第5章 医薬品の適正使用・安全対策52医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」妊婦・授乳婦成分別表)

登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問52:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」妊婦・授乳婦成分別表)

妊婦または授乳婦が一般用医薬品を使用する際に「相談すること」と記載される成分とその理由に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • イブプロフェンは、妊娠全期間を通じて胎盤を通過するおそれがなく催奇形性リスクがないため、妊婦への使用制限はなく「相談すること」には記載されていない。
  • アセトアミノフェンは、解熱鎮痛成分の中では妊婦への安全性が比較的高く確立されており、妊婦が使用する場合の「相談すること」記載はない。
  • ジフェンヒドラミン塩酸塩を含む製品は、胎盤を通過して胎児の中枢神経系に影響するおそれがあり、また母乳中に移行して乳児に眠気・哺乳力低下を引き起こすおそれがあるため、妊婦・授乳婦ともに「相談すること」の対象となる。正答
  • コデインリン酸塩は鎮咳成分であり、短期服用に限れば胎盤への移行がないため、妊娠後期であっても使用を問題なく継続できる。
  • センノシド(刺激性瀉下成分)は大腸を刺激するのみであり胎盤を経由して胎児に移行しないため、妊婦が便秘で困っている場合には制限なく使用できる。
正答:ジフェンヒドラミン塩酸塩を含む製品は、胎盤を通過して胎児の中枢神経系に影響するおそれがあり、また母乳中に移行して乳児に眠気・哺乳力低下を引き起こすおそれがあるため、妊婦・授乳婦ともに「相談すること」の対象となる。

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正答はウです。

ジフェンヒドラミン塩酸塩(第一世代抗ヒスタミン薬)は脂溶性が高く胎盤を通過して胎児の中枢神経系に影響するおそれがあります。また母乳中にも移行するため、授乳中の乳児に眠気・哺乳力低下(哺乳不良)を引き起こすおそれがあります。したがって妊婦・授乳婦ともに「相談すること」の対象です。

妊婦・授乳婦で注意が必要な代表的成分:

  • イブプロフェン:妊娠後期に「してはいけないこと」
  • コデインリン酸塩:妊婦への安全性が確立されていない(授乳婦は母乳移行)
  • センノシド:子宮収縮促進のおそれ(流早産リスク)
  • ジフェンヒドラミン:胎盤通過・母乳移行(ウ)

誤りはア(イブプロフェンは妊婦に使用制限がある)・イ(アセトアミノフェンも相談対象)・エ・オ。

標準試験対策の基準レベル

妊婦・授乳婦が「相談すること」となる成分と理由の対応表:

| 成分 | 妊婦への影響 | 授乳婦への影響 |

|---|---|---|

| イブプロフェン | 妊娠初期〜中期:催奇形リスク(確定はされていないが避ける)。妊娠後期:動脈管収縮・胎児の肺高血圧 → 「してはいけないこと」 | 母乳中への移行量は少ないが注意 |

| アセトアミノフェン | 比較的安全性が高い(「してはいけないこと」ではないが「相談すること」) | 母乳中への移行は少量。「相談すること」 |

| コデインリン酸塩 | 妊婦への安全性未確立・呼吸抑制リスク(特に分娩前後) | 母乳移行→乳児の中枢抑制・呼吸抑制のおそれ(授乳婦は「相談すること」=授乳を避けるか服用しない。なお12歳未満の小児は「してはいけないこと」) |

| ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 胎盤通過→胎児中枢神経影響 | 母乳移行→乳児の眠気・哺乳力低下。「相談すること」 |

| センノシド(刺激性瀉下成分) | 大腸刺激→子宮収縮促進のおそれ→流早産リスク | 母乳への移行が報告されている |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): イブプロフェンは妊婦への使用制限があります。特に妊娠後期の使用は「してはいけないこと」とされており、胎児の動脈管収縮・羊水減少・胎児腎機能障害のリスクがあります。催奇形リスクについても妊娠初期・中期の使用は「相談すること」です。「妊婦への使用制限はない」は誤りです。
  • イ(誤): アセトアミノフェンは解熱鎮痛成分の中では妊婦への安全性が比較的高いとされていますが、「相談すること」の記載がないとは言えません。使用を避けるに越したことはなく、使用する場合は医師・薬剤師への相談が推奨されます。
  • ウ(正): ジフェンヒドラミン塩酸塩は脂溶性が高くBBBと同様に胎盤関門を通過しやすい性質があります。胎児の中枢神経系(発達中の脳)に抗ヒスタミン作用・抗コリン作用が影響するおそれがあります。また母乳中への移行が知られており、授乳中の乳児に眠気・哺乳力低下(哺乳不良)が生じるおそれがあります。妊婦・授乳婦ともに「相談すること」の対象です。
  • エ(誤): コデインリン酸塩は胎盤を通過して胎児に移行します。分娩前後の使用は新生児の呼吸抑制リスクがあります。また妊娠中の長期使用は新生児のオピオイド離脱症候群(NAS)のリスクもあります。「短期服用なら問題ない」「妊娠後期でも継続できる」は誤りです。授乳婦についてはコデインが母乳に移行して乳児の中枢神経抑制・呼吸抑制を引き起こすおそれがあるため、添付文書では「相談すること」とされ、授乳を避けるか服用しないよう注意喚起されています(「してはいけないこと」に該当するのは12歳未満の小児・重篤な呼吸抑制のある人等)。
  • オ(誤): センノシドなどの刺激性瀉下成分は大腸を直接刺激するだけでなく、子宮収縮を促進するおそれがあるため、妊婦(特に妊娠末期)での使用は慎重を要します。流早産のリスクがあるため「相談すること」の対象です。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【妊婦・授乳婦への医薬品使用のリスク評価:胎盤移行・母乳移行・催奇形性の薬理学】

妊婦・授乳婦への一般用医薬品販売は、薬物の胎盤移行・催奇形性・母乳移行・新生児への影響という多層的なリスクを理解した上で情報提供する必要があります。

1. 胎盤の薬物移行と関門機能

胎盤関門(血液胎盤関門)の特性:

  • 分子量の小さい薬物(500Da未満)は通過しやすい
  • 脂溶性が高い薬物はより容易に通過する
  • タンパク結合率が低い(遊離型の)薬物が通過しやすい
  • 妊娠週数によって胎盤の構造・厚さが変化する(妊娠初期は通過しにくいとされるが、すべての時期で移行が生じうる)

一般用医薬品に含まれる多くの成分は分子量が小さく、ある程度の脂溶性を持つため、胎盤を通過する可能性を常に想定する必要があります。

2. 催奇形性のリスクと妊娠週数の関係

妊娠週数と薬物リスクの関係:

  • 妊娠初期(〜第13週)の器官形成期: 催奇形性リスクが最も高い。各臓器・器官の基本構造が形成される時期(心臓・神経管・四肢等)
  • 妊娠中期(14〜27週): 胎児の成長・発育期。催奇形性リスクは低下するが器官の発達(生殖器・脳の神経回路等)が継続するため影響は生じうる
  • 妊娠後期(28週〜): 催奇形性リスクはさらに低下するが、胎児の生理機能への影響(NSAIDs→動脈管収縮/コデイン→呼吸抑制等)が特定成分で重要になる

イブプロフェンの妊娠後期リスクの詳細:

  • プロスタグランジンは胎児の動脈管(大動脈と肺動脈をつなぐ血管)の開存に関与
  • NSAIDsがプロスタグランジン産生を抑制 → 動脈管が出生前に収縮・閉鎖する
  • 胎児の肺への血液が循環できなくなり → 肺高血圧症・右心不全
  • 羊水産生(胎児の尿産生)が低下 → 羊水減少症 → 胎児圧迫・肢体変形

これが「イブプロフェン=妊娠後期は使用してはいけない」の根拠です。

3. 母乳移行と乳児への影響

母乳への薬物移行に影響する因子:

  • 血漿中濃度: 高いほど母乳中濃度も高くなる
  • 脂溶性: 高いほど母乳(脂肪含量が高い)に移行しやすい
  • タンパク結合率: 低いほど(遊離型が多いほど)移行しやすい
  • 分子量: 小さいほど移行しやすい
  • pKa(酸解離定数): 母乳はpH6.8〜7.0と血清よりわずかに酸性。塩基性薬物はイオン化しにくく母乳中に蓄積しやすい

ジフェンヒドラミンの母乳移行リスク:

  • 脂溶性が高くpKaが9.0(塩基性)のため母乳への移行率が高い
  • 乳児への影響:眠気・傾眠・哺乳力低下(哺乳不良)→ 体重増加不良
  • 特に新生児(0〜28日)・早期乳児では代謝酵素が未成熟で薬物の半減期が長くなる

コデインのCYP2D6超高速代謝とリスク:

コデインは体内でモルヒネに代謝されます(CYP2D6による代謝)。CYP2D6の活性が高い「超高速代謝者(ultra-rapid metabolizer)」では通常量のコデインでも高濃度のモルヒネが生成され、母乳中のモルヒネ濃度が急上昇します。授乳中の乳児が高濃度モルヒネを摂取すると呼吸抑制から死亡に至る事例が海外で報告されています。なお、この代謝学的リスクを背景に、日本では2019年(令和元年)7月の添付文書改訂指示により、コデイン類・ジヒドロコデイン類含有製剤が「12歳未満の小児」に禁忌とされました(経過措置を経て2019年に「使用制限」から「禁忌」へ)。授乳婦については、母乳移行による乳児への中枢抑制・呼吸抑制のおそれから「相談すること」とされ、特にコデイン類は授乳中の使用を避ける旨が注意喚起されています。

4. センノシドが妊婦に「相談すること」となる機序

センノシド(アントラキノン系刺激性瀉下成分):

  • 大腸細菌によってレインアンスロンに代謝され、大腸粘膜を直接刺激して蠕動運動を促進
  • 大腸の過剰な収縮・蠕動促進が子宮の平滑筋収縮を反射的に促進するおそれがある
  • これにより流早産のリスクが生じる
  • 母乳への移行も報告されており、乳児の下痢を引き起こす可能性がある

妊婦の便秘に対する対処法(登録販売者が案内できる範囲):

  • 食物繊維・水分摂取の増加(生活習慣の改善)
  • 非刺激性の瀉下成分(膨潤性瀉下薬・塩類性瀉下薬の一部)のリスクを医師・薬剤師に確認してもらう
  • 最終的には産婦人科主治医への相談を促す

5. 妊婦・授乳婦への情報提供の実務原則

「妊娠中ですが〇〇を飲んでいいですか?」への対応:

1. 妊娠週数(初期・中期・後期)を確認する(リスクの性質が異なる)

2. 主治医(産婦人科)に確認することを強く推奨する

3. 「相談すること」記載の成分が含まれている場合は、その旨を明確に伝える

4. 「安全と言い切ることはできません。かかりつけの先生への確認をお願いします」というスタンスを維持する

登録販売者は「安全です」と断定することはできません。しかし「絶対に危険」とも言い切れない成分について、正確な情報と「医師・薬剤師への相談」への橋渡しが登録販売者の専門的役割です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」妊婦・授乳婦成分別表) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

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