衛生管理者 関係法令(有害業務) 問57:粉じん障害防止規則(粉じん則)・保護具
粉じん障害防止規則(粉じん則)が定める呼吸用保護具の使用に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア粉じん作業のうち粉じん則別表第3に掲げる作業に従事する労働者に対し、事業者は有効な呼吸用保護具(防じんマスク等)を使用させなければならないが、当該保護具は労働者が自費で購入した私物を使用させることで足りる。正答
- イ管理濃度が設定されていない粉じん作業場では、設備の密閉化または局所排気装置の設置が困難な場合に限り、呼吸用保護具の使用が認められる補完的措置として位置付けられている。
- ウ粉じん則が定める防じんマスクの性能は、粉じんの種類(砂・金属粉等)に関わらず同一規格(DS3またはRS3等)を使用すれば常に足りる。
- エ坑内の岩石掘削作業(粉じん則別表第3に掲げる呼吸用保護具を使用させる作業)に従事する労働者には、設備措置(湿式工法等)が機能している場合でも、一定の呼吸用保護具を使用させることが義務付けられている場合がある。
- オ事業者は、労働者が使用する防じんマスクの顔面への密着性を確保するために、適切なサイズ・型式の選定を行うとともに、フィット試験(密着性確認)を行うよう努めなければならない。
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誤りはアです。防じんマスク等の呼吸用保護具は事業者が備え付け(費用負担)し、労働者に使用させなければならないのが原則です(安衛則第593条)。労働者が自費で購入した私物を使用させることで義務を果たしたとする規定はありません。
保護具の費用負担を労働者に転嫁することは、安衛法の保護具備付け義務の趣旨に反します。事業者は労働者の安全衛生を確保する責任を負っており、そのための保護具は事業者の費用で備え付けることが原則です。他の選択肢はいずれも正しい内容です。
粉じん則の保護具規定の体系:
| 規定事項 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 呼吸用保護具の使用義務 | 別表第3に掲げる作業の従事者に有効な保護具を使用させる | 粉じん則第27条 |
| 保護具の備付け義務 | 事業者が保護具を備え付け・費用負担する | 安衛法第23条・安衛則第593条 |
| フィットテスト(密着性確認) | 適切なサイズ選定と密着性確認に努める。作業環境測定が第三管理区分の作業場では1年以内ごとに義務(令和6年4月施行) | 粉じん則第27条系・通達 |
| 保護具の使用と設備措置の関係 | 設備措置(密閉・局排等)の補完として保護具使用が義務化される場合あり | 粉じん則全体 |
防じんマスクの等級と適用:
| 等級 | 性能 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| DS1/RS1 | 捕集効率80%以上 | 比較的粒子径が大きい粉じん(木くず等)|
| DS2/RS2 | 捕集効率95%以上 | 一般粉じん作業 |
| DS3/RS3 | 捕集効率99.9%以上 | 特定粉じん(遊離けい酸含有・石綿等)・高濃度粉じん |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 保護具は「事業者が備え付け・費用負担」が原則。「労働者の私物使用で足りる」という例外規定はありません。
- イ(正): 粉じん則は設備措置(発生源の密閉・局所排気装置・全体換気)が第一の措置であり、保護具はその補完として位置付けられます。ただし別表第3の作業では設備措置と並行して保護具使用が義務化されます。
- ウ(誤): 防じんマスクの性能(DS/RS1〜3)は粉じんの有害性に応じて選定する必要があり、遊離けい酸含有粉じん・石綿等の特に有害な粉じんにはDS3/RS3が必要です。「粉じんの種類に関わらず同一規格で常に足りる」とはいえず、誤りです。
- エ(正): 別表第3に掲げる作業(坑内岩石掘削等)では設備措置が実施されている場合でも、補完的に呼吸用保護具の使用が義務付けられる場合があります。
- オ(正): 事業者は適切なサイズ・型式の保護具を選定し、密着性(フィットテスト)の確認に努める必要があります。さらに作業環境測定が第三管理区分となった作業場では、有効な保護具の使用とフィットテスト(1年以内ごと)が義務化されています(令和6年4月施行)。
【理論的背景】
粉じん作業における保護具(防じんマスク)は、設備的対策(密閉・局所排気・湿式工法等)が主要な防護手段であり、保護具はあくまでも補完的手段と位置付けられています。しかし現実には設備的対策だけでは粉じん曝露をゼロにできないケース(移動作業・設備設置困難な場所・清掃作業等)が多く、実際の粉じん作業現場では防じんマスクが作業者の肺を守る最後の砦となっています。
じん肺(珪肺・石綿肺等)の病態と保護具の重要性:
- じん肺は粉じんが肺胞に到達・沈着することによる慢性炎症→線維化→不可逆的肺機能低下
- 特に遊離けい酸(SiO₂)は石英・ざらざら砂に含まれ、強い炎症誘発性を持つ(珪肺)
- 発症は低濃度でも長期曝露で生じる→個人ごとの防護(マスクの密着性)が非常に重要
- 一度発症したじん肺は治癒せず、進行する可能性がある(じん肺法による管理制度の根拠)
【実務・条文構造】
粉じん則の保護具関連規定の詳細:
呼吸用保護具の使用義務(粉じん則第27条):
- 対象: 粉じん則別表第3に掲げる作業(呼吸用保護具を使用させる作業)
- 坑内で岩石・鉱物を掘削・積込み等する作業
- 鉄鋼・金属の鋳物の型ばらし・清掃作業
- 屋外での研磨材を用いた研ま・吹付け作業等
- 等(別表第3に列挙)
- 参考: 別表第1=粉じん作業全般の定義/別表第2=特定粉じん発生源/別表第3=呼吸用保護具を使用させる作業
- 使用すべき保護具の性能: 粉じんの有害性・濃度に応じた等級(DS1〜DS3/RS1〜RS3)の防じんマスク
防じんマスクの規格(国家検定合格品):
- 国家検定: 一般社団法人産業安全技術協会(JISHA)が実施
- 使い捨て式(DS型)と取替式(RS型)に大別
- 捕集効率で1号(80%以上)・2号(95%以上)・3号(99.9%以上)に分類
- 遊離けい酸含有粉じん・石綿等の特定粉じんには3号(DS3/RS3)が必要
保護具の費用負担の法的整理:
- 労働安全衛生法第23条(事業者の保護具備付け義務)
- 労働安全衛生規則第593条(事業者が保護具を備え付け・清潔を保持する義務)
- 費用は事業者負担が原則: 労働者に私物使用を強制・または私費購入を求めることは「事業者の保護義務の回避」として違法となりえる
- 例外的に私物使用が認められる場合でも、事業者は当該保護具の性能・状態の確認義務を負う
フィットテストの規制(保護具の選択・密着性確認):
- 粉じん則: 適切なサイズ・型式の選定と密着性確認に努める。作業環境測定が第三管理区分の作業場では、有効な保護具の使用とフィットテスト(1年以内ごと・記録3年)が義務(令和6年4月1日施行)
- 石綿則: 要求防護係数を満たす保護具の使用+面体を有する保護具のフィットテスト(1年以内ごと・記録3年。令和5年・基発0525第3号等)
- 金属アーク溶接等(特化則): フィットテストが義務(令和5年4月1日施行)
- 改正の施行時期・対象が規則ごとに異なる点は試験の頻出論点
【試験での位置づけ】
粉じん則の保護具問題では「保護具の費用は事業者負担(私物使用で足りるという規定はない)」「フィットテスト:第三管理区分の作業場は1年以内ごと義務(令和6年4月)/石綿は要求防護係数+フィットテスト(令和5年)」「防じんマスクの等級:特定粉じん(遊離けい酸・石綿)にはDS3/RS3が必要」の3点が頻出です。
【発展:2022年改正・化学物質の自律的管理と保護具管理規程】
2022年の安衛法改正(化学物質の自律的管理)では、事業者が「保護具管理規程」を作成することが義務化されました(一定規模以上の事業場)。この規程では:
- 使用する保護具の種類・性能の選定基準
- 保護具の点検・管理の方法
- フィット試験の実施方法・頻度
- 保護具の使用記録
等が定められます。粉じん則の防じんマスク管理は、この「保護具管理規程」の具体例の一つとして位置付けられています。2024年以降の試験では「保護具管理規程」と各規則の保護具規定を組み合わせた問題が予想されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「事業者が費用を負担して保護具を備え付ける義務」の根拠は安衛法第22条・第23条にあります。使用者が安全衛生のための設備・保護具に要する費用を労働者に転嫁することは、安衛法の保護法理に反します。これは「安全衛生は経営の責任」という法の基本原則の表れです。
- ウ: 石綿については粉じん則ではなく石綿則(石綿障害予防規則)が適用され、DS3/RS3相当以上の高性能な呼吸用保護具の使用が義務付けられています(石綿則第14条)。粉じんの種類に応じた保護具選定が実務上も試験上も重要です。
- エ: 坑内岩石掘削作業では湿式工法(削孔時に水を使用してケイ酸粉じんの飛散を抑制する)が発生源対策の核心ですが、湿式工法だけではすべての粉じんを除去できないため、防じんマスクの着用が補完的に義務付けられます。「設備が完璧に機能しているから保護具不要」という判断は許容されません。
- オ: フィット試験の努力義務は「マスクを着用すれば安全」という誤解を修正するための規定です。顔の形状によっては同じ型番のマスクでも密着性が大きく異なり、密着不良があれば捕集効率99.9%のDS3マスクでも実際の防護性能は大幅に低下します。
【根拠法令】粉じん障害防止規則第27条(別表第3に掲げる作業の従事者への呼吸用保護具使用義務)、労働安全衛生法第22条・第23条・労働安全衛生規則第593条(事業者の保護具備付け・健康障害防止措置義務)。第三管理区分の作業場での保護具使用・フィットテスト義務は令和6年4月1日施行。
【補足】保護具の費用は事業者負担(労働者の私物使用で法的義務を果たしたとはいえない)。フィットテスト:第三管理区分の作業場は1年以内ごと義務(令和6年4月)。遊離けい酸・石綿含有粉じんにはDS3/RS3が必要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 粉じん障害防止規則第27条(別表第3に掲げる作業の従事者に有効な呼吸用保護具を使用させる義務)、労働安全衛生法第22条・第23条(事業者の保護具備付け・健康障害防止措置義務)、労働安全衛生規則第593条(呼吸用保護具等の備付け)。なお作業環境測定の結果が第三管理区分となった作業場では、有効な保護具の使用とフィットテスト(1年以内ごと)が義務(令和6年4月1日施行)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。