登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問59:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)および温清飲(うんせいいん)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア黄連解毒湯は体力が中等度以上の人に用いられ、のぼせ・赤ら顔・皮膚のかゆみ・不眠・下痢などに適するとされる。
- イ黄連解毒湯はカンゾウ(甘草)を含まない処方であり、偽アルドステロン症のリスクが低い。
- ウ温清飲は体力が中等度の人に向き、皮膚が乾燥して色が浅黒く、のぼせ・赤ら顔の症状がある場合に用いられる。
- エ黄連解毒湯はダイオウ(大黄)を主成分とした瀉下処方で、便秘の解消を主目的として用いられる。正答
- オ温清飲は四物湯と黄連解毒湯を合わせた処方であり、黄連解毒湯の熱を冷ます作用に四物湯の血を補う作用を加えたものとされる。
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正答はエ(誤っているもの)です。
黄連解毒湯はダイオウ(大黄)を主成分とした瀉下処方ではありません。黄連解毒湯の中心生薬はオウレン(黄連)・オウゴン(黄芩)・オウバク(黄柏)・サンシシ(山梔子)の4種類で、熱を冷ます(清熱解毒)ことが目的の処方です。
語呂で覚えるなら「黄連解毒(おうれんげどく)=熱っぽい・のぼせ・赤ら顔をクールダウン」。炎症性・熱証の症状に用います。温清飲はこれに「四物湯(血を補う生薬群)」を加えた処方で、のぼせ+皮膚乾燥・血虚を合わせた人に向きます。
黄連解毒湯と温清飲の比較:
| 項目 | 黄連解毒湯 | 温清飲 |
|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 中等度以上(実証〜中間) | 中等度(中間) |
| 主な適応 | のぼせ・赤ら顔・不眠・動悸・高血圧に伴う症状・皮膚疾患(かゆみ・湿疹)・下痢・吐血 | のぼせ・赤ら顔+皮膚の乾燥・色が浅黒い・月経不順・更年期障害 |
| カンゾウ含有 | なし ← イの正しい根拠 | あり |
| マオウ含有 | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし ← エの誤りの根拠 | なし |
| 構成生薬 | オウレン・オウゴン・オウバク・サンシシ(4生薬) | 四物湯(ジオウ・シャクヤク・センキュウ・トウキ)+黄連解毒湯の8生薬 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 黄連解毒湯の証は中等度以上。のぼせ・赤ら顔・皮膚のかゆみ・湿疹・不眠・下痢など「熱証(炎症・充血)」の症状に広く用いる。
- イ(正): 黄連解毒湯はカンゾウを含まない(4生薬すべてが「黄」の文字を持つ苦寒清熱薬か山梔子)。偽アルドステロン症リスクはない。
- ウ(正): 温清飲の証は中等度で、皮膚の乾燥・浅黒い色・のぼせ・赤ら顔が特徴。月経不順・更年期障害・湿疹など血虚を伴う熱証に用いる。
- エ(誤・正答): 黄連解毒湯にダイオウは含まれず、瀉下処方でもない。清熱解毒(炎症・熱を冷ます)が主目的。
- オ(正): 温清飲は「四物湯(滋陰補血)+黄連解毒湯(清熱解毒)」の合方(ごうほう)で、血虚(血が不足してのぼせが出る)と熱証を同時に治療する複合処方。
【黄連解毒湯の4生薬と清熱解毒の薬理機序】
組成4生薬(すべて「清熱」系苦寒薬):
| 生薬 | 基原 | 主な成分・薬理 |
|---|---|---|
| オウレン(黄連) | キンポウゲ科オウレン(Coptis japonica)の根茎 | ベルベリン・コプチシン→抗菌・抗炎症・苦味健胃・血糖降下・中枢神経鎮静 |
| オウゴン(黄芩) | シソ科コガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根 | バイカリン・バイカレイン→抗炎症(COX阻害)・抗アレルギー・抗菌 |
| オウバク(黄柏) | ミカン科キハダ(Phellodendron amurense)の樹皮 | ベルベリン(オウレンと共通)・オバクノン→抗菌・収斂・苦味健胃 |
| サンシシ(山梔子) | アカネ科クチナシ(Gardenia jasminoides)の果実 | ゲニポシド(ゲニピン)→解熱・抗炎症・利胆・抗酸化 |
ベルベリンの多面的薬理(重要):
オウレン・オウバクに共通するベルベリンは、現代医学的に以下の薬理が確認されています:
- 腸管平滑筋のカルシウムチャネル抑制→腸管痙攣の緩和(下痢止め効果)
- AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性化→血糖降下・脂質低下
- DNA topoisomerase阻害→抗菌・抗腫瘍(研究段階)
- 中枢神経ドーパミン系抑制→鎮静・不眠改善
【サンシシ(山梔子)と腸間膜静脈硬化症:重要副作用】
サンシシを含む漢方処方(黄連解毒湯・温清飲・加味逍遥散など)の長期服用(5年以上)で腸間膜静脈硬化症が生じる可能性があることが報告されています。
腸間膜静脈硬化症:
- 大腸の腸間膜静脈の壁が石灰化・硬化する
- 症状: 腹痛・腹部膨満・下痢・血便(大腸内視鏡でX線不透過性の静脈石灰化が確認される)
- 病態: ゲニポシドが腸管内でゲニピンに変換され、タンパク質と結合(グルタチオン抱合等)→長期蓄積で慢性炎症
登録販売者への実務的含意: 黄連解毒湯・温清飲を長期(数年単位)購入し続けている顧客に対して、腹痛・下痢等の消化器症状が出た場合は受診を促すことが重要。長期服用中は定期的な受診確認が望ましい。
【温清飲の血虚(けっきょ)理論と四物湯との関係】
漢方医学の「血虚」概念:
「血(けつ)」は栄養・潤い・精神安定を担う。血虚は「血が不足した状態」で、皮膚の乾燥・髪のパサつき・爪の脆弱・顔色が浅黒い・月経不順・不眠・めまいが現れる。
四物湯(温清飲の土台)の4生薬:
- ジオウ(地黄): 滋養・補血・潤燥(血を補い乾燥を潤す)
- シャクヤク(芍薬): 補血・鎮痙・平肝(肝の過亢進を抑える)
- センキュウ(川芎): 活血(血流改善)・鎮痛・行気
- トウキ(当帰): 補血活血(血を補い流れをよくする)・鎮痛・通経
温清飲の配合の意図: 黄連解毒湯(清熱)だけでは血虚(乾燥・皮膚症状)が改善されず、四物湯(補血)を合わせることで「熱を冷やしながら血を補う」二刀流の治療を可能にする。
これが「皮膚が乾燥して浅黒く・のぼせ・赤ら顔」というタイプに温清飲が選ばれる理由(血虚+熱証の合わさった証)。
上位資格への接続: 温清飲は婦人科漢方(月経不順・更年期障害・皮膚疾患)で重要処方とされ、薬剤師国家試験では「四物湯系処方の応用」として合方(ごうほう)の概念とともに出題される。血虚と熱証(陰虚発熱)の区別・組み合わせは漢方医学の核心的概念であり、登録販売者も「補血薬(四物湯系)と清熱薬(黄連解毒湯系)の組み合わせ」として知識を整理しておくことが有用。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(黄連解毒湯=ダイオウ主成分の瀉下処方は誤り)は正しく一意。黄連解毒湯4生薬(オウレン・オウゴン・オウバク・サンシシ)はカンゾウ・マオウ・ダイオウいずれも非含有(手引きの「カンゾウを含まない処方」代表例)で清熱解毒が目的、で確定。よってイ(黄連解毒湯=カンゾウ非含有)は正。温清飲=四物湯(ジオウ・シャクヤク・センキュウ・トウキ)+黄連解毒湯の合方でカンゾウ含有・ダイオウ非含有、オ(合方の説明)は正。サンシシ長期服用の腸間膜静脈硬化症リスクは手引き・PMDA注意喚起に整合。出典: ツムラ15黄連解毒湯・ツムラ57温清飲添付文書、一般用漢方製剤承認基準。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。