第3章 主な医薬品とその作用62主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)

登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問62:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)

抑肝散(よくかんさん)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 抑肝散は体力が中等度の人に向き、神経が過敏で怒りっぽく、興奮しやすい人の不眠・神経症などに用いられる。
  • 酸棗仁湯は体力が虚弱な人に向き、心身が疲れ果てて眠れない人(不眠症)に用いられる処方である。
  • 加味帰脾湯はカンゾウ(甘草)・ダイオウ(大黄)の両方を含む処方で、不眠に伴う便秘解消も同時に目的とする。正答
  • 抑肝散はカンゾウ(甘草)を含む処方であり、長期服用で偽アルドステロン症が生じるおそれがある。
  • 加味帰脾湯は体力が虚弱な人に向き、貧血・不安感・不眠などを伴う精神的な疲れに用いられる処方である。
正答:加味帰脾湯はカンゾウ(甘草)・ダイオウ(大黄)の両方を含む処方で、不眠に伴う便秘解消も同時に目的とする。

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正答はウ(誤っているもの)です。

加味帰脾湯にはカンゾウは含まれますが、ダイオウ(大黄)は含まれません。「便秘解消も目的とする」という記述は誤りです。加味帰脾湯は血を補い不安・不眠・貧血に対応する処方で、瀉下(下剤)成分は配合されていません。

3処方の証の違いを覚えるなら:

  • 抑肝散: 中等度・怒りっぽい・興奮する人の不眠・神経症
  • 酸棗仁湯: 虚弱・疲れ果てて眠れない人の不眠症
  • 加味帰脾湯: 虚弱・貧血・不安がある人の不眠・精神疲労
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3処方の証・組成比較:

| 項目 | 抑肝散 | 酸棗仁湯 | 加味帰脾湯 |

|---|---|---|---|

| 体力の目安(証) | 中等度(虚実中間)・神経質・怒りやすい | 虚弱(心血虚)・慢性的な疲労 | 虚弱(気血両虚・貧血傾向) |

| 主な適応 | 神経過敏・怒りっぽい・不眠・神経症・小児の夜泣き | 心身が疲れ果て眠れない不眠症 | 不安・不眠・貧血・出血傾向・精神疲労 |

| カンゾウ含有 | あり | あり | あり |

| マオウ含有 | なし | なし | なし |

| ダイオウ含有 | なし | なし | なし ← ウの誤りの根拠 |

| キー生薬 | チョウトウコウ(釣藤鈎)・ブクリョウ・センキュウ等 | サンソウニン(酸棗仁)・ブクリョウ・チモ・センキュウ等 | ニンジン・オウギ・サンソウニン・オンジ(遠志)・モッコウ等(複数) |

各選択肢の解説:

  • ア(正): 抑肝散は中等度の証で、神経過敏・怒りっぽい人の不眠・神経症・認知症に伴う周辺症状(BPSDへの応用も)に用いる。正しい記述。
  • イ(正): 酸棗仁湯は虚弱な人の不眠症(心身の疲れで眠れない)に用いる。体力がある人には向かない。
  • ウ(誤・正答): 加味帰脾湯はダイオウを含まない。不眠・貧血・不安に対応する補気補血の処方で、便秘解消は目的としない。
  • エ(正): 抑肝散はカンゾウを含む。偽アルドステロン症リスクがある(長期服用・他のカンゾウ含有薬との重複に注意)。
  • オ(正): 加味帰脾湯は虚弱な人の貧血・不安感・不眠・精神疲労に適する。帰脾湯に柴胡・山梔子を加えた「加味」処方で、熱(神経的興奮)を少し伴う場合にも対応できる。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【抑肝散の核心生薬チョウトウコウと神経過敏への薬理機序】

抑肝散の構成生薬(7生薬):

ソウジュツ・ブクリョウ・センキュウ・トウキ・サイコ・カンゾウ・チョウトウコウ

チョウトウコウ(釣藤鈎: アカネ科カギカズラ Uncaria rhynchophylla の茎の棘)の薬理:

  • リンコフィリン・イソリンコフィリン(テトラサイクリックオキシンドールアルカロイド)

- Ca²⁺拮抗作用(血管平滑筋の弛緩→降圧)

- NMDA受容体拮抗→グルタミン酸興奮毒性の軽減→神経過活動の抑制

- セロトニン(5-HT₂A)受容体の調節

  • アカデミックな知見: チョウトウコウのリンコフィリンはグルタミン酸系・セロトニン系・アドレナリン系を複合的に調整し、神経の過活動(怒り・興奮・不眠)を緩和する

抑肝散の認知症BPSD(行動・心理症状)への応用:

  • 認知症患者の「不眠・易怒性・徘徊・幻覚」(BPSD)に対する抑肝散の有効性が複数の臨床試験で示されている
  • 興奮系(グルタミン酸・ドーパミン)と抑制系(GABA・セロトニン)のバランス調整
  • 2018年以降、高齢化社会での認知症BPSD管理において漢方の選択肢として注目されている

【酸棗仁湯の中心生薬サンソウニンと不眠への機序】

酸棗仁湯(5生薬): サンソウニン・ブクリョウ・チモ・センキュウ・カンゾウ

サンソウニン(酸棗仁: クロウメモドキ科サネブトナツメ Ziziphus jujuba var. spinosa の種子)の薬理:

  • スピノシン・ジュジュボサイドB: GABA-A受容体の調節→鎮静・催眠
  • セロトニン受容体調節→不安軽減
  • 心拍数低下・自律神経調整

チモ(知母): ユリ科ハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)の根茎。「心」の熱(神経的な興奮・ほてり)を冷ます。虚弱な人の疲労・ほてりを伴う不眠に対してサンソウニンの鎮静作用を補完。

【加味帰脾湯の「気血両虚(きけつりょうきょ)」と補血補気の機序】

帰脾湯(加味帰脾湯の原方)の構成: ニンジン・オウギ・ビャクジュツ・ブクリョウ・サンソウニン・リュウガンニク・モッコウ・オンジ(遠志)・トウキ・タイソウ・ショウキョウ・カンゾウ(12生薬)

加味(追加): サイコ・サンシシ(+ボタンピを加える製品もある)

気血両虚(気・血がともに不足)の症状: 疲れやすい・息切れ・貧血・顔色が悪い・不安・動悸・不眠・月経不順・出血傾向

補気(気を補う)生薬: ニンジン(ジンセノシド)・オウギ(アストラガロシド)→免疫調節・抗疲労・骨髄造血促進

補血(血を補う)生薬: トウキ・リュウガンニク(竜眼肉)・サンソウニン→造血・潤養・鎮静

「加味」としてサイコ・サンシシが追加された意味: 気血両虚に「熱(ほてり・神経興奮)」が加わった場合に対応。加味逍遥散との区別では「貧血・出血傾向がある」かどうかが加味帰脾湯の特徴。

【3処方の使い分け:登録販売者が購入者にヒアリングすべきポイント】

| 訴え | 最適な処方 | 選択の理由 |

|---|---|---|

| 「イライラして眠れない・怒りやすくなった」 | 抑肝散 | 神経過敏・怒りっぽい→肝の過亢進を抑制 |

| 「疲れ果てているのに眠れない・体が重い」 | 酸棗仁湯 | 心血虚(虚弱疲労)の不眠→サンソウニン鎮静 |

| 「貧血気味・不安で眠れない・最近気力がない」 | 加味帰脾湯 | 気血両虚+不安・貧血→補気補血で根本改善 |

カンゾウ含有(3処方共通)の注意: 3処方を同時に購入している顧客はカンゾウ重複リスクが高い。購入時に「今他の漢方も飲んでいますか」と必ず確認し、重複する場合は1剤を選択するよう案内する。

上位資格への接続: 抑肝散の認知症BPSD適応は現代的な漢方の重要トピック。薬剤師国家試験では「認知症の行動・心理症状に用いる漢方」「加味帰脾湯の月経異常・出血傾向への適用」「酸棗仁湯の鎮静成分(サンソウニン=GABA調整)」として出題される。登録販売者は「不眠の性質(怒りっぽい/疲れ果て/不安貧血)」を問診して適切な処方案内ができるよう3処方の区別を体系的に整理しておくことが不可欠。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 加味帰脾湯の構成生薬の誤記を修正。「エンジュカ(槐花)」は誤りで、正しくは「オンジ(遠志)」(帰脾湯系の安神生薬)。standard表・advanced本文の2箇所を訂正。加味帰脾湯=帰脾湯(ニンジン・オウギ・ビャクジュツ・ブクリョウ・サンソウニン・リュウガンニク・モッコウ・オンジ・トウキ・タイソウ・ショウキョウ・カンゾウ)+柴胡・山梔子。3処方ともカンゾウ含有・マオウ/ダイオウ非含有で正答ウ(加味帰脾湯にダイオウ=誤)は維持。出典: ツムラ137加味帰脾湯添付文書・一般用漢方製剤承認基準。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

抑肝散・酸棗仁湯・加味帰脾湯の証・不眠・神経過敏頻出度B

第3章 主な医薬品とその作用の他の問題

1
主な医薬品とその作用(かぜ薬・解熱鎮痛薬)
2
主な医薬品とその作用(アレルギー薬・抗ヒスタミン薬)
3
主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
4
主な医薬品とその作用(かぜ薬)
5
主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
6
主な医薬品とその作用(胃腸薬・制酸薬)

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