登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問47:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「してはいけないこと」飲酒回避別表)
一般用医薬品の添付文書における「してはいけないこと」の項目として「服用中は飲酒しないこと」または「アルコールとの併用を避けること」が記載される成分・製品に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アアセトアミノフェンを含む製品は、アルコールによってアセトアミノフェンを代謝する肝臓の解毒機能が低下するとともに毒性代謝物(NAPQI)の生成が増えるため、「服用中は飲酒しないこと」とされている。
- イ催眠鎮静成分(ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素)を含む製品は、アルコールとの中枢神経抑制作用の相乗効果が生じるおそれがあるため、飲酒との併用が禁じられている。
- ウ外用の消炎鎮痛テープ剤(貼付剤)に含まれるロキソプロフェン等のNSAIDsは、外用であるため全身への吸収が微量であり、飲酒による相互作用は問題にならないとされている。正答
- エ解熱鎮痛成分としてのアスピリン(アセチルサリチル酸)を含む製品では、アルコールが胃粘膜への刺激を増強するため、「服用中は飲酒しないこと」と記載される。
- オ睡眠改善薬(抗ヒスタミン成分配合)はアルコールとの中枢神経抑制の相乗作用により過度の眠気・判断力低下が生じるおそれがあり、「服用中は飲酒しないこと」の対象となっている。
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正答(誤っている選択肢)はウです。
外用のNSAIDs貼付剤(ロキソプロフェン等)であっても、経皮吸収により有効成分が全身循環に入ります。「外用だから全身への影響はない」という認識は誤りです。添付文書上、飲酒との相互作用(胃腸障害の増強・出血傾向の悪化等)への注意は外用製品にも適用される場合があります。
飲酒との併用を避けるよう記載されている代表的な成分は:
- アセトアミノフェン(肝臓での毒性代謝物増加)
- アスピリン等NSAIDs(胃粘膜刺激増強)
- 催眠鎮静成分・抗ヒスタミン成分(中枢抑制の相乗)
これらを押さえれば、ア・イ・エ・オはすべて正しい内容です。
「服用中は飲酒しないこと」添付文書記載の成分別対応表:
| 成分カテゴリ | 代表成分 | アルコールとの問題 | 機序 |
|---|---|---|---|
| 解熱鎮痛(アセトアミノフェン) | アセトアミノフェン | 肝毒性増強 | CYP2E1誘導でNAPQI産生増加+肝グルタチオン枯渇 |
| 解熱鎮痛(NSAIDs) | アスピリン、イブプロフェン等 | 胃粘膜障害増強・出血傾向 | プロスタグランジン産生抑制+アルコールによる胃粘膜直接刺激の相乗 |
| 催眠鎮静成分 | ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素 | 中枢抑制の相乗 | GABA系を介した中枢神経抑制の増強→呼吸抑制リスク |
| 抗ヒスタミン成分(睡眠改善薬) | ジフェンヒドラミン塩酸塩等 | 中枢抑制の相乗 | 鎮静性H1ブロッカーの中枢移行+アルコールの中枢抑制が加算 |
各選択肢の解説:
- ア(正): アセトアミノフェンは主に肝臓でグルクロン酸抱合・硫酸抱合により代謝されますが、副経路(CYP2E1)で毒性代謝物NAPQIが生成されます。習慣的な飲酒者はCYP2E1が誘導(活性が高まる)されているため、NAPQI産生が増加します。また慢性的なアルコール摂取は肝グルタチオンを枯渇させてNAPQIの解毒能を低下させます。この二重のリスクにより「服用中は飲酒しないこと」とされています。
- イ(正): ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素はGABA受容体系を介して中枢神経を抑制します。アルコールも中枢神経を抑制するため、相乗的な過度の鎮静・呼吸抑制のリスクが生じます。催眠鎮静薬と飲酒の組み合わせは試験頻出の危険な組み合わせです。
- ウ(誤): 外用NSAIDs貼付剤であってもロキソプロフェン等は経皮吸収されて血中に入ります。「外用だから全身への影響がない」は誤りです。外用NSAID製品でも飲酒との相互作用(胃腸障害・出血傾向の増強)が問題になります。
- エ(正): アスピリンは胃粘膜のプロスタグランジン産生を抑制し、胃粘膜保護機能を低下させます。アルコールは胃粘膜を直接刺激するため、この組み合わせで胃粘膜障害・胃出血のリスクが相乗的に高まります。
- オ(正): 睡眠改善薬(ジフェンヒドラミン配合)は鎮静性抗ヒスタミン薬であり、アルコールとの中枢神経抑制の相乗作用により過度の眠気・翌日への持ち越し・判断力低下等が生じるリスクがあります。
【飲酒・アルコールとの相互作用を薬物動態・薬力学の両軸から体系化する】
「服用中は飲酒しないこと」という添付文書記載は、単一の機序ではなく「薬物動態学的相互作用(PK)」と「薬力学的相互作用(PD)」の2種類の異なるメカニズムが混在しています。登録販売者はこの区別を理解した上で、購入者への説明に活かす必要があります。
1. 薬物動態学的相互作用(PK相互作用):アセトアミノフェン×アルコール
アセトアミノフェンとアルコールの相互作用は薬物動態の変化によるものです。
アセトアミノフェンの代謝経路:
- 主経路(90〜95%):グルクロン酸抱合・硫酸抱合 → 無毒性代謝物 → 腎排泄
- 副経路(5〜10%):CYP2E1・CYP3A4 → NAPQI(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)→ 肝グルタチオンで解毒 → 無毒性
アルコールによる2段階のリスク増大:
段階1(急性飲酒時):アルコールはCYP2E1の基質として代謝される際に競合阻害が生じ、一時的にCYP2E1によるアセトアミノフェン代謝(NAPQI産生)が抑制されます。この段階では一見安全に見えます。
段階2(慢性飲酒者・CYP2E1誘導):習慣的な飲酒者ではCYP2E1が誘導(酵素量が増加)されており、飲酒後6〜24時間(アルコールが体内から消えた後)にアセトアミノフェンを服用するとNAPQI産生が急増します。加えて慢性飲酒による肝グルタチオンの枯渇がNAPQIの解毒を不十分にします。
結果:慢性飲酒者が「お酒を飲んだ後に飲む」状況で肝毒性が最も高まるという逆説的なリスクが生じます。これが「服用中は飲酒しないこと」と同時に「毎日大量に飲酒する人は服用しないこと」が注意に記載される理由です。
2. 薬物動態学的相互作用(PK相互作用):外用NSAIDs貼付剤の経皮吸収
貼付型NSAIDs(ロキソプロフェン・ジクロフェナク・フェルビナク等)は皮膚から経皮吸収されて血中に達します。経皮吸収量は内服に比べて少ないですが、全身循環に入ることは事実です。
飲酒との問題点:
- アルコールは皮膚血流を増加させ経皮吸収を促進する可能性がある
- 吸収されたNSAIDsは胃粘膜のプロスタグランジン産生を阻害し、アルコールの直接的な胃粘膜刺激と相乗的に障害を増強する
- 出血傾向のある患者ではリスクがさらに高まる
「外用だから大丈夫」という誤解が購入者に生じやすいため、登録販売者が積極的に情報提供することが求められます。
3. 薬力学的相互作用(PD相互作用):中枢神経抑制の相乗作用
催眠鎮静成分・抗ヒスタミン成分とアルコールは、いずれも中枢神経を抑制する方向に作用します。この相互作用はPK(血中濃度の変化)ではなく、PD(同一の作用系での加算・相乗)です。
中枢神経抑制の相乗作用のリスク:
- 過度の鎮静:意識レベルの低下、転倒・骨折リスク(特に高齢者)
- 呼吸抑制:大量の催眠鎮静薬とアルコールの組み合わせは呼吸抑制から死亡に至るリスク
- 翌日への持ち越し(宿酔様症状):判断力・反射速度の低下が翌日まで続く
4. NSAIDs×アルコール:胃粘膜障害の機序
NSAIDs(アスピリン・イブプロフェン等)は胃粘膜のプロスタグランジン(PGE2)産生を阻害します。PGE2は粘液産生・重炭酸塩分泌・粘膜血流維持など胃粘膜保護に関わります。これが低下した状態でアルコール(胃粘膜への直接傷害・胃酸分泌刺激)が加わると、胃粘膜障害・胃潰瘍・消化管出血のリスクが著しく高まります。
5. 登録販売者の実務:「飲酒しないこと」の伝え方
購入者が「少しなら大丈夫?」と聞いてきた場合の対応:
1. 成分を確認する:カテゴリごとにリスクの性質を説明(肝毒性か、中枢抑制か、胃腸障害か)
2. 「完全に避ける」を基本とする:「少し」の定義が個人差・体調差により大きく異なり、「安全な量」を提示することはできない
3. 時間的余裕を説明する:「薬を飲み終えてから」だけでなく「服用中ずっと」避けることを伝える
4. 慢性飲酒者には特に強調する:アセトアミノフェンのリスクが特に高い集団であることを説明
この「なぜ避けるべきか」の機序を平易に説明できる登録販売者が、購入者の信頼を得られる販売現場のプロフェッショナルです。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「してはいけないこと」飲酒・アルコール別表) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。