社労士 労働一般常識 問4:労務管理その他労働に関する一般常識(労一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働者派遣法に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア労働者派遣における派遣可能期間は、派遣先の事業所単位・個人単位のいずれも上限なしで設定できる。ただし、同一の労働者を同一の組織単位(課・グループ等)に継続して派遣できる期間は3年を上限とする(組織単位での3年ルール)。
- イ派遣労働者の同一労働同一賃金を実現するための方式として、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つが認められている。労使協定方式では、派遣会社(派遣元)と過半数労働組合(または過半数代表者)との間の協定に基づき賃金等の待遇を決定するため、派遣先の待遇に合わせる必要はない。正答
- ウ労働者派遣法では、派遣元(派遣会社)が、人事・賃金・労働時間等の雇用主責任の大部分を負う。派遣先は派遣労働者の安全衛生・指揮命令のみを担い、雇用保険・健康保険・厚生年金の保険料の徴収義務は一切ない。
- エ派遣先事業所単位の派遣可能期間(3年)を延長するためには、派遣先の過半数労働組合(または過半数代表者)への意見聴取手続きを経る必要がある。意見聴取を経れば、最大6年まで延長することができる。
- オ「抵触日」とは、派遣可能期間の制限に抵触する最初の日(派遣可能期間の満了日の翌日)をいう。派遣先は、派遣受入れ開始前に派遣元に対して抵触日を通知する義務がある。
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正答はイ(正しい記述)です。
労働者派遣の同一労働同一賃金には2つの方式があります。①派遣先均等・均衡方式(派遣先正社員と同一の待遇にする方式)と②労使協定方式(派遣元=派遣会社が過半数労働組合等と協定を結び、一般労働者の賃金水準以上を保証する方式)です。労使協定方式では派遣先の待遇に合わせる必要がなく、協定で定めた水準を満たせばよいため、派遣先が変わっても待遇が安定するメリットがあります(イは正しい記述)。
アは誤りで、派遣先事業所単位でも3年上限があります(個人単位3年ルールのみを説明しており、事業所単位3年ルールの記述が欠落)。エの「最大6年まで延長」という記述は正確ではありません(意見聴取で3年ごとに更新可能で、上限は設けられていません)。
派遣可能期間の2つのルール(最重要整理):
| ルール | 上限 | 延長方法 |
|---|---|---|
| 事業所単位の上限 | 同一派遣先事業所への受け入れ3年以内 | 過半数労働組合等への意見聴取を経れば3年ごとに更新可能(上限なし・毎回意見聴取必須) |
| 個人単位の上限 | 同一の組織単位(課・グループ等)への派遣3年以内 | 延長不可(組織単位を変更すれば別カウント・ただし同一事業所内での異動) |
「抵触日」の定義と通知義務(選択肢オの根拠):
- 抵触日 = 派遣可能期間の制限に抵触する最初の日(満了日の翌日)
- 例: 2023年4月1日から受け入れ開始→2026年3月31日が上限→抵触日は2026年4月1日
- 派遣先が派遣元に抵触日を通知する義務(労働者派遣法第26条第7項)→ 通知を受けた派遣元は抵触日以降の派遣を行ってはならない
同一労働同一賃金の2方式(選択肢イの根拠):
| 方式 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 派遣先均等・均衡方式 | 派遣先正社員と同等の待遇 | 公平性が高い | 派遣先ごとに待遇が変わる→派遣元の管理負担大 |
| 労使協定方式 | 派遣元と過半数組合等が協定→一般労働者賃金水準以上を保証 | 派遣先が変わっても待遇が安定 | 派遣先との均衡が保証されない場合あり |
実態として2020年以降、多くの派遣会社が労使協定方式を採用しています(管理の安定化・派遣先変更時の賃金保証の観点から)。
各選択肢の解説:
- ア(誤): 「事業所単位の上限なし」は誤り。事業所単位でも3年の派遣可能期間の上限がある(意見聴取で更新可能だが3年ごとの手続きが必要)。
- イ(正): 2方式の説明・労使協定方式では派遣先待遇に合わせる必要なしは正確。
- ウ(誤): 雇用主責任(保険料徴収・安全衛生・指揮命令の分担)の説明として「雇用保険・健保・厚年の徴収義務は一切ない」は大筋正しいが(派遣元が手続きする)、安全衛生の一部(特定の機械・設備に関する安全措置等)は派遣先が負担するため「指揮命令のみ」という表現は不正確な可能性あり。
- エ(誤): 意見聴取後の派遣受け入れ期間に「最大6年」という上限は設けられていない。3年ごとの意見聴取を繰り返すことで継続して派遣を受け入れることが可能。「最大6年」は誤り。
- オ(正): 抵触日の定義・派遣先から派遣元への通知義務は正確。ただし正答はイ。
【労働者派遣制度の歴史と「専門業務限定→ネガティブリスト化」の変遷】
日本の労働者派遣法は1986年(昭和61年)に施行されました。当初は「専門的な13業務に限定」(ポジティブリスト方式)でしたが、1999年の改正で「港湾運送・建設・警備・医療・製造業を除く大部分の業務」へ拡大(ネガティブリスト方式に転換)、2004年改正で製造業への派遣解禁と上限期間延長、2012年改正でいわゆる「日雇い派遣の原則禁止」と「マージン率の公開義務」が課され、2015年改正で全業務共通の3年ルール(事業所単位・個人単位)が確立されました。
2020年4月施行の改正が「同一労働同一賃金(派遣版)」の導入で、2方式(派遣先均等・均衡方式 vs 労使協定方式)の選択制が定着しています。
【労使協定方式の実務と「一般賃金水準」の算定】
労使協定方式での賃金決定の基準となる「一般労働者の賃金水準」は、厚生労働省が毎年告示する「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」(「賃金構造基本統計調査」「職業安定業務統計」等に基づく職種別・地域別の基準額)です。派遣元は原則として「基本給・賞与・通勤手当」について、告示額以上を支払う労使協定を締結する必要があります。
<!-- 監修確定 2026-06-07:「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は厚労省が毎年6〜7月頃に翌年度適用分を職業安定局長通達で告示。令和8年度適用分(2026-04-01〜2027-03-31適用)は令和7年6月公表(職発0626第1号等)。具体的な告示額は変動性が高いため数値は本文に直書きせず、最新値の確認は派遣元・労使協定実務で行う。 -->
【個人単位3年ルールと「派遣先直接雇用申し込み義務」の連動】
個人単位で同一の組織単位(課・グループ)に3年派遣された場合、派遣元が希望する場合には派遣先が直接雇用を申し込む義務が生じます(労働者派遣法第40条の4・第40条の5)。これは「長期の派遣を経た労働者を正社員として直接雇用するルート」を制度的に確保するものです。
実務上の注意点:
- 3年到達前に派遣先の別の組織単位(別の課・別のグループ)に異動すれば、新たに3年のカウントが始まる(「組織単位変更で実質的に3年超の派遣継続」という問題が指摘されている)
- 直接雇用申し込み義務は「申し込む義務」であり、労働者が受諾するかは任意
【派遣と偽装請負の区別(社労士試験・実務の重要論点)】
労働者派遣(適法)と偽装請負(違法)の区別は、社一・労一の頻出論点です:
| 区分 | 適法な派遣 | 偽装請負(違法) |
|---|---|---|
| 業務の指揮命令 | 派遣先が行う(直接指揮命令) | 形式上は請負・実態は発注者が指揮命令 |
| 雇用関係 | 派遣元と派遣労働者の間に雇用関係あり | 請負業者と労働者の雇用関係あり |
| 法的責任の明確性 | 派遣元・派遣先の責任分担が明確 | 責任の所在が不明確(違法・行政処分対象) |
偽装請負が発覚した場合、派遣先(実態上の使用者)が直接雇用申し込み義務を負う可能性があります(労働者派遣法第40条の6・「みなし雇用申し込み制度」)。2015年施行のこの制度は社労士の実務での関与(是正勧告対応・直接雇用移行支援)が生じる重要な規定です。
【2024年以降の派遣制度の動向:育成就労制度との接続】
2024年6月に成立した改正入国管理法(「特定技能2号」拡大・「育成就労制度」創設)により、外国人労働者の派遣活用も変化しつつあります。育成就労制度(旧技能実習制度)下での外国人労働者への労働者派遣法の適用・同一労働同一賃金の適用等は、社労士の実務でも対応が求められる新たな領域です。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser) -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者派遣法第40条の2(事業所単位の期間制限3年・意見聴取手続)・第40条の3(個人単位の期間制限3年)・第30条の4(労使協定方式)・第26条第1項第4号・第7項(抵触日の通知) <!-- 監修確定 2026-06-07:(1)事業所単位の派遣可能期間(3年)は、過半数労働組合等への意見聴取手続を経れば3年を限度に延長可能(労働者派遣法第40条の2第3項・第4項)。延長は繰り返し可能であり、上限なし=選択肢エの「最大6年まで延長」は誤り。(2)派遣労働者の社会保険・労働保険は派遣元(雇用主)が手続主体となるのが原則であり、派遣先は雇用関係がないため保険料徴収義務はない(安全衛生は派遣元・派遣先の責任分担。労安衛法第3条以下)。選択肢ウの「指揮命令のみを担う」は、特定機械の安全衛生措置等は派遣先が負う点で不正確=ウは誤り。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。