登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問31:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」基礎疾患別表)
一般用医薬品の添付文書における「相談すること」の記載のうち、てんかん・腎臓病・肝臓病・甲状腺機能障害に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アジフェンヒドラミン塩酸塩等の抗ヒスタミン薬を含む製品は、「てんかんの診断を受けた人」の相談事項となっている。これは抗ヒスタミン薬がヒスタミンの興奮抑制作用を遮断し、中枢神経に対する過剰な興奮状態を引き起こし、てんかん発作を誘発するおそれがあるためとされる。
- イアセトアミノフェンは肝臓での代謝を受けるため、「肝臓病の診断を受けた人」が服用する場合は相談が必要とされ、肝機能が低下している場合には肝障害が増強するリスクがある。
- ウ甲状腺機能障害(甲状腺機能亢進症)のある患者が交感神経刺激成分(メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン等)を含む製品を使用すると、甲状腺ホルモンと交感神経刺激の相乗効果で動悸・不整脈などが増強するおそれがあるため「相談すること」と記載される。
- エ腎臓病(腎機能低下)の患者がアルミニウム含有制酸薬を服用しても、アルミニウムは完全に腸管で中和されるため体内への蓄積は生じず、「相談すること」には該当しない。正答
- オマオウ(麻黄)を含む製品は、含まれるエフェドリン系アルカロイドが交感神経刺激作用を持つため、甲状腺機能障害・高血圧・心臓病・糖尿病・腎臓病の患者が使用する場合は相談が必要とされる。
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正答(誤っている選択肢)はエです。
アルミニウム含有制酸薬は、腎機能が低下している患者では腎排泄ができないためにアルミニウムが体内(骨・脳)に蓄積するおそれがあります。エの「腸管で完全に中和され体内蓄積は生じない」は誤りです。腎機能低下者(腎臓病の患者)はアルミニウム含有制酸薬の「相談すること」の対象となります(透析患者に至っては「してはいけないこと」の対象)。
ア(てんかん×抗ヒスタミン)・イ(肝臓病×アセトアミノフェン)・ウ(甲状腺機能亢進症×交感神経刺激成分)・オ(マオウ配合製品×複数の基礎疾患)はいずれも正しい内容です。
「相談すること」別表:てんかん・腎臓病・肝臓病・甲状腺×成分の対応表:
| 基礎疾患 | 該当成分の例 | 注意が必要な理由 |
|---|---|---|
| てんかん | ジプロフィリン(キサンチン系・別表の代表的対象)。中枢興奮性のある成分(抗ヒスタミン薬・カフェイン等も発作閾値を下げうる) | 中枢神経の過剰興奮・発作閾値の低下→てんかん発作誘発のリスク |
| 腎臓病(腎機能低下) | アルミニウム含有制酸薬、腎排泄成分全般 | 体内蓄積による毒性増強(アルミニウム骨症・脳症) |
| 肝臓病(肝機能障害) | アセトアミノフェン、解熱鎮痛成分全般 | 肝臓での代謝が障害→薬物蓄積・肝毒性増強 |
| 甲状腺機能障害 | 交感神経刺激成分(メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン・マオウ等) | 甲状腺ホルモンと交感神経の相乗作用→動悸・不整脈 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 抗ヒスタミン薬はヒスタミンH1受容体を遮断します。中枢ヒスタミンは神経活動の「制御・安定化」に関与しており、その遮断によりてんかん発作の閾値が下がる(発作が起きやすくなる)可能性があります。なお手引きの「相談すること(てんかん)」別表で代表的に挙げられる成分はジプロフィリン(キサンチン系)であり、抗ヒスタミン成分・カフェイン等の中枢興奮性のある成分も発作閾値を下げうるため、てんかんの診断を受けた人への配慮(相談)が求められます。選択肢アの「興奮抑制作用を遮断し中枢を過剰興奮させ発作を誘発しうる」という趣旨は薬理学的に妥当です。
- イ(正): アセトアミノフェンは主に肝臓でグルクロン酸抱合・硫酸抱合により代謝・解毒されます。肝機能が低下している場合、この代謝が障害されてアセトアミノフェンが蓄積し、また毒性代謝物(NAPQI)の解毒が不十分となり肝障害が増強します。重大な肝機能障害患者への大量・長期使用で薬物性肝炎・肝不全のリスクがあります。
- ウ(正): 甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモン(T3・T4)が過剰に分泌され、交感神経系の感受性が亢進しています。ここに交感神経刺激成分(エフェドリン類等)が加わると、心拍数増加・血圧上昇・不整脈(特に心房細動)などの心血管系症状が相乗的に増強します。
- エ(誤): アルミニウムの一部は腸管から吸収されます(消化管内で完全に中和されるわけではない)。腎機能が低下した患者では吸収されたアルミニウムを腎臓から排泄できないため蓄積が生じます。腎臓病患者もアルミニウム含有制酸薬の「相談すること」の対象です。
- オ(正): マオウはエフェドリン・プソイドエフェドリン等のアルカロイドを含み、交感神経刺激作用を持ちます。そのため甲状腺機能障害・高血圧・心臓病・糖尿病・腎臓病の患者に対して「相談すること」が記載される成分の代表例の一つです。
【基礎疾患×成分の「相談すること」を薬理学的機序と臓器別リスクから体系化する】
登録販売者試験の「相談すること」問題は、成分と基礎疾患の組み合わせを暗記するだけでは対応しきれません。なぜその組み合わせがリスクになるのかを薬理学的・病態生理学的に理解することで、初見の問題にも対応できます。
1. てんかんと中枢神経薬のリスク機序
てんかんは神経細胞の過剰な電気活動(てんかん放電)が生じる疾患です。脳のシナプスにおける「興奮と抑制のバランス」の崩れが基本的な病態です。
抗ヒスタミン薬がてんかん患者に相談事項となる理由:
- 脳内ヒスタミン(神経ヒスタミン)は覚醒維持・神経活動の安定化(抑制的調節)に関与しています。
- 第一世代抗ヒスタミン薬は血液脳関門を通過してH1受容体を遮断→脳内ヒスタミンの抑制機能が失われる
- 結果として神経の過剰興奮状態が生じやすくなり、てんかん発作の閾値が低下する
手引きの「相談すること(てんかん)」別表で代表的に挙げられる成分はジプロフィリン(キサンチン系の気管支拡張・鎮咳去痰等に用いられる成分)で、自律神経を介さず平滑筋・中枢に直接作用し中枢興奮性をもつためてんかん患者で発作を誘発しうるとされます。また、カフェイン(中枢神経刺激薬)を大量に含む製品も中枢を過剰興奮させるためてんかん患者への注意が必要です。抗ヒスタミン成分も中枢移行により発作閾値を下げうる点で同様の配慮が求められます。
2. 肝臓病とアセトアミノフェンの肝毒性増強
アセトアミノフェン(acetaminophen/paracetamol)の代謝経路:
- 主経路(90〜95%): グルクロン酸抱合・硫酸抱合→水溶性代謝物→腎排泄(無毒性)
- 副経路(5〜10%): CYP2E1・CYP3A4によるN-水酸化→N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)→グルタチオン抱合→無毒化
肝機能低下時のリスク:
1. グルクロン酸抱合・硫酸抱合の低下→主経路での処理が遅延→血中アセトアミノフェン濃度上昇
2. 肝グルタチオンの枯渇(肝病変部位ではグルタチオン量が減少)→NAPQIが解毒されず蓄積
3. NAPQIは肝細胞タンパクと共有結合→細胞壊死→薬物性肝炎・劇症肝炎
慢性アルコール中毒者(肝障害+CYP2E1誘導)でのアセトアミノフェン肝毒性が特に危険である理由もここにあります。
3. 甲状腺機能亢進症と交感神経刺激成分の相乗機序
甲状腺ホルモン(サイロキシン T4・トリヨードサイロニン T3)の過剰は:
- β受容体の感受性・発現量を増加させる(交感神経に対する「感受性の増大」)
- 心拍数増加・心拍出量増大・末梢血管拡張→血圧上昇
- 代謝亢進→発熱・発汗・体重減少
この状態に交感神経刺激成分(エフェドリン類、アドレナリン作動薬)が加わると:
- β1受容体の過剰刺激→頻脈・動悸・心房細動リスクの劇的増大
- α1受容体刺激→血圧の急激な上昇
甲状腺機能亢進症(バセドウ病等)は若年女性に多い疾患であり、一般用医薬品(かぜ薬・点鼻薬・鼻炎用薬)に含まれるエフェドリン系成分との組み合わせは日常的な販売現場でも遭遇しやすいリスクです。
4. マオウ(麻黄)含有製品の複数疾患横断的な注意
マオウ(Ephedra sinica等の茎)はエフェドリン・メチルエフェドリン・プソイドエフェドリン・ノルエフェドリン等を含む生薬で、漢方処方(葛根湯・麻黄湯・小青竜湯・防風通聖散等)の構成成分として広く使用されます。
交感神経刺激作用により、以下の5疾患すべてに「相談すること」が記載されます(試験頻出の横断論点):
1. 甲状腺機能障害: 前述の相乗機序
2. 高血圧: α1刺激による末梢血管収縮→血圧上昇
3. 心臓病: β1刺激→頻脈・収縮力増大→心臓の酸素需要増加
4. 糖尿病: β2刺激→肝グリコーゲン分解→血糖上昇
5. 腎臓病: 腎血流量変化(血管収縮による腎虚血)のリスク
5. 登録販売者の実務対応:複数の基礎疾患を持つ顧客への情報収集
「相談すること」の別表に該当する複数の疾患を持つ顧客(特に高齢者)への対応:
1. 既往歴の確認: 「てんかん・腎臓病・肝臓病・甲状腺の病気などで治療を受けていますか?」
2. 服薬中の薬の確認: 「現在、処方薬・市販薬・漢方薬・サプリメントを服用していますか?」(相互作用確認)
3. 成分の説明: 「この薬には○○という成分が含まれています。〇〇の持病をお持ちの方は、かかりつけ医・薬剤師への相談をお勧めします」
4. 代替品の提案またはかかりつけ医への受診勧奨: 基礎疾患が多い顧客には代替品の提案か受診勧奨が優先
「相談すること」はあくまでも「使用前に医師・薬剤師・登録販売者に相談することをすすめる」記載であり、「使用してはいけない」ではありません。ただし実務では「使用できない可能性が高い成分」として扱い、慎重に情報提供することが求められます。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): YMYL突合済み。正答エ(アルミニウム含有制酸薬は腎臓病でも体内蓄積→相談対象であり「該当しない」は誤り)で一意確定。修正=てんかんの「相談すること」別表の代表的対象成分は手引き上ジプロフィリン(キサンチン系)である点を明示し、抗ヒスタミン成分は「中枢移行で発作閾値を下げうる」薬理学的位置づけとして整理(アの記述自体は妥当を維持)。マオウ=甲状腺機能障害・高血圧・心臓病・糖尿病・腎臓病の相談対象、甲状腺機能亢進症×交感神経刺激成分、肝臓病×アセトアミノフェンはいずれも手引き別表と整合。出典: 厚労省 手引き第5章別表「相談すること」。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」別表関連) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。