問題
便秘に用いる漢方処方に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(誤っているもの)です。
桂枝加芍薬湯はダイオウを含みません。体力中等度以下で、腹部膨満感のあるもののしぶり腹・腹痛・下痢・便秘に用いる処方です。腸の動きが過敏で痙攣性の腹痛・便通不安定(過敏性腸症候群に近い状態)に向きます。
便秘に用いる漢方処方の使い分け:
- 麻子仁丸: 腸の乾燥型便秘(コロコロ便・虚証寄り)→ダイオウあり
- 大黄甘草湯: 広く使える・体力問わずの一般的便秘→ダイオウあり
- 桂枝加芍薬湯: 腹部膨満・過敏性腸症候群的な症状→ダイオウなし
3処方の証・組成比較:
| 項目 | 麻子仁丸 | 大黄甘草湯 | 桂枝加芍薬湯 |
|---|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 中等度以下(虚証〜中間)・腸乾燥型 | 体力に関係なく広く使用 | 中等度以下(虚証〜中間) |
| 主な適応 | ときに便が硬く塊状なもの(コロコロ便)の便秘・便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎等 | 便秘・便秘に伴う頭重・のぼせ等 | 腹部膨満感のあるもののしぶり腹・腹痛・下痢・便秘 |
| カンゾウ含有 | なし | あり(甘草) | あり |
| マオウ含有 | なし | なし | なし |
| ダイオウ含有 | あり(大黄)← ウ正の根拠 | あり(大黄)← イ正の根拠 | なし ← エの誤りの根拠 |
| 特徴的な生薬 | マシニン(麻子仁/亜麻仁様=潤腸通便)・キョウニン・シャクヤク等 | ダイオウ・カンゾウのみ(シンプル) | ケイヒ・シャクヤク・タイソウ・ショウキョウ・カンゾウ |
各選択肢の解説:
- ア(正): 麻子仁丸は虚証〜中間の腸が乾燥した便秘に用いる。高齢者・産後・病後の乾燥型便秘に向く。
- イ(正): 大黄甘草湯はダイオウ(瀉下)とカンゾウ(抗炎症・調和)の2成分。体力問わず使いやすい。
- ウ(正): 麻子仁丸はダイオウを含む。手引きでは、本剤を使用している間は他の瀉下薬の使用を避ける必要があるとされる(併用すると激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすくなる)。なお妊婦又は妊娠していると思われる人は、瀉下薬として使用前に「相談すること」の対象。
- エ(誤・正答): 桂枝加芍薬湯はダイオウを含まない(ダイオウを含むのは大黄甘草湯・大黄牡丹皮湯・麻子仁丸)。体力中等度以下で腹部膨満感のあるもののしぶり腹・腹痛・下痢・便秘に用いる。
- オ(正): 大黄甘草湯のカンゾウは偽アルドステロン症リスクがある。2生薬のシンプルな処方だが、長期連用には偽アルドステロン症・低カリウム血症の注意が必要。
【麻子仁丸の「腸乾燥型便秘」と含有生薬の薬理】
麻子仁丸の構成(6生薬): マシニン・シャクヤク・キョウニン・ダイオウ・コウボク・キジツ
マシニン(麻子仁)の薬理:
- 油脂(リノール酸・オレイン酸等の脂肪油)が主成分
- 腸管を直接潤す「潤腸通便」作用(腸管壁に油性膜→便の乾燥防止・滑沢作用)
- 大腸刺激性ではなく、腸管内容物を柔らかくして排出を助ける作用
キョウニン(杏仁: バラ科アンズ Prunus armeniaca の種子)の役割:
- アミグダリン(シアン配糖体)→腸管内でベンズアルデヒドと少量のHCN→腸蠕動促進
- 呼吸系(鎮咳)への副次効果もある
コウボク・キジツの理気作用: 腸管のガス・蠕動不全を改善→便の停滞解消
麻子仁丸が選ばれる臨床場面:
- 高齢者の乾燥型便秘(腸管水分吸収が増加し便が固くなる加齢変化)
- 手術後・産後の一時的な腸機能低下
- 他の刺激性下剤で腸が過剰反応する人
【大黄甘草湯の「即効・シンプル」と用量調整の意義】
大黄甘草湯の最大の特徴: ダイオウとカンゾウの2生薬のみで構成されたシンプルな便秘処方。
用量と効果の関係:
- ダイオウを多めにする→強い瀉下効果(重症便秘向け)
- ダイオウを少なめにする→穏やかな瀉下(軽い便秘・高齢者向け)
この「用量で強弱調整できる」点が大黄甘草湯の利便性。体力不問で使いやすいとされるが、カンゾウが含まれるため長期使用での偽アルドステロン症リスクは存在する。
ダイオウの瀉下機序(重要):
1. センノシドA・B(アントラキノン配糖体)→大腸でセンナジン(アグリコン)に変換
2. センナジン→大腸粘膜の腸神経叢を刺激→蠕動運動亢進
3. さらに水分・電解質の腸管内分泌を促進→便を柔らかくして排出促進
依存性・耐性のリスク: ダイオウ・センナ系の刺激性下剤は長期連用で大腸の神経叢が麻痺(大腸メラノーシス・弛緩性便秘への移行リスク)。大黄甘草湯も長期連用を避ける必要がある。
【桂枝加芍薬湯の過敏性腸症候群(IBS)的適応の現代的理解】
桂枝加芍薬湯の構成: ケイヒ・シャクヤク(多め)・カンゾウ・タイソウ・ショウキョウ(桂枝湯のシャクヤク増量版)
シャクヤク増量の意義:
- シャクヤクの平滑筋弛緩(Ca²⁺拮抗)・鎮痙作用が増強される
- 腸管の過剰収縮(痙攣)を緩和→腹痛・下痢・便通不安定が改善
現代医学的には過敏性腸症候群(IBS)に相当する状態:
- 腹部膨満・ガス・腹痛→排便後に楽になる
- 便通が不安定(便秘と下痢を交互に繰り返す)
- ストレス関連で悪化
桂枝加芍薬湯(シャクヤク増量・ダイオウなし)vs麻子仁丸(ダイオウあり・乾燥便秘)の区別が試験の頻出ポイント:
- 「軟便・下痢傾向・腹部膨満・腸の痙攣」→桂枝加芍薬湯
- 「硬い便・コロコロ便・腸が乾燥している」→麻子仁丸
【ダイオウ含有処方の共通注意事項まとめ】
妊婦への注意:
- 刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬は一般に、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがある
- 妊婦又は妊娠していると思われる人は、使用前に医師・薬剤師等に「相談すること」とされている(麻子仁丸・大黄甘草湯とも瀉下薬として対象)
授乳中の注意:
- ダイオウは吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られ、乳児に下痢を生じるおそれがある
- 構成生薬にダイオウを含む漢方処方製剤では、母乳を与える女性は使用を避けるか、使用期間中の授乳を避けることとされている
併用・体質の注意:
- 麻子仁丸・大黄甘草湯・大黄牡丹皮湯を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける(激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすくなるため)
- 胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる
上位資格への接続: 機能性便秘の現代的管理では「腸型(弛緩性/痙攣性/直腸性)」の分類が重要。漢方便秘薬はこの分類に対応した処方選択が求められ、麻子仁丸(乾燥・弛緩型)・大黄甘草湯(一般型)・桂枝加芍薬湯(痙攣型・IBS型)という整理が処方選択の目安になる。登録販売者も便秘の「型」をヒアリングで判断し、「コロコロ硬い」vs「お腹が張って痛い」vs「日によって違う」で処方を使い分けることが実務上の価値につながる。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章Ⅲ-2-2)「代表的な配合成分等、主な副作用」(腸の薬・漢方処方製剤) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

