登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問82:主な医薬品とその作用(成分群の共通注意・横断テーマ)
一般用医薬品に含まれるカフェインに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アカフェインは中枢神経系のアデノシン受容体を遮断することで覚醒・興奮作用を発揮し、眠気防止薬の主成分として配合されるほか、かぜ薬や鎮痛薬にも配合されている場合がある。
- イ眠気防止薬にはカフェインが高含量で配合されており、かぜ薬・鎮痛薬にもカフェインが配合されている場合があるため、複数の医薬品を同時に服用する際は、カフェインの合計摂取量に注意する必要がある。
- ウカフェインを含む眠気防止薬は、眠気を防ぐ目的には有効だが、睡眠不足の解消にはならないため、重大な事故を引き起こすおそれがある状況(乗り物の運転等)での使用は危険である。
- エカフェインは腎臓でのナトリウム・水分の再吸収を促進する作用があるため、尿量を増やすことなく体液の保持に働き、高血圧の人でも安全に使用できる。正答
- オカフェインを長期・大量に摂取すると依存性が生じることがあり、急に摂取をやめると頭痛・倦怠感等の離脱症状(禁断症状)が現れることがある。
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正答はエ(誤っているもの)です。
カフェインは腎臓でのナトリウム・水分の再吸収を抑制(利尿作用)します。つまり尿量が増えます。「再吸収を促進して体液を保持する・高血圧でも安全」は逆の記述であり誤りです。
カフェインの主なポイント:
- アデノシン受容体を遮断→覚醒・興奮作用
- 利尿作用:腎での再吸収抑制→尿量増加
- 複数製品の重複摂取:かぜ薬・鎮痛薬・眠気防止薬に共通含有→合計量に注意
- 依存性・離脱症状あり:頭痛・倦怠感
- 眠気は防げても睡眠不足は解消できない:運転等の危険な状況では不十分
高血圧・心臓病・胃潰瘍の人はカフェインの摂取に注意が必要です。
カフェインが配合される一般用医薬品カテゴリと含有量の目安:
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 手引きはカフェインの製品別含有量を数値で一律に定めていない。下表の含有量は市販製品の一般的傾向を示す参考値であり、実際の含有量は各製品の添付文書で確認すること。手引きが定めるのは「眠気防止薬では1回・1日の摂取量に上限があること」「カフェインを含む他の医薬品・飲食物との重複摂取に注意すること」という考え方。 -->
| カテゴリ | 配合目的 | 含有量の傾向(参考) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 眠気防止薬(主成分) | 覚醒・興奮作用 | 多い(高含量) | カフェインが主成分として配合される |
| かぜ薬(補助成分) | 解熱鎮痛成分の効果増強・覚醒 | 比較的少ない | 補助的に配合されることがある |
| 解熱鎮痛薬(補助成分) | 鎮痛効果の補助 | 比較的少ない | 補助的に配合されることがある |
> 眠気防止薬では、カフェインの1回量・1日量に上限が定められています。かぜ薬・解熱鎮痛薬にもカフェインが含まれる場合があるため、複数製品やコーヒー・エナジードリンク等の飲食物との重複摂取で過剰にならないよう注意が必要です。
各選択肢の解説:
- ア(正): カフェインは内因性眠気シグナルであるアデノシン(特にA₁・A₂A受容体)を競合的に遮断します。アデノシンは睡眠促進・覚醒抑制物質であり、これを遮断することで眠気が軽減・覚醒が維持されます。眠気防止薬の主成分として高含量配合されるほか、かぜ薬・鎮痛薬にも補助的に配合される場合があります。正しい記述です。
- イ(正): 眠気防止薬にはカフェインが主成分として配合されており、かぜ薬・鎮痛薬にも補助成分として含まれることがあります。複数の医薬品を同時に使用すると、カフェインを重複摂取することになります。コーヒー・エナジードリンク等の飲食物からのカフェイン摂取と合わせると総摂取量が増大します。正しい記述です。
- ウ(正): 眠気防止薬は眠気を一時的に軽減しますが、睡眠不足そのものを解消するわけではありません。疲労・睡眠不足の状態で乗り物を運転するのは、眠気防止薬を使用しても危険であり、事故のリスクが高まります。正しい記述です。
- エ(誤・正答): カフェインは腎臓の尿細管でのナトリウムや水分の再吸収を抑制(利尿作用)します。その結果、尿量が増加します。「再吸収を促進・体液保持」は逆の作用です。また、カフェインは心拍数増加・血圧上昇の作用もあり、高血圧の人は注意が必要で「安全に使用できる」とは言えません。
- オ(正): カフェインには精神的依存性があります。習慣的な多量摂取者が急に摂取を中断すると、頭痛(血管拡張によるとされる)・倦怠感・眠気・集中力低下等の離脱症状が現れることがあります。これはカフェイン離脱症候群として知られています。正しい記述です。
【カフェインの薬理機序と一般用医薬品での横断的リスク管理】
アデノシン受容体遮断の詳細:
カフェインはキサンチン誘導体(1,3,7-トリメチルキサンチン)であり、内因性プリン体であるアデノシンと構造的に類似しています。
| アデノシン受容体 | 分布 | アデノシンの作用 | カフェイン遮断の結果 |
|---|---|---|---|
| A₁受容体 | 脳(大脳皮質・海馬・小脳)、心臓 | 神経抑制、心拍減少 | 神経興奮、心拍数影響 |
| A₂A受容体 | 線条体、血管内皮 | 睡眠促進、血管拡張 | 覚醒維持、血管収縮(血圧上昇) |
| A₂B受容体 | 末梢組織 | 血管拡張、気管支弛緩 | 気管支収縮(過剰量) |
| A₃受容体 | 肺、肝臓 | 炎症調整 | — |
睡眠圧(睡眠負債)とカフェインの限界:
- アデノシンは覚醒時間が長くなるほど脳内に蓄積し「睡眠圧」を形成します。
- カフェインはアデノシンの「受容体への結合」を阻止しますが、アデノシン自体の蓄積は止めません。
- カフェインが代謝・消失した後、蓄積したアデノシンが一気に受容体に結合→強い眠気と疲労感が押し寄せます(「カフェインクラッシュ」)。
- このため、睡眠不足を抱えたまま眠気防止薬だけで乗り物の運転・機械操作を続けることは危険です。
利尿作用の機序(エの誤りの詳細):
- カフェインは腎臓の尿細管(主に近位尿細管・ヘンレ係蹄上行脚)において、アデノシン受容体遮断を介したcAMP増加により、ナトリウム・カリウム・水分の再吸収を抑制します。
- また、腎血流量増加・糸球体濾過率増加の作用もあります。
- 結果として尿量が増加(利尿作用)します。
- 慢性的な高カフェイン摂取者ではこの利尿作用に対して一定の耐性が形成されますが、新規に大量摂取した場合の脱水・電解質失調には注意が必要です。
心血管系への影響(高血圧・心臓病への注意):
- カフェインは低〜中用量でA₁・A₂A受容体遮断→心拍数増加・血圧上昇をもたらします。
- 高血圧患者:降圧薬の効果を弱める可能性・血圧管理が不安定になる
- 不整脈(心房細動等):カフェインは期外収縮・不整脈のリスクを増大させることがあります
- 狭心症:心拍数・血圧上昇→心筋の酸素需要増大→発作誘発のリスク
依存性と離脱症状(カフェイン離脱症候群):
- 継続的に1日200mg以上のカフェインを摂取すると身体的依存が形成されます。
- 急な中断(24〜48時間後)に出現する症状:頭痛(最も一般的)・疲労感・眠気・集中力低下・イライラ・悪心
- 機序:慢性的なアデノシン受容体遮断→受容体の代償的アップレギュレーション(感受性増大)→カフェイン中断でアデノシン効果が過剰発現→血管拡張性頭痛等が生じます。
- これはDSM-5で「カフェイン離脱」として診断基準が設けられており、医薬品安全性の観点からも重要です。
登録販売者の実務対応:
| 確認事項 | リスクの詳細 | 対応 |
|---|---|---|
| 複数医薬品の同時服用 | かぜ薬+鎮痛薬+眠気防止薬→カフェイン過剰摂取 | 添付文書を一緒に確認・1製品に絞るか成分を確認 |
| エナジードリンク・コーヒーとの重複 | 飲食物のカフェイン(コーヒー1杯約80〜100mg)を加算 | 総摂取量の概算を伝える |
| 妊婦・授乳婦 | 胎児・乳児への移行(流産リスク・乳児の覚醒・不眠) | 使用を控えるよう指導。医師に相談を勧める |
| 小児への使用 | 小児の体重あたりの感受性は高い | 添付文書の年齢区分を厳守 |
| 心臓病・高血圧・胃潰瘍 | 心拍増加・血圧上昇・胃酸分泌促進 | 使用前に医師・薬剤師に相談を勧める |
カフェインは日常的に摂取する成分ですが、医薬品として扱われる場合はその配合量・相互作用・禁忌を正確に理解することが重要です。眠気防止薬は特に含有量が多いため、複数製品との重複を見逃さないよう登録販売者として確認する義務があります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 眠気防止薬・かぜ薬・解熱鎮痛薬(カフェインの横断的注意) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。