登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問149:主な医薬品とその作用(成分群の横断・配合目的)
小児(15歳未満)への医薬品使用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アアスピリン(アセチルサリチル酸)は小児の解熱に広く使用される一般用医薬品であり、水痘やインフルエンザの発熱にも安全に使用できる。
- イコデインリン酸塩水和物を含む鎮咳去痰薬は、12歳未満の小児に対しては投与量を半量にして使用することが推奨されている。
- ウ小児(15歳未満)の発熱・痛みにはアセトアミノフェンが比較的安全に使用できるが、小児用量は成人の体重比に基づいて算出された量を守る必要がある。正答
- エ小柴胡湯は小児に積極的に使用できる安全な漢方薬として知られており、体力の強い小児の発熱・かぜにも問題なく使用できる。
- オ第1世代抗ヒスタミン成分(クロルフェニラミン等)は小児の鼻炎・アレルギー症状に使用できるが、「15歳未満使用不可」として全品に明記されている。
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正答はウです。
小児の解熱鎮痛にはアセトアミノフェンが比較的安全で、体重に基づいた小児用量を守ることが重要です(ウが正しい)。
小児で注意が必要な成分を覚えましょう。
| 成分 | 年齢制限 | 理由 |
|---|---|---|
| アスピリン | 15歳未満は使用しない(一般用) | ライ症候群(脳症・肝障害)リスク |
| イブプロフェン | 15歳未満は使用しない(一般用OTC全製剤) | 安全性未確立・ライ症候群様症状・腎機能障害リスク |
| コデイン | 12歳未満禁忌(令和元年=2019年7月の改訂指示で禁忌移行) | 呼吸抑制・死亡事例(CYP2D6超代謝者) |
| アセトアミノフェン | 小児用量を守れば使用可 | 比較的安全(用量管理が重要) |
| 第1世代抗ヒスタミン | 製品による(一般的には使用可) | 「全品禁忌」ではない(オが誤り) |
アはアスピリン15歳未満禁忌(誤り)。イはコデインは半量でなく「12歳未満禁忌」(誤り)。
小児への医薬品使用における成分別の注意事項横断整理:
| 成分 | 年齢制限 | 根拠・リスク | 代替薬 |
|---|---|---|---|
| アスピリン(アセチルサリチル酸) | 15歳未満は使用しない(一般用・解熱目的) | ライ症候群(非常に稀だが重篤な脳症・肝障害)のリスク。ウイルス感染(水痘・インフルエンザ)と関連 | アセトアミノフェン(小児用量) |
| イブプロフェン | 15歳未満は使用しない(一般用OTCのイブプロフェン配合製剤は全て15歳未満不可) | 小児への安全性が確立されていない・ライ症候群様症状や腎機能障害の懸念。水痘・インフルエンザ時は特に避ける | アセトアミノフェン |
| コデインリン酸塩 | 12歳未満禁忌(令和元年=2019年7月の改訂指示で使用制限から禁忌へ移行) | CYP2D6超代謝者(ウルトララピッドメタボライザー)では予測不能な高血中濃度→呼吸抑制・死亡 | デキストロメトルファン(小児用量管理) |
| デキストロメトルファン | 4歳未満禁忌(製品による) | 過量での神経毒性(幻覚・興奮等) | 4歳以上は小児用量で使用可 |
| アセトアミノフェン | 小児用量で使用可(生後3ヶ月以上) | 比較的安全だが過剰摂取(1日量超過)での肝毒性リスク | — |
| ロキソプロフェン | 15歳未満禁忌 | 安全性の確立が不十分 | アセトアミノフェン |
各選択肢の解説:
- ア(誤): アスピリンは15歳未満の小児には解熱目的での使用が禁忌です。水痘・インフルエンザのようなウイルス感染症にアスピリンを使用すると、ライ症候群(Reye's syndrome:脳症・肝障害を伴う重篤な疾患)のリスクがあります。「安全に使用できる」は誤りです。
- イ(誤): コデインリン酸塩は令和元年(2019年7月)の添付文書改訂指示により、それまでの使用制限から12歳未満への使用が禁忌へと移行しました(手引きにも反映)。「半量にして使用することが推奨」は誤りです。12歳未満では投与量を減らしても使用してはなりません。
- ウ(正): アセトアミノフェンは比較的安全に小児に使用できる解熱鎮痛成分です。ただし小児用量(体重あたりの用量)を遵守することが重要で、1回・1日の最大用量を超えないよう管理します。
- エ(誤): 小柴胡湯はインターフェロン製剤との組み合わせで間質性肺炎のリスクがあることが知られており、また肝炎・肝硬変の患者への使用にも注意が必要です。「積極的に使用できる安全な漢方薬」という記述は誤りです。
- オ(誤): 第1世代抗ヒスタミン成分(クロルフェニラミン等)は小児用の鼻炎薬・かぜ薬に配合されています。「15歳未満使用不可として全品に明記」は誤りです。ただし用量・用法の確認は必要です。
【小児への医薬品使用における薬理学的背景と実務の横断理解】
なぜ小児は成人と別の成分・用量管理が必要か(生理学的背景):
| 小児の生理的特性 | 薬理学的影響 |
|---|---|
| 肝臓の薬物代謝酵素(CYP)が未発達(特に新生児〜乳幼児) | 成人より代謝が遅く→血中濃度が高くなりやすい。または代謝が速すぎる(CYP2D6)ケースも |
| 腎機能の未発達(GFRが低い) | 腎排泄される薬物の蓄積リスク |
| 血液脳関門(BBB)が未成熟(乳幼児) | 中枢神経へ薬物が移行しやすい |
| 体重あたりの体表面積が大きい | 体温調節・水分バランスへの影響が大きい |
| 体内水分比率が高い(乳幼児) | 親水性薬物の分布容積が成人より大きい |
ライ症候群(Reye's syndrome)の機序:
ライ症候群は1963年に報告された疾患で、ウイルス感染(水痘・インフルエンザB型が最多)に罹患中の小児がアスピリン・サリチル酸系薬物を服用した後に発症する重篤な疾患です。
発症機序(完全には解明されていないが):
- アスピリンのサリチル酸代謝物がウイルス感染で傷害された肝細胞ミトコンドリアの機能をさらに障害
- ミトコンドリア機能障害→脂肪酸β酸化の障害→肝臓への脂肪蓄積(肝脂肪沈着)・アンモニア代謝障害→高アンモニア血症
- 脳浮腫・意識障害(脳症)・肝機能障害(AST/ALT上昇)・嘔吐
- 死亡率:歴史的に20〜40%(米国1980年代の啓発キャンペーン後に発症件数は激減)
欧米では1980年代からアスピリンを小児の解熱に使用しないよう勧告が出され、発症件数が劇的に減少した。日本でも15歳未満への解熱目的アスピリンは禁忌。
コデインの12歳未満禁忌の背景(CYP2D6多型):
コデイン(プロドラッグ)は肝臓のCYP2D6によりモルヒネに変換されて鎮痛・鎮咳作用を発揮します。CYP2D6には遺伝的多型があります:
- 通常型(EM:Extensive Metabolizer):標準的なモルヒネ産生
- 超高速代謝型(URM:Ultra Rapid Metabolizer):CYP2D6が過剰に発現(遺伝子重複)→コデインから大量のモルヒネを産生→呼吸抑制・死亡
URMは白人で1〜2%、アフリカ系で3〜29%、アジア系では少ないが存在します。小児では成人より血液脳関門の透過性が高く、URMでは予測不能な高モルヒネ産生が死亡事例につながりました。海外の死亡事例を受け、日本でも令和元年(2019年7月)の添付文書改訂指示により12歳未満への使用が使用制限から明確に禁忌へと移行しています。
アセトアミノフェンの小児用量管理の重要性:
アセトアミノフェン(パラセタモール)は小児の解熱鎮痛に広く使用されますが、肝毒性代謝物(NAPQI)を生成するため過剰摂取には注意が必要です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 手引き本体は小児への解熱鎮痛成分の体重あたり精密用量を表で示してはいない(用量は各製品の用法用量で規定)。よって精密数値を断定せず「製品の用法用量・年齢区分に従う」を主軸に、過剰摂取・重複回避という手引き趣旨の表現に寄せた。体重あたり10〜15mg/回・1日総量60mg/kg限度等は医療用添付文書由来の参考値であり、一般用では各製品の年齢別用法用量が優先。 -->
一般的な小児用量の考え方:
- アセトアミノフェンの小児用量は各製品の用法用量・年齢区分に従うことが基本(一般用医薬品では製品ごとに年齢別の1回量・1日回数が定められている)
- 1回量・1日回数・1日最大量を必ず守り、複数製品(かぜ薬+解熱鎮痛薬等)の重複により1日量が過剰にならないようにする
- 参考として医療用添付文書では体重1kgあたり10〜15mgを1回量の目安とし投与間隔4〜6時間以上・1日総量60mg/kgを限度とするが、一般用では製品の用法用量が優先する
過剰摂取リスクが高い場面:
- かぜ薬+解熱鎮痛薬の重複(両方にアセトアミノフェン配合)
- 繰り返しの使用・服薬間隔の短縮
小柴胡湯の注意事項(エの誤りの根拠):
小柴胡湯は「中等度の体力」の証に対する漢方薬であり、インターフェロン製剤との併用で間質性肺炎を起こした報告があります(1994年に厚生省が注意喚起)。また:
- 虚弱体質・体力が衰えた人には適さない
- 肝硬変・肝癌患者では小柴胡湯により間質性肺炎リスクが高まる
「小児に積極的に安全に使用できる」という認識は誤りです。
登録販売者の実務対応(小児向け医薬品販売時):
1. 年齢確認を優先: 「何歳のお子様に?」を必ず最初に確認
2. 水痘・インフルエンザが疑われる場合: アスピリン・イブプロフェンを避け、アセトアミノフェンを勧める(「熱性疾患でNSAIDs使用禁忌」を徹底)
3. 鎮咳薬の年齢確認: 12歳未満にコデイン含有製品を販売しない
4. 重複確認: かぜ薬を服用中の小児に解熱薬を追加する場合のアセトアミノフェン重複
5. 1日量の説明: 保護者に対して、1回量・1日回数・最大1日量を明確に説明
6. 医師への受診勧奨: 乳幼児(特に3ヶ月未満)、症状が改善しない・悪化する、けいれん・意識障害等の重篤症状がある場合は速やかに受診を勧める
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 小児の医薬品使用・年齢制限成分・用法用量 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。