第5章 医薬品の適正使用・安全対策51医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」高齢者成分別表)

登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問51:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」高齢者成分別表)

一般用医薬品の添付文書において「高齢者(65歳以上)」が「相談すること」の対象として記載されることが多い成分と、その注意理由に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 高齢者が抗コリン成分(ロートエキス等)を含む製品を使用すると、口腔乾燥・便秘・尿閉・認知機能の低下などが生じやすく、また緑内障を有する場合には眼圧上昇が起こりやすいため「相談すること」とされる。
  • 高齢者では腎機能・肝機能が低下していることが多く、医薬品の代謝・排泄が遅くなるため薬物が血中に蓄積しやすく、若い成人より少量の成分でも副作用が出やすい。
  • 鎮静成分(ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素等)は、高齢者では特に過鎮静・転倒・骨折のリスクが高いため「相談すること」とされるが、就寝前の服用に限れば転倒リスクはほとんど問題にならない。正答
  • 高齢者が第一世代抗ヒスタミン成分を含む製品を服用した場合、BBBを通過した成分による中枢抑制(眠気・注意力低下)と抗コリン作用(口渇・尿閉・記憶障害等)が重なるため、転倒・骨折リスクが高まる。
  • 高齢者への一般用医薬品の販売では、購入者本人ではなく家族等の代理人が来局する場合がある。その際も使用者(高齢者本人)の基礎疾患・服用中の薬を可能な限り確認し、「相談すること」に該当するか判断することが適切な対応である。
正答:鎮静成分(ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素等)は、高齢者では特に過鎮静・転倒・骨折のリスクが高いため「相談すること」とされるが、就寝前の服用に限れば転倒リスクはほとんど問題にならない。

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正答(誤っている選択肢)はウです。

鎮静成分(ブロムワレリル尿素等)を服用した高齢者の転倒リスクは「就寝前の服用に限れば問題ない」とはいえません。就寝前に服用しても翌朝まで薬効が残存する場合(持ち越し効果)があり、夜間のトイレ移動時や起床時など、暗い・急いでいる状況での転倒が特に問題になります。高齢者の転倒は骨折(特に大腿骨近位部骨折)につながりやすく、寝たきりや死亡のリスクを高めます。

高齢者で特に注意が必要な成分カテゴリ:

  • 抗コリン成分(ロートエキス等)
  • 第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン等)
  • 催眠鎮静成分(ブロムワレリル尿素等)
  • 解熱鎮痛成分(腎機能低下に伴う蓄積)
標準試験対策の基準レベル

高齢者が「相談すること」の対象となる成分と理由:

| 成分カテゴリ | 代表成分 | 高齢者で問題となる理由 |

|---|---|---|

| 抗コリン成分 | ロートエキス(ベラドンナ総アルカロイド)、ジサイクロミン | 口腔乾燥・便秘・尿閉・認知機能低下・散瞳(転倒)・緑内障悪化 |

| 第一世代抗ヒスタミン薬 | ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミン | 眠気・転倒・抗コリン作用重畳(記憶障害・尿閉) |

| 催眠鎮静成分 | ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素 | 過鎮静・持ち越し効果・転倒(夜間含む)・骨折リスク |

| NSAIDs | アスピリン、イブプロフェン | 腎機能低下による蓄積・胃腸障害・出血傾向 |

| 瀉下成分(刺激性) | センノシド、ビサコジル | 過度の下痢→脱水・電解質異常(低カリウム血症) |

各選択肢の解説:

  • ア(正): 抗コリン成分はムスカリン受容体をブロックし、唾液腺(口腔乾燥)・大腸(便秘)・膀胱排尿筋(尿閉)・脳(認知機能低下・譫妄)・眼(散瞳→眼圧上昇)に影響します。高齢者はもともと唾液分泌・腸蠕動・排尿機能が低下しており、抗コリン成分の影響が若い人より強く出やすいと言われています(抗コリン負荷の累積が問題になります)。緑内障(特に閉塞隅角緑内障)の患者では散瞳が急性緑内障発作を引き起こすことがあります。
  • イ(正): 高齢者では腎クレアチニンクリアランスの低下・肝CYP活性の低下が生理的に起こります。これにより薬物の半減期が延長し、血中濃度が上昇しやすくなります。通常量の投与でも副作用が出やすくなるため、高齢者への情報提供では服用量・頻度を確認し、医師・薬剤師への相談を促すことが重要です。
  • ウ(誤): 鎮静成分を就寝前に服用しても、翌朝まで血中に残存する「持ち越し効果(hangover effect)」が生じる場合があります。高齢者は特に薬物の半減期が延長しているため、就寝前の服用でも翌朝の起床時・夜間のトイレ移動時(夜間頻尿は高齢者に多い)に転倒リスクが高まります。「就寝前に限れば転倒リスクはほとんど問題にならない」は誤りです。
  • エ(正): ジフェンヒドラミン等の第一世代抗ヒスタミン薬は(1)BBB通過による中枢抑制(眠気・注意力・反射速度低下)と(2)抗コリン作用(口渇・尿閉・認知機能低下・散瞳)の双方を持ちます。高齢者ではこれらが重なって転倒・骨折、さらには尿閉による泌尿器科的緊急事態(急性尿閉)のリスクも高まります。
  • オ(正): 高齢者の場合、本人が来局できず家族・介護者が代理購入するケースが増加します。この場合でも、使用者(高齢者本人)の基礎疾患・服用中の薬を可能な限り確認することが重要です。「お使いになるのはご本人ですか?何かお持ちのご病気や、飲んでいるお薬はありますか?」と確認し、「相談すること」に該当する情報が得られた場合は医師・薬剤師への相談を促します。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【高齢者への医薬品販売における「ポリファーマシー・抗コリン負荷・転倒リスク」を体系化する】

高齢者への一般用医薬品の販売は、「相談すること」の別表記載を形式的に確認するだけでなく、ポリファーマシー(多剤服用)・抗コリン負荷・転倒リスクという複合的な問題を理解した上で情報提供することが求められます。

1. 高齢者の薬物動態の変化(生理的背景)

加齢による薬物動態の変化:

吸収:

  • 胃酸分泌量の低下、胃排出時間の延長
  • 腸蠕動運動の低下 → 吸収速度は変化するが総吸収量の変化は少ない

分布:

  • 体脂肪比率の増加(水溶性薬物の分布容積低下・脂溶性薬物の分布容積増加)
  • 血中アルブミン低下(低栄養・肝機能低下) → 遊離型薬物濃度上昇

代謝(肝臓):

  • 肝重量・肝血流量の低下(50歳から徐々に低下、75歳では30〜40%低下)
  • CYP1A2・CYP2C9・CYP3A4等の活性低下
  • 初回通過効果の低下 → 経口薬の血中濃度が想定より高くなる

排泄(腎臓):

  • 糸球体濾過率(GFR)の低下(30歳以降10年で約8〜10mL/min低下)
  • 尿細管分泌能の低下
  • 80歳では若年成人の50〜60%程度のGFRに低下していることが多い

これらの変化が複合することで「通常量でも副作用が出やすい」状態が生じます。

2. 抗コリン負荷(anticholinergic burden)という概念

抗コリン負荷とは、患者が服用するすべての薬物の抗コリン作用を合計したものです。

高齢者が処方薬として服用することがある抗コリン成分:

  • 過活動膀胱治療薬(オキシブチニン・ソリフェナシン等)
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン等)
  • 抗ヒスタミン性抗めまい薬(メクリジン等)
  • 一部の抗精神病薬・パーキンソン病治療薬

これらに加えて市販の抗コリン成分(ロートエキス含有胃腸薬・ジフェンヒドラミン含有かぜ薬等)が重複するとAnticholi-nergic Burden(ACB)スコアが急増します。

抗コリン負荷が高い高齢者で生じるリスク:

  • 認知機能低下(特に短期記憶・実行機能)→ 認知症との鑑別が必要
  • 譫妄(せん妄):入院の引き金になりやすい
  • 尿閉(急性尿閉):特に前立腺肥大のある男性高齢者で緊急カテーテル処置が必要になることがある
  • 便秘の増悪:宿便・腸閉塞のリスク
  • 転倒(視覚障害・眠気・筋弛緩の複合)

登録販売者の実務:「相談すること(高齢者)」の確認に加え、「ロートエキスが入ってますが、お通じや尿の出はいかがですか?目薬を使っていらっしゃいますか?」といった具体的な確認が重要です。

3. 転倒リスクと骨折の連鎖(公衆衛生的視点)

日本では骨粗鬆症(骨密度低下)と筋力低下(サルコペニア)が高齢者に蔓延しており、転倒 → 大腿骨近位部骨折(骨粗鬆症あり) → 手術・長期入院 → 廃用症候群・認知症悪化 → 介護状態という「転倒の連鎖」が大きな社会問題です。

転倒の危険因子となる薬物(Fall-Risk-Increasing Drugs:FRID):

  • 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)
  • 催眠鎮静成分(ブロムワレリル尿素等)
  • 抗ヒスタミン成分(第一世代)
  • 抗コリン成分
  • 降圧薬(起立性低血圧)

登録販売者は市販薬の催眠鎮静成分・抗ヒスタミン成分が「就寝前服用でも転倒リスクがある」ことを明確に説明し、「夜間のお手洗いに行くとき、廊下に照明をつけておくなどの注意もお願いします」といった具体的なアドバイスを添えることが、薬の情報提供を超えた高齢者サポートになります。

4. 高齢者のポリファーマシーと一般用医薬品の位置づけ

日本の高齢者(75歳以上)の約30〜40%が6種類以上の薬を服用しているとされます(厚生労働省推計)。市販薬はこの「数える」対象に入っていないことが多く、高齢者が「市販薬は薬じゃないから」と複数の市販薬を自己判断で追加服用するケースがあります。

登録販売者が行うべき確認:

1. 処方薬(お薬手帳)の確認

2. 現在服用中の市販薬・サプリメントの確認

3. 「相談すること」別表に記載された疾患の有無の確認

4. 認知機能低下が疑われる場合(受け答えが不自然・会話が繰り返される等)は家族への確認を提案

これらを踏まえた情報提供が、高齢者の薬物有害事象(ADE)を予防する登録販売者の専門的役割です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」高齢者関連) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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