社労士 労働安全衛生法 問4:労働安全衛生法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
長時間労働者に対する面接指導制度に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度を前提とする。
- ア使用者は、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者であって、その者の申出があった場合に、医師による面接指導を行わなければならない。この「80時間」はいわゆる過労死ラインを念頭に置いた数値である。
- イ使用者は、面接指導の実施のため、労働時間の状況を把握しなければならない。この「労働時間の状況の把握」義務は、管理監督者(いわゆる管理職)についても適用される。
- ウ使用者は、面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴いたうえで、必要があると認めるときは当該労働者の実情を考慮して就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等の措置を講じる義務を負う。
- エ労働者から面接指導の申出があった場合、使用者は申出を受けた日から2か月以内に面接指導を実施しなければならない。正答
- オ使用者は、面接指導の結果の記録を作成して5年間保存しなければならない。
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正答はエ(誤っている記述)です。
労働者から面接指導の申出があった場合、使用者は申出を受けた日から「遅滞なく(速やかに)」実施しなければなりません。「2か月以内」という期限は定められておらず、エの記述は誤りです。なお、ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導は「申出後1か月以内」という期限がありますが(安衛規則第52条の16)、長時間労働者への面接指導はそれよりも速やかな「遅滞なく」という要件です。
アは正しく、80時間超・本人の申出という要件は条文通りです。イは正しく、2019年4月施行の改正で管理監督者を含む全労働者の労働時間の状況把握義務が課されました。ウは正しく、面接指導後の医師意見聴取・就業措置義務は健康診断後の措置と同様の構造です。オは正しく、面接指導結果の記録の保存期間は安衛規則第52条の6により5年間です。
長時間労働者への面接指導制度(安衛法第66条の8・2019年4月改正後・令和8年度時点):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 安衛法第66条の8 |
| 対象者(一般労働者) | 時間外・休日労働時間 月80時間超 + 本人の申出 |
| 対象者(研究開発業務) | 月100時間超で申出なしに実施義務(第66条の8の2) |
| 申出方法 | 労働者から使用者への申出 |
| 実施期限 | 遅滞なく(ストレスチェック後の面接指導「1か月以内」とは異なる) |
| 実施者 | 医師 |
| 結果の記録 | 作成義務・保存期間は安衛規則で規定 |
| 事後措置 | 医師の意見聴取 → 必要に応じ就業場所変更・作業転換・労働時間短縮等 |
| 労働時間把握義務 | 全労働者(管理監督者を含む)の労働時間の状況を把握(タイムカード・PC記録等客観的手法が原則) |
ストレスチェック後の面接指導との比較(頻出の混同論点):
| 比較点 | 長時間労働者への面接指導(第66条の8) | ストレスチェック後の面接指導(第66条の10) |
|---|---|---|
| 発動要件 | 月80時間超+労働者の申出 | 高ストレス判定+労働者の申出 |
| 実施期限 | 遅滞なく | 申出から1か月以内 |
| 研究開発業務特例 | 月100時間超で申出不要 | 特例なし |
| 管理監督者適用 | 適用あり(時間把握含む) | 適用あり |
各選択肢の詳細解説:
- ア(正): 月80時間超の閾値は、業務上の過重負荷(脳・心臓疾患)の発症リスクが高まるとされる「過労死ライン」の医学的知見に基づく。本人申出が要件である点も正確。
- イ(正): 2019年4月改正で追加された「労働時間の状況の把握」義務(安衛法第66条の8の3)は、管理監督者(労基法上の時間外・休日・深夜割増の適用除外者)も含む全労働者が対象。管理職だから除外という誤解が多い。
- ウ(正): 面接指導後の医師意見聴取・就業措置義務は健康診断後の措置(第66条の5)と同様の構造。正確な記述。
- エ(誤・正答): 「2か月以内」は誤り。正しくは遅滞なく(安衛規則第52条の4)。ストレスチェック後の「1か月以内」と混同させる典型的な誤り選択肢。
- オ(正): 面接指導結果の記録の保存期間は安衛規則第52条の6により5年間。健康診断個人票(5年)と同一の保存期間であり、正しい記述。
【長時間労働者面接指導制度の立法背景と過労死との接続】
労働安全衛生法第66条の8による長時間労働者への面接指導制度は、2005年(平成17年)の改正で導入され、2019年(令和元年)の働き方改革関連法改正でさらに強化されました。制度の背景には、脳・心臓疾患の業務起因性に関する医学的エビデンスの蓄積があります。「過労死認定基準」(厚労省・2021年改定)では、発症前1か月に100時間超または2〜6か月平均で80時間超の時間外労働を「強い過労」と位置付けており、月80時間という閾値はこの認定基準の「80時間ライン」に対応しています。
【2019年改正で追加された「労働時間の状況の把握」義務の詳細】
2019年4月施行の改正前は、面接指導の対象となる時間外・休日労働時間の把握は事実上の義務(通達レベル)にとどまっていましたが、改正により使用者は全労働者の労働時間の状況を把握する法的義務(安衛法第66条の8の3)を負うようになりました。
把握方法のルール:
- 原則: タイムカード・PC等の使用記録・ICカード・生体認証等の「客観的な方法」
- 例外: やむを得ない場合は自己申告制も可(ただし「適切に」把握することの要件あり)
- 対象: 全労働者(管理監督者・裁量労働制適用者・高度プロフェッショナル制度の対象者を含む)
管理監督者が含まれる点が最大のポイントです。管理監督者は労基法上の時間外・休日・深夜割増の適用除外者(労基法第41条第2号)ですが、安衛法上の労働時間把握義務・面接指導実施義務の対象からは除外されていません。
【研究開発業務従事者の特例(第66条の8の2・100時間超で申出不要)】
研究開発業務(新製品・新技術の研究開発等)に従事する労働者については、36協定の上限規制が適用除外となる代わりに、月100時間超の時間外・休日労働が発生した場合は本人の申出なく使用者が面接指導を実施しなければならない(第66条の8の2)。この「申出なしに義務」という特例は、研究開発業務での長時間労働の恒常化リスクへの特別な配慮です。
【高度プロフェッショナル制度との関係(第66条の8の4)】
高度プロフェッショナル制度(労基法第41条の2)の対象者は、労働時間・休憩・休日・割増賃金の規定が適用除外となりますが、健康確保措置として健康管理時間(事業場内にいた時間+事業場外の労働時間)が週40時間を超えた時間が月100時間超の場合に面接指導を実施する義務(安衛法第66条の8の4)が課されています。この「健康管理時間」という概念は通常の「労働時間」とは異なる概念であり、高プロ対象者の面接指導の計算基礎として正確に理解する必要があります。
【面接指導の記録保存と事後措置の法的義務チェーン】
面接指導後の使用者の義務は以下の流れです:
1. 医師の意見聴取(第66条の8第4項): 結果に基づき医師の意見を聴く
2. 就業上の措置(第66条の8第5項): 必要と認めるときは就業場所の変更・作業転換・労働時間の短縮・深夜業回数の減少等
3. 結果の記録・保存: 安衛規則で定める方式で記録を作成・一定期間保存
4. 不利益取扱いの禁止(第66条の8第6項): 面接指導の申出をしたことを理由とする解雇・降格・減給等の不利益取扱いの禁止
申出理由による不利益取扱い禁止の規定は、制度の実効性を確保するための重要な規定です(ストレスチェックの不利益取扱い禁止と同様の構造)。
根拠: 労働安全衛生法第66条の8・第66条の8の2〜4・第66条の9(面接指導の努力義務)、労働安全衛生規則第52条の2〜52条の8、過労死認定基準(厚労省・2021年9月14日)。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=修正なし/正答変更なし。正答エ「2か月以内」は誤りで、安衛規則第52条の3により「遅滞なく」(行政通達上は概ね1か月以内)が正しい。ストレスチェック後面接指導の「申出から1か月以内」(安衛規則第52条の16)との混同を狙う頻出パターン。ア(月80時間超+申出)・イ(労働時間状況把握義務は管理監督者含む全労働者)・ウ(医師意見聴取+就業上措置)・オ(記録5年保存)はいずれも条文どおり。令和8年度試験基準日(2026-04-10)時点で施行済みの2019年4月改正(労働時間状況把握義務化・産業医権限強化)を前提とし、未施行のストレスチェック全事業場義務化(2028-04-01施行)は本問では言及なし=混入リスクなし。参照=安衛法第66条の8・第66条の8の3、安衛規則第52条の3・第52条の6・第52条の16 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第66条の8(長時間労働者への面接指導)、第66条の8の2(研究開発業務等の特例)、第66条の8の3(管理監督者等の特例)、第66条の8の4(面接指導の結果の記録・保存)、労働安全衛生規則第52条の2〜52条の8 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。