第5章 医薬品の適正使用・安全対策32医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」排尿困難別表)

登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問32:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」排尿困難別表)

一般用医薬品の添付文書における「相談すること」の記載のうち、排尿困難・前立腺肥大症に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**の組み合わせはどれか。 a. ロートエキス(ベラドンナアルカロイド)は抗コリン作用により膀胱排尿筋の収縮力を低下させるため、排尿困難や前立腺肥大症を持つ患者が使用すると症状を悪化させるおそれがあり、「相談すること」に記載される。 b. 抗コリン成分は前立腺肥大症に伴う尿道括約筋の弛緩を引き起こし、尿失禁を助長させるリスクがあるため「相談すること」に記載される。 c. ジフェンヒドラミン塩酸塩は第一世代抗ヒスタミン薬であり、抗コリン作用も合わせ持つため、前立腺肥大症の患者が使用すると排尿困難が悪化するおそれがある。 d. プソイドエフェドリン塩酸塩(交感神経刺激成分)は、α1受容体刺激により膀胱頸部・尿道の平滑筋を収縮させるため、前立腺肥大症を持つ患者の排尿困難を悪化させるおそれがある。 e. スコポラミン臭化水素酸塩水和物は抗コリン作用が弱いため、前立腺肥大症や排尿困難を持つ患者でも「相談すること」には該当しない。

  • a・c
  • a・c・d正答
  • b・d・e
  • a・b・c
  • c・d・e
正答:a・c・d

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正答はイ(a・c・d)です。

  • a(正): ロートエキスは抗コリン成分の代表。膀胱排尿筋の収縮を抑制し、前立腺肥大症・排尿困難の患者で症状が悪化するおそれがあるため「相談すること」に記載されます。
  • b(誤): 抗コリン成分は尿道括約筋の「弛緩」ではなく膀胱排尿筋の収縮を「抑制」します。括約筋については別の機序です。
  • c(正): ジフェンヒドラミンは第一世代抗ヒスタミンで抗コリン作用も持つため、前立腺肥大症患者の排尿困難を悪化させます。
  • d(正): プソイドエフェドリン(交感神経刺激)はα1受容体刺激で膀胱頸部・尿道を収縮させ、前立腺肥大症での尿閉リスクを高めます。
  • e(誤): スコポラミンは強い抗コリン作用を持ち、排尿困難・前立腺肥大症の「相談すること」対象です。
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「相談すること」別表:排尿困難・前立腺肥大症に関係する主な成分:

| 成分分類 | 代表成分 | 排尿困難悪化の機序 |

|---|---|---|

| 抗コリン成分(ムスカリン拮抗薬) | ロートエキス・スコポラミン・ジフェンヒドラミン・クロルフェニラミン等 | 膀胱排尿筋(M3受容体)の収縮抑制→排尿力低下 |

| 交感神経刺激成分(α1作動薬) | プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン・フェニレフリン | α1受容体刺激→膀胱頸部・尿道の内括約筋収縮→尿道抵抗増大 |

前立腺肥大症の病態と薬物の影響:

前立腺肥大症では前立腺組織が増大して尿道を圧迫し、排尿困難(尿勢低下・残尿感・尿閉)が生じています。この状態では以下の薬物が特に危険です:

1. 抗コリン成分: 膀胱の排尿筋(逢筋)の収縮力をさらに低下させる→すでに弱い排尿力がさらに低下→急性尿閉のリスク

2. α1受容体刺激成分: 膀胱頸部・前立腺被膜・尿道の平滑筋を収縮させて尿道抵抗を増大させる→前立腺圧迫による閉塞に加えて機能的閉塞も重なる

各記述の解説:

  • a(正): ロートエキスは抗コリン(ムスカリン拮抗)作用を持つ生薬成分(ベラドンナアルカロイド含有)。M3受容体拮抗→排尿筋収縮抑制→排尿困難・尿閉のリスク増大。正確な記述。
  • b(誤): 排尿困難悪化の機序は「排尿筋の収縮力低下(膀胱が効果的に収縮できない)」であり、「尿道括約筋の弛緩」ではありません。むしろ括約筋が弛緩すれば失禁になります。機序の記述が逆方向のため誤り。
  • c(正): ジフェンヒドラミンは第一世代の脂溶性抗ヒスタミン薬で、H1受容体遮断に加えて抗コリン作用も有します。前立腺肥大症患者では排尿困難が著明に悪化するおそれがあります。
  • d(正): プソイドエフェドリンのα1作動作用(膀胱頸部の内括約筋収縮)は、前立腺肥大症の機能的閉塞を悪化させます。鼻炎薬・かぜ薬に含まれることが多く、前立腺肥大症患者(中高年男性に多い)への販売では必ず確認が必要な成分です。
  • e(誤): スコポラミン臭化水素酸塩水和物は強力な抗コリン作用を持ち、排尿困難・前立腺肥大症の「相談すること」対象の代表的成分の一つです。「作用が弱い」は誤り。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【排尿生理と排尿困難の薬理学的理解:抗コリン・α1刺激成分のリスク機序の全体像】

排尿困難・前立腺肥大症に対するOTC薬のリスクは、排尿のメカニズムを理解することで体系的に把握できます。

1. 正常な排尿のメカニズム(自律神経制御)

排尿は膀胱の充満(蓄尿)と収縮(排尿)の交互に行われます。

蓄尿相(交感神経優位):

  • β3受容体刺激→膀胱排尿筋(逢筋)弛緩→膀胱容量拡大
  • α1受容体刺激→膀胱頸部・内括約筋(尿道平滑筋)収縮→尿道閉鎖・蓄尿維持
  • 外括約筋(横紋筋・体性神経制御)も収縮を維持

排尿相(副交感神経優位):

  • M3受容体刺激(アセチルコリン)→排尿筋(逢筋)収縮→膀胱内圧上昇
  • 同時に内括約筋弛緩・外括約筋弛緩→尿道抵抗低下→排尿

排尿困難は「排尿筋の収縮力低下」か「尿道の抵抗増大」またはその両方で生じます。

2. 前立腺肥大症の病態

前立腺は男性の膀胱頸部直下(尿道を取り囲む位置)にある腺組織で、加齢に伴い肥大します。

  • 解剖学的閉塞(機械的閉塞): 肥大した前立腺が尿道を物理的に圧迫→尿道内腔が狭小化→尿勢の低下・残尿感
  • 機能的閉塞: 前立腺被膜・膀胱頸部にはα1受容体が多く存在→交感神経緊張で平滑筋が収縮→さらに尿道抵抗が増大

前立腺肥大症患者では、この解剖学的・機能的閉塞が重なっているため、わずかな薬物の影響も急性尿閉(全く排尿できなくなる状態)を引き起こすリスクがあります。急性尿閉は泌尿器科的緊急事態で、導尿処置が必要となります。

3. 抗コリン成分の膀胱排尿筋への影響

M3受容体(膀胱排尿筋に多い)が拮抗されると:

  • 排尿筋の収縮力が低下
  • 膀胱内圧が上昇しにくくなる
  • 尿道抵抗を超えられず排尿が困難になる
  • 前立腺肥大症では閉塞が加わっているため、排尿筋のわずかな収縮力低下でも尿閉に至りやすい

抗コリン成分の代表と強度の目安:

  • スコポラミン臭化水素酸塩水和物:強い抗コリン作用
  • ロートエキス(ベラドンナアルカロイド):強い抗コリン作用
  • ジフェンヒドラミン塩酸塩:中程度の抗コリン作用(H1遮断+M遮断)
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩:比較的弱い抗コリン作用

「比較的弱い」成分でも、前立腺肥大症など閾値が低い患者では問題が生じやすい点に注意が必要です。

4. α1刺激成分の膀胱頸部・尿道への影響

プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン等のエフェドリン系成分はα1・β受容体の両方を刺激しますが、膀胱頸部・前立腺被膜に存在するα1A受容体を刺激することで:

  • 内括約筋(平滑筋)の収縮→尿道内腔の狭小化
  • 前立腺被膜の平滑筋収縮→前立腺圧迫の増強
  • 膀胱頸部の閉鎖力増大→尿道抵抗の上昇

これが前立腺肥大症患者での急性尿閉誘発の機序です。α1受容体は前立腺および膀胱頸部に豊富に存在し、この部位のα1A受容体遮断薬(タムスロシン等の前立腺肥大症治療薬)と逆の作用を示します。

なお、前立腺肥大症の治療においてはα1受容体遮断薬(タムスロシン・ナフトピジル等)が使用されていることを知っていると、「α1刺激→尿閉リスク上昇」の関係が逆方向から理解しやすくなります。

5. 登録販売者の販売現場対応(前立腺肥大症・排尿困難の確認)

中高年男性(特に50歳以上)への市販薬販売では、前立腺肥大症の合併率が高いため積極的な確認が必要です:

1. 問診のポイント: 「最近、尿の出が悪い・残尿感がある・夜中に何度も起きるといったことはありますか?前立腺肥大症の診断を受けていますか?」

2. 成分の確認: 抗コリン成分・交感神経刺激成分が含まれる製品を特定

3. 代替品の提案: これらの成分を含まない製品への誘導

4. 受診勧奨: 「前立腺肥大症があれば、かかりつけ医・薬剤師に相談されることをお勧めします。急に尿が出なくなった場合はすぐに医療機関を受診してください(急性尿閉は緊急事態)」

登録販売者は「相談すること」に記載のある成分が含まれる製品を、対象となる基礎疾患を持つ購入者に販売する際には、必ず情報提供・相談受け付けを行う義務があります。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 組み合わせ問の整合性を確認済み。設問は「正しいものの組み合わせ」、選択肢ア〜オがa〜eの組合せ(イ=a・c・d)、正答は単一記号「イ」でパーサの正答1文字前提に適合(組み合わせは崩れていない・通常5択への作り直し不要)。内容=a正(ロートエキス抗コリン→排尿筋収縮抑制で排尿困難悪化)・b誤(機序は排尿筋収縮抑制であり尿道括約筋弛緩ではない)・c正(ジフェンヒドラミンの抗コリン作用)・d正(プソイドエフェドリンのα1刺激→膀胱頸部/尿道収縮)・e誤(スコポラミンは強い抗コリン作用)で、正答イ(a・c・d)に一意確定。出典: 厚労省 手引き第5章別表「相談すること(排尿困難)」。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」別表関連) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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