登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問108:主な医薬品とその作用(外皮用薬・収斂・皮膚保護成分)
外皮用薬に配合される収斂・皮膚保護成分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア酸化亜鉛は患部の皮膚タンパク質と反応して不溶性の沈殿物を形成し、組織の収斂・皮膚の保護・抗菌の作用を示す。
- イ酸化亜鉛を配合した外皮用薬(亜鉛華軟膏等)は、急性のびらん・湿潤した傷には適さず、乾燥した慢性湿疹や痔疾用外用薬に用いられる。
- ウピロキシリン(コロジオン)は傷口に塗布すると揮発成分が蒸発してフィルムを形成し、物理的に傷面を保護する作用がある。
- エアルミニウム塩(硫酸アルミニウムカリウム:ミョウバン等)は収斂作用を持ち、汗疹(あせも)・皮膚の浸軟(しめり)の予防に用いられる。
- オ酸化亜鉛は強い殺菌作用を持つため、感染性の皮膚疾患の根治治療薬として単独で使用することが推奨されている。正答
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正答はオ(誤っているもの)です。
酸化亜鉛は収斂・皮膚保護・抗菌の作用はありますが、強力な殺菌薬ではなく、感染性疾患の根治治療薬として単独推奨されるものではありません。感染を伴う皮膚病変には医師の受診を勧奨することが基本です。
正しい記述のポイント:
- ア(正): 酸化亜鉛は皮膚タンパクと反応して沈殿・収斂・保護を行います。
- イ(正): 亜鉛華軟膏は乾燥傷・痔疾用など幅広く使われますが、急性びらん・湿潤傷には適さない局面があります。
- ウ(正): ピロキシリン(コロジオン)はフィルム形成で傷口を保護します。
- エ(正): ミョウバン等アルミニウム塩は収斂・あせも予防に用いられます。
ゴロ:「酸化亜鉛=収斂・保護・弱い抗菌(根治薬ではない)」
収斂・皮膚保護成分の分類と特性比較:
| 成分名 | 分類 | 作用 | 主な適用 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| 酸化亜鉛(ZnO) | 無機収斂剤 | 収斂・皮膚保護・弱い抗菌 | 痔疾・おむつ皮膚炎・軽症湿疹 | 急性びらん・湿潤面には乾燥を招くため慎重 |
| ピロキシリン(コロジオン) | フィルム形成剤 | 傷口の物理的保護 | 小さな傷・皮膚保護 | 揮発成分(エーテル・エタノール)で乾燥しフィルム化 |
| 硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン) | 金属収斂剤 | 収斂・発汗抑制 | あせも・皮膚浸軟の予防 | 制汗剤としても使用 |
| タンニン酸 | 有機収斂剤 | 皮膚タンパクとの結合→収斂・止血 | きず・湿疹 | 植物由来 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 酸化亜鉛は皮膚表面の組織タンパク質と反応して不溶性の亜鉛塩を形成します。これにより組織を引き締め(収斂)、炎症性の浸出液・分泌物を抑制し、皮膚を外的刺激から保護します。また軽度の抗菌効果も持ちます。
- イ(正): 亜鉛華軟膏(酸化亜鉛を主成分とする軟膏)は皮膚を乾燥・保護する性質があるため、急性期のじくじくした(湿潤した)びらん面や、滲出液が多い湿疹には逆効果になる場合があります。乾燥した慢性湿疹・おむつかぶれ・痔疾用外用薬など幅広く利用されます。
- ウ(正): ピロキシリン(硝酸セルロース)を揮発性溶媒(エタノール・エーテル)に溶解したコロジオンは、患部に塗布すると溶媒が揮発してニトロセルロースの薄いフィルムを形成し、傷口を物理的に保護します。比較的小さな切り傷・すり傷の一次処置に用いられます。
- エ(正): 硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン、Potassium Alum)等のアルミニウム塩は金属イオンの収斂作用を持ちます。皮膚の汗腺を引き締めて発汗を抑制し、あせも(汗疹)予防・皮膚の浸軟(汗による皮膚のふやけ)の防止に利用されます。
- オ(誤): 酸化亜鉛の抗菌作用は軽度のものであり、「強い殺菌作用を持つ」という記述は誤りです。感染性の皮膚疾患(細菌感染・真菌感染等)の根治治療薬として単独で推奨されるものでもありません。感染が疑われる場合や治らない場合は医師への受診を勧奨することが基本です。
【酸化亜鉛の多面的薬理・収斂の分子機序・皮膚科的使い分けの深掘り】
酸化亜鉛(Zinc oxide, ZnO)の多面的薬理作用:
酸化亜鉛は外皮用薬の中で最も歴史が長い成分の一つで、以下の多面的作用を持ちます。
1. 収斂作用(Astringent effect)
- Zn²⁺イオンが皮膚・粘膜のタンパク質(特にシステイン・ヒスチジン残基のSH基・イミダゾール基)に配位結合
- タンパク質が変性・凝固→組織が引き締まる(収斂)
- 炎症性の滲出液・浸出液の分泌が抑制される
- 毛細血管透過性の抑制→発赤・腫脹の軽減
2. 皮膚保護・バリア形成
- 外用後に皮膚表面に薄い亜鉛塩の被膜を形成→外的刺激(摩擦・尿・便等)からの物理的保護
- 特にオムツかぶれ(おむつ皮膚炎)では、尿・便の消化酵素・アンモニアから皮膚を保護
3. 抗菌・抗炎症
- Zn²⁺は細菌の細胞膜タンパク・酵素に結合→静菌効果(強力な殺菌ではない)
- 黄色ブドウ球菌・大腸菌等に対する軽度の増殖抑制
- 炎症性サイトカイン産生を一部抑制(IL-1β・TNF-α)
4. 紫外線散乱(UV防御)
- ZnOは物理的な紫外線散乱剤として機能(UVA・UVBの両方に有効)
- 日焼け止め・乳幼児用スキンケア製品に配合される
亜鉛の生理的役割と皮膚との関係:
亜鉛(Zn)は生体内で必須微量元素として約300種以上の酵素の補因子です。
皮膚における亜鉛の重要性:
- コラーゲン合成(コラーゲン架橋酵素:リシルオキシダーゼの補因子)
- 創傷治癒の促進(上皮化・線維芽細胞増殖)
- 皮膚のバリア機能維持(ケラチノサイトの分化)
- 抗酸化(Cu/Zn-SOD:スーパーオキシドジスムターゼの構成成分)
亜鉛欠乏症では皮膚炎・口囲皮膚炎(腸性肢端皮膚炎)・脱毛・創傷治癒遅延・免疫低下が起こります。
ピロキシリン(コロジオン)の特性と安全上の注意:
コロジオン(Collodion)はニトロセルロース(硝酸セルロース)を揮発性溶媒(エーテルとアルコールの混合液)に溶解したものです。
使用上の注意:
- 揮発成分(エーテル)は引火性があるため、火気の近くでの使用を避ける
- 揮発時に皮膚から溶媒が蒸発→乾燥収縮によるフィルム形成
- 密閉性のフィルムが傷口の感染を防ぐが、深い傷・広範囲の傷には不適
- 眼・粘膜への使用は禁止
なお、皮膚科領域でコロジオンは疣贅(いぼ)や爪甲・角質の処置にも利用されます(塗布薬の基剤として)。
収斂の分子機序の詳細:
収斂(Astringency)は化学的には「タンパク質の可逆的または非可逆的凝固による組織の引き締め」を指します。
収斂剤の種類と結合様式:
1. 金属塩収斂剤(酸化亜鉛・アルミニウム塩・銀塩)
- 金属イオンがタンパク質の側鎖に配位結合→タンパク変性
- Zn²⁺・Al³⁺はタンパク酸性基(アスパラギン酸・グルタミン酸)・塩基性基(リシン・ヒスチジン)と多点結合
2. タンニン酸収斂剤(タンニン・没食子酸等の植物ポリフェノール)
- フェノール性水酸基がタンパクのプロリン・グリシンと水素結合・疎水性相互作用
- 口腔内の収斂(渋み)の原因と同じ機序
3. アルデヒド系(ホルムアルデヒド)
- アミノ基と共有結合(Schiff塩基形成)→強固な架橋
- 毒性が強く外用には使用せず
皮膚科的使い分けと登録販売者の実務判断:
皮膚状態に応じた外用薬選択の原則(Wet-to-Dry / Dry-to-Wet の概念):
| 皮膚の状態 | 適した基剤・成分 | 理由 |
|---|---|---|
| 急性・湿潤(じくじく)・滲出液多い | ローション・液剤・湿布(水系) | 水分蒸発で冷却・乾燥→炎症抑制 |
| 乾燥・慢性・角化・落屑 | 軟膏(油性)・クリーム | 水分保持→角質軟化・保湿 |
| 混合型 | クリーム(O/Wまたは W/O) | 両方の性質を持つ |
酸化亜鉛軟膏は油性基剤に亜鉛を分散させたもの→乾燥・慢性型に適する。急性の湿潤型には不適なケースがあることをこの原則から理解できます。
登録販売者の判断:酸化亜鉛含有製品を購入する顧客への確認事項
1. 皮膚状態(乾燥か湿潤か・急性期か慢性期か)
2. 対象年齢(乳幼児のおむつかぶれ等は問題なく使用可)
3. 感染の有無(感染疑いがある場合は受診勧奨)
4. 持続期間(2週間以上改善しない場合は受診勧奨)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第13節「外皮用薬」(収斂・皮膚保護成分) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。