第3章 主な医薬品とその作用10主な医薬品とその作用(貧血薬・循環器)

登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問10:主な医薬品とその作用(貧血薬・循環器)

鉄欠乏性貧血の治療に用いられる一般用医薬品(貧血薬)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 鉄製剤は食後に服用すると食物成分との相互作用で吸収が著しく低下するため、必ず空腹時(食間または食前)に服用しなければならない。
  • 緑茶・紅茶等のタンニンを含む飲料と同時に服用することで、タンニンが鉄と結合して吸収を促進するため、お茶と一緒に飲むことが推奨されている。
  • ビタミンCを鉄製剤と同時に摂取すると、腸管内でFe³+(第二鉄)をFe²+(第一鉄)に還元し、鉄の吸収を促進する効果がある。正答
  • 鉄欠乏性貧血に対してOTC鉄製剤を2週間使用しても改善しない場合でも、継続使用で改善が期待できるため、医師への受診は不要である。
  • ビタミンB12(シアノコバラミン)は鉄欠乏性貧血の主要な治療成分であり、不足すると小球性低色素性貧血を生じる。
正答:ビタミンCを鉄製剤と同時に摂取すると、腸管内でFe³+(第二鉄)をFe²+(第一鉄)に還元し、鉄の吸収を促進する効果がある。

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正答はウです。

ビタミンC(アスコルビン酸)は鉄の吸収を助ける重要な成分です。腸管内で三価鉄(Fe³+)を二価鉄(Fe²+)に還元することで、小腸での吸収効率が高まります。鉄製剤とビタミンCの同時摂取はよく知られた吸収促進の組み合わせです。

アは誤りで、鉄製剤は空腹時の方が吸収率は高いですが、胃への刺激が強いため食後服用を指定している製品もあります(用法・用量に従う)。イは誤りで、タンニンは鉄と結合して不溶性のタンニン酸鉄を形成し吸収を「阻害」します。エは誤りで、改善しない場合は受診が必要です。オは誤りで、ビタミンB12欠乏は大球性(巨赤芽球性)貧血の原因です。

標準試験対策の基準レベル

貧血薬に関係する鉄の吸収を左右する要因:

| 要因 | 作用 | 理由 |

|---|---|---|

| ビタミンC | 吸収促進 | Fe³+→Fe²+還元。Fe²+の方が腸管から吸収されやすい |

| タンニン(お茶・コーヒー) | 吸収阻害 | タンニン酸鉄(不溶性)を形成→吸収されない |

| フィチン酸(全粒穀物) | 吸収阻害 | 鉄をキレート→不溶化 |

| 食後服用 | 吸収率やや低下 | 食物中の成分と競合・胃酸pHが上昇 |

| 空腹時 | 吸収率高い | ただし胃粘膜刺激が強い |

貧血の種類と原因栄養素(区別必須):

| 貧血の種類 | 原因成分 | 赤血球の特徴 |

|---|---|---|

| 鉄欠乏性貧血 | 鉄(Fe²+)不足 | 小球性・低色素性 |

| 悪性貧血(巨赤芽球性) | ビタミンB12・葉酸不足 | 大球性(MCV高い) |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): 鉄製剤は空腹時の方が胃酸pH低下(Fe³+→Fe²+還元が促進)で吸収率が高いですが、胃粘膜への刺激が強く(悪心・腹痛)、胃腸が弱い人では食後服用が指定される場合があります。「必ず空腹時に服用しなければならない」は誤りで、製品の用法・用量(食後・食間等)に従うことが基本です。
  • イ(誤): タンニン(緑茶・紅茶・コーヒー・赤ワイン等に含まれるポリフェノール)は鉄と結合してタンニン酸鉄(難溶性)を形成し、腸管からの鉄吸収を著しく低下させます。鉄製剤は水(白湯)で服用することが基本です。
  • ウ(正): 腸管上皮での鉄吸収は二価鉄(Fe²+)の形で二価金属イオントランスポーター(DMT1)を介して行われます。ビタミンC(アスコルビン酸)は還元作用によりFe³+(食物中の鉄の多くはこの形)をFe²+に変換し、吸収率を高めます。鉄製剤にビタミンCが一緒に配合されている製品も多くあります。
  • エ(誤): OTC貧血薬を適切に使用しても2週間程度で改善が見られない場合は、出血・消化管潰瘍・悪性腫瘍・内分泌疾患等の根本原因がある可能性があるため、医師への受診が必要です。「継続使用で改善が期待できるから受診不要」は誤りで、受診勧奨の判断は登録販売者の重要な役割です。
  • オ(誤): ビタミンB12(シアノコバラミン・ヒドロキソコバラミン等)は核酸合成・DNA複製に必要な補酵素で、不足するとDNA合成障害により赤血球前駆細胞が成熟できず大型になります(大球性(巨赤芽球性)貧血)。小球性低色素性貧血は鉄欠乏性貧血の特徴です。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【腸管における鉄吸収の分子機序】

食物中の鉄には二形態があります:

1. ヘム鉄(肉・魚の血色素由来): ヘムとして腸管上皮細胞のヘム輸送体(HCP1)から吸収→細胞内でヘムオキシゲナーゼによりFe²+が遊離→体内利用

2. 非ヘム鉄(植物性食品・鉄剤のFe³+が主): 十二指腸の刷子縁膜上のDcytb(十二指腸シトクロムb還元酵素)がFe³+→Fe²+に還元→DMT1(二価金属イオントランスポーター1)で吸収

ビタミンCはDcytbと同様の還元作用でFe³+→Fe²+変換を助けます。また、胃酸によってpHが低いほどFe³+の還元が促進されるため、胃酸分泌が低下している人(高齢者・制酸薬使用者・H2ブロッカー使用者)では鉄の吸収が低下します。

体内での鉄吸収量の調節: 体内鉄貯蔵量がフェリチン(鉄貯蔵タンパク)で感知され、ヘプシジン(肝臓産生ホルモン)によってフェロポルチン(腸管基底側の鉄輸送体)の発現が調節されます。鉄不足時→ヘプシジン低下→フェロポルチン発現増加→吸収・動員増加。炎症時(感染・関節リウマチ等)→IL-6でヘプシジン増加→鉄の動員が低下→慢性疾患性貧血。

【悪性貧血(ビタミンB12欠乏)との鑑別】

登録販売者の実務では、貧血の「種類」を正確に把握することが重要です:

| 検査値 | 鉄欠乏性貧血 | 巨赤芽球性貧血(B12・葉酸欠乏) |

|---|---|---|

| MCV(平均赤血球容積) | 低下(小球性) | 上昇(大球性) |

| MCH(平均赤血球Hb量) | 低下(低色素性) | 正常〜高い |

| 血清フェリチン | 低下 | 正常〜高い |

| 血清B12 | 正常 | 低下 |

| 血清葉酸 | 正常 | 低下(葉酸欠乏時) |

OTCの貧血薬(鉄・ビタミンB12・葉酸・銅等を配合した複合製剤が多い)では全ての成分を配合することで両者に対応しようとしていますが、根本的な鑑別は血液検査が必要です。「なんとなく貧血気味」でOTC貧血薬を自己使用した結果、ビタミンB12欠乏性貧血を鉄剤だけで対応しようとして改善しない場合があります。改善しない貧血は医師受診が必須です。

【鉄剤の副作用と実務的な服用指導】

鉄剤(特に硫酸鉄・フマル酸第一鉄等)の主な副作用:

1. 消化器症状: 悪心・嘔吐・腹痛・食欲不振・便秘または下痢。食後服用で軽減可能。

2. 便の黒変: 腸内でFe²+が酸化→Fe³+の硫化物(硫化鉄:黒色)が便に混じる。メレナ(上部消化管出血)との混同注意(→出血時は血液のタール便で光沢あり、鉄剤由来は無光沢の黒色)。

3. 過量摂取(小児の誤飲): 急性鉄中毒(嘔吐・腹痛・出血性胃腸炎→数時間後に代謝性アシドーシス・肝障害・ショック)。小児の届かない場所での保管が重要。

服用指導の要点:

  • 服用後の黒変便については事前に説明し「心配不要」と伝える(受診不要な場合)
  • 妊婦の鉄補充は医師管理のもとで(OTC貧血薬の妊婦使用は製品による)
  • 鉄剤とテトラサイクリン系抗生物質の同時服用は不溶性キレートを形成→どちらの吸収も低下(少なくとも2時間あける)

【銅の役割:鉄製剤に銅が配合される理由】

OTC複合貧血薬には硫酸銅等の銅成分が配合されていることがあります。銅の役割:

  • セルロプラスミン(銅含有酵素)がFe²+→Fe³+に酸化してトランスフェリンに結合→骨髄への鉄運搬を助ける
  • ヘモグロビン合成には鉄だけでなく銅も必要

銅欠乏(まれ)でも鉄剤を投与しても改善しない貧血が生じることがあります。OTC複合貧血薬の配合成分にある銅はこの理由から配合されています。

【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第6節

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ「ビタミンCはFe3+→Fe2+還元で鉄吸収促進」は生化学的に正確(手引きでもビタミンCの鉄吸収補助・タンニン酸の吸収阻害に言及)、正答ウ一意確認。ア=空腹時必須は誤り(胃刺激で食後指定製品あり)、イ=タンニンは吸収阻害で誤り(促進ではない)、エ=2週間改善なしは受診必要で誤り、オ=B12欠乏は大球性(巨赤芽球性)貧血で誤り(小球性=鉄欠乏)。貧血種類と原因栄養素の区別・鉄とテトラサイクリンのキレートも正確で健康被害リスクなし。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第6節「貧血用薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

鉄欠乏性貧血・貧血薬の成分と服用上の注意頻出度B

第3章 主な医薬品とその作用の他の問題

1
主な医薬品とその作用(かぜ薬・解熱鎮痛薬)
2
主な医薬品とその作用(アレルギー薬・抗ヒスタミン薬)
3
主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
4
主な医薬品とその作用(かぜ薬)
5
主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
6
主な医薬品とその作用(胃腸薬・制酸薬)

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