社労士 労働保険料徴収法 問4:労働保険料徴収法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律における有期事業の一括(一括有期事業)および継続事業の一括に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア一括有期事業とは、事業主が同一人であり、かつそれぞれの事業が独立した有期事業(建設の事業・立木の伐採の事業)である複数の小規模な事業を、一つの保険関係として一括して扱う制度であり、保険料の申告・納付が年度更新方式によって行われる。
- イ建設業における一括有期事業として取り扱われる要件の一つとして、1つの工事の請負金額が一定額(令和6年度以降1億8,000万円)未満であることが規定されている。
- ウ一括有期事業では、各工事の開始のたびに個別に保険関係成立届を提出する必要はなく、一括有期事業開始届を当初1回提出することで、以後その事業主が行う同種の有期事業をまとめて管理することができる。
- エ継続事業の一括は、同一の事業主が複数の継続事業(工場・支店・営業所等)を有する場合に、本社・主たる事業所を「指定事業」とし、他の事業所(被一括事業)の保険関係を指定事業に吸収して一括管理する制度である。
- オ継続事業の一括が認められると、被一括事業の労働者数・賃金総額も指定事業に合算され、指定事業の保険料率(業種)がすべての労働者に一律に適用される。正答
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正答はオ(誤っている記述)です。
継続事業の一括では、指定事業(本社等)に被一括事業の賃金総額が合算されますが、業種ごとの保険料率は各事業場の業種に応じた料率が適用されます。指定事業の業種料率が一律に適用されるわけではありません(特に労災保険料率は業種別であるため、異業種の事業場をまとめる場合は業種別に計算が必要です)。
アは正しく、一括有期事業の定義と年度更新方式の適用は条文通りです。イは正しく、建設業の一括有期事業の請負金額要件は概算保険料額160万円未満かつ請負金額(消費税抜き)1億8,000万円未満(徴収法施行規則第6条・監修確定)。ウは正しく、平成31年(2019年)4月以降、一括有期事業開始届の提出は不要になっています(個別の保険関係成立届も不要)。エは正しく、継続事業の一括の仕組みは条文通りです。
有期事業の2類型と保険料申告の仕組み:
【有期事業の種類】:
| 種類 | 定義 | 保険料申告方法 |
|---|---|---|
| 単独有期事業 | 大規模(請負金額1億8,000万円以上等)の建設工事・立木伐採事業 | 工事ごとに個別に保険関係成立→概算・確定申告 |
| 一括有期事業 | 小規模(請負金額1億8,000万円未満等)の多数の有期事業をまとめる | 年度更新方式(6月1日〜7月10日)で一括申告 |
一括有期事業の適用要件(建設業・徴収法施行規則第10条):
以下の全てを満たす工事が一括の対象:
1. 事業主が同一人であること
2. それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業であること
3. 1工事の請負金額が1億8,000万円未満(令和6年度以降)
4. 1工事の素材生産量が1,000立方メートル未満(立木伐採の場合)
5. 各工事が全国の同一都道府県の区域内でない場合でも一括可(全国一括)
継続事業の一括(第7条)の仕組み:
```
A株式会社
├── 本社(東京・製造業) ←── 指定事業(一括の中心)
├── 大阪工場(製造業) ─── 被一括事業
└── 福岡営業所(卸売業) ─── 被一括事業
↓
指定事業(本社)が代表して申告・納付
ただし業種別料率は各事業の業種ごとに計算(オが誤りである根拠)
```
各選択肢の解説:
- ア(正): 一括有期事業の定義・年度更新方式は法第9条の通り。
- イ(正): 建設業の一括有期事業の要件は徴収法施行規則第6条で「概算保険料額160万円未満かつ請負金額(消費税抜き)1億8,000万円未満」と規定(監修確定)。
- ウ(正): 個別の保険関係成立届不要・一括開始届一回でOKは法第9条の通り。
- エ(正): 継続事業の一括・指定事業・被一括事業の構造は法第7条の通り。
- オ(誤・正答): 業種別料率は各事業の業種に応じて計算。指定事業の料率が一律適用されるのは誤り。
【一括有期事業の制度的意義:建設業の特殊性】
建設業・立木伐採業は「プロジェクト型」の業態であり、一つの工事(プロジェクト)が完了するたびに保険関係が成立・消滅を繰り返します。大規模工事(単独有期事業)ではプロジェクトごとの個別管理が可能ですが、中小建設業者が年間に数十〜数百の小規模工事を行う場合、工事ごとに保険関係成立届・概算保険料申告・確定保険料申告を繰り返すことは実務上不可能です。
一括有期事業の「前払制度」:
一括有期事業では、工事の請負契約締結時に工事台帳(現場台帳)を整備し、工事の開始・完了・請負金額を記録します。この台帳が年度更新時の保険料算定の基礎となります。
工事ごとの賃金総額の算定(実際の賃金を追うのは困難な場合が多い)には、「労務費率」(請負金額に占める労務費の割合。建設業の業種ごとに厚労省が定める)を用いた推計計算が認められています:
```
賃金総額(推計)= 請負金額 × 労務費率
```
この推計方式は特に中小建設業者の実務負担を大幅に軽減するものです。
【建設業特例(元請事業主の責任)と一括有期事業】
建設業では、工事現場で複数の下請業者が同一の元請業者の管理下で作業を行います。この場合の労災保険の適用関係は:
元請主義の原則(徴収法第8条):
- 建設業の一括有期事業では、元請事業主が下請労働者を含むすべての労働者について労災保険料を納付する義務を負う
- 下請業者の従業員(第2次下請・第3次下請も含む)も、元請の労災保険によって保護される
重要な例外:
- 元請規模の要件(年間の下請発注額・工事規模)が大きい場合は、下請業者が独自に保険関係を設定することが求められる場合もある
- 建設業の特別加入(一人親方の特別加入)は元請の労災保険とは別に一人親方自身が加入する
【継続事業の一括における「業種別料率の維持」の理由(オの誤り根拠)】
継続事業の一括で指定事業に吸収された被一括事業(支社・工場等)は、その業種に応じた労災保険料率が維持されます。これはなぜか:
1. 労災保険料率は業種の危険度を反映するもの → 製造業(危険度高)の工場と不動産業(危険度低)の営業所に同一料率を適用すると保険財政の公平性が失われる
2. 事業所ごとの労働者の業務実態が異なる → 同一事業主でも事業所の業種が違えば、労働者の被災リスクも異なる
したがって継続事業の一括では、各事業所(被一括事業)の業種に応じた労災保険料率を個別に計算し、賃金総額を合算して一括申告するという形になります。
実務例:
```
A社(本社:卸売業 保険料率2.5/1000)
├── 本社(賃金総額500万円):500万×2.5/1000=12,500円
└── 製造工場(業種の料率例として10/1000):賃金総額200万円×10/1000=20,000円
合計労災保険料:32,500円
```
一括事業の一括申告では、これを一枚の申告書に合算して提出します(事業所別内訳は別途管理)。
【継続事業の一括の認可要件と社労士の手続き支援】
継続事業の一括は自動的には行われず、厚生労働大臣(都道府県労働局長)への申請・認可が必要です(法第7条第1項)。
認可要件(主なもの):
1. 事業主が同一人であること
2. それぞれの事業が継続事業であること
3. 労災保険料率が同一業種(または特定の関係にある業種)であること(労災保険率の一括条件)
4. 雇用保険については、事業主の種類が同一であること
社労士の実務サポート:
1. 一括認可申請の書類作成(継続事業一括申請書)
2. 各事業所の業種確認と労災保険料率の選定
3. 年度更新時の事業所別賃金台帳の整備支援
4. 被一括事業の追加・廃止時の変更届提出
大企業では多数の事業所を一括管理するため、年度更新時の保険料計算が複雑になります。社労士は正確な業種分類と料率計算によって、顧問先の適正な保険料負担管理を支援します。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働保険の保険料の徴収等に関する法律第7条(継続事業の一括)・第8条(請負事業の一括)・第9条(一括有期事業)、徴収法施行規則第6条(一括有期事業の要件・概算保険料160万円未満かつ請負金額1億8,000万円未満) <!-- 監修確定 2026-06-07 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。