管理業務主任者(管業)試験の「管理組合会計・財務」の攻略法。仕訳・財務諸表の読解・滞納処理・税務・修繕積立金会計の論点を、標準管理規約・民法・国税庁の質疑応答などの一次情報で整理します。
目次
結論:管業試験の管理組合会計・財務では、仕訳(管理費収入・修繕積立金収入・支払い処理)・財務諸表の読解・滞納処理(消滅時効5年・督促手続)・税務(法人税の収益事業判定)を、論点別に整理しておくことが基本です。範囲は適正化法施行規則64条2号(管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納)で、出題数や簿記のレベルは協会が公表していません。
管業試験の「管理組合会計・財務」科目は、簿記未経験者にとって最初の壁になりがちな科目です。本記事では、管理組合会計の論点を、標準管理規約・民法・国税庁の質疑応答などの一次情報をもとに整理します。
協会非提携・独自作成:本サイトは一般社団法人 マンション管理業協会と一切関係ありません。掲載問題は協会公表の過去問の転載ではなく、出題範囲を参照した合格ナビ独自の自作問題です。
1. 管理組合会計の基本構造
管理組合の会計は、管理費と修繕積立金を区別して管理します。標準管理規約では、区分所有者が納入する管理費等は「管理費」と「修繕積立金」で(25条)、それぞれ次のように使い道が定められています。
| 区分 | 使い道 | 標準管理規約 |
|---|---|---|
| 管理費 | 管理員人件費、公租公課、共用設備の保守維持費及び運転費、清掃費、委託業務費など通常の管理に要する経費 | 27条 |
| 修繕積立金 | 積み立てたうえで、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、不測の事故等による修繕、敷地及び共用部分等の改良又は変更などの特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩せる | 28条1項各号 |
出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)(令和7年10月17日改正・2026-10-02 時点)。修繕積立金の取崩しは、28条1項各号に掲げる経費に充てる場合に限られます。
2. 主な勘定科目と仕訳例
収入の仕訳
管理費収入の計上
```
(借方) 管理費未収金 100,000 / (貸方) 管理費収入 100,000
```
修繕積立金収入の計上
```
(借方) 修繕積立金未収金 50,000 / (貸方) 修繕積立金収入 50,000
```
現金回収
```
(借方) 普通預金 100,000 / (貸方) 管理費未収金 100,000
```
費用の仕訳
管理委託料の支払い
```
(借方) 管理委託料 80,000 / (貸方) 普通預金 80,000
```
修繕工事の支払い(修繕積立金から)
```
(借方) 修繕費 500,000 / (貸方) 修繕積立金普通預金 500,000
```
発生主義と現金主義
会計処理には、お金の出入りの時に計上する現金主義と、収益・費用が発生した時に計上する発生主義があります。発生主義では、管理費を請求した時点で「未収金(資産)/収入(収益)」と計上し、後日入金された時点で「預金/未収金」の振替を行います。上の仕訳例は発生主義の例です。
3. 財務諸表の読解
管理組合の決算で作成する書類の例として、収支報告書と貸借対照表の見方を整理します:
収支報告書(損益計算書に相当)
- 収入合計(管理費・修繕積立金・駐車場使用料等)
- 支出合計(管理委託料・修繕費・水光熱費等)
- 当期収支差額(黒字/赤字)
貸借対照表
- 資産の部(現金・預金・未収金・敷金・固定資産)
- 負債の部(未払金・預り金)
- 正味財産の部(管理費の剰余金・修繕積立金)
4. 滞納管理
滞納の発生と督促手続
1. 督促状の送付(任意の段階・配達証明郵便がベスト)
2. 内容証明郵便による催告(民法150条の催告で、その時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予される)
3. 支払督促(裁判所書記官が債権者の申立てで発する・民事訴訟法382条。適法な督促異議の申立てがあれば訴訟に移行する・同395条)
4. 少額訴訟(60万円以下の金銭の支払請求・民事訴訟法368条。原則として最初の期日で審理を完了する・同370条。終局判決に控訴できない・同377条)
5. 通常訴訟
6. 強制執行(差押え)
時効管理(改正民法)
債権の消滅時効の期間:権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年。最終確認日:2026-10-02。出典:e-Gov 法令検索 民法166条1項。
- 改正後の時効: 知った時から5年 または 行使可能時から10年で完成(民法166条1項)
- 管理費は支払期日が決まっているため、通常は5年が基準
- 時効の完成猶予・更新: 裁判上の請求・支払督促(民法147条)、強制執行(148条)、承認(152条)など
- 催告による時効完成猶予は6ヶ月(民法150条)
滞納者の特定承継人への請求
区分所有法8条により、管理費などの債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行うことができます。標準管理規約26条にも同じ趣旨の規定があります。回収の流れの全体は、滞納管理費回収の総合フローの問題で確認できます。
5. 管理組合の税務
法人税
- 原則: 管理組合は法人税法上、人格のない社団等として扱われ、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課されます(法人税法4条・6条)。駐車場の外部貸しの扱いは、収益事業の判定(駐車場外部貸し)の問題で確認できます
- 区分所有者への駐車場貸付: 区分所有者を対象とした駐車場の貸付けで、収入が区分所有者に分配されず管理組合の運営費や修繕積立金の一部に充当されるなどの場合は、収益事業にあたらないとされています(国税庁 団地管理組合等が行う駐車場の収益事業判定)
- 区分所有者以外(占有者)への駐車場貸付: 区分所有者への貸付けとは別の独立した事業と認められるときは、収益事業(駐車場業)に該当します。区分所有者以外への貸付けというだけで直ちに収益事業とは判断されず、貸付けの目的・規模・条件・募集方法・反復継続性などで総合的に判定されます(国税庁 占有者への駐車場貸付けの収益事業判定)
- 敷地の上空の使用料: 地役権設定契約に基づく敷地上空の使用料収入は、収益事業(不動産貸付業)に係る収益に該当します(国税庁 敷地の上空を使用させる場合の収益事業判定)
消費税
- 管理費等の収受は不課税です
- 駐車場の貸付けは、組合員である区分所有者に対するものは不課税、組合員以外の者に対するものは消費税の課税対象です
- 出典:国税庁 マンション管理組合の課税関係(消費税)(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく質疑応答事例)
固定資産税
- 区分所有に係る家屋の固定資産税は、各区分所有者が、専有部分の床面積の割合により按分した額を納付します(地方税法352条1項。一定の場合は補正があります)
6. 修繕積立金会計と長期修繕計画
修繕積立金の積立て方針
- 均等積立方式: 計画期間中の積立額を均等にする方式。国土交通省の修繕積立金ガイドラインは、将来にわたって安定的な積立てを確保する観点から、均等積立方式が望ましいとしています
- 段階増額積立方式: 当初の積立額を抑え、段階的に積立額を値上げする方式
- 修繕時に一時金を徴収する、金融機関から借り入れるといった方法も、ガイドラインで言及されています
出典:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)
- 計画期間: 30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上
- 5年程度ごとの計画の見直しが前提
- 出典:国土交通省 長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(令和6年6月改定)
修繕積立金の使途
標準管理規約28条1項は、修繕積立金を取り崩せる場合として、次の経費を挙げています(令和7年10月17日改正)。
- 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
- 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
- 敷地及び共用部分等の改良又は変更
- 建物の建替え・更新、建物敷地売却、建物取壊し敷地売却又は取壊し(マンション再生等)に係る合意形成に必要となる事項の調査
- 修繕積立金の管理及び運用
- その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
7. 管理費の費目内訳
標準管理規約27条は、管理費を次の経費に充当すると定めています(令和7年10月17日改正)。
- 管理員人件費
- 公租公課
- 共用設備の保守維持費及び運転費
- 備品費、通信費その他の事務費
- 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
- 経常的な補修費
- 清掃費、消毒費及びごみ処理費
- 委託業務費
- 専門的知識を有する者の活用に要する費用
- 管理組合の運営に要する費用
- その他、32条に定める業務に要する費用
8. 会計学習プラン(4週間)
第1週:仕訳の基礎
- 借方・貸方の基本ルール
- 5要素(資産・負債・純資産・収益・費用)
- 管理費収入・支払いの仕訳
第2週:財務諸表
- 収支報告書の構造
- 貸借対照表の構造
- 期末決算の流れ
第3週:滞納処理
- 督促手続のフロー
- 時効管理(5年・更新方法)
- 特定承継人責任
第4週:税務
- 法人税の収益事業判定
- 消費税の課税判定
- 固定資産税の按分
9. よくある失敗パターン
1. 発生主義と現金主義を混同 → 管理費未収金/管理費収入の仕訳がポイント
2. 修繕積立金の使途を広く考える → 取り崩せるのは標準管理規約28条1項各号の経費に充てる場合に限られる
3. 時効5年と6か月(催告)を混同 → 催告は、その時から6か月を経過するまで時効の完成を猶予するだけ(民法150条)
4. 収益事業判定を見落とす → 区分所有者以外への駐車場貸付や敷地上空の使用料は、収益事業になることがある
10. 合格ナビでの対策
- 管理組合会計 72問:科目別演習
- 完全合格ガイド:受験戦略全体像
- 独学ロードマップ:300時間を目安にした学習計画
著作権・正確性の方針:本サイトは一般社団法人 マンション管理業協会と一切関係ありません。掲載問題は協会公表の過去問の転載ではなく、出題範囲を参照した合格ナビ独自の自作問題です。
よくある質問
Q簿記の知識がなくても管業の会計問題は解けますか?
試験の範囲は「管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること」です(適正化法施行規則64条2号)。簿記の基本(借方・貸方、資産・負債・純資産・収益・費用の5要素)を押さえておくと、仕訳の問題を理解しやすくなります。試験で求められる簿記のレベルや出題数は、協会が公表していません。
Q管理費と修繕積立金の会計処理の違いは何ですか?
標準管理規約では、管理費は通常の管理に要する経費に充当し(27条)、修繕積立金は積み立てたうえで、28条1項各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができるとされています。出典:国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)(令和7年10月17日改正)。
Q管理費滞納債権の時効は何年ですか?
令和2年4月施行の改正民法により、債権の消滅時効は「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」で完成します(民法166条1項)。管理費は支払期日が決まっているため、通常は期日を知った時から5年が基準になります。時効の完成を防ぐには、裁判上の請求や支払督促(民法147条)などによる時効の完成猶予・更新が必要です。
Q管理組合は法人税を支払うのですか?
管理組合は法人税法上、人格のない社団等として扱われ、収益事業を行う場合に限って、その収益事業から生じた所得に法人税が課されます(法人税法4条・6条)。区分所有者を対象に行う駐車場の貸付けで、収入が区分所有者に分配されず管理組合の運営費や修繕積立金の一部に充当されるなどの場合は、収益事業にあたらないと国税庁は示しています。出典:国税庁 団地管理組合等が行う駐車場の収益事業判定。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
