登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問139:主な医薬品とその作用(成分群の横断・配合目的)
ステロイド性抗炎症成分を含む一般用医薬品の使用上の注意に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アステロイド性抗炎症成分はプロスタグランジンの産生を直接阻害することで抗炎症作用を示すため、内服薬と外用薬のいずれにおいても長期連用による副作用の心配はない。
- イヒドロコルチゾン酢酸エステルなどの外用ステロイド成分を患部に長期連用した場合、皮膚の萎縮や毛細血管拡張が生じることがあり、感染症(細菌・真菌・ウイルス)を悪化させる恐れがある。正答
- ウステロイド性抗炎症成分を含む一般用医薬品は、水痘(水ぼうそう)の症状を緩和するために積極的に使用することが推奨されている。
- エ外用ステロイド成分は創傷の治癒を促進する作用があるため、化膿している患部や傷口に対して積極的に使用してよい。
- オステロイド性抗炎症成分の抗炎症作用はすべてコルチゾンのコルチゾール換算強度(相対効力)によって規定されており、一般用医薬品では最強の効力を持つ成分のみが承認されている。
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正答はイです。
外用ステロイド成分を長期連用すると、以下の副作用が生じます。
- 皮膚の萎縮:コラーゲン産生が抑制され、皮膚が薄く弱くなる
- 毛細血管拡張(皮膚が赤くなる)
- 感染症の悪化:免疫を抑制するため、細菌・真菌・ウイルス感染が悪化しやすい
水痘(水ぼうそう)は、ステロイドを使うと感染が広がる恐れがあるため使用禁忌です(ウが誤り)。化膿部位や傷口への使用も禁忌(エが誤り)です。一般用医薬品では弱〜中程度の効力の成分のみが使われます(オが誤り)。
ステロイド性抗炎症成分の作用と共通注意事項:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作用機序 | 副腎皮質ホルモン様作用。ホスホリパーゼA₂を抑制→アラキドン酸カスケード全体を抑制→プロスタグランジン・ロイコトリエンの産生を間接的に抑制 |
| 代表的な外用成分 | ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルなど |
| 長期連用の禁止 | 皮膚の萎縮・毛細血管拡張・感染悪化・色素沈着などのリスク |
| 使用禁忌部位 | 水痘・みずむし・たむし等(感染症患部)・化膿した傷口 |
| 顔面への慎重使用 | 眼周辺への接触を避ける(眼圧上昇リスク)。顔面への長期使用は皮膚萎縮が起きやすい |
各選択肢の解説:
- ア(誤): ステロイド性抗炎症成分の機序はホスホリパーゼA₂阻害による間接的なプロスタグランジン抑制であり、NSAIDsのCOX直接阻害とは異なります。また、外用薬でも長期連用による皮膚萎縮・感染悪化のリスクがあります。
- イ(正): 外用ステロイドの長期連用による皮膚萎縮・毛細血管拡張・感染悪化は手引きに明記された注意事項です。特に細菌・真菌・ウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)感染を持つ患部への使用は感染症を重篤化させる恐れがあります。
- ウ(誤): 水痘はウイルス感染症であり、外用ステロイドを使用すると免疫抑制によりウイルスの増殖・播種が促進されるため、使用は禁忌です。
- エ(誤): 外用ステロイドは炎症を抑制する一方、創傷治癒を遅らせます(線維芽細胞・コラーゲン産生の抑制)。化膿部位や傷口への使用は禁忌です。
- オ(誤): ステロイド性抗炎症成分の抗炎症作用は「コルチゾン換算強度のみで規定され、最強効力の成分のみが承認されている」という記述が誤りです。外用ステロイドの効力は strong・medium・weak の区分で説明され、一般用医薬品に用いられるのは medium(デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)・weak(プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン等)に相当する成分です。より強い効力の成分は医療用に限られ、一般用に「最強効力の成分のみ」が承認されているという事実はありません。
【ステロイド性抗炎症成分の薬理機序と横断的注意の理解】
作用機序の詳細:
ステロイド性抗炎症成分(副腎皮質ホルモン類縁体)は、細胞内のグルコルチコイド受容体(GR)に結合し、核内でDNAの転写を調節することで抗炎症タンパクの産生を促進・炎症性タンパクの産生を抑制します。
具体的には:
1. ホスホリパーゼA₂(PLA₂)阻害: リポコルチン(アネキシンA1)の産生を誘導し、PLA₂を抑制。これにより細胞膜リン脂質からのアラキドン酸の遊離が阻害されます。
2. アラキドン酸カスケードの全体抑制: COX経路(プロスタグランジン・トロンボキサン)とリポキシゲナーゼ経路(ロイコトリエン)の両方が抑制されます。この点でNSAIDs(COXのみ阻害)と異なります。
3. 炎症性サイトカインの転写抑制: IL-1β、IL-6、TNF-αなどの産生が抑制されます。
副作用の横断的整理:
| 副作用の種類 | 機序 | 登録販売者として確認すべき点 |
|---|---|---|
| 皮膚萎縮 | コラーゲン・エラスチン産生抑制(線維芽細胞への直接作用) | 長期連用(目安:市販品は1週間以上連続使用に要注意) |
| 毛細血管拡張 | 血管壁のコラーゲン減少による脆弱化 | 顔面・皮膚の薄い部位に特に出やすい |
| 感染症の悪化 | 白血球の遊走・食菌作用の抑制(免疫抑制効果の裏返し) | 水痘・細菌性化膿・皮膚真菌症(みずむし)への使用禁忌 |
| 色素沈着・脱色 | メラノサイト活性への影響 | 長期使用後に生じることがある |
| 眼圧上昇 | 房水産生増加または流出抑制(特に眼周囲への塗布) | 緑内障患者への顔面使用は慎重 |
| 創傷治癒遅延 | 線維芽細胞・血管新生の抑制 | 傷口・化膿部位への使用禁忌 |
一般用医薬品のステロイド強度区分:
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 手引き令和8年4月版に準拠。一般用外用ステロイドの強さは strong・medium・weak の区分で説明され、一般用医薬品に用いられるのは medium(デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)・weak(プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル)に相当する成分。"Very Strong/Strongest/クラスV"等の医療用5段階分類は手引き範囲外のため記述から削除し、手引き表現に統一。 -->
外用ステロイド成分の効力(抗炎症作用の強さ)は一般に strong(強い)・medium(普通)・weak(弱い)の区分で説明されます。一般用医薬品に用いられるのは medium(デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルなど)および weak(プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステルなど)に相当する成分であり、それより強い効力の成分は医療用に限られます。登録販売者が取り扱えるのは medium〜weak の製品であり、症状が改善しない場合や悪化する場合は受診を勧めることが重要です。
内服ステロイドとの比較(OTCとの関係):
一般用医薬品には内服のステロイド性抗炎症成分はほとんど含まれません(プレドニゾロン等は医療用)。一般用で問題になるのは主に外用ステロイドです。ただし、漢方成分ではない純ステロイド系の内服は一般用としてほぼ存在しないことも重要なポイントです。
登録販売者の実務判断フロー:
1. 購入者の患部を確認→感染症が疑われる(膿・ただれ・水疱)場合は販売前に医師への受診を勧める
2. 水痘・帯状疱疹が疑われる場合は販売禁忌(絶対禁忌)
3. 2週間を超えて使用しても改善しない場合は受診を勧める
4. 顔面・陰部・小児の使用は特に慎重に確認する
5. 他の医薬品(特に免疫抑制薬・抗真菌薬との相互作用)を確認する
NSAIDsとの機序比較(ch3_140と合わせて理解):
ステロイド系はPLA₂を阻害してアラキドン酸カスケード全体を遮断するのに対し、NSAIDsはCOX(シクロオキシゲナーゼ)を直接阻害してプロスタグランジン・トロンボキサンのみを抑制します。そのため、ステロイドはより広範な炎症抑制効果を持ちますが、副作用のリスクも広範です。一般用医薬品では両者は適用部位・症状によって使い分けられます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 外皮用薬・ステロイド性抗炎症成分の使用上の注意 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。