登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問119:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)
四物湯(しもつとう)および温経湯(うんけいとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア四物湯は体力虚弱・貧血傾向の人に用い、月経不順・更年期障害・産後の体力低下に適する処方である。
- イ温経湯は実証(体力充実)の人の月経不順・月経痛に使われる処方で、マオウを含む。
- ウ四物湯はカンゾウを含む処方であり、長期服用では偽アルドステロン症に特に注意が必要である。
- エ温経湯はダイオウを含む処方であり、便秘傾向の更年期女性に特に適している。
- オ四物湯はトウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウの4生薬のみからなり、「血を補う」四大血薬と呼ばれる。正答
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正答はオです。
四物湯(しもつとう)はトウキ(当帰)・シャクヤク(芍薬)・センキュウ(川芎)・ジオウ(地黄)の4つの生薬からなる「血を補う(補血)」の基本処方です。「四物」とは4つの生薬を指します。
誤りの選択肢のポイントです。
- ア:四物湯の内容は正しいですが、「月経不順・更年期障害」は温経湯や他の婦人薬の方が典型的。四物湯は「補血の基本」として他処方のベースになる位置づけです。
- イ:温経湯は体力中等度以下(虚弱傾向)の人向けで、マオウを含みません。
- ウ:四物湯はカンゾウを含みません(トウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウの4生薬のみ)。「カンゾウを含む」は誤りで、偽アルドステロン症に特に注意という記述も当てはまりません。
- エ:温経湯にダイオウは含まれません。
語呂:「四物湯は当帰・芍薬・川芎・地黄の4つで補血」
四物湯 vs 温経湯:当帰剤の比較
| 項目 | 四物湯 | 温経湯 |
|---|---|---|
| 体力(証) | 虚弱〜中等度 | 中等度以下(虚弱傾向) |
| 主な適応 | 貧血・月経不順・産後の体力回復・皮膚乾燥 | 月経不順・更年期の手足のほてり・冷えのぼせ・乾燥肌 |
| 4生薬の構成 | トウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウ(この4つのみ) | 四物湯相当(トウキ・シャクヤク・センキュウ)+温薬・補気薬 |
| マオウ含有 | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし | なし |
| カンゾウ含有 | なし(4生薬のみ) | あり |
| 特徴 | 補血の基本方。多くの婦人科処方のベース | 冷えとのぼせが混在(上熱下寒)。手足のひらがほてる |
四物湯が「補血の基本方」である意義:
多くの婦人科系漢方処方は四物湯の4生薬(トウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウ)を核として構成されている。
- 当帰芍薬散:四物湯系(トウキ・シャクヤク)+利水生薬
- 温経湯:四物湯系+温薬
- 温清飲:四物湯+黄連解毒湯
各選択肢の正誤:
- ア(誤):四物湯の主な適応は「補血」全般(貧血・皮膚乾燥)。更年期・月経不順を網羅的に治す処方とは言い難く、温経湯等の方がそれら症状の適応として明確。
- イ(誤):温経湯は体力中等度以下・マオウを含まない。
- ウ(誤):四物湯はカンゾウを含まない(4生薬のみ)。「カンゾウを含む」「偽アルドステロン症に特に注意」はともに誤り。
- エ(誤):温経湯にダイオウは含まれない。
- オ(正):四物湯の4生薬(トウキ・シャクヤク・センキュウ・ジオウ)は正確。「四大血薬」という表現も適切。
【四物湯の4生薬の薬理:「補血」の現代薬理学的理解】
| 生薬 | 学名・由来 | 主な薬理作用(現代薬理) |
|---|---|---|
| トウキ(当帰) | セリ科トウキ(Angelica acutiloba)等の根 | 鉄欠乏性貧血改善・血液凝固抑制・子宮収縮調整・抗炎症。アルキルフタリドが主成分 |
| シャクヤク(芍薬) | ボタン科シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根 | 鎮痙・鎮痛・鎮静。ペオニフロリンによる平滑筋弛緩→月経痛緩和 |
| センキュウ(川芎) | セリ科センキュウ(Cnidium officinale)の根茎 | 血行促進・鎮痛・抗血小板。テトラメチルピラジンによる血管拡張・血小板凝集抑制 |
| ジオウ(地黄) | ゴマノハグサ科ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根 | 造血促進・滋養強壮・抗炎症。カタルポール・ゼチオシドが含まれる |
「補血」の生薬学的意味:中医学では「血虚(けつきょ)」(血が足りない・血の質が悪い状態)が貧血・月経不順・皮膚乾燥・めまい・動悸の原因となる。四物湯はこの血虚を根本から補う処方で、単に鉄分を補給するだけでなく血液の生成・循環・利用を総合的に改善する。
温経湯の組成と「上熱下寒・冷えとほてり」の理解:
温経湯(12生薬前後で構成される複合処方)の特徴生薬:
| 生薬カテゴリ | 主な生薬 | 役割 |
|---|---|---|
| 補血 | トウキ・シャクヤク・センキュウ | 血を補う(四物湯系) |
| 温裏 | ケイヒ・ハンゲ・カンキョウ・ゴシュユ | 下腹部の冷えを温める |
| 清熱 | ボタンピ(牡丹皮) | 手足のほてりを冷やす |
| 補気 | ニンジン・カンゾウ | 元気を補う |
| 止血 | アキョウ | 月経過多・出血傾向を抑える |
| 制吐 | ハンゲ | 吐き気・胃部不快感を抑える |
温経湯が「冷えとほてりが混在する」更年期女性に向く理由:
- ゴシュユ・ケイヒ・カンキョウで腹部・下肢を温める(冷えを取る)
- ボタンピで表面の熱感・のぼせを冷ます
- これが「温経(経脈を温める)」の意味で、「上熱下寒(手足のほてり・のぼせがあるのに足腰が冷える)」という矛盾する症状を同時に治療する
婦人科系漢方処方の体力別マッピング(試験頻出):
| 処方 | 体力 | ダイオウ | マオウ | カンゾウ | 主な適応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 当帰芍薬散 | 虚弱 | なし | なし | なし | 貧血・冷え・むくみ・月経不順 |
| 四物湯 | 虚弱〜中 | なし | なし | なし | 補血基本方・貧血・皮膚乾燥 |
| 温経湯 | 中等度以下 | なし | なし | あり | 冷えのぼせ・更年期・乾燥 |
| 桂枝茯苓丸 | 中等度 | なし | なし | なし | 血の道症・打撲・のぼせ |
| 加味逍遙散 | 虚弱〜中 | なし | なし | あり | 更年期・不定愁訴・精神不安 |
| 女神散 | 中等度 | あり | なし | あり | 気逆・のぼせ・血の道症 |
四物湯の「カンゾウなし」の意義:
四物湯は純粋な補血方であり、カンゾウ(調和薬・偽アルドステロン症のリスク)を含まない。このためカンゾウ過敏者や多種の漢方を重複服用している患者でも、カンゾウ重複のリスクなしで補血を行える処方として位置づけられる。なお婦人科処方でも、温経湯はカンゾウを含む一方、桂枝茯苓丸・当帰芍薬散はカンゾウを含まないなど処方ごとに異なる。四物湯との使い分けにはカンゾウの有無が重要な判断軸となる。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 四物湯=トウキ/シャクヤク/センキュウ/ジオウの4生薬のみ・カンゾウ非含有・ダイオウ非含有(ツムラ71番)。温経湯=ダイオウ/マオウ非含有・カンゾウ含有。選択肢オ(四物湯の4生薬と補血の基本方)は正。二重正答防止のため、もともと事実として正しかった選択肢ウ(四物湯はカンゾウを含まない)を「カンゾウを含む」の誤りに改変し正答をオに一意化。advancedの婦人科処方カンゾウ記述(桂枝茯苓丸はカンゾウなし)も修正。出典:ツムラ四物湯/温経湯 医療用添付文書。 -->
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。