登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問9:主な医薬品とその作用(強心薬・循環器)
一般用医薬品の強心薬・循環器系成分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アセンソ(蟾酥)は強心成分として用いられるが、有効域と中毒域が近いため、用法・用量を正確に守ることが重要であり、1日の服用量を超えると心臓毒性(不整脈等)が生じるリスクがある。
- イジギタリス(ジギタリス製剤)は、強心配糖体としてOTC医薬品に広く使用されており、OTC強心薬の主力成分となっている。正答
- ウリュウノウ(竜脳)は一般用医薬品の強心薬に配合される成分であり、中枢神経系を刺激する作用がある。
- エユビデカレノン(コエンザイムQ10)は心筋細胞のミトコンドリア機能を助けるとされており、一般用医薬品として販売されているが、小児には使用できない。
- オ高コレステロール改善薬に配合されるパンテチン(パントテン酸誘導体)は、LDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させる作用が期待されている。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正答はイ(誤っているもの)です。
ジギタリスは医療用(処方箋医薬品)の強心配糖体であり、OTC医薬品には使用されていません。OTC強心薬の主な成分はセンソ(蟾酥)・リュウノウ・ジャコウ等の生薬です。ジギタリスは有効域が非常に狭く(有効量と中毒量が近い)医師管理が必須であるため、OTCとして販売することが困難な成分です。
ア・ウ・エ・オはいずれも正しい記述です。特にセンソについては「1日服用量を超えると心臓毒性」という記述が重要で、OTC強心薬であっても用量遵守が必須である点が頻出です。
OTC強心薬の主な成分と特性:
| 成分 | 由来 | 作用 | 注意事項 |
|---|---|---|---|
| センソ(蟾酥) | ヒキガエルの耳後腺分泌物乾燥品 | 強心(心筋収縮力増大) | 中毒域が近い→用量厳守 |
| ジャコウ(麝香) | ジャコウジカの分泌物 | 強心・精神安定 | 高価・本物は希少 |
| リュウノウ(竜脳) | 植物成分(ボルネオール) | 中枢神経刺激→強心補助 | 比較的安全 |
| ゴオウ(牛黄) | 牛の胆石 | 強心・解熱・鎮静 | 漢方薬(牛黄清心丸等)にも配合 |
各選択肢の解説:
- ア(正): センソ(蟾酥)はヒキガエル(ガマガエル)の耳後腺から分泌される白色の毒液を乾燥した生薬です。強心配糖体様の成分(ブファジエノリド類)を含み、心筋のNa+/K+-ATPaseを阻害して心筋収縮力を増大させます。この機序がジギタリスと類似しており、同様に有効域と中毒域が近いため、指示された量を厳守する必要があります。
- イ(誤・正答): ジギタリスはジギタリス(Digitalis lanata/purpurea)から抽出される強心配糖体(ジゴキシン・ジキトキシン等)ですが、有効域が非常に狭く(治療濃度と中毒濃度の差が小さい)、血中濃度の精密な管理が必要なため、OTC医薬品には用いられません(処方箋医薬品)。「OTC強心薬の主力成分」という記述は完全に誤りです。
- ウ(正): リュウノウはボルネオールを主成分とする植物性成分で、中枢神経を軽度に刺激することで強心薬の補助として機能します。芳香性があり、口腔・消化管粘膜での清涼感・局所刺激作用も持ちます。
- エ(正): ユビデカレノン(コエンザイムQ10・CoQ10)は心筋細胞のミトコンドリアにおける電子伝達系(呼吸鎖)の補助因子として心筋エネルギー代謝を助けます。OTC医薬品として「軽度な心疾患の補助」に使用されますが、小児への使用は安全性が確立していないため不可です。
- オ(正): パンテチンはパントテン酸(ビタミンB5)の誘導体で、補酵素A(CoA)の前駆体として脂質代謝を調節し、LDLコレステロール低下・HDLコレステロール増加作用が報告されています。OTCの高コレステロール改善薬として使用されますが、効果は医療用スタチン系薬に比べて弱く、食事療法との併用が基本です。
【センソとジギタリス:強心配糖体機序の共通性とOTC規制の違い】
センソ(蟾酥)の主成分はブファリン・シノブファリン等のブファジエノリド類(強心ステロイド)です。これらはジギタリス由来の強心配糖体(ジゴキシン等のカルデノリド類)と同様に心筋細胞膜のNa+/K+-ATPase(ナトリウムポンプ)を阻害します:
Na+/K+-ATPase阻害 → 細胞内Na+上昇 → Na+/Ca²+交換体(NCX)による Ca²+排出が低下 → 細胞内Ca²+増加 → 心筋収縮力増大(陽性変力効果)
過剰な細胞内Ca²+蓄積 → Ca²+過負荷 → 不整脈(心室性期外収縮・心室細動)・心毒性
この有効域と中毒域の狭さから、ジギタリスは血中濃度モニタリング必須の処方箋医薬品です。センソはジギタリスより有効量の幅がやや広く生薬規格(含有量の変動あり)のためOTCとして許可されていますが、規定量を超えた服用は危険です。
【コエンザイムQ10(ユビデカレノン)の生化学的役割と医薬品・サプリの区分】
コエンザイムQ10(CoQ10、ユビキノール/ユビキノン)はミトコンドリア内膜に存在し、電子伝達系の複合体I→Q→複合体III間で電子を運搬する脂溶性キャリアです。心筋はATP消費量が最大の組織であり、CoQ10不足で心筋エネルギー代謝が低下します。心不全患者では心筋CoQ10レベルが低下していることが報告されています。
注意すべき区分:
- 医薬品(OTC): 薬機法上の承認を得た「ユビデカレノン錠」→適応は「軽度な心疾患の場合の補助」。小児不可。
- 食品・サプリメント: 「CoQ10サプリ」はあくまで食品→薬機法上の効能効果の標榜不可(「心臓に効く」と書けない)。
この区分を混同させる引っかけが試験で頻出です。「OTC医薬品として販売されているユビデカレノン」と「サプリのCoQ10」は法的に異なるものです。
【高コレステロール改善薬の成分と限界】
OTC高コレステロール改善薬の位置づけは「食事療法との補助」であり、医療用スタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)とは効果の強さが根本的に異なります:
| 成分 | 作用機序 | 期待効果 | 限界 |
|---|---|---|---|
| パンテチン | CoA前駆体→脂質代謝改善 | LDL↓・HDL↑ | 効果は弱い |
| 大豆油不けん化物(ソイステロール) | 腸管でのコレステロール吸収阻害 | 血清コレステロール軽度低下 | 効果限定的 |
| ニコチン酸アミド | 末梢脂肪分解抑制(高用量ニコチン酸として) | LDL↓・TG↓・HDL↑ | OTC用量は少量・顔面紅潮(フラッシング)副作用 |
OTC高コレステロール改善薬の適応は「食事・生活習慣の改善で対処可能な境界域の高コレステロール」であり、医師から薬物療法が必要と診断されたレベルの高脂血症にはOTCでは対応不可です。登録販売者は「OTCの限界」を正直に伝え、必要に応じて医師受診を勧奨することが求められます。
【センソ含有OTC強心薬の購入者への実務対応】
センソ含有強心薬(「救心」等)を購入する消費者への対応として登録販売者が確認すべき事項:
1. 狭心症・重篤な心臓病の診断がないか(→医師管理が必要な疾患には不適)
2. 他の強心薬・ジギタリス製剤の服用がないか(→ジギタリス服用中にセンソは相互作用リスク)
3. 長期服用の場合は定期的な医師相談を勧める
4. 用法・用量を厳守し「調子が悪いから多めに飲む」を避けるよう説明
センソはOTCとはいえ強力な心臓作用薬であり、「薬局で買えるから安全」という誤解を正すことが登録販売者の重要な役割です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第6節・第7節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ「ジギタリスがOTC強心薬の主力成分」は誤り=ジギタリスは有効域が狭く血中濃度管理必須の医療用(処方箋医薬品)でOTC不使用、一意に誤りで正答イ確定。ア=センソは有効域/中毒域が近く1日量超で心臓毒性で正(手引きでもセンソは一定量超えると心臓に強い作用・劇薬指定相当)、ウ=リュウノウは中枢刺激で正、エ=ユビデカレノンは心筋ミトコンドリア補助・小児不可で正、オ=パンテチンはLDL低下/HDL増加で正。健康被害リスクとなる誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第6節「強心薬」・第7節「高コレステロール改善薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。