登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問64:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
便秘に用いる漢方処方に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア麻子仁丸(ましにんがん)は体力が中等度以下の人に向き、腸が乾燥してコロコロした便が出る傾向がある人の便秘に用いられる。
- イ大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)はダイオウ(大黄)とカンゾウ(甘草)の2生薬で構成され、体力に関係なく比較的広く便秘に用いられる。
- ウ麻子仁丸はダイオウ(大黄)を含む処方であり、妊婦への使用は禁忌とされている。
- エ桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)はダイオウ(大黄)を含む便秘の漢方処方であり、便秘と腹部膨満を同時に解消することを目的に用いられる。正答
- オ大黄甘草湯のカンゾウ(甘草)は長期服用で偽アルドステロン症が生じるおそれがあるため、長期連用には注意が必要である。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正答はエ(誤っているもの)です。
桂枝加芍薬湯はダイオウを含みません。「便秘」ではなく、お腹の張り(腹部膨満感)・腹痛・軟便・下痢傾向に用いる処方です。腸の動きが過敏で痙攣性の腹痛・便通不安定(過敏性腸症候群に近い状態)に向きます。
便秘に用いる漢方処方の使い分け:
- 麻子仁丸: 腸の乾燥型便秘(コロコロ便・虚証寄り)→ダイオウあり
- 大黄甘草湯: 広く使える・体力問わずの一般的便秘→ダイオウあり
- 桂枝加芍薬湯: 腹部膨満・過敏性腸症候群的な症状→ダイオウなし
3処方の証・組成比較:
| 項目 | 麻子仁丸 | 大黄甘草湯 | 桂枝加芍薬湯 |
|---|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 中等度以下(虚証〜中間)・腸乾燥型 | 体力に関係なく広く使用 | 中等度以下(虚証〜中間) |
| 主な適応 | 腸の乾燥による便秘(コロコロ便・いきみたい)・皮膚炎・加齢による便秘 | 一般的な便秘・便秘に伴う頭重・のぼせ | 腹部膨満・腹痛・下痢・便通異常(過敏性腸症候群的) |
| カンゾウ含有 | なし | あり(甘草) | あり |
| マオウ含有 | なし | なし | なし |
| ダイオウ含有 | あり(大黄)← ウ正の根拠 | あり(大黄)← イ正の根拠 | なし ← エの誤りの根拠 |
| 特徴的な生薬 | マシニン(麻子仁/亜麻仁様=潤腸通便)・キョウニン・シャクヤク等 | ダイオウ・カンゾウのみ(シンプル) | ケイヒ・シャクヤク・タイソウ・ショウキョウ・カンゾウ |
各選択肢の解説:
- ア(正): 麻子仁丸は虚証〜中間の腸が乾燥した便秘に用いる。高齢者・産後・病後の乾燥型便秘に向く。
- イ(正): 大黄甘草湯はダイオウ(瀉下)とカンゾウ(抗炎症・調和)の2成分。体力問わず使いやすい。
- ウ(正): 麻子仁丸はダイオウを含む。ダイオウは子宮収縮を誘発する可能性があり妊婦禁忌。授乳中も母乳移行のリスクから使用注意。
- エ(誤・正答): 桂枝加芍薬湯はダイオウを含まない便秘薬ではない。腸の痙攣・過敏性腸症候群的な腹部膨満・腹痛・便通異常に用いる処方で、便秘の解消を主目的としない。
- オ(正): 大黄甘草湯のカンゾウは偽アルドステロン症リスクがある。2生薬のシンプルな処方だが、長期連用には偽アルドステロン症・低カリウム血症の注意が必要。
【麻子仁丸の「腸乾燥型便秘」と含有生薬の薬理】
麻子仁丸の構成(6生薬): マシニン・シャクヤク・キョウニン・ダイオウ・コウボク・キジツ
マシニン(麻子仁: アサ科アサ Cannabis sativa の種子=果実。日本薬局方では成熟果実を用い、麻薬・大麻取締法上の規制対象部位ではない)の薬理:
- 油脂(リノール酸・オレイン酸等の脂肪油)が主成分
- 腸管を直接潤す「潤腸通便」作用(腸管壁に油性膜→便の乾燥防止・滑沢作用)
- 大腸刺激性ではなく、腸管内容物を柔らかくして排出を助ける作用
キョウニン(杏仁: バラ科アンズ Prunus armeniaca の種子)の役割:
- アミグダリン(シアン配糖体)→腸管内でベンズアルデヒドと少量のHCN→腸蠕動促進
- 呼吸系(鎮咳)への副次効果もある
コウボク・キジツの理気作用: 腸管のガス・蠕動不全を改善→便の停滞解消
麻子仁丸が選ばれる臨床場面:
- 高齢者の乾燥型便秘(腸管水分吸収が増加し便が固くなる加齢変化)
- 手術後・産後の一時的な腸機能低下
- 他の刺激性下剤で腸が過剰反応する人
【大黄甘草湯の「即効・シンプル」と用量調整の意義】
大黄甘草湯の最大の特徴: ダイオウとカンゾウの2生薬のみで構成されたシンプルな便秘処方。
用量と効果の関係:
- ダイオウを多めにする→強い瀉下効果(重症便秘向け)
- ダイオウを少なめにする→穏やかな瀉下(軽い便秘・高齢者向け)
この「用量で強弱調整できる」点が大黄甘草湯の利便性。体力不問で使いやすいとされるが、カンゾウが含まれるため長期使用での偽アルドステロン症リスクは存在する。
ダイオウの瀉下機序(重要):
1. センノシドA・B(アントラキノン配糖体)→大腸でセンナジン(アグリコン)に変換
2. センナジン→大腸粘膜の腸神経叢を刺激→蠕動運動亢進
3. さらに水分・電解質の腸管内分泌を促進→便を柔らかくして排出促進
依存性・耐性のリスク: ダイオウ・センナ系の刺激性下剤は長期連用で大腸の神経叢が麻痺(大腸メラノーシス・弛緩性便秘への移行リスク)。大黄甘草湯も長期連用を避ける必要がある。
【桂枝加芍薬湯の過敏性腸症候群(IBS)的適応の現代的理解】
桂枝加芍薬湯の構成: ケイヒ・シャクヤク(多め)・カンゾウ・タイソウ・ショウキョウ(桂枝湯のシャクヤク増量版)
シャクヤク増量の意義:
- シャクヤクの平滑筋弛緩(Ca²⁺拮抗)・鎮痙作用が増強される
- 腸管の過剰収縮(痙攣)を緩和→腹痛・下痢・便通不安定が改善
現代医学的には過敏性腸症候群(IBS)に相当する状態:
- 腹部膨満・ガス・腹痛→排便後に楽になる
- 便通が不安定(便秘と下痢を交互に繰り返す)
- ストレス関連で悪化
桂枝加芍薬湯(シャクヤク増量・ダイオウなし)vs麻子仁丸(ダイオウあり・乾燥便秘)の区別が試験の頻出ポイント:
- 「軟便・下痢傾向・腹部膨満・腸の痙攣」→桂枝加芍薬湯
- 「硬い便・コロコロ便・腸が乾燥している」→麻子仁丸
【ダイオウ含有処方の共通注意事項まとめ】
妊婦への注意:
- ダイオウ(センノシド)は腸管蠕動亢進→腹圧上昇→子宮収縮誘発→流産・早産リスク
- 妊婦は麻子仁丸・大黄甘草湯とも禁忌
授乳中の注意:
- センナジン(ダイオウの活性代謝物)が母乳に移行→乳児に下痢・腹痛
高齢者への注意:
- 電解質バランスが崩れやすい→ダイオウによるK+排泄増加
- 利尿薬との相互作用リスク(低カリウム血症)
上位資格への接続: 機能性便秘の現代的管理では「腸型(弛緩性/痙攣性/直腸性)」の分類が重要。漢方便秘薬はこの分類に対応した処方選択が求められ、麻子仁丸(乾燥・弛緩型)・大黄甘草湯(一般型)・桂枝加芍薬湯(痙攣型・IBS型)という整理は薬剤師国家試験・漢方専門医試験で頻出。登録販売者も便秘の「型」をヒアリングで判断し、「コロコロ硬い」vs「お腹が張って痛い」vs「日によって違う」で処方を使い分けることが実務上の価値につながる。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(桂枝加芍薬湯=ダイオウ含有の便秘処方は誤り)は正しく一意。桂枝加芍薬湯5生薬(シャクヤク多め・ケイヒ・ショウキョウ・タイソウ・カンゾウ)はダイオウ非含有で、腹部膨満・腹痛・しぶり腹(過敏性腸症候群的状態)に用い便秘解消が主目的でない、で確定。ダイオウで便秘に用いるのは「桂枝加芍薬大黄湯」(別処方)。麻子仁丸はダイオウ含有・カンゾウ非含有(→ウ正、表記の「製品差あり」削除)、大黄甘草湯はダイオウ・カンゾウの2生薬(→イ・オ正)。妊婦へのダイオウ(センノシド)注意は手引き準拠。マシニン基原を「アサ科アサの種子(局方の規制対象外部位)」に訂正。出典: ツムラ126麻子仁丸・ツムラ84大黄甘草湯・ツムラ60桂枝加芍薬湯添付文書、一般用漢方製剤承認基準。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。