登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問68:主な医薬品とその作用(生薬製剤・健胃薬)
センブリ・ゲンチアナ・リュウタン(竜胆)の基原および作用に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アセンブリはキク科植物センブリの地上部を基原とし、主成分スウェルチアマリンが苦味健胃作用を示す。
- イゲンチアナはリンドウ科植物ゲンチアナ(Gentiana lutea)の根および根茎を基原とし、主成分ゲンチオピクリンが苦味健胃作用を示す。正答
- ウリュウタン(竜胆)はリンドウ科植物トウリンドウ等の根および根茎を基原とし、ゲンチアナと全く同一の成分構成を持つ。
- エセンブリはオブラートに包んで服用することで苦みを感じさせずに健胃効果を発揮できるため、苦みが苦手な人にはオブラート包用が推奨される。
- オリュウタン(竜胆)はリンドウ科植物トウリンドウ等の果実を基原とし、甘味成分による滋養強壮作用を主目的として用いられる。
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正答はイです。
「ゲンチアナはリンドウ科植物ゲンチアナ(Gentiana lutea)の根および根茎を基原とし、主成分ゲンチオピクリンが苦味健胃作用を示す」という記述が正しいです。
誤りの選択肢を確認しましょう。アのセンブリはキク科ではなくリンドウ科です。ウのリュウタンとゲンチアナは同じリンドウ科ですが、成分が「全く同一」とまでは言えません。エは苦味健胃薬をオブラートに包むと苦みが遮断されて効果が弱まるため、オブラート包用は不可です。オのリュウタンは果実ではなく根および根茎が基原で、苦味健胃薬です(甘味成分による滋養強壮ではありません)。
暗記法: 「センブリ・ゲンチアナ・リュウタンは全員リンドウ科の苦み三兄弟」と覚えましょう。苦い=健胃のため、オブラートNG(苦みをしっかり感じさせる)。
苦味健胃生薬(センブリ・ゲンチアナ・リュウタン)の基原・成分比較:
| 生薬名 | 植物名(科名) | 薬用部位 | 主な苦味成分 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| センブリ | リンドウ科センブリ(Swertia japonica) | 地上部(全草) | スウェルチアマリン(セコイリドイド配糖体) | 日本固有種。「千回振り出しても苦い」が名前の由来 |
| ゲンチアナ | リンドウ科ゲンチアナ(Gentiana lutea) | 根・根茎 | ゲンチオピクリン(セコイリドイド配糖体) | 欧州(アルプス)原産。苦味価が高い |
| リュウタン(竜胆) | リンドウ科トウリンドウ等 | 根・根茎 | ゲンチオピクリン・ゲンチアニン等 | 中国・東アジア原産。基原がゲンチアナと別種 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): センブリはキク科ではなくリンドウ科植物センブリ(Swertia japonica)の地上部(全草)が基原です。キク科は誤りです。スウェルチアマリンという苦味成分を含む点は正しいです。
- イ(正・正答): ゲンチアナの基原はリンドウ科植物 Gentiana lutea(セイヨウリンドウ)の根・根茎で、主成分ゲンチオピクリン(セコイリドイド配糖体)が苦味を呈して健胃効果を示します。欧州(アルプス山岳地帯)を原産地とし、日本薬局方収載生薬です。
- ウ(誤): リュウタン(竜胆)はリンドウ科植物トウリンドウ(Gentiana scabra var. buergeri 等)の根・根茎が基原で、ゲンチアナと同科同属ですが別種です。ゲンチオピクリンを含む点は共通しますが、「全く同一の成分構成」とは言えません。産地・種・副成分が異なります。
- エ(誤): 苦味健胃薬の作用は「苦みを感じることで唾液・胃液の分泌を反射的に促進する」ことが本質です。オブラートに包むと苦みが感じられなくなり、健胃効果が弱まります。苦味健胃薬のオブラート包用は推奨されず、むしろ避けるべきです。
- オ(誤): リュウタン(竜胆)の基原はリンドウ科植物トウリンドウ(Gentiana scabra var. buergeri 等)の根および根茎であり、果実ではありません。また主作用は果実由来の甘味成分による滋養強壮ではなく、ゲンチオピクリン等のセコイリドイド配糖体(苦味成分)による苦味健胃です。「果実を基原とし、甘味成分による滋養強壮作用」という記述は基原・成分・作用のいずれも誤りです。
【セコイリドイド配糖体の苦味と胃腸への薬理機序】
センブリ・ゲンチアナ・リュウタンに共通する苦味成分はセコイリドイド配糖体(secoiridoid glycoside)です。代表例:
- センブリ: スウェルチアマリン(swertiamarin)・アマロゲンチン(amarogentin)
- ゲンチアナ: ゲンチオピクリン(gentiopicroside)・アマロゲンチン
- リュウタン: ゲンチオピクリン・ゲンチアニン(gentianine)
苦味受容体から胃液分泌への経路:
1. 舌の苦味受容体(TAS2R38 等、T2R ファミリー)が苦味物質を認識
2. G タンパク(Gα-gustducin)→ PLCβ2 → IP3 → 細胞内 Ca²⁺上昇 → グスタシン(gustacin)放出
3. 咽頭・食道壁の求心性迷走神経を介して延髄孤束核(NTS)に信号伝達
4. 遠心性迷走神経(副交感神経)が胃の壁細胞・主細胞・G 細胞を刺激
5. 胃酸(HCl)・ペプシノゲン・ガストリン分泌増加 → 消化促進
この反射弧の特性から、苦みが口腔粘膜に触れなければ反射は成立しません。オブラート包用・カプセル剤化・溶解前の服用では効果が低下します。
【ゲンチアナとリュウタンの植物学的な詳細比較】
| 特性 | ゲンチアナ(Gentiana lutea) | リュウタン(竜胆) |
|---|---|---|
| 学名 | Gentiana lutea L. | Gentiana scabra Bunge var. buergeri Maxim. 等 |
| 別名 | セイヨウリンドウ・苦根 | 和リンドウ・トウリンドウ |
| 原産地 | 欧州中部(アルプス・ピレネー山脈) | 中国・朝鮮半島・日本 |
| 形態 | 多年草・黄色花・草丈60〜120cm | 多年草・紫青色花(秋咲き) |
| 薬用部位 | 根・根茎(採取後乾燥) | 根・根茎 |
| 苦味価(Bp) | 非常に高い(EU Pharmacopoeia 基準で 10,000 以上) | 高い |
| 日本薬局方収載 | 収載(ゲンチアナ) | 収載(リュウタン) |
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): リュウタン(竜胆)の基原を一次ソースで突合。手引き・日本薬局方ともに「リンドウ科 Gentiana scabra(トウリンドウ)等の根および根茎」で確定(GENTIANAE SCABRAE RADIX)。本問の表記「根および根茎」は正。あわせて、改訂前の選択肢オ(ゲンチアナ=欧州/リュウタン=アジアの産地差)は事実として正しく、正答イとの二重正答を構成していたため、選択肢オをリュウタンの薬用部位・成分・作用を誤らせる記述(果実・甘味・滋養強壮)に差し替えて正答を「イ」に一意化した。 -->
【センブリの特徴と日本固有性】
センブリ(Swertia japonica)は日本・中国に自生するリンドウ科の1年草です。「千回振り出しても苦い」という意味で「千振(センブリ)」の名がつきました。
主成分スウェルチアマリン(swertiamarin)は以下の薬理作用が報告されています:
- 胃液分泌促進・健胃(苦味健胃機序)
- 胆汁分泌促進(利胆)
- 抗炎症(NF-κB 経路抑制)
- 抗酸化・抗菌
センブリは日本の民間薬として古くから利用され、「センブリ茶」は胃の不調・食欲不振に広く用いられてきました。現代では健胃散等の散剤成分として日本薬局方に収載されています。
【苦味健胃薬の臨床的位置づけと登録販売者の実務】
苦味健胃薬は機能性ディスペプシア(器質的疾患を持たない慢性的な胃不快感・食欲不振)に対する補助療法として有用です。ただし登録販売者として以下を確認する必要があります:
1. 使用期間の上限: 苦味健胃薬のみで改善がない場合、2週間を目安に受診勧奨が必要です。胃癌・胃潰瘍・逆流性食道炎等の器質的疾患を見逃すリスクがあります。
2. 授乳中・妊婦への確認: ゲンチアナ等は大量摂取で子宮収縮作用が懸念される場合があります(手引き記載外の注意事項として薬剤師相談を促す)。
3. オブラート包用の誤指導防止: 服用補助目的で勝手にオブラートに包む患者がいるため、「苦みが健胃の鍵なので、包まずにそのまま服用してください」という指導が必要です。
【上位資格との接続:機能性消化管障害の最新エビデンス】
薬剤師・医師向けの知識として、機能性ディスペプシア(FD)のローマ基準Ⅳ(2016)では、FD は「食後愁訴症候群(PDS)」と「心窩部痛症候群(EPS)」に分類されます。苦味健胃薬は主に PDS(食後の胃もたれ・早期満腹感)に対して有効とされ、胃の accommodation(受容弛緩)改善・胃排出促進に寄与する可能性があります。登録販売者として「2週間改善なし→医師へ」という受診勧奨のタイミングを正確に把握することが、FD の早期診断・適切治療につながります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第8節「胃の薬(健胃薬)」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。