登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問23:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)
漢方処方製剤(小青竜湯・六君子湯・麻黄湯)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア小青竜湯(ショウセイリュウトウ)はマオウを含まないため、高血圧や心疾患の人でも安心して使用できる漢方薬である。
- イ六君子湯(リックンシトウ)はカンゾウを含まず、偽アルドステロン症のリスクはないため長期使用しても副作用が生じることはない。
- ウ麻黄湯(マオウトウ)は体力の充実した実証の人のかぜ初期(発熱・悪寒・無汗・関節痛)に用いられるが、体力が虚弱な人には不適とされており、また麻疹(はしか)の初期にも用いられることがある。正答
- エ小青竜湯は体力が虚弱で消化機能が低下している人の食欲不振・胃部不快感に用いられる処方であり、水様の鼻汁や鼻炎・気管支炎には効果がない。
- オ六君子湯は体力充実の実証の人に適した処方で、激しい消化不良・腹部膨満がある強壮な人向けに用いられる。
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正答はウです。
麻黄湯は体力充実した実証の人のかぜ初期・発熱・悪寒・無汗・関節痛・喘息に用いられます。マオウを多量に含む実証向けの処方で、虚弱な人には不適です。手引きでは麻疹(はしか)初期にも用いられるとされています。
アは誤りで、小青竜湯はマオウを含み、高血圧・心疾患等への注意が必要です。イは誤りで、六君子湯にはカンゾウが含まれており偽アルドステロン症のリスクがあります。エは誤りで、小青竜湯はまさに水様鼻汁・アレルギー性鼻炎・気管支炎の鎮咳に用いられます。オは誤りで、六君子湯は体力中程度以下(虚証寄り)の人向けの補気健脾薬です。
小青竜湯・六君子湯・麻黄湯の比較:
| 処方 | 証 | 主な適応 | 含有重要生薬 | 高血圧等注意 |
|---|---|---|---|---|
| 小青竜湯 | 体力中程度以下(虚弱でなければ)| 水様鼻汁・くしゃみ・アレルギー性鼻炎・咳・気管支喘息 | マオウ・カンゾウ・ケイヒ・シャクヤク・カンキョウ・ゴミシ・ハンゲ | あり(マオウ) |
| 六君子湯 | 体力中程度以下(虚証寄り) | 胃腸虚弱・食欲不振・胃もたれ・慢性胃炎 | カンゾウ・チンピ・ハンゲ・ニンジン等 | カンゾウによる偽アルドステロン症 |
| 麻黄湯 | 実証(体力充実) | かぜ初期・発熱・悪寒・無汗・関節痛・麻疹 | マオウ(葛根湯より多量)・ケイヒ・キョウニン・カンゾウ | あり(マオウ多量) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 小青竜湯はマオウ(麻黄)を含みます。マオウにはエフェドリンが含まれており、交感神経刺激作用から高血圧・心疾患・甲状腺機能亢進症・糖尿病の人への使用は禁忌または要注意です。「マオウを含まない」は完全に誤りです。
- イ(誤): 六君子湯にはカンゾウ(甘草)が含まれています。カンゾウのグリチルリチン酸は偽アルドステロン症(低カリウム血症・浮腫・高血圧)を引き起こすリスクがあります。「カンゾウを含まず副作用がない」は誤りです。
- ウ(正): 麻黄湯(マオウ・ケイヒ・キョウニン・カンゾウの4種)は実証向けの強い発汗・解表処方です。体力が虚弱な人・高齢者・小児(虚証)への使用は不適とされています。麻疹(はしか)のウイルス感染初期(発疹が出る前の発熱期)に発汗を促して病態を解消する目的で用いられる処方として手引きに記載されています。
- エ(誤): 小青竜湯は水様鼻汁・くしゃみ・鼻閉のアレルギー性鼻炎・急性/慢性鼻炎・感冒(特に鼻炎症状が強い場合)・鼻水が多い気管支炎・気管支喘息(咳・喘鳴が主体)に用いられる代表的な漢方処方です。「水様鼻汁・鼻炎・気管支炎には効果がない」は正反対で誤りです。六君子湯の適応(食欲不振・胃腸症状)と混同させた引っかけです。
- オ(誤): 六君子湯(リョウシャ〜体力中程度以下・胃腸が弱い人向けの補気健脾薬)は、体力が虚弱〜中程度で、胃腸機能が低下している人(食欲不振・胃もたれ・慢性胃炎・胃腸虚弱)に用いられます。「体力充実の実証の人向け」は正反対で誤りです。
【小青竜湯のアレルギー性鼻炎への応用と「水湿(水毒)」の漢方的解釈】
小青竜湯の成分と役割:
- マオウ(麻黄): 発汗・気管支拡張・鼻粘膜血管収縮→鼻閉改善・鎮咳
- ケイヒ(桂皮): 温熱・発汗促進・血行促進
- シャクヤク(芍薬): 鎮痙・鎮痛(筋弛緩)
- カンキョウ(乾姜): 温める・去痰(生姜を乾燥加工)
- ゴミシ(五味子): 鎮咳・収れん(水分の漏れを止める)
- ハンゲ(半夏): 去痰・止嘔(気道・消化管の湿を除く)
- カンゾウ(甘草): 調和・抗炎症
漢方医学的解釈: アレルギー性鼻炎(水様鼻汁・くしゃみ)は「水湿(水分の滞り)」が「寒邪」(冷えの邪気)と結合した「寒飲(かんいん)」の状態と考えます。温める生薬(マオウ・ケイヒ・カンキョウ)で体を温め、水分を散らす(温化・散水)ことで症状を改善するのが小青竜湯の処方意図です。
現代薬理との対比:
- マオウのエフェドリン→α受容体で鼻粘膜血管収縮→鼻閉改善・鼻汁分泌抑制
- エフェドリン→β2受容体→気管支拡張→喘鳴・咳改善
- 抗ヒスタミン作用は直接的にはないが、交感神経活性化→ヒスタミン放出抑制という間接効果
- ゴミシ(五味子)のシザンドリン等→抗アレルギー作用の報告あり
【六君子湯の「補気健脾」とエビデンス:上部消化管機能不全(FD)への展開】
六君子湯(ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ・チンピ・ハンゲ・タイソウ・ショウキョウの8種)は四君子湯(補気の基本処方)にチンピ・ハンゲを加えた「補気健脾(消化機能を補い強める)」処方です。
現代医学的エビデンス(注目分野):
- 機能性ディスペプシア(FD)への有効性: 日本で複数のランダム化比較試験が行われており、食後の胃もたれ・早期満腹感・上腹部不快感に有効という報告があります
- グレリン産生促進: 六君子湯はグレリン(胃から分泌される食欲促進・胃運動促進ホルモン)の産生・分泌を促進することが示されており(動物・臨床研究)、食欲不振・胃排出能低下への機序の一部が解明されています
- ケモブレインへの応用: 抗癌剤による消化器症状(悪心・食欲不振)への補助的使用も研究されています
OTCとしての六君子湯は「体力中程度以下で胃腸の弱い人の胃炎・胃腸虚弱・消化不良等」に適応されますが、「体力充実の実証の人向け」という誤った記述(選択肢オ)は典型的な試験の引っかけパターンです。
【麻黄湯と葛根湯の違い:どちらも実証向けかぜ薬だが何が違うか】
麻黄湯・葛根湯はどちらもマオウを含む実証向けのかぜ薬ですが、適応の焦点が異なります:
| 比較項目 | 麻黄湯 | 葛根湯 |
|---|---|---|
| マオウ含有量 | 多い(発汗力強い) | 中程度 |
| 発汗の状態 | 無汗のかぜ初期(まだ汗が出ていない) | 無汗〜軽微な発汗のかぜ初期 |
| 主要症状 | 高熱・悪寒(寒気が強い)・関節痛・喘息傾向 | 頭痛・肩こり・首筋のこわばり・鼻汁 |
| カッコン | なし | あり(肩こり・首筋の筋弛緩) |
| 麻疹への適応 | あり(手引き記載) | なし |
| 体力虚弱者 | 不適(強い発汗で体力消耗) | 不適(マオウ含有) |
漢方では「かぜの初期で汗をかいていない実証の人→麻黄湯、汗が少し出て肩こりがある→葛根湯、汗が出て虚弱→桂枝湯」という使い分け(三つのかぜ薬)が基本です。
【マオウ含有漢方薬の「禁忌」vs「注意」の区別】
手引きでは禁忌(使用してはいけない)と注意(相談すること)の表現が区別されています:
一般的にマオウ含有漢方薬で「相談すること(使用に注意)」とされる疾患:
- 高血圧
- 心臓病
- 甲状腺機能亢進症
- 糖尿病
- 虚弱体質の人
- 高齢者
一部製品では「禁忌」として扱われる場合もあり、製品ごとの添付文書で確認が必要です。登録販売者は「マオウ含有漢方を選ぼうとしている購入者に上記疾患がないか確認する」というプロセスが重要です。「高血圧があるから全てのマオウ含有漢方が絶対禁忌」ではなく、「高血圧の人は医師・薬剤師に相談を」というニュアンスが実務的には重要です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ確定。麻黄湯の構成生薬4種=マオウ・キョウニン・ケイヒ・カンゾウを医療用組成で突合一致(実証・かぜ初期/無汗/関節痛、手引きで麻疹初期にも用いられる記載あり)。小青竜湯はマオウ含有(エフェドリン→高血圧/心疾患/甲状腺機能亢進症/糖尿病注意)で「マオウを含まない」アは誤り、六君子湯はカンゾウ含有で偽アルドステロン症リスクありイ「カンゾウ含まず副作用なし」は誤り、小青竜湯は水様鼻汁/アレルギー性鼻炎/気管支炎に用いるためエ「効果がない」は正反対の誤り、六君子湯は体力中等度以下(虚証寄り)の胃腸虚弱向けでオ「実証/体力充実向け」は誤り。マオウ/カンゾウ含有と証の対応とも手引き整合し健康被害リスクなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。