登録販売者 第5章 医薬品の適正使用・安全対策 問61:医薬品の適正使用・安全対策(医薬品副作用被害救済制度・対象外ケースの具体例)
医薬品副作用被害救済制度において、給付の対象**とならない**ケースに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア殺虫剤・殺鼠剤による健康被害は、これらの製品が「医薬品」ではなく「農薬」等の分類に属するため、医薬品副作用被害救済制度の給付対象外である。
- イ一般用医薬品を用法用量を無視して大量に服用(過量服用)したことによる健康被害は、「適正使用に従っていない」として給付対象外となる場合がある。
- ウ添付文書に「してはいけないこと」として記載されている禁忌事項(例:アスピリン喘息がある人はアスピリンを服用しない)を無視して使用した場合は、「適正な使用に従っていない」として給付対象外となる場合がある。
- エがん等の治療に用いられる医療用の抗がん剤を使用した場合に生じた副作用は、医薬品副作用被害救済制度の給付対象外である。なぜなら抗がん剤は治療に必要なリスクが大きいため、特別の扱いが必要だからである。正答
- オ輸血によるC型肝炎ウイルス感染による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の給付対象外であり、別の特別措置法(C型肝炎訴訟の和解に基づく給付)で対応される。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正答(誤っている選択肢)はエです。
抗がん剤を含む医療用医薬品の副作用による健康被害も、医薬品副作用被害救済制度の給付対象になります。「抗がん剤だから対象外」は誤りです。ただし一部の医療用医薬品(薬機法で指定される「救済対象外の医薬品」)については除外される場合があります。
医薬品副作用被害救済制度の主な対象外ケース:
- 殺虫剤・殺鼠剤による被害(医薬品ではない)
- 適正使用に従っていない使用(過量服用・禁忌無視)
- 製品の欠陥による被害(製造物責任法の対象)
- 輸血関連の感染症(血液製剤由来HCV等は別制度)
- 軽微な副作用(入院を要しない一過性の症状)
アとイとウとオは対象外の正しい説明です。
医薬品副作用被害救済制度の対象外ケースの整理:
| 対象外のケース | 理由 | 代替の救済 |
|---|---|---|
| 殺虫剤・殺鼠剤による被害 | 医薬品ではなく農薬・劇物等に分類 | 別の救済制度(PL法・農薬規制法等) |
| 適正使用に反した使用(過量服用・禁忌無視等) | 「適正な使用に従っていない」 | なし(自己責任の範囲) |
| 製品の製造・品質上の欠陥による被害 | 製造物責任(PL法の範疇) | 製造物責任法による損害賠償請求 |
| 輸血によるウイルス感染(HIV・HCV等) | 血液製剤・輸血は別制度で対応 | 薬害HIV訴訟・C型肝炎救済法 |
| 軽微な副作用 | 入院・一定以上の健康被害が要件 | — |
| 無承認・無許可医薬品(健康食品等) | 薬機法の承認を受けていない製品 | — |
各選択肢の解説:
- ア(正・対象外の正しい説明): 殺虫剤(家庭用・農業用)・殺鼠剤は医薬品ではなく農薬・毒物劇物等に分類されます。医薬品副作用被害救済制度の対象は「医薬品(薬機法に基づき承認された医薬品)」であり、殺虫剤・殺鼠剤は対象外です。正しい対象外ケースの記述です。
- イ(正・対象外の正しい説明): 「適正な使用に従っていない」場合(過量服用・用法に反した使用・他の薬との危険な組み合わせを知りながら使用等)は給付対象外となる場合があります。制度は「適正に使用したにもかかわらず副作用が生じた」ことを要件とするためです。
- ウ(正・対象外の正しい説明): 添付文書に禁忌として記載されている「してはいけないこと」(例:アスピリン喘息者はアスピリンを使用しない等)を無視して使用した場合、「適正使用に反した」として給付対象外となる場合があります。
- エ(誤): 抗がん剤を含む医療用医薬品の副作用による健康被害であっても、制度の要件(薬機法に基づき承認された医薬品・適正使用・一定以上の健康被害)を満たせば給付対象です。「抗がん剤だから対象外」は誤りです。ただし薬機法に基づき「救済対象外医薬品」として指定された一部の品目(例:生物由来製品で別の救済制度が存在するもの等)については別途の取り扱いがあります。「抗がん剤一般が対象外」という理解は誤りです。
- オ(正・対象外の正しい説明): 輸血によるC型肝炎ウイルス(HCV)感染は、「血液製剤・輸血」に起因する被害として別の特別措置法(「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」等)で対応されます。医薬品副作用被害救済制度の枠外です。
【医薬品副作用被害救済制度の「対象外」を制度論・薬害史・法的背景から体系化する】
救済制度の対象外ケースは、制度設計の根拠(無過失補償の範囲)・薬害事件の歴史的経緯・別の法的救済制度の存在という複数の観点から理解できます。
1. 対象外となる「基準」:適正使用と承認医薬品の2要件
救済制度の要件:
A. 「薬機法に基づき承認を受けた医薬品(承認医薬品)」であること
B. 「その使用上の注意に従った適正な使用」に基づくものであること
C. 「一定以上の健康被害(入院相当以上)」が生じていること
対象外の理由別分類:
要件A(承認医薬品)を満たさない:
- 殺虫剤・殺鼠剤(医薬品ではない)
- 健康食品・サプリメント(医薬品として承認されていない)
- 無承認・無許可医薬品
要件B(適正使用)を満たさない:
- 過量服用・誤用(用法用量を無視した使用)
- 禁忌事項の無視(「してはいけないこと」を守らない使用)
- 他者への譲渡・転用
要件C(一定以上の健康被害)を満たさない:
- 軽微な副作用(かゆみ・一過性の皮疹等で入院不要な症状)
2. 血液製剤関連の薬害事件と別制度の創設
医薬品副作用被害救済制度の対象外として「輸血・血液製剤関連」が除外された背景:
HIV(薬害エイズ)事件(1996年和解・訴訟終結):
- 血友病患者が非加熱血液凝固因子製剤(フィブリノゲン製剤・第IX因子製剤等)を使用してHIVに感染
- 当時の救済制度では対応しきれない規模の被害
- 和解・特別立法により別の給付制度が創設された
C型肝炎訴訟(フィブリノゲン製剤・HCV感染):
- 出産時の止血等に使用されたフィブリノゲン製剤によるHCV感染
- 「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」が制定(2008年)
- 感染が確認された者への給付金支給(一律)
これらは「医薬品副作用被害救済制度」ではなく「特別措置法」による別の救済であり、両制度の区別が試験で問われます。
3. 殺虫剤・殺鼠剤が対象外の詳細
殺虫剤・殺鼠剤が医薬品副作用被害救済制度の対象外となる理由:
法的分類:
- 家庭用殺虫剤(蚊取り線香・殺虫スプレー等):「医薬品」ではなく「特定毒物・毒物・劇物」または「農薬」または「防除用医薬品」等として規制される
- 防除用医薬品(殺虫剤として薬機法の規制を受けるもの):医薬品だが「人体に直接使用されない」ため救済制度の対象外
対象外の制度論的理由:
- 救済制度は「医薬品を治療目的で人体に使用した結果生じた副作用」を対象とする
- 殺虫剤は「人体への使用」が目的ではない(環境・衛生対策)
- 誤飲・誤接触による健康被害は「使用目的に反した被害」として扱われる
代替救済:製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償請求が考えられますが、過失の証明が必要になります。
4. 「軽微な副作用」が対象外となる理由
救済制度には「一定以上の健康被害」という要件があります。具体的には:
- 医療費・医療手当: 副作用による疾病の治療(入院または通院)が必要な場合
- 障害年金等: 一定以上の障害等級(政令で定める程度)に達した場合
- 遺族年金等: 死亡した場合
軽微な副作用(かゆみ・軽い発疹・一過性の眠気等で治療不要・自然軽快する症状)は「一定以上の健康被害」と認定されないため、制度の対象外です。
これは制度の財源(製造販売業者の拠出金で賄われる)・運用コスト(審査コスト)の観点から、重大な被害の救済に資源を集中するための設計です。
5. 登録販売者が購入者に案内できる救済制度の情報
登録販売者として伝えられる基本情報:
- 「市販薬を正しく使用したにもかかわらず重大な副作用が生じた場合、医薬品副作用被害救済制度によって給付を受けられる場合があります」
- 「PMDAの相談窓口(0120-149-931)か、厚生労働省のホームページで制度を確認できます」
- 「副作用と思われる症状が出た場合は、まず医療機関に受診し、使用した薬の名前・購入日・服用量等の記録を残しておくことが重要です」
「どういうケースは対象外になるか」も正確に案内できることで、不必要な期待を持たせない誠実な情報提供ができます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第5章 第4節「医薬品の副作用等による健康被害の救済」(救済制度の対象外事例) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。