登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問35:主な医薬品とその作用(胃腸に作用する薬)
健胃・消化・利胆成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アウルソデオキシコール酸は胆汁分泌を促進(利胆)し、胆汁の流れをよくすることで消化吸収を助けるほか、肝細胞保護作用も持つ成分である。正答
- イ胆汁末(牛胆汁乾燥末等)はヒトの消化器に対して作用せず、腸内細菌の増殖を促進することで間接的に消化を助ける成分である。
- ウパンクレアチンはタンパク質のみを分解する酵素製剤であり、脂質や炭水化物の消化は別の酵素製剤が担う。
- エジアスターゼはリパーゼ(脂質分解酵素)の一種であり、食事中の脂質を消化吸収しやすい形に分解する目的で健胃消化薬に配合される。
- オウルソデオキシコール酸を含む胆汁分泌促進薬は、胆道が閉塞している患者に対して胆汁の流れを改善するために積極的に使用すべきである。
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正答はア(正しいもの)です。
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は胆汁分泌を促進(利胆作用)し、胆汁の流れをよくすることで脂質の消化吸収を助けると同時に、肝細胞を保護する作用も持ちます。
各選択肢のポイント:
- イ(誤):胆汁末はヒトの消化管に直接作用(腸内細菌促進ではない)
- ウ(誤):パンクレアチンはタンパク質・脂質・炭水化物の三大栄養素すべてを分解
- エ(誤):ジアスターゼはアミラーゼ(炭水化物分解)の別名(リパーゼではない)
- オ(誤):胆道閉塞には胆汁分泌促進は禁忌(逆効果・危険)
ゴロ:「ジアスターゼ=でんぷん(炭水化物)分解(脂質じゃない)」
健胃・消化・利胆成分の比較:
| 成分名 | 分類 | 主な作用 | 特徴・注意 |
|---|---|---|---|
| ウルソデオキシコール酸(UDCA) | 利胆薬 | 胆汁分泌促進・胆汁流改善・肝細胞保護 | 胆道閉塞には禁忌 |
| 胆汁末(牛・豚胆汁乾燥末) | 消化補助(胆汁成分補給) | 胆汁酸の直接補給→脂質乳化・消化促進 | 動物由来。脂質の消化補助 |
| パンクレアチン | 消化酵素複合体 | プロテアーゼ・リパーゼ・アミラーゼ含有→三大栄養素分解 | 膵酵素の代替。脂肪吸収不良に有効 |
| ジアスターゼ(アミラーゼ) | 炭水化物分解酵素 | でんぷん(α-グルコシド結合)の加水分解 | デンプン→マルトース・デキストリン |
| リパーゼ | 脂質分解酵素 | トリグリセリド→脂肪酸+グリセロール | パンクレアチンに含まれる |
各選択肢の解説:
- ア(正): ウルソデオキシコール酸(UDCA)は熊の胆(熊胆)の有効成分として知られる二次胆汁酸です。①胆汁分泌量を増加させる(利胆)、②胆汁酸組成を改善して胆汁の親水性を高める(胆石溶解にも利用)、③肝細胞膜を保護・安定化させる(肝細胞保護)の三重の作用を持ちます。
- イ(誤): 胆汁末は牛・豚の胆汁を乾燥させた動物由来の消化補助成分で、含有する胆汁酸が腸管内で脂質を乳化・消化を直接補助します。「腸内細菌の増殖を促進」するという記述は誤りです。
- ウ(誤): パンクレアチンは膵臓から得られる酵素の混合物で、プロテアーゼ(タンパク質分解)・リパーゼ(脂質分解)・アミラーゼ(炭水化物分解)を含む三大栄養素全てを消化できる複合酵素製剤です。「タンパク質のみ」は誤りです。
- エ(誤): ジアスターゼはアミラーゼ(でんぷん分解酵素)の古い別名で、炭水化物(でんぷん)をマルトース(麦芽糖)やデキストリンに分解する酵素です。脂質を分解するのはリパーゼであり、ジアスターゼとリパーゼは別の酵素です。
- オ(誤): 胆道が閉塞している場合(胆管閉塞・胆嚢炎急性期等)にウルソデオキシコール酸等の胆汁分泌促進薬を使用すると、胆汁が排出されずに胆道内圧が上昇して症状が悪化するおそれがあります。胆道閉塞は禁忌(使用してはならない病態)です。
【ウルソデオキシコール酸(UDCA)の多面的薬理作用と肝胆疾患での位置づけ】
胆汁酸の種類と腸肝循環:
胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成される脂質乳化物質で、二種類に大別されます:
一次胆汁酸(肝臓で合成):
- コール酸(Cholic acid)
- ケノデオキシコール酸(Chenodeoxycholic acid)
二次胆汁酸(腸内細菌による変換):
- デオキシコール酸(Deoxycholic acid)
- リトコール酸(Lithocholic acid)
- ウルソデオキシコール酸(Ursodeoxycholic acid / UDCA):ケノデオキシコール酸の7β-エピマー
UDCAは熊の胆(熊胆:ゆうたん)の主要胆汁酸として古来から薬用に使われてきた成分で、健常ヒト胆汁中に微量(約1〜3%)存在します。薬用では濃縮・精製した形で使用されます。
UDCAの多面的薬理作用:
1. 利胆作用(胆汁分泌促進):
- 肝細胞の胆汁酸輸送体(BSEP・MRP2・Oatp等)の発現・活性を増強
- 胆汁流量の増加→胆道内の停滞胆汁の排出促進
- 「利胆薬」としてOTCに配合可能
2. 胆石溶解作用(処方薬領域):
- コレステロール胆石の溶解:コレステロールの胆汁への溶解度を上昇(ミセル形成促進)
- コレステロールの腸管吸収抑制
- ※OTCでは胆石溶解の適応は持たない
3. 肝細胞保護作用:
- 疎水性胆汁酸(デオキシコール酸・リトコール酸)による細胞毒性(膜破壊)から肝細胞を保護
- 親水性のUDCAが胆汁酸プールの組成を親水化→毒性低下
- ミトコンドリア保護(シトクロムc遊離抑制→アポトーシス抑制)
4. 抗炎症・免疫調節作用:
- TNF-α・IL-1β等の炎症性サイトカイン産生抑制
- T細胞活性化抑制(原発性胆汁性肝硬変・自己免疫性肝炎での効果の機序の一部)
パンクレアチンの構成酵素と消化機能:
パンクレアチンは膵外分泌機能(膵液分泌)の代替として使用される複合酵素製剤で、主要成分:
| 酵素 | 基質 | 産物 |
|---|---|---|
| エンドプロテアーゼ(トリプシン・キモトリプシン) | タンパク質(内部ペプチド結合) | ペプチド断片 |
| エキソペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼ) | タンパク質(末端) | アミノ酸 |
| リパーゼ | トリグリセリド | 脂肪酸+2-モノグリセリド |
| コリパーゼ | 補助タンパク(リパーゼ活性化) | ─ |
| アミラーゼ | でんぷん(α-1,4グルコシド結合) | マルトース・デキストリン |
| ヌクレアーゼ | DNA・RNA | ヌクレオチド |
ジアスターゼ(アミラーゼ)の酵素化学:
ジアスターゼ(Diastase)はアミラーゼ(amylase)の古称で、19世紀にデンプン消化酵素として最初に発見された酵素です。
α-アミラーゼ(エンドアミラーゼ)とβ-アミラーゼ(エキソアミラーゼ)の2種があり:
- α-アミラーゼ:でんぷんのα-1,4グルコシド結合をランダムに切断→デキストリン・マルトース
- β-アミラーゼ(植物由来):非還元末端から順次マルトースを遊離
健胃消化薬に配合されるジアスターゼは炭水化物(ご飯・パン等)の消化を補助することが主目的で、脂質消化とは全く別の役割です。
胆道閉塞での禁忌の理由(YMYL 安全情報):
胆道閉塞(胆管結石・胆管癌・膵頭部癌等による胆管狭窄・閉塞)では胆汁の十二指腸への排出が妨げられています。この状態でUDCAや胆汁末で胆汁分泌を促進すると:
- 肝内胆管・胆嚢内の胆汁圧が上昇
- 胆管拡張・破綻→胆汁性腹膜炎のリスク
- 閉塞性黄疸の悪化(ALT・AST・ビリルビン上昇)
- 胆嚢炎急性期の悪化
登録販売者が胆道疾患(胆石症・胆嚢炎・黄疸)の既往がある顧客に対して健胃消化薬を推奨する際には、UDCA・胆汁末含有製品の禁忌を必ず確認し、胆道系の疾患がある人には医師相談を促すことが必要です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ア(ウルソデオキシコール酸=利胆作用+消化補助、肝機能を助ける作用)一意・妥当。他の4肢はすべて明確な誤り(胆汁末は消化管に直接作用/パンクレアチンは三大栄養素を分解/ジアスターゼ=アミラーゼで炭水化物分解/胆道閉塞には利胆薬は禁忌)で正答は一意に確定。手引き(令和8年4月版)はUDCAを「利胆作用により消化を助ける」とし、完全胆道閉塞には利胆作用で症状増悪のため使用しない(禁忌)と整合。UDCAの「肝機能を助ける/肝細胞保護」は医療用添付文書(肝機能改善作用)とも整合する事実記述で、正答の妥当性に影響なし。試験上の主眼は"利胆・消化補助・胆道閉塞禁忌"である旨は解説本文で十分カバー。修正不要。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第6節「胃腸に作用する薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。