登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問35:医薬品に共通する特性と基本的な知識(小児・高齢者への配慮)
小児および高齢者における医薬品の代謝・排泄に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア小児は肝臓における薬物代謝酵素の活性が成人より低い場合があり、同一用量では血中濃度が成人より高くなりやすい。
- イ高齢者は腎機能が低下していることが多く、腎排泄型の医薬品は体内に蓄積して副作用が出やすくなる。
- ウ小児は体重あたりの体表面積が成人より大きいため、経皮吸収される薬物の体重あたりの暴露量が成人より多くなりやすい。
- エ高齢者では肝血流量の低下により初回通過効果が増強されるため、内服薬の有効成分が体内循環に到達しにくくなる。正答
- オ新生児・乳児は血液脳関門(BBB)の機能が未熟であるため、成人では中枢神経への影響が少ない成分でも、中枢神経へ移行して影響を与えやすい。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正答はエです。
高齢者では肝血流量が低下します。しかし、初回通過効果は「低下」(弱まる)のが正しく、「増強」は誤りです。初回通過効果とは、内服薬が消化管から吸収された後、肝臓を通る際に代謝・分解されることです。肝血流量が減ると肝臓での代謝が減り、初回通過効果が弱まります。その結果、有効成分がより多く全身循環に入ってくるため、血中濃度が上昇しやすくなります。高齢者は初回通過効果の「低下」に注意が必要です(増強ではない)。
他の選択肢はすべて正しい記述です。小児・高齢者はそれぞれ異なる理由で医薬品の影響を受けやすいことを理解しましょう。
小児・高齢者の代謝排泄能の比較:
| 項目 | 小児 | 高齢者 |
|---|---|---|
| 肝代謝酵素活性 | 低い(特に新生児・乳児) | 低下している(加齢) |
| 腎機能 | 未発達(新生児)→発達とともに上昇 | 低下(腎クリアランス減少) |
| 初回通過効果 | 低い(肝機能未成熟) | 低下(肝血流量減少→初回通過が弱まる) |
| BBB成熟度 | 未熟(特に新生児・乳児) | ほぼ成人と同等だが加齢変化あり |
| 体重あたり体表面積 | 大(→外用薬の相対的吸収量増加) | 減少はしないが皮膚バリア機能低下 |
エが誤りの理由(詳細):
初回通過効果(first-pass effect)は、経口投与された薬物が消化管から吸収 → 門脈 → 肝臓を通過する際に代謝・不活化される現象です。
高齢者では加齢による心拍出量の低下 → 肝血流量が減少します。肝血流量が減ると、肝臓に届く薬物の量が減り、代謝される機会も減ります(初回通過効果の低下・減弱)。その結果、より多くの未代謝の有効成分が体循環に入り、血中濃度が予想より高くなりやすいという問題が生じます。「初回通過効果が増強→有効成分が届きにくい」は逆の方向の誤りです。
各選択肢の解説:
- ア(正): 小児の代謝酵素活性(特にCYP系)は成人より低い場合がある。体重換算で同じ用量でも血中濃度が高くなる可能性。
- イ(正): 高齢者の腎機能低下 → 腎排泄型薬物の蓄積 → 副作用リスク上昇は正しい。
- ウ(正): 小児は体重あたりの体表面積が大きい → 外用薬の相対的な経皮吸収量が増える。
- エ(誤・正答): 初回通過効果は高齢者で「低下」(弱まる)。増強は誤り。
- オ(正): 新生児・乳児のBBBは未熟 → 中枢移行性が高い → 成人では問題ない成分でも中枢副作用のリスクがある。
【薬物動態から見た小児・高齢者の脆弱性:ADMEの各段階での差異】
小児と高齢者では、薬物動態(ADME:吸収・分布・代謝・排泄)のすべての段階で成人中壮年と異なる生理的特性があります。
吸収(Absorption):
- 小児: 胃酸分泌量が少ない(特に新生児は胃内pHが高い)→ 酸不安定な薬物の吸収率が成人より高い場合がある。消化管の運動速度の違いが吸収速度に影響する。
- 高齢者: 胃酸分泌が低下している場合がある(萎縮性胃炎等)。消化管運動の低下により一部の薬物の吸収速度が低下するが、吸収率自体への影響は薬物によって異なる。
分布(Distribution):
- 小児: 体水分量の割合が成人より大きい(新生児で約75%、成人で約60%)→ 水溶性薬物の分布容積が大きく血中濃度が低くなる傾向。逆に脂肪量が少ないため脂溶性薬物の分布容積は小さい。
- 高齢者: 除脂肪体重の減少・体脂肪率の増加 → 水溶性薬物の分布容積が減少(血中濃度上昇傾向)・脂溶性薬物の蓄積量が増加(半減期延長傾向)。血清アルブミン低下 → タンパク結合型薬物の遊離型が増え、薬効・毒性が増強する可能性。
代謝(Metabolism):
- 小児のCYP酵素の発達:
- CYP3A7: 胎児期・新生児期に最も活性が高く、成長とともに低下
- CYP3A4: 生後6ヶ月から成人レベルに近づく
- CYP2D6: 生後数ヶ月で活性が出始め、小児期に高い活性を示すものがある
- CYP2C19: 新生児期に低く、乳幼児期に成人を超える活性を示すこともある
つまり「小児は代謝能が低い」と一律に言えない場合があり、成分・酵素ごとに状況が異なります。登録販売者試験レベルでは「小児は肝機能が未成熟で代謝能が成人より低い場合が多い」という理解が基本です。
- 高齢者: 肝細胞量・肝血流量の低下 → CYP活性の低下 → 代謝速度の低下 → 初回通過効果の低下(エの選択肢の根拠)。フェーズII反応(グルクロン酸抱合等)も低下する場合があり、活性代謝物の蓄積が問題になることがある。
排泄(Excretion):
- 小児: 腎機能は在胎週数・日齢に大きく依存。新生児の糸球体濾過率(GFR)は成人の約20〜40%で、生後1〜2年で成人レベルに達する。腎排泄型薬物は新生児では半減期が著しく延長する。
- 高齢者: 腎機能(糸球体濾過量・腎血流量)は加齢とともに低下する傾向があり、腎排泄型薬物(アミノグリコシド系抗菌薬・ジゴキシン・メトホルミン等)は蓄積・中毒リスクが高い。OTC医薬品では腎機能低下者への注意喚起が「相談すること」に記載されている成分がある。なお、登録販売者試験では「高齢者は腎機能が低下し医薬品の排泄が遅れて作用が強く現れやすい」という定性的な理解が問われ、低下速度の具体的数値(mL/min)は問われない。
BBBの成熟と小児中枢への影響:
BBBはアストロサイトの足突起・密着結合(タイトジャンクション)・ペリサイトによって形成されます。新生児・乳児ではタイトジャンクションが未完成で、本来BBBを通過しない物質でも中枢神経系へ移行することがあります。クロルプロマジン・モルヒネ・ビリルビン(核黄疸の原因)が代表例です。OTC医薬品の文脈では、第1世代抗ヒスタミン薬の乳児・新生児への使用が原則禁忌とされているのはこの理由です。
登録販売者としての実践:
販売現場では「この薬は何歳のお子さんに使いますか?」「お年寄りが飲まれますか?」という確認が、薬物動態上の脆弱性を踏まえた重要な一歩です。小児用量の計算(体重換算・年齢別用量)と「何歳未満は使えない」という年齢制限の把握は、添付文書を正確に読み解くうえでの基礎知識です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 設問・正答エ(高齢者で初回通過効果が「増強」は誤り。正しくは肝血流量低下で初回通過効果が低下し血中濃度が上昇しやすい)は機序・一意性ともOK。手引き範囲外の精密数値(GFRが10年で6〜8mL/min低下)は断定を避け、手引きの定性表現「高齢者は腎機能低下で排泄が遅れ作用が強く出やすい」に寄せて修正。新生児GFR約20〜40%等のADME記述はadvanced知識として許容範囲で維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第2節「医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。