
- オ(正): 粉じん則第17条の通り、局所排気装置等の定期自主検査は1年以内ごとに1回実施し、記録は3年間保存します(特化則・有機則の定期自主検査と同じ頻度・保存期間)。
【理論的背景】
粉じんによる職業性肺疾患(じん肺・職業性喘息・過敏性肺臓炎等)は、日本の職業病の中で歴史的に最も多くの罹患者を出してきた疾患群です。石炭鉱夫・珪石採掘業・岩石研磨業・鋳物工場等での珪肺(珪肺症)・石綿使用業での石綿肺・中皮腫が特に深刻な問題でした。じん肺法(1960年制定)は、これらの職業性肺疾患を防止するための専門的な法律として制定されています。
なぜ粉じん則に作業主任者制度がないか: 粉じんによる健康影響(じん肺)は長期間の曝露蓄積によって生じるものであり、有害化学物質(急性毒性・皮膚腐食等の即時リスクが大きい)とは性質が異なります。粉じん対策は設備対策(局所排気装置・プッシュプル型換気装置・密閉化)と保護具管理(防じんマスク)が中心であり、個別の「作業指揮者」の選任よりも、作業環境管理・設備管理の徹底が効果的とされています。
【実務・条文構造】
粉じん則の主要規制体系:
粉じん発生作業の種類(粉じん則別表第1):
- 特定粉じん作業(より厳格な規制が適用): トンネル掘削・岩石の研磨・金属の溶接等
- 一般粉じん作業: 特定粉じん作業以外の粉じん発生作業
設備規制(粉じん則第4条〜第10条):
- 特定粉じん発生源への局所排気装置またはプッシュプル型換気装置の設置義務
- 全体換気装置の設置(局所排気等が困難な場合の代替措置)
保護具規制(粉じん則第27条〜第28条):
- 局所排気装置等を設けることが著しく困難な場合: 有効な呼吸用保護具(防じんマスク)を使用させることが義務
- 防じんマスクの選択: 粒子の大きさ・性状に応じたフィルター規格(DS2・RS2等)
作業環境測定(粉じん則第26条):
- 対象: 特定粉じん発生源を有する屋内作業場
- 頻度: 6か月以内ごとに1回
- 記録: 7年間保存(通常の3年ではなく7年という点に注意)
じん肺管理区分(じん肺法第4条):
- 管理1: じん肺の所見なし
- 管理2: エックス線写真の像が第1型で肺機能正常(要経過観察)
- 管理3: エックス線写真の像が第1型で肺機能に異常、または第2型・第3型(要定期健診・業務制限)
- 管理3イ: 定期健診3年以内ごと
- 管理3ロ: 定期健診1年以内ごと・業務転換等の措置
- 管理4: 著しいじん肺の所見+合併症あり(療養を要する)
じん肺合併症(じん肺法第2条):
- 結核・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がん(石綿肺の場合)
【試験での位置づけ】
粉じん則問題の最頻出は「粉じん則には作業主任者制度がない(特化則・有機則等とは異なる)」「作業環境測定の頻度(6か月ごと)」「じん肺管理区分(管理4=療養)」「じん肺の不可逆性・進行性」です。アのような「粉じん作業に作業主任者の選任義務がある」という誤りは、他の有害業務(特化則・有機則等)の作業主任者制度との混同から来る典型的な引っかけです。粉じん則の作業環境測定記録の保存期間が「7年」(通常の3年ではなく)という点も出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 粉じん則に作業主任者制度がない代わりに、「安全衛生責任者」「作業指揮者(特定元方事業者が定める)」等の安全管理の役割が果たされます。また大規模な建設工事でのトンネル掘削等では、元請事業者が総括安全衛生管理を行う仕組みがあります。
- イ: 粉じん濃度測定記録の保存期間は7年間(粉じん則第26条第4項)。これは一般的な作業環境測定記録(3年保存)とは異なります。石綿の記録が30年であるのとは別に、粉じんも特別に長い保存期間が設定されています。
- ウ: じん肺の進行は粉じん曝露を止めた後も継続することがあります(特に珪肺では「進行性珪肺症」として活動性の炎症が曝露停止後も続く)。これが「じん肺は完治しない」とされる理由であり、補償制度の根拠にもなっています。
- エ: じん肺管理区分の判定は、定期健診結果→都道府県労働局長による管理区分の決定(医師の意見を踏まえた行政決定)というプロセスをたどります。管理3〜4の労働者については就業上の措置(業務転換・療養等)が事業者に義務付けられます。
- オ: 定期自主検査の実施と記録保存は、設備の性能維持・労働者への安全な環境提供の担保として機能します。局所排気装置の定期自主検査では、制御風速・排気量・装置各部の状態を点検します。
【根拠法令】粉じん障害防止規則 第26条(作業環境測定の実施・6か月以内ごとに1回・記録7年保存)・第17条(定期自主検査)・第27条(保護具)、じん肺法 第4条(じん肺管理区分)、労働安全衛生法 第14条・安衛令第6条(作業主任者選任業務の列挙=粉じん作業は含まれない)
【補足】粉じん則は作業主任者制度なし(特化則・有機則・酸欠則等とは異なる)。じん肺管理区分4=療養を要する状態。作業環境測定記録は7年保存(通常の3年と異なる)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 粉じん障害防止規則(粉じん則)・労働安全衛生法(安衛法)第14条・安衛令第6条(作業主任者の選任義務業務の列挙)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。