登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問55:医薬品の適正使用・安全対策(添付文書「相談すること」・診断歴記載の枠組みと運用)
一般用医薬品の添付文書に記載される「次の診断を受けた人(相談すること)」に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア「次の診断を受けた人」は「相談すること」の項目の一つであり、記載された疾患の診断を受けたことがある人が当該製品を使用する前に医師・薬剤師・登録販売者に相談することを求めている。「使用してはいけない」とは区別される。
- イ「次の診断を受けた人」欄に記載される疾患名は、当該成分が基礎疾患の状態を悪化させるか、基礎疾患に対する治療薬と相互作用を生じるか、または基礎疾患のある人では副作用が生じやすいという薬理学的根拠に基づいている。
- ウ医療機関で治療を受けている人(受診中の人)が市販薬の購入を希望した場合、「次の診断を受けた人」の欄に当該疾患が記載されているかどうかにかかわらず、処方薬との相互作用の確認は必要がなく、登録販売者は患者の自己判断による使用を妨げてはならない。正答
- エ「次の診断を受けた人」に記載される疾患は商品・成分によって異なり、同じ疾患(例:高血圧)でも成分によって「してはいけないこと」に記載される場合と「相談すること(次の診断を受けた人)」に記載される場合がある。
- オ購入者から「○○の病気を持っているがこの市販薬を使ってもよいか」と問われ、添付文書の「次の診断を受けた人(相談すること)」に当該疾患が記載されていた場合、登録販売者は使用の可否を最終判断するのではなく、医師・薬剤師への確認を強く勧めることが適切な対応である。
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正答(誤っている選択肢)はウです。
医療機関で治療を受けている人が市販薬を購入しようとする場合、処方薬と市販薬の相互作用を確認することは重要な販売業務の一部です。「患者の自己判断による使用を妨げてはならない」という表現も誤りです。登録販売者はむしろ「添付文書を一緒に確認し、相互作用のおそれがある場合には医師・薬剤師への確認を勧める」義務があります。
「次の診断を受けた人(相談すること)」の記載の枠組み:
- 「してはいけないこと」(禁忌)とは別物
- 「使用前に医師・薬剤師・登録販売者に相談することが望ましい」という意味
- 相談を経た上で医師・薬剤師が使用可能と判断した場合は使用できる
- 登録販売者が「使用可」「使用不可」を最終判断する権限はない
「相談すること」の枠組みと「してはいけないこと」の区別:
| 区分 | 記載の意味 | 記載の例 |
|---|---|---|
| してはいけないこと(禁忌) | 当該製品を使用してはならない(使用禁止) | 「15歳未満の小児は服用しないこと」「出血傾向のある人は使用しないこと」 |
| 相談すること(次の診断を受けた人) | 使用前に医師・薬剤師・登録販売者に相談することが望ましい | 「高血圧・心臓病・糖尿病の診断を受けた人」等 |
| 相談すること(医師・薬剤師に相談) | 使用中・使用後に変化があれば相談する | 「○週間使用して改善しない場合は相談すること」 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 「相談すること(次の診断を受けた人)」は「してはいけないこと(禁忌)」とは明確に異なります。禁忌は使用の絶対的制限ですが、「相談すること」は使用前に専門家へ確認することを促すものです。相談の結果として「この量・この製品なら使用可能」と判断されることもあります。この区別を購入者に説明することは登録販売者の重要な役割です。
- イ(正): 「次の診断を受けた人」欄に記載される疾患は、当該成分の薬理作用と疾患の病態生理の交差から生じるリスクに基づいています。例:アドレナリン作動成分→糖尿病・甲状腺機能障害(血糖上昇・動悸増強)、抗コリン成分→前立腺肥大・緑内障(尿閉・眼圧上昇)、NSAIDs→胃・十二指腸潰瘍(粘膜障害増強)等。薬理学的根拠のある記載です。
- ウ(誤): 医療機関で治療を受けている人への市販薬販売では、処方薬との相互作用の確認は登録販売者の重要な業務です。「相互作用の確認は必要がない」「患者の自己判断を妨げてはならない」はいずれも誤りです。登録販売者は「今おかかりの薬と一緒に飲んでも大丈夫か、かかりつけの先生または薬剤師に確認していただけますか」と情報提供する義務があります。
- エ(正): 同じ疾患であっても成分によってリスクの程度が異なるため、「してはいけないこと」に記載される場合と「相談すること」に記載される場合があります。例:透析患者へのアルミニウム含有制酸薬は「してはいけないこと」ですが、軽度の腎機能低下者では「相談すること」です。成分・製品ごとの添付文書の確認が必要です。
- オ(正): 「次の診断を受けた人(相談すること)」に当該疾患が記載されている場合、登録販売者は使用の可否を最終判断する権限も知識もありません(これは医師・薬剤師の業務範囲)。登録販売者がすべきことは、当該記載を購入者に伝え、医師・薬剤師への確認を強く勧めることです。これが「登録販売者の限界と適切な情報提供」の実務上の核心です。
【「次の診断を受けた人」記載の法的根拠・薬理的背景・実務運用を体系化する】
「相談すること(次の診断を受けた人)」という添付文書記載の枠組みは、薬事規制の観点・薬理学的観点・医療提供体制の観点が交差する重要なテーマです。
1. 添付文書「相談すること」の法的根拠
薬機法第52条(添付文書等の記載事項)に基づき、一般用医薬品には「使用上の注意」の記載が義務付けられています。厚生労働省の「使用上の注意の改訂指示」(GVPの枠組み)によって、安全性情報が蓄積した成分については添付文書の記載内容が更新されます。
「相談すること(次の診断を受けた人)」は、医師・薬剤師・登録販売者への相談を促すことで:
1. 不適切な使用を未然に防ぐ
2. 使用者の安全を確保する
3. 必要に応じて医師への受診へ橋渡しする
という「多層的な安全網」を構成しています。
2. 「してはいけないこと」vs「相談すること」の境界
禁忌(「してはいけないこと」)となる条件:
- リスクが明確で大きい(重篤な副作用・致死的リスク)
- 使用することでほぼ確実に有害事象が生じると予測される
- 代替手段が十分に存在する(他の成分・製品で対処可能)
「相談すること(次の診断を受けた人)」となる条件:
- リスクは存在するが個人差が大きい(全員が問題になるわけではない)
- 医師・薬剤師の判断によって使用可能になる場合がある
- 基礎疾患の重症度・コントロール状態・他の薬との組み合わせ等による
例:透析患者へのアルミニウム含有制酸薬→「してはいけないこと」(リスクが確定的・大)。一方、軽度腎機能低下の患者への同成分→「相談すること」(リスクはあるが個人差・程度による)。
3. 受診中の患者への市販薬販売:登録販売者の役割と限界
登録販売者が行うべき確認事項(受診中の患者へ):
「今おかかりのお薬はございますか?」
→ 薬名が分かれば添付文書の「相互作用」欄を確認。処方薬と成分が重複・拮抗しないか確認。
「お薬手帳はございますか?」
→ 可能であれば確認して成分の重複(グリチルリチン酸・マオウ等の重複)を把握。
「かかりつけの医師か薬剤師に相談してから購入されることをお勧めします」
→ 特に複数疾患・複数薬を服用中の場合は必ずこのスタンスを取る。
登録販売者が「使用可能」と断言することが許されない理由:
- 登録販売者は処方薬の内容・患者の詳細な病態を把握する資格・情報を持っていない
- 相互作用の確認には処方薬の詳細(成分・用量・基礎疾患の重症度)が必要
- 誤った確認が重大な有害事象につながった場合の責任
4. 「次の診断を受けた人」欄に記載される疾患の薬理的分類
疾患×成分のリスク分類:
A. 成分が疾患そのものを悪化させるリスク:
- 前立腺肥大×抗コリン成分(ロートエキス等)→尿閉の誘発
- 閉塞隅角緑内障×抗コリン成分(散瞳→眼圧急上昇→急性緑内障発作)
- 甲状腺機能亢進症×アドレナリン作動成分(動悸・不整脈の増強)
B. 成分の代謝・排泄が障害されてリスクが増大:
- 腎臓病×アルミニウム含有成分(腎排泄障害→蓄積毒性)
- 肝臓病×アセトアミノフェン(肝代謝障害→NAPQI蓄積→肝毒性増強)
- 腎臓病・肝臓病×グリチルリチン酸(代謝排泄障害→偽アルドステロン症)
C. 成分が治療中の疾患のコントロールを乱すリスク:
- 糖尿病×アドレナリン作動成分(血糖上昇)
- 高血圧×NSAIDs(Na貯留→血圧上昇)
- てんかん×カフェイン・中枢興奮性成分(発作閾値低下)
5. 添付文書記載の「最新化」と登録販売者の情報収集義務
添付文書の「次の診断を受けた人」欄は、新たな安全性情報の蓄積によって追加・修正されます。登録販売者は最新の添付文書情報を入手・活用することが重要です。
情報入手先:
- PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の「医療用医薬品添付文書情報」「一般用医薬品・要指導医薬品添付文書情報」データベース
- 企業からのイエローレター・ブルーレター(緊急安全性情報・安全性速報)
- メディナビ(医薬品安全性情報提供サービス)の活用
これらを定期的に確認し、販売現場で最新の安全性情報を購入者に提供できる体制を維持することが、登録販売者の継続的な専門性向上です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第1節「添付文書等への記載事項」(使用上の注意「相談すること」の枠組み・運用) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。