問題
長時間労働者に対する面接指導制度に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度を前提とする。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はエ(誤っている記述)です。
労働者から面接指導の申出があった場合、事業者は遅滞なく面接指導を行わなければなりません(安衛規則第52条の3第3項)。「2か月以内」という期限は定められておらず、エの記述は誤りです。なお、ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導も、申出があったときは「遅滞なく」行うものとされています(安衛規則第52条の16第2項)。
アは正しく、80時間超(1週40時間を超えて労働させた時間が1か月80時間超で、疲労の蓄積が認められる者)・本人の申出という要件は安衛規則第52条の2・第52条の3のとおりです。イは正しく、2019年4月施行の改正で管理監督者を含む労働者の労働時間の状況把握義務が課されました(高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)。ウは正しく、面接指導後の医師意見聴取・就業措置義務は健康診断後の措置と同様の構造です。オは正しく、面接指導結果の記録の保存期間は安衛規則第52条の6により5年間です。
長時間労働者への面接指導制度(安衛法第66条の8・2019年4月改正後・令和8年度時点):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 安衛法第66条の8 |
| 対象者(一般労働者) | 1週40時間を超えて労働させた時間が月80時間超で疲労の蓄積が認められる者 + 本人の申出(安衛規則第52条の2・第52条の3) |
| 対象者(研究開発業務) | 月100時間超で申出なしに実施義務(第66条の8の2) |
| 申出方法 | 労働者から事業者への申出 |
| 実施期限 | 遅滞なく(安衛規則第52条の3第3項) |
| 実施者 | 医師 |
| 結果の記録 | 作成して5年間保存(安衛規則第52条の6) |
| 事後措置 | 医師の意見聴取 → 必要に応じ就業場所変更・作業転換・労働時間短縮等 |
| 労働時間把握義務 | 労働者(管理監督者を含み、高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)の労働時間の状況を把握(第66条の8の3。方法は「客観的な方法その他の適切な方法」・記録は3年間保存(安衛規則第52条の7の3)) |
ストレスチェック後の面接指導との比較(頻出の混同論点):
| 比較点 | 長時間労働者への面接指導(第66条の8) | ストレスチェック後の面接指導(第66条の10) |
|---|---|---|
| 発動要件 | 月80時間超+労働者の申出 | 高ストレス判定+労働者の申出 |
| 実施期限 | 遅滞なく(規則第52条の3) | 遅滞なく(規則第52条の16) |
| 研究開発業務特例 | 月100時間超で申出不要 | 特例なし |
| 管理監督者適用 | 適用あり(時間把握含む) | 適用あり |
各選択肢の詳細解説:
- ア(正): 「1週40時間を超えた時間が月80時間超」「疲労の蓄積が認められる」「本人の申出」の3つが要件(安衛規則第52条の2第1項・第52条の3第1項)。いずれも欠かせない要件です。
- イ(正): 2019年4月改正で追加された「労働時間の状況の把握」義務(安衛法第66条の8の3)は、管理監督者(労基法第41条第2号で労働時間・休憩・休日の規定の適用除外者)も対象。除かれるのは高度プロフェッショナル制度の対象者だけ。管理職だから除外という誤解が多い。
- ウ(正): 面接指導後の医師意見聴取・就業措置義務は健康診断後の措置(第66条の5)と同様の構造。正確な記述。
- エ(誤・正答): 「2か月以内」は誤り。正しくは遅滞なく(安衛規則第52条の3第3項)。
- オ(正): 面接指導結果の記録の保存期間は安衛規則第52条の6により5年間。健康診断個人票(5年)と同一の保存期間であり、正しい記述。
【長時間労働者面接指導制度の立法背景と過労死との接続】
労働安全衛生法第66条の8による長時間労働者への面接指導制度は、2005年(平成17年)の改正で導入され、2019年(令和元年)の働き方改革関連法改正でさらに強化されました。なお、脳・心臓疾患の労災認定基準(厚労省・令和3年9月改正)では、発症前1か月におおむね100時間、または発症前2〜6か月間平均で月おおむね80時間を超える時間外労働は、業務と発症との関連性が強いと評価する目安とされており、面接指導の「80時間」と数値が一致しています。
【2019年改正で追加された「労働時間の状況の把握」義務の詳細】
2019年4月施行の改正により、事業者は面接指導を実施するため、労働者の労働時間の状況を把握する義務(安衛法第66条の8の3)を負うようになりました。
把握方法のルール:
- 方法: 「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」(安衛則第52条の7の3第1項)。自己申告による把握が認められる場面は行政解釈で示されています
- 記録: 把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置(同条第2項)
- 対象: 管理監督者・裁量労働制適用者を含む労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者は健康管理時間で把握するため除かれる)
管理監督者が含まれる点が最大のポイントです。管理監督者は労基法上の時間外・休日・深夜割増の適用除外者(労基法第41条第2号)ですが、安衛法上の労働時間把握義務・面接指導実施義務の対象からは除外されていません。
【研究開発業務従事者の特例(第66条の8の2・100時間超で申出不要)】
研究開発業務(新製品・新技術の研究開発等)に従事する労働者については、36協定の上限規制が適用除外となる代わりに、月100時間超の時間外・休日労働が発生した場合は本人の申出なく使用者が面接指導を実施しなければならない(第66条の8の2)。この「申出なしに義務」という特例は、研究開発業務での長時間労働の恒常化リスクへの特別な配慮です。
【高度プロフェッショナル制度との関係(第66条の8の4)】
高度プロフェッショナル制度(労基法第41条の2)の対象者は、労働時間・休憩・休日・割増賃金の規定が適用除外となりますが、健康確保措置として健康管理時間(事業場内にいた時間+事業場外の労働時間)が週40時間を超えた時間が月100時間超の場合に面接指導を実施する義務(安衛法第66条の8の4)が課されています。この「健康管理時間」という概念は通常の「労働時間」とは異なる概念であり、高プロ対象者の面接指導の計算基礎として正確に理解する必要があります。
【面接指導の記録保存と事後措置の法的義務チェーン】
面接指導後の事業者の義務は以下の流れです:
1. 医師の意見聴取(第66条の8第4項): 結果に基づき医師の意見を聴く
2. 就業上の措置(第66条の8第5項): 必要と認めるときは就業場所の変更・作業転換・労働時間の短縮・深夜業回数の減少等
3. 結果の記録・保存(第66条の8第3項・安衛規則第52条の6): 記録を作成して5年間保存
なお、ストレスチェック後の面接指導(第66条の10第3項後段)と異なり、第66条の8自体には申出を理由とする不利益取扱いの禁止の規定は置かれていません。
根拠: 労働安全衛生法第66条の8・第66条の8の2〜4・第66条の9(面接指導の努力義務)、労働安全衛生規則第52条の2〜52条の8、過労死認定基準(厚労省・2021年9月14日)。
- 労働安全衛生法第66条の8e-Govで原文を読む
- 労働基準法第41条・第41条の2e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生規則第52条の7・第52条の2e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第66条の8(長時間労働者への面接指導)、第66条の8の2(研究開発業務従事者への面接指導)、第66条の8の3(労働時間の状況の把握)、第66条の8の4(高度プロフェッショナル制度対象者への面接指導)、労働安全衛生規則第52条の2〜第52条の8・第52条の7の3 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

