登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問140:主な医薬品とその作用(成分群の横断・配合目的)
非ステロイド性抗炎症成分(NSAIDs)を含む一般用医薬品の使用上の注意に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アイブプロフェンなどのNSAIDs内服薬は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンの産生を抑制することで解熱・鎮痛・抗炎症作用を示すが、同時に胃粘膜保護に働くプロスタグランジンも抑制するため胃腸障害を起こしやすい。
- イNSAIDs(アスピリン・イブプロフェン等)はアスピリン喘息(非アトピー型喘息)を誘発する場合があり、アスピリン喘息の既往がある人や喘息発作を起こしたことがある人は使用前に医師等に相談する必要がある。
- ウケトプロフェンを含む外用NSAIDsは光線過敏症を起こすことがあるため、使用中および使用後もしばらくは使用部位を遮光し、日光に当てないようにする必要がある。
- エNSAIDsの外用薬(ジクロフェナクナトリウム含有貼付剤など)は皮膚から吸収されて全身循環に入ることはないため、喘息持ちの人でも安全に使用できる。正答
- オNSAIDsはすべてCOX-1とCOX-2を阻害するため、選択的COX-2阻害薬(医療用セレコキシブ等)と比較して胃腸障害が出やすい傾向がある。
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正答(誤っているもの)はエです。
NSAIDsの外用薬(貼付剤・ゲル等)は皮膚から全身に吸収されます。そのため喘息を持つ人が使用するとアスピリン喘息と同様のリスクがあり、使用前に相談が必要です。
NSAIDs3大共通注意を覚えましょう。
1. 胃腸障害:胃粘膜保護のプロスタグランジンも抑制してしまう
2. 喘息誘発(アスピリン喘息):COX阻害→ロイコトリエン過剰→気管支収縮
3. 光線過敏症(外用ケトプロフェン等):使用部位を遮光
内服・外用どちらでも喘息持ちの人は要注意です(エが誤り)。
NSAIDs共通注意事項の横断整理:
| 副作用・注意 | 機序 | 該当する使用形態 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 胃腸障害(胃痛・胃潰瘍) | COX-1阻害→胃粘膜PG(PGE₂・PGI₂)産生低下→胃粘膜保護機能低下 | 内服薬が主体(外用でも全身吸収で同様のリスク) | 食後服用・制酸剤併用を検討。継続服用は要受診 |
| アスピリン喘息誘発 | COX阻害→アラキドン酸がロイコトリエン経路に転換→LTC₄/LTD₄増加→気管支収縮 | 内服・外用(全身吸収あり)ともに注意 | 喘息・気管支喘息の既往者は使用前相談必須 |
| 光線過敏症 | ケトプロフェン等の光分解産物がハプテン化→遅延型アレルギー | 外用(特に貼付剤・ゲル) | 使用中・使用後しばらく(最長4週間程度)遮光 |
| 妊婦後期禁忌 | PG産生抑制→動脈管早期閉鎖・胎児腎機能障害 | 内服薬 | 妊娠後期=出産予定日12週以内(おおむね妊娠28週以降)の使用は避ける(添付文書「してはいけないこと」) |
各選択肢の解説:
- ア(正しい): NSAIDs(COX阻害)による胃腸障害の記述は正確です。COX-1を阻害することで胃粘膜保護プロスタグランジンの産生が低下し、胃粘膜が傷害されやすくなります。
- イ(正しい): アスピリン喘息は成人喘息の約10〜20%に見られる非IgE依存性の過敏反応で、アスピリンのみならずすべてのNSAIDs(構造に関係なくCOX阻害作用を持つもの)で誘発されます。喘息の既往がある購入者には必ず確認が必要です。
- ウ(正しい): ケトプロフェン含有外用薬の光線過敏症は手引きに明記された重要注意事項です。使用部位の遮光を徹底し、万一発現した場合は使用を中止して受診を勧めます。
- エ(誤り): NSAIDs外用薬も皮膚から吸収されて血中に移行します。そのため、喘息を持つ人では外用であってもアスピリン喘息誘発のリスクがあります。「吸収されないため安全」という記述は誤りです。
- オ(正しい): 一般用医薬品のNSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害する非選択的阻害薬が主体であり、COX-1阻害による胃粘膜障害を生じやすい点は正しい記述です。
【NSAIDs共通注意の薬理機序と横断的理解】
COX阻害の機序とアスピリン喘息の成立:
アラキドン酸(細胞膜リン脂質由来)はCOX経路とリポキシゲナーゼ(LOX)経路の両方で代謝されます。
通常の状態:
- COX経路: プロスタグランジン(PGE₂, PGI₂)→胃粘膜保護、血小板凝集調節、発熱・疼痛伝達、気管支拡張(一部)
- LOX経路: ロイコトリエン(LTC₄, LTD₄)→気管支収縮(少量)
NSAIDs(COX阻害時):
- COX経路が阻害されてアラキドン酸がLOX経路に転換される
- LTC₄/LTD₄が過剰産生→強力な気管支収縮→喘息発作
- この機序は構造に依存しないため、化学的に異なる全NSAIDsに共通して起こりえます
アスピリン喘息は「NSAIDs過敏症」または「アスピリン不耐性喘息」とも呼ばれ、アトピー型喘息とは異なりIgEを介しないため、アレルギー検査では事前検出が困難です。一般用医薬品の販売現場では「喘息の既往があるか」を必ず確認することが重要です。
胃腸障害の機序詳細:
| COXアイソザイム | 役割 | NSAIDs阻害の影響 |
|---|---|---|
| COX-1(構成型) | 胃粘膜PG産生・血小板TXA₂産生・腎機能維持 | 胃粘膜保護低下・出血傾向(血小板凝集抑制)・腎機能障害 |
| COX-2(誘導型) | 炎症部位でのPG・PGE₂産生 | 抗炎症・解熱鎮痛(治療目標) |
一般的なOTC NSAIDsはCOX-1とCOX-2を非選択的に阻害するため、治療効果(COX-2阻害)とともに胃腸障害(COX-1阻害)が生じます。特に空腹時服用・高用量・長期使用で胃潰瘍・胃出血のリスクが増大します。
外用NSAIDsの経皮吸収と全身移行:
外用NSAIDsは皮膚の脂質二重層を通過して真皮・皮下組織に到達し、局所の炎症を抑制します。同時に毛細血管から吸収されて全身循環に入るため、以下の全身性副作用が理論上存在します:
- アスピリン喘息誘発(特にケトプロフェン、ジクロフェナク等)
- 腎機能への影響(重度腎障害者では注意)
- 出血傾向(抗凝固薬との相互作用)
実際の全身移行量は内服薬より少ないため副作用発現頻度は低いものの、「外用なら安全」とは言えません。喘息患者への外用NSAIDs販売では使用前の相談を必ず勧めます。
ケトプロフェンの光線過敏症の機序:
ケトプロフェンはUV-A(波長320〜400nm)を吸収して光化学反応を起こし、反応性の光分解産物(ベンゾフェノン骨格を持つ化合物等)を生成します。これらが皮膚タンパクと結合してハプテン(抗原)を形成し、IV型(遅延型)アレルギー反応を引き起こします。
特徴として:
- 初回使用では起きないことが多い(感作期間が必要)
- 使用中止後も数週間は光感受性が残るため、その期間の遮光が必要
- 光線過敏症が生じた場合はケトプロフェン含有製品の再使用を避ける
妊婦後期禁忌の根拠:
妊娠後期(28週以降)のNSAIDs内服は:
1. 動脈管早期閉鎖: 胎児の肺循環への移行を助ける動脈管の開存にはPGE₂が必要。NSAIDsによるPG産生抑制で動脈管が早期閉鎖→肺高血圧→胎児に重大な影響
2. 胎児腎機能障害: 胎児の腎臓はPGに依存して血流を維持。PG抑制で腎血流低下→乏尿→羊水過少
妊婦後期の購入者に解熱鎮痛薬の相談があった場合は、NSAIDsを含む製品の販売を控え、必ず産科医への相談を勧めます。アセトアミノフェンは妊婦でも比較的使用しやすいとされますが、こちらも医師への確認を勧めることが無難です。
登録販売者の実務確認フロー(NSAIDs販売時):
1. 喘息・気管支喘息の既往があるか → あれば内服・外用ともに販売前に相談を勧める
2. 妊婦か・妊娠中の可能性があるか → 後期は特に禁忌
3. 空腹時の服用を避けるよう説明する(内服NSAIDs)
4. 外用ケトプロフェン使用者には遮光を徹底指導する
5. 1週間以上使用しても症状が改善しない場合は受診を勧める
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 解熱鎮痛薬・外皮用薬・NSAIDs系成分の使用上の注意 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。