登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問50:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」肝腎疾患・代謝排泄別表)
一般用医薬品の添付文書における「相談すること」の項目として「肝臓病の診断を受けた人」または「腎臓病の診断を受けた人」が記載されている成分の理由に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アアルミニウムを含む制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル等)は、肝機能が低下した患者で代謝が障害されてアルミニウムが蓄積するため、肝臓病の診断を受けた人は「相談すること」の対象となる。
- イカンゾウ(甘草)を含む製品は、グリチルリチン酸の代謝・排泄が腎臓に依存するため、腎臓病の診断を受けた人では偽アルドステロン症のリスクが高まり「相談すること」と記載される。
- ウ腎臓病(腎機能低下)のある患者では、腎排泄性の成分が体内に蓄積するため中毒症状が生じるおそれがあり、アルミニウム含有制酸薬を含む製品も「相談すること」の対象となる。正答
- エアセトアミノフェンは腎臓で主に排泄される成分であるため、肝臓病の患者では代謝が正常に行われ、特別な注意は不要とされている。
- オスルファメトキサゾール等のスルファ剤を含む外用薬は、腎臓から排泄されるが一般用医薬品として外用に用いる場合は全身吸収が少ないため、腎臓病の人への「相談すること」の記載は不要とされている。
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正答はウです。
腎機能が低下した患者では、腎臓から排泄される成分(アルミニウム等)が体外に排出されにくくなり、体内に蓄積します。アルミニウムの蓄積は骨(アルミニウム骨症)・脳(アルミニウム脳症)に毒性を引き起こします。そのためアルミニウム含有制酸薬を含む製品は腎臓病の診断を受けた人の「相談すること」の対象です。
肝臓病と腎臓病で別の理由から「相談すること」になる成分の例:
- アセトアミノフェン:主に肝臓で代謝 → 肝臓病で代謝障害・毒性増強
- アルミニウム含有成分:主に腎臓から排泄 → 腎臓病で蓄積(透析患者は「してはいけないこと」)
- グリチルリチン酸(カンゾウ):偽アルドステロン症(むくみ・低カリウム血症・高血圧)のおそれ → 手引きでは「むくみのある人」「高血圧・心臓病・腎臓病の診断を受けた人」が相談すること
誤りはア(アルミニウムは肝代謝ではなく腎排泄)とエ(アセトアミノフェンは肝代謝が主)。
「相談すること」肝臓病・腎臓病×成分の代謝排泄別対応表:
| 成分 | 主な代謝排泄経路 | 肝臓病での問題 | 腎臓病での問題 |
|---|---|---|---|
| アセトアミノフェン | 肝臓(グルクロン酸抱合・NAPQI) | 代謝障害・毒性代謝物蓄積→肝障害増強 | 腎排泄への影響は比較的軽微 |
| アルミニウム含有制酸薬 | 腎臓から排泄 | 肝代謝はほとんどなく肝臓病での特別な問題は少ない | 腎排泄できず蓄積→アルミニウム骨症・脳症 |
| カンゾウ(グリチルリチン酸) | 肝臓で代謝・腎臓から排泄 | 肝代謝障害で蓄積リスク | 腎排泄障害→血中濃度上昇→偽アルドステロン症 |
| NSAIDs(イブプロフェン等) | 肝臓で代謝、腎臓から排泄 | 肝機能障害・出血傾向増強 | 腎血流量低下→腎機能障害の悪化(腎毒性) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): アルミニウム含有制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル・水酸化アルミニウムゲル等)は、消化管から一部吸収された後、主に腎臓から排泄されます。肝代謝に依存しないため、「肝臓病で代謝が障害されてアルミニウムが蓄積する」という説明は誤りです。腎臓病の患者が「相談すること」の対象であり、肝臓病は主たる理由ではありません。
- イ(誤・部分的): カンゾウ(グリチルリチン酸)は腸内細菌による代謝を経て腸管から吸収され、肝臓でさらに代謝されて腎臓から排泄されます。腎機能低下によってグリチルリチン酸(またはその代謝物)の排泄が遅延し血中濃度が上昇、アルドステロン様作用が増強して偽アルドステロン症のリスクが高まります。ただし「グリチルリチン酸の代謝・排泄が腎臓に依存する」という表現は部分的に正確で、腸内細菌・肝臓代謝も関与しているため完全には正しくありません。肝臓病でも代謝障害により蓄積する可能性があります。なおカンゾウ(グリチルリチン酸)は「肝臓病」でも「腎臓病」でも「相談すること」の対象です。
- ウ(正): 腎機能低下のある患者では腎排泄性の成分が体内に蓄積し、中毒症状が生じるリスクがあります。アルミニウム含有制酸薬(アルミニウムの腎排泄障害による蓄積毒性)がその代表例です。この記述は正確です。
- エ(誤): アセトアミノフェンは主に肝臓で代謝される成分であり、肝機能が低下した肝臓病の患者では代謝が障害されます。毒性代謝物NAPQIの生成が増加し、解毒が不十分になるため肝障害が増強するリスクがあります。「特別な注意が不要」は誤りです。
- オ(誤): 外用のスルファ剤であっても経皮・粘膜吸収により全身循環に入る成分があります。「外用であれば吸収が少ないため注意不要」という一般化は誤りであり、製品ごとの添付文書に従うことが必要です。
【肝臓病・腎臓病が医薬品の体内動態に与える影響を薬物動態学的に体系化する】
「相談すること(肝臓病・腎臓病)」の別表は、医薬品の代謝・排泄経路(薬物動態)と臓器機能低下の交差から必然的に生じるリスクです。薬物動態(ADME)の観点から整理することで、個々の成分の記載理由が論理的に理解できます。
1. 薬物の体内動態(ADME)の復習
薬物が体内に入ってから排泄されるまでの経路:
- A(吸収): 消化管・皮膚・粘膜から吸収 → 門脈
- D(分布): 血液から組織・臓器へ移行
- M(代謝): 主に肝臓(一部は腸管・腎臓・肺等でも代謝)で不活化または活性化
- E(排泄): 腎臓(尿)・胆汁(糞)・肺(呼気)・汗等から体外へ
2. 肝臓病が薬物動態に与える影響
肝機能低下の主な影響:
- 肝薬物代謝酵素(CYP等)の活性低下 → 代謝速度の低下
- 血中アルブミン産生低下 → タンパク結合率低下 → 遊離型薬物濃度の上昇
- 胆汁産生・排泄の障害 → 胆汁排泄型薬物の蓄積
- 門脈圧亢進による側副血行路 → 初回通過効果の低下 → 経口薬の血中濃度急上昇
肝臓病で「相談すること」となる成分の代表例:
- アセトアミノフェン: CYP2E1代謝でNAPQI産生増大+グルタチオン枯渇で解毒不全→肝毒性増強
- NSAIDs(一般): 肝代謝障害・肝機能悪化のリスク
- カンゾウ(グリチルリチン酸): 肝臓でのグリチルリチン酸代謝障害による蓄積
- 漢方製剤全般: 生薬成分の肝臓での代謝障害リスク(特にダイオウ含有製品の大黄成分・センナ等)
3. 腎臓病が薬物動態に与える影響
腎機能低下(糸球体濾過率GFR低下)の主な影響:
- 糸球体濾過量の低下 → 腎排泄性薬物の半減期延長 → 血中濃度の持続上昇
- 尿細管分泌の低下 → 一部薬物の排泄障害
- 低タンパク血症(ネフローゼ等)→ 遊離型薬物増加
- 代謝性アシドーシス → 薬物のイオン化に影響 → 再吸収/排泄比の変化
腎臓病で「相談すること」となる成分の代表例:
- アルミニウム含有制酸薬: アルミニウムの腎排泄が障害 → 骨・脳への蓄積(アルミニウム骨症・アルミニウム脳症)。透析患者は「してはいけないこと」
- グリチルリチン酸(カンゾウ): 腎排泄が障害されると体内蓄積 → アルドステロン様作用が増強 → 偽アルドステロン症(低カリウム血症・高血圧・浮腫)
- NSAIDs: プロスタグランジン産生抑制により腎血流量を維持できなくなる → 腎機能のさらなる悪化(腎虚血)
- マグネシウム含有制酸薬・下剤(酸化マグネシウム等): 腎排泄が障害されるとマグネシウムが蓄積 → 高マグネシウム血症(徐脈・低血圧・神経筋麻痺)
4. カンゾウ(グリチルリチン酸)の偽アルドステロン症の機序
グリチルリチン酸の偽アルドステロン症機序の詳細:
1. グリチルリチン酸(またはその代謝物グリチルレチン酸)は腎尿細管の11β-HSD2(11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素2型)を阻害
2. 11β-HSD2は本来コルチゾールをコルチゾン(不活化体)に変換する酵素
3. 阻害されるとコルチゾールが分解されず、ミネラルコルチコイド受容体に結合
4. アルドステロン様作用:Na再吸収増大・K排泄増大→低カリウム血症・浮腫・高血圧
5. 腎機能低下患者ではグリチルレチン酸の排泄が遅延 → 血中濃度が高まり偽アルドステロン症リスクが増大
これが登録販売者試験で「カンゾウ(グリチルリチン酸)含有製品」を腎臓病・高血圧・心臓病の患者に「相談すること」とする理由であり、グリチルリチン酸1日量40mg以上の上限管理の根拠でもあります。
5. 登録販売者の実務:肝臓病・腎臓病のある購入者への対応フロー
肝臓病・腎臓病を申告した購入者への対応:
1. 使用中の処方薬の確認: 慢性腎臓病(CKD)の患者はARB・Ca拮抗薬・利尿薬等を服用していることが多く、市販薬との相互作用を確認
2. 腎機能の程度の把握(可能な範囲で): 透析中かどうか、GFR(クレアチニン値の目安等)の申告があれば重症度を判断
3. カンゾウ・アルミニウム・NSAIDsを含む製品は特に注意: これらは腎臓病への影響が明確な成分群
4. 医師・薬剤師への相談を促す: 「使用できないとは言いきれませんが、腎臓の状態を診ている主治医に一度確認いただくと安心です」という受診勧奨的表現が適切
5. 代替品の提案: 腎機能低下者にはアルミニウムを含まない制酸薬(炭酸マグネシウム等は高Mg血症のリスク、沈降炭酸カルシウム等)を医師確認の上で検討
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ(腎機能低下→腎排泄性成分=アルミニウム含有制酸薬の蓄積毒性→相談すること)は手引き別表と整合し正確で確定。選択肢イは「グリチルリチン酸の代謝・排泄が腎臓に依存する」という機序説明が不正確(腸内細菌・肝代謝も関与)であり誤りとして扱う。カンゾウ/グリチルリチン酸は偽アルドステロン症リスクから「むくみのある人・高血圧・心臓病・腎臓病の診断を受けた人」が相談対象(出典: 厚労省 昭和53年薬発第158号/日本内分泌学会)。アはアルミニウムが肝代謝でなく腎排泄のため誤り、エはアセトアミノフェンが肝代謝のため誤り、オは外用でも吸収ありで誤り。正答ウで一意。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」肝臓病・腎臓病別表) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。