関係法令(有害業務)59第一種石綿障害予防規則(石綿則)・建築物解体前調査・2022〜2023年改正

衛生管理者 関係法令(有害業務) 問59:石綿障害予防規則(石綿則)・建築物解体前調査・2022〜2023年改正

石綿障害予防規則(石綿則)が定める建築物等の解体・改修工事前の事前調査および行政への報告義務に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 建築物の解体・改修工事を行う場合、事業者は工事開始前に当該建築物が石綿等を使用しているかどうかについて、石綿の使用状況を書面(設計図書等)および目視により調査しなければならない。
  • 事前調査の結果、石綿等が使用されていないことが明らかな場合であっても、その旨を書面で記録し、当該記録を当該調査の終了後3年間保存しなければならない。
  • 建築物の解体工事を行う際、石綿含有建材を除去する等の石綿作業が生じる場合、事業者は工事開始前に都道府県労働局長(所轄労働基準監督署を経由する方法による)に工事計画を届け出なければならない。正答
  • 石綿则が定める事前調査を行う者には、一定の知識・能力が求められており、建築物石綿含有建材調査者(国家資格)が実施することが法令上求められる場合がある。
  • 事前調査の結果は作業場の見やすい箇所に掲示しなければならず、工事を行う全ての労働者が確認できる体制をとることが義務付けられている。
正答:建築物の解体工事を行う際、石綿含有建材を除去する等の石綿作業が生じる場合、事業者は工事開始前に都道府県労働局長(所轄労働基準監督署を経由する方法による)に工事計画を届け出なければならない。

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誤りはウです。石綿含有建材の除去を伴う解体工事の事前報告は、「都道府県労働局長への工事計画届出」ではありません。石綿則第4条の2(2022年4月1日施行の改正規定)により、一定規模以上の解体・改修工事については石綿の有無にかかわらず、所轄労働基準監督署長への事前調査結果の報告が義務付けられています(環境省が運営する「石綿事前調査結果報告システム」での電子報告が原則)。

他の選択肢は正しい内容です。書面・目視による事前調査、調査記録の3年保存、調査者の資格要件、掲示義務はいずれも石綿則が定める重要な義務です。

標準試験対策の基準レベル

石綿则の事前調査・報告義務(2022〜2023年改正後の体系):

| 義務 | 内容 | 根拠条文 | 施行時期 |

|---|---|---|---|

| 事前調査の実施義務 | 解体・改修工事前に書面+目視による調査 | 石綿則第3条第1項・第2項 | 目視義務化は2021年4月施行 |

| 調査者の資格要件 | 建築物石綿含有建材調査者(資格者が調査)| 石綿則第3条第6項 | 建築物は2023年10月施行 |

| 調査結果の記録・保存 | 調査結果を記録し3年間保存 | 石綿則第3条第7項 | 強化 |

| 調査結果の電子報告 | 一定規模工事は石綿事前調査報告システムで報告 | 石綿則第4条の2 | 2022年4月1日施行 |

| 作業場への掲示義務 | 調査結果を作業場の見やすい箇所に掲示 | 石綿則第3条第8項 | 既存規定 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 石綿則第3条第1項・第2項が定める書面(設計図書・竣工図等)および目視による事前調査義務です。
  • イ(正): 石綿等が「使用されていない」という調査結果も含め、調査の記録を3年間保存する義務があります(石綿則第3条第7項)。
  • ウ(誤): 石綿含有建材の除去工事は「都道府県労働局長への工事計画届出」ではなく、所轄労働基準監督署長への「事前調査結果の報告」(石綿則第4条の2・石綿事前調査結果報告システムでの電子報告)が義務です。届出先・手続き名の誤りが引っかけポイントです。
  • エ(正): 2023年10月施行の改正により、建築物の解体・改修工事の事前調査(分析調査を除く)に「建築物石綿含有建材調査者(厚生労働大臣が定める者)」が関与することが義務化されました。
  • オ(正): 調査結果の掲示義務により、工事に従事するすべての労働者が石綿の使用状況を把握できる体制が求められています(石綿則第3条第8項)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

石綿は1975年まで日本の建設業で広く使用され、耐火被覆材・断熱材・屋根材・天井材・床タイル等に大量に使用されました。現在(2026年)では、1975年以前に建設された建築物を中心に、大量の石綿含有建材が解体・改修工事の現場で顕在化しています。

建築物の解体工事が今後増加する背景:

  • 高度成長期(1950〜70年代)に大量建設された建築物が築50〜70年を迎え、解体・改修の需要が急増
  • 2030年代にかけて大量の石綿含有建材が解体工事で顕在化すると予測
  • 解体工事を行う作業者・周辺住民への石綿曝露リスクが高まる

事前調査義務強化の政策的背景:

  • 従来は設計図書等の確認のみで「石綿なし」と判断するケースがあり、実際には石綿が使用されていた事例が多数発生
  • 書面確認だけでなく「目視確認」も義務化(2021年4月施行)
  • さらに資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査を義務化(2023年10月施行)

【実務・条文構造】

石綿则の事前調査・報告義務の詳細(2023年施行後の現行制度):

(1)事前調査の方法(石綿則第3条第1項・第2項):

  • 書面調査: 設計図書・竣工図・石綿使用に関する届出書類等
  • 目視調査: 建材の実地確認(書面だけでは確認できない吹き付け材・隠蔽部の確認)
  • 分析調査(必要な場合): 試料採取と専門機関による分析
  • 書面・目視で石綿の有無が確認できない場合は「石綿が含まれているものとみなして」措置を講じる

(2)調査者の資格(石綿則第3条第6項・建築物は2023年10月施行):

  • 建築物の解体・改修工事の事前調査(分析調査を除く)を行う者は「建築物石綿含有建材調査者」(厚生労働大臣が定める者・所定の講習を修了した者等)でなければならない
  • 「建築物石綿含有建材調査者」は一般・一戸建て等・特定の3種別がある
  • 工作物の事前調査者要件は2026年1月施行予定(令和5年改正省令)

(3)事前調査結果の報告(石綿則第4条の2・2022年4月1日施行):

  • 対象工事: ①建築物の解体工事で床面積の合計80㎡以上、②建築物の改修工事・特定の工作物の解体改修で請負代金100万円以上、③船舶(総トン数20トン以上)の解体改修。石綿の有無にかかわらず報告対象
  • 報告先: 所轄労働基準監督署長(安衛法のルート)。大気汚染防止法ルート(都道府県知事等)への報告も同システムで一括可能
  • 報告方法: 環境省・厚生労働省が運営する「石綿事前調査結果報告システム(電子申請)」での電子報告が原則
  • 報告時期: 工事開始前

大気汚染防止法との連携(特定粉じん排出等作業の届出):

  • 大気汚染防止法第18条の17による特定建築材料を含む建築物等の解体等作業の届出
  • 届出先: 都道府県知事(または政令市長等)
  • この届出と石綿則の報告は別の法体系(労働安全衛生・環境保全の二軸)だが、石綿事前調査結果報告システムで両者を一括電子報告できる

【試験での位置づけ】

2021〜2023年の石綿則改正は、第一種衛生管理者試験において近年の頻出改正事項です。「事前調査の義務化・強化(書面+目視・2021年4月)」「事前調査結果の報告義務(第4条の2・2022年4月施行)」「呼吸用保護具のフィットテスト(要求防護係数を満たす保護具の選択・2023年4月施行)」「調査者の資格要件(建築物石綿含有建材調査者・建築物は2023年10月施行)」が改正のポイントです。特に「都道府県労働局長への届出(誤)」vs「所轄労働基準監督署長・石綿報告システムへの報告(正)」という届出先の混同問題は試験での典型的な引っかけです。

【発展:石綿対策の国際的動向との接続】

日本は2006年に石綿の製造・使用・輸入を全面禁止しましたが、既存建築物に含まれる石綿の除去は今後数十年にわたって続く課題です。ILO(国際労働機関)は2006年の石綿使用撤廃条約(第162号条約)を通じて、石綿含有建材の除去作業における作業者保護の国際基準を定めています。日本の石綿则の強化(資格者による事前調査・フィット試験義務化等)はこの国際潮流に沿った対応です。衛生管理者は事前調査制度の意義(解体作業者・周辺住民双方の保護)を理解した上で、職場における石綿管理の実務を担う役割を担います。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 書面調査と目視調査の両方が義務化された背景は、「設計図書には記載がないが実際には吹き付け石綿が存在する」ケースが多発したことにあります。1970〜80年代の改修工事等で設計図書が更新されずに石綿が追加使用されたケース、または設計図書が紛失・消滅しているケースへの対応です。
  • イ: 「石綿なしの調査結果」も3年保存が必要な理由は、将来の工事・取壊し時に「当時、適切な調査を行った」という証拠を残すためです。また、後に石綿が発見された場合の原因究明にも役立ちます。
  • エ: 「建築物石綿含有建材調査者」の資格制度は、石綿調査の専門性を担保するための制度です。石綿含有建材は種類が多く(吹き付け材・成形板・保温材等)、目視だけでは判断が難しいケースも多いため、専門知識を持つ資格者による調査が重要です。
  • オ: 掲示義務は「工事に従事する全ての労働者(元請・下請・孫請を含む)」に石綿の存在を周知するためのものです。下請け作業者が「石綿があることを知らずに」除去作業を行うことを防ぎます。

【根拠法令】石綿障害予防規則第3条(事前調査の義務:書面+目視・第6項=調査者の資格要件・第7項=調査記録の3年保存・第8項=作業場への掲示義務)・第4条の2(事前調査結果の報告義務・2022年4月1日施行)

【補足】石綿事前調査は「書面+目視」両方が義務(書面のみ不可)。調査結果は3年保存。事前調査結果の報告義務は第4条の2(2022年4月施行)・報告先は所轄労働基準監督署長(石綿事前調査結果報告システムで電子報告)。資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査義務は建築物が2023年10月施行。報告先・届出先の混同(労働局長か労基署長か都道府県知事か)に注意。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 石綿障害予防規則第3条(事前調査の義務)・第4条の2(調査結果の報告:所轄労働基準監督署長への報告・2022年4月1日施行)・第8条(作業計画の策定)、大気汚染防止法改正との関係(特定建築材料の届出は都道府県等への届出)。労働基準監督署長への報告義務は石綿則第4条の2であり「都道府県労働局長への工事計画届出」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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