問題
次の文章は,架空送電線路に関する記述である。 架空送電線路が通信線路に接近していると,通信線路に電圧が誘導されて設備やその取扱者に危害を及ぼす等の障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい,次の2 種類がある。 ① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる (ア) 障害。 ② 架空送電線路の電流が,架空送電線路と通信線路間の (イ) を介して通信線路に誘導電圧を発生させる (ウ) 障害。 三相架空送電線路が十分にねん架されていれば,平常時は,電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は (エ) となるので0 V となる。三相架空送電線路に (オ) 事故が生じると,電圧や電流は不平衡になり,通信線路に誘導電圧が現れ,誘導障害が生じる。 上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
電験三種「電力」送電分野の誘導障害に関する空欄補充問題(令和7年度上期 問9)。正答は(3)です。
通信線路への誘導障害には,送電線の電圧によって生じる静電誘導障害(ア)と,送電線の電流が通信線との間の相互インダクタンス(イ)を介して生じる電磁誘導障害(ウ)の2種類があります。三相線路が十分にねん架されていれば,平常時は各相の誘導電圧のベクトルの和(エ)がゼロとなり誘導電圧は現れませんが,1線地絡(オ)事故で電圧・電流が不平衡になると誘導電圧が現れます。よって(ア)〜(オ)=静電誘導・相互インダクタンス・電磁誘導・ベクトルの和・1線地絡となり,正答は(3)です。
架空送電線路による通信線路への誘導障害に関する空欄補充問題(令和7年度上期 問9)。文章の流れに沿って空欄を確定する。
(ア) 「送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる」障害は,電位差(電圧)によって静電的に電荷が誘起される現象なので「静電誘導」障害。
(イ)(ウ) 「送電線路の電流が,送電線路と通信線路間の(イ)を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(ウ)障害」は,電流がつくる磁束が通信線路を貫くことで生じる誘導であり,2つの回路間の結合を表す量は「相互インダクタンス」,この現象自体は「電磁誘導」障害という。
(エ) 三相送電線が十分にねん架されていれば,各相から生じる誘導電圧は大きさが等しく位相が120°ずつずれた3つのベクトルとなり,これらを合成(ベクトルの和)するとゼロになる。よって(エ)=ベクトルの和。
(オ) 平常時に0Vだった誘導電圧が現れるのは,三相の電圧・電流のバランスが崩れたとき。代表的には「1線地絡」事故で1相の電圧・電流だけが大きく変化し不平衡となるため,(オ)=1線地絡(三相が同時に変化する三相短絡では対称性が保たれ不平衡になりにくい)。
以上から(ア)〜(オ)=静電誘導,相互インダクタンス,電磁誘導,ベクトルの和,1線地絡となり,選択肢(3)と一致する。正答は(3)。
本問は電験三種「電力」科目の送電分野から,架空送電線路が近接する通信線路に与える誘導障害のしくみを問う空欄補充問題(令和7年度上期 問9)。
【誘導障害の2つの種類】
送電線路と通信線路が接近していると,送電線路側の電圧・電流によって通信線路側に望まない電圧が誘起されることがあり,これを誘導障害という。誘導障害は発生原理により2種類に分類される。1つ目は,送電線路の対地電圧によって,送電線と通信線の間に存在する静電容量(キャパシタンス)を介して通信線路に電荷が誘起される「静電誘導障害」で,これは送電線の電圧の大きさに依存する。2つ目は,送電線路に流れる電流がつくる磁束が,相互インダクタンスを介して通信線路に鎖交することで誘導起電力を生じさせる「電磁誘導障害」で,これは送電線の電流の大きさに依存する。
【ねん架による誘導電圧の相殺((エ)が対応)】
三相送電線では,線路の途中の何か所かで3相の電線の配置を入れ替え,各相が全区間でそれぞれの位置を等しい距離ずつ占めるようにする「ねん架」が行われる。これは,各相と大地・通信線路との間の静電容量や相互インダクタンスを平衡させるためであり,十分にねん架された線路では,各相から通信線路に生じる誘導電圧の大きさが等しく,位相が120°ずつずれた3つのベクトルとなる。対称な3つのベクトルを合成(ベクトル和)すると平常時には理論上ゼロになり,通信線路に誘導電圧は現れない。
【不平衡事故による誘導障害の発生((オ)が対応)】
ところが,三相のうち1相が大地に短絡する1線地絡事故が起きると,健全相と事故相とで電圧・電流の大きさや位相関係が崩れ,ベクトルの和がゼロでなくなる(不平衡状態になる)。この不平衡分(主に零相電流・零相電圧)が,相互インダクタンスや静電容量を介して通信線路に誘導電圧として現れ,誘導障害を引き起こす。一方,三相が同時に均等な変化をする三相短絡事故では,相間の対称性が保たれるため誘導電圧は比較的現れにくく,不平衡事故(特に発生頻度の高い1線地絡)が誘導障害の主要因とされる。
【誤りの選択肢に使われた語】
(1)(4)(5)の「磁気誘導」は電圧によって生じる障害の名前ではなく,電圧による障害は静電容量を介する「静電誘導」である。(2)の「自己インダクタンス」は一つの回路自身の性質で,送電線と通信線という二つの回路の間の結合を表すのは「相互インダクタンス」である。「ファラデー」は電磁誘導の法則の名前であって障害の名前ではなく,「電荷誘導」という障害の分類もない。(エ)の「大きさの和」「大きさの差」では,位相が120°ずつずれた三つの誘導電圧が打ち消し合って0Vになることを表せない。(オ)の「三相短絡」は三相が対称のまま変化する事故で,不平衡を生じさせる代表例は1線地絡である。
出典と作り方
本問は電気技術者試験センター公表の過去問題を出典明記の上で引用しています。同センターは公式サイトの「よくあるご質問」で、教育目的など試験制度の意義に反しない限り、公表された過去問題を問題集やテキストに使用する際の許諾および使用料は不要としています。 根拠・出典:出典:令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験 電力(一般財団法人 電気技術者試験センター) 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-10-29)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 電気技術者試験センター・経済産業省の公式情報をご確認ください。本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の根拠条文に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。

