問題
最低賃金制度(令和8年度改定)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、2026年10月1日時点で施行されている制度を前提とすること。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はウ(誤っている記述)です。
地域別最低賃金は「都道府県労働局長が決定し、厚生労働大臣が全国一律に一本化」という記述が誤りです。地域別最低賃金は各都道府県の地方最低賃金審議会の答申を受けて都道府県労働局長が決定するものであり、全国一律ではありません。中央最低賃金審議会が示す「目安」(A〜Cランク)を参考に各都道府県が独自に決定します。
アは正しく、令和8年度の全国加重平均は1,177円/時・前年比+56円(目安制度開始以降で2番目)です。イは正しく、すべての都道府県で1,000円超・東京1,280円/時・最低は宮崎県の1,085円/時です。エは正しく、地域別と特定(産業別)では高い方が適用されます。
令和8年度地域別最低賃金 改定データ(厚労省 令和8年9月3日公表):
| 区分 | 金額(時間額) | 前年度 | 引上げ額 |
|---|---|---|---|
| 全国加重平均 | 1,177円/時 | 1,121円 | +56円(目安制度開始以降で2番目) |
| 最高額(東京都) | 1,280円/時 | 1,226円 | +54円(2026-10-01発効) |
| 最低額(宮崎県) | 1,085円/時 | 1,023円 | +62円(2026-10-24発効予定) |
最高額に対する最低額の比率は84.8%(前年度83.4%・12年連続の改善)。発効日は都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日までの間で異なり、10月1日時点ではまだ前年度の額が適用されている県もあります。
地域別最低賃金の決定プロセス:
```
中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)
→ 全国を3〜4ランクに分類(Aランク・Bランク・Cランク)
→ 各ランクの「引上げ目安額」を提示(例: 令和8年度 Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円)
↓ (目安は拘束力なし・参考値)
各都道府県の地方最低賃金審議会(都道府県労働局の諮問機関)
→ 目安を参考に地域経済・生計費・賃金実態等を勘案して決定
→ 都道府県労働局長が決定・官報告示
↓ (10月頃に各都道府県が順次発効)
```
各選択肢の解説:
- ア(正): 令和8年度の全国加重平均は1,177円・+56円。厚労省の公表では「昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さ」(最高は令和7年度の66円)。
- イ(正): 最高は東京都1,280円、最低は宮崎県1,085円(高知県・沖縄県は1,086円)。全都道府県で1,000円超は令和7年度改定から続いている。
- ウ(誤・正答): 「厚生労働大臣が全国一律」は誤り。決定権者は都道府県労働局長(地域別)。厚生労働大臣は中央最低賃金審議会の答申を受けて「目安」を示すが、最終決定は都道府県ベース。
- エ(正): 特定最低賃金(最賃法第15条)は地域別最賃より高い賃金が必要な特定産業(例:製造業の特定職種)に適用。二以上の最低賃金の適用を受ける場合は最高のものが適用される(最賃法第6条第1項)。
- オ(正): 最低賃金法第40条の罰則(50万円以下の罰金)は正しい。差額支払い義務も当然あり。
【最低賃金制度の歴史と「全都道府県1,000円超」の意義】
現行の最低賃金法では、地域ごとの生計費・賃金実態を反映した地域別最低賃金(第9条)が主軸で、特定最低賃金(第15条)はその上乗せとして位置づけられます。
「全都道府県1,000円超」は令和7年度改定で初めて達成されました。令和8年度改定でも地域格差(東京1,280円 vs 最低 宮崎1,085円)は195円の差が残りますが、最高額に対する最低額の比率は84.8%と12年連続で改善しています。
【「目安」制度の法的拘束力と地域格差の問題】
中央最低賃金審議会の「目安」(ランク分け+引上げ幅)は法的拘束力を持たず、各都道府県の地方審議会が独自判断できます。実態としては目安より高い引上げを決定する都道府県も多く(令和8年度も47都道府県中33県で目安を上回る引上げ)、「目安はあくまで最低ライン」として機能しています。
目安は都道府県をいくつかのランクに分けて示されます(各ランクに属する都道府県・目安額は中央最低賃金審議会の答申で確認)。地域別最低賃金は地域の労働者の生計費・賃金・通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めるものとされ(第9条第2項)、全国一律の最低賃金は法律上の制度ではありません。
【特定最低賃金(産業別)の機能と実務上の注意点】
特定最低賃金(最賃法第15条)は、地域別最賃より高い賃金が必要な特定の産業・職種に適用されます。特定最低賃金は各都道府県で産業別に設定されており、全国で多数存在します(件数は厚労省の公表資料で確認)。
実務上の重要な取扱い:
1. 二重適用の優先規則: 地域別と特定(産業別)の両方が適用される場合は最高のものを適用(最賃法第6条第1項)
2. 対象労働者の限定: 特定最低賃金は「特定の産業・職種の労働者」に限定(地域別は原則すべての労働者に適用)
3. 違反の罰則: 最賃法第40条の罰則(50万円以下の罰金)は地域別最低賃金(及び船員に適用される特定最低賃金)の違反に限られる。それ以外の特定最低賃金の違反は最賃法の罰則の対象ではない(第41条の30万円以下の罰金は、周知義務(第8条)違反・報告拒否・立入検査拒否等が対象)
【最低賃金と他の労働法令の交差点(上位接続)】
最低賃金は社労士試験・実務の多くの論点と交差します:
- 雇用保険の基本手当日額の下限: 当該年度の4月1日に効力を有する地域別最低賃金を基礎として算定する最低賃金日額を下回らない(雇用保険法第18条第3項)
- 最低賃金の効力: 最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約は、その部分について無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされる(最賃法第4条第2項)
- パートタイム労働者・有期雇用労働者: 正規・非正規を問わず最低賃金以上が必須(「非正規だから最賃以下でよい」は違法)
- 外国人労働者(技能実習生等): 日本人と同一の最低賃金が適用
- フリーランス・業務委託: 「委託契約」として労基法・最賃法の適用外に置く実態がある(偽装フリーランス問題)。特定受託事業者法(フリーランス保護法・2024年11月施行)との関係も社労士試験の注目論点。
【令和9年度試験での出題予測】
最低賃金は「社会保険に関する一般常識(社一)」ではなく「労務管理その他労働に関する一般常識(労一)」の科目に含まれます。令和9年度は以下の組み合わせ問題が予測されます:
- 全国加重平均額(1,177円)・東京都最高額(1,280円)・最低額(宮崎県1,085円)の数値問題
- 決定プロセス(地方審議会→労働局長決定 vs 中央審議会→厚生労働大臣告示の混同誘導)
- 地域別と特定最低賃金の優先ルール
- 違反罰則の上限額と根拠条文番号
- 最低賃金法第40条e-Govで原文を読む
- 雇用保険法第18条e-Govで原文を読む
- 労働基準法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 最低賃金法第4条(最低賃金の効力)・第6条(最低賃金の競合=最高のものを適用)・第9条・第10条(地域別最低賃金の決定)・第15条(特定最低賃金)・第40条(地域別最低賃金違反=50万円以下の罰金)、厚労省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)・別紙「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」 数値: 全国加重平均1,177円/時/最高額1,280円/時(東京都・2026年10月1日発効)/最低額1,085円/時(宮崎県・2026年10月24日発効予定)・令和8年度は2026年10月1日〜12月2日に順次発効(一次確認: 厚労省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html ・ https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001745621.pdf) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

