登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問36:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬製剤)
虚弱・滋養強壮に用いる漢方処方製剤および小児鎮静薬に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は体力充実した実証の人を対象とし、夏の暑さによる食欲不振・疲労感・胃腸虚弱に用いられる処方である。
- イ十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)は気と血の両方を補う処方であり、病後・術後の体力低下や貧血・疲労倦怠感に用いられる。正答
- ウゴオウ(牛黄)は牛の肝臓から採取される成分であり、強心・緊張緩和作用を持ち、小児の夜泣き・ひきつけに用いられる小児鎮静薬に配合される。
- エ小建中湯(ショウケンチュウトウ)はダイオウを含む実証向けの処方であり、腹痛を伴う便秘を持つ体力のある小児に用いられる。
- オ補中益気湯はカンゾウを含まない処方であり、長期使用でも偽アルドステロン症のリスクはないため、高齢者への長期投与に最も適した漢方薬の一つである。
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正答はイ(正しいもの)です。
十全大補湯は「気(エネルギー)」と「血(栄養・血液)」の両方を補う補気補血処方で、病後の体力回復・術後の虚弱・貧血・疲労倦怠感に広く用いられます。
各選択肢の誤りポイント:
- ア(誤):補中益気湯は虚証(体力低下)向け(実証ではない)
- ウ(誤):ゴオウは牛の胆嚢中の結石(胆石)で、肝臓ではない
- エ(誤):小建中湯はダイオウを含まない(桂枝加芍薬湯にカンゾウ・大棗・膠飴を加えた処方)
- オ(誤):補中益気湯はカンゾウを含む(偽アルドステロン症リスクあり)
ゴロ:「ゴオウは牛の胆石(たんせき)」
虚弱・滋養の漢方処方比較:
| 処方名 | 対象証 | 主な適応 | 主要含有成分 |
|---|---|---|---|
| 補中益気湯 | 虚証 | 夏の疲労・食欲不振・倦怠感・虚弱体質 | 黄耆・人参・甘草・白朮・当帰・柴胡等(カンゾウあり) |
| 十全大補湯 | 虚証〜中間証 | 病後・術後体力低下・貧血・疲労倦怠 | 四君子湯+四物湯(気血双補)・黄耆・桂皮等 |
| 小建中湯 | 虚証 | 小児の虚弱・腹痛・疲れやすさ・夜尿症 | 桂枝・芍薬・大棗・甘草・生姜・膠飴(飴)。ダイオウなし |
小児鎮静生薬の比較:
| 生薬名 | 由来 | 主な作用 |
|---|---|---|
| ゴオウ(牛黄) | 牛の胆嚢内の結石(胆石)| 強心・緊張緩和・鎮静 |
| ジャコウ(麝香) | ジャコウジカの雄の麝香腺分泌物 | 強心・鎮静・血流改善 |
| レイヨウカク | サイカレイヨウ(羚羊)の角 | 解熱・鎮静・抗痙攣 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 補中益気湯は虚証(体力がない・疲れやすい)向けの処方です。夏の疲労・食欲不振・倦怠感という適応は正しいですが、「体力充実した実証の人」という記述が誤りです。逆に実証の人には不適切で、症状が悪化することもあります。
- イ(正): 十全大補湯は四君子湯(補気)と四物湯(補血)を合わせた気血双補の代表処方です。黄耆・桂皮等を加えた構成で、病後・術後の体力回復、貧血、疲労倦怠感、皮膚の乾燥等に用いられます。
- ウ(誤): ゴオウ(牛黄)は牛の胆嚢中に生じる結石(胆石)から得られます。肝臓ではありません。胆汁成分(ビリルビン・コレステロール等)が沈着して形成された固形物で、強心・鎮静・緊張緩和作用を持ち、小児鎮静薬のほか強心薬にも配合されます。
- エ(誤): 小建中湯は桂枝加芍薬湯(桂枝・芍薬・大棗・甘草・生姜)に膠飴(大麦麦芽糖)を加えた処方で、ダイオウを含みません。虚証の小児の腹痛・疲れやすさ・夜尿症等に用いる穏やかな処方です。ダイオウを含む実証向けの記述は誤りです。
- オ(誤): 補中益気湯はカンゾウ(甘草)を含む処方です。長期大量使用ではグリチルリチン酸による偽アルドステロン症(低カリウム血症・浮腫・血圧上昇)のリスクがあります。「カンゾウを含まない・偽アルドステロン症リスクなし」は完全に誤りです。
【補中益気湯・十全大補湯の薬理的背景と免疫調節作用】
補中益気湯(十四味の漢方)の薬理:
補中益気湯の構成生薬(標準的な14生薬):黄耆・人参・白朮・甘草・当帰・陳皮・升麻・柴胡・生姜・大棗(基本10生薬に加えて製品による差あり)
主要薬理作用:
1. 黄耆(オウギ): 多糖(アストラガランA〜D)→マクロファージ活性化・NK細胞活性増強→免疫賦活。補気作用の中心生薬。
2. 人参(ニンジン): ジンセノサイド(サポニン)→HPA軸調節・抗疲労・アダプトゲン様作用
3. 柴胡(サイコ): サイコサポニン→コルチゾール様抗炎症・ストレス適応
4. 升麻(ショウマ): 補中益気湯特有の生薬。内臓の下垂(脱肛・子宮脱垂等)を「持ち上げる(升提)」概念に対応した機能性
補中益気湯の現代的エビデンス:
- がん患者の化学療法中の倦怠感・免疫機能低下への有効性(複数のRCT・システマティックレビュー)
- 術後腸管麻痺の予防
- 繰り返す上気道感染(感冒の反復)への予防的効果(多施設研究あり)
十全大補湯の「気血双補」の薬理解釈:
十全大補湯は四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)+四物湯(当帰・川芎・芍薬・地黄)+黄耆・桂皮の10生薬構成です。
「気を補う」生薬グループ(四君子湯系):
- 人参・白朮・茯苓:消化吸収・エネルギー産生の正常化(脾胃機能強化)
- 黄耆:免疫機能強化・体表防衛(衛気補強)
「血を補う」生薬グループ(四物湯系):
- 当帰・芍薬:血液循環改善・血管弛緩・造血補助
- 川芎:活血(血流改善)・鎮痛
- 地黄:滋陰・骨髄造血補助・抗炎症
現代薬理研究での知見:
- 十全大補湯の多糖成分が抗腫瘍免疫(NK細胞・マクロファージ活性化)を増強
- 貧血モデル動物での赤血球造血促進効果
- 化学療法による骨髄抑制からの回復促進(動物実験)
ゴオウ(牛黄)の化学成分と薬理の詳細:
ゴオウの化学組成(主要成分):
- ビリルビン(約50〜60%):胆汁色素・抗酸化・抗炎症
- 胆汁酸(コール酸・デオキシコール酸等):強心補助・平滑筋弛緩
- コレステロール:膜安定化成分
- ビリベルジン:ビリルビン前駆体
- カルシウム塩:ゴオウの沈着形成基盤
薬理作用(手引き準拠):
1. 強心作用: 末梢血管の拡張による血圧降下や心筋の興奮を鎮める作用など、強心薬・小児鎮静薬に配合される
2. 鎮静・緊張緩和: 中枢神経系を介した鎮静作用により、小児の疳・夜泣き・ひきつけ等を鎮める
3. その他: 末梢血管拡張による血流改善等が知られる
※ゴオウの受容体レベルの詳細機序(ベンゾジアゼピン受容体等)は試験で問われる範囲ではなく、手引きの記載は「強心・鎮静・緊張緩和」までである点を押さえれば十分です。
小児鎮静薬への配合意義:
小児の夜泣き・ひきつけ・疳の虫は自律神経の過緊張・脳の過興奮が背景にあると考えられており、ゴオウの鎮静・緊張緩和作用がこれらに有効とされます。
ジャコウとゴオウの比較(小児鎮静での使い分け):
| 生薬 | 由来 | 主な薬理 | CITES規制 |
|---|---|---|---|
| ゴオウ(牛黄) | 牛の胆嚢内結石 | 強心・鎮静・解熱 | 規制なし(家畜) |
| ジャコウ(麝香) | ジャコウジカ雄の腺分泌物 | 強心・鎮静・血流改善・芳香刺激 | CITES付属書I(絶滅危惧)→取引制限 |
ジャコウはジャコウジカが絶滅危惧種(CITES附属書I)に指定されているため、国際取引が厳しく制限されており、漢方製剤への使用は人工合成品や他産地のものへの代替が進んでいます。登録販売者として生薬の由来・法的位置づけも知識として有用です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ(十全大補湯=気血双補で病後・術後の体力低下・貧血・疲労倦怠に用いる)一意・妥当。一次ソース突合:補中益気湯はカンゾウ(甘草)を含む(選択肢オの「カンゾウを含まない・偽アルドステロン症リスクなし」は誤り)。小建中湯は桂枝加芍薬湯に膠飴を加えた処方でダイオウを含まない・虚証の小児向け(選択肢エの「ダイオウを含む実証向け」は誤り)。ゴオウ(牛黄)はウシ科ウシの胆嚢中に生じた結石を基原とする生薬で、強心・鎮静・緊張緩和作用(選択肢ウの「牛の肝臓から採取」は誤り)。いずれも手引き(令和8年4月版)と整合。【機序断定の是正】advancedのゴオウの「ベンゾジアゼピン受容体への親和性」「ビリルビンのCOX阻害で解熱」等の創作的機序断定を、手引き準拠(強心・鎮静・緊張緩和)に置換。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。