第3章 主な医薬品とその作用127主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)

登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問127:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)

乙字湯(おつじとう)および芎帰膠艾湯(きゅうきこうがいとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 乙字湯は比較的体力があり、便秘傾向のある痔(いぼ痔・切れ痔・脱肛)に用いられる処方である。
  • 乙字湯はダイオウを含む処方であり、妊婦・授乳婦には使用を避ける必要がある。
  • 芎帰膠艾湯は体力中等度以下の人に用い、痔出血・過多月経・鼻血などの出血症状に適する。
  • 乙字湯はカンゾウを含むため、長期服用では偽アルドステロン症に注意が必要である。
  • 芎帰膠艾湯はダイオウを含まず、出血を伴う症状に広く使われ、妊婦にも安全に使用できる。正答
正答:芎帰膠艾湯はダイオウを含まず、出血を伴う症状に広く使われ、妊婦にも安全に使用できる。

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正答はオです。

芎帰膠艾湯(きゅうきこうがいとう)はダイオウを含みません(この点は正しい)。しかし「妊婦にも安全に使用できる」と断定する記述が誤りです。芎帰膠艾湯は痔出血・不正出血等に用いられますが、胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされ、また一般用医薬品として妊婦が自己判断で使用してよいわけではなく、添付文書上も「医師の治療を受けている人・妊婦は服用前に相談すること」とされています。「安全に使用できる」という言い切りが手引きの注意事項に反するため誤りです。

他の選択肢の確認です。

  • ア:乙字湯は便秘傾向の痔に使う処方として正しい。
  • イ:乙字湯のダイオウ含有→妊婦・授乳婦注意は正しい。
  • ウ:芎帰膠艾湯は出血症状(痔出血・月経過多等)に使う処方として正しい。
  • エ:乙字湯のカンゾウ含有→偽アルドステロン症注意は正しい。

語呂:「乙字湯はダイオウで痔の便秘、芎帰膠艾湯はアキョウで出血止め」

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乙字湯 vs 芎帰膠艾湯:痔の漢方処方比較

| 項目 | 乙字湯 | 芎帰膠艾湯 |

|---|---|---|

| 体力(証) | 比較的体力あり(中等度以上) | 中等度以下 |

| 主な適応 | いぼ痔・切れ痔・脱肛・便秘傾向 | 痔出血・過多月経・鼻血・血尿(出血症状全般) |

| ダイオウ含有 | あり | なし |

| カンゾウ含有 | あり | あり |

| 特徴生薬 | サイコ・オウゴン・ダイオウ・センキュウ・トウキ | トウキ・センキュウ・アキョウ(阿膠)・カンゾウ・アイヨウ(艾葉)等 |

| 妊婦への使用 | ダイオウ含有のため禁忌 | ダイオウなし。ただし自己判断は不可・服用前に相談 |

| 止血 vs 瀉下 | ダイオウで便秘解消→痔の負担軽減 | アキョウ・アイヨウで止血 |

芎帰膠艾湯の「止血」と妊婦への扱い:

芎帰膠艾湯の主な止血生薬:

  • アキョウ(阿膠):ロバの皮の膠(コラーゲン加工品)。滋陰・養血・止血の三作用
  • アイヨウ(艾葉):ヨモギ葉。止血・温経・散寒。子宮を温め出血を止める

芎帰膠艾湯はダイオウ・マオウを含まず、伝統的には「血を補い子宮を温めて出血を止める」処方として痔出血・不正出血等に用いられる。一方で胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされる。一般用医薬品として「妊婦にも安全に使用できる」と断定することはできず、添付文書上も妊婦・医師の治療を受けている人は服用前に相談することとされる。したがって設問オの「妊婦にも安全に使用できる」という言い切りは誤り。「ダイオウを含まないから無条件に安全」という単純化が誤りの核心。

各選択肢の正誤:

  • ア(正):乙字湯の適応(便秘傾向のいぼ痔・切れ痔・脱肛)として正しい。
  • イ(正):乙字湯のダイオウ含有と妊婦・授乳婦への注意として正しい。
  • ウ(正):芎帰膠艾湯の体力(中等度以下)と出血症状への適応として正しい。
  • エ(正):乙字湯のカンゾウ含有と偽アルドステロン症リスクとして正しい。
  • オ(誤・正答):芎帰膠艾湯はダイオウを含まないが「妊婦にも安全に使用できる」と断定するのは誤り。胃腸虚弱者に不向きで、妊婦は服用前に相談が必要(自己判断不可)。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【乙字湯の生薬組成と「痔=熱証・瘀血」の漢方的理解】

乙字湯(7〜8生薬)は江戸時代の日本独自の処方(和漢処方)で、「乙字(おつじ)」は発明した浅田宗伯の号に由来するとも言われる。

| 生薬 | カテゴリ | 主な薬理作用 |

|---|---|---|

| サイコ(柴胡) | 疏肝清熱 | 肛門周囲の炎症・熱を冷やし緊張を和らげる |

| オウゴン(黄芩) | 清熱燥湿 | 抗炎症・充血した肛門周囲の熱を冷やす |

| カンゾウ(甘草) | 調和・鎮痙 | 肛門括約筋の痙攣緩和・痛み軽減 |

| センキュウ(川芎) | 活血 | 肛門周囲の血行改善・瘀血除去 |

| トウキ(当帰) | 補血・活血・潤腸 | 血を補い腸を潤す→便秘改善に間接的に寄与 |

| サンキライ(菝葜)| 利湿解毒 | 湿毒(炎症性滲出物)の排出 |

| ダイオウ(大黄) | 瀉下・清熱・活血 | 便秘解消→肛門への圧力軽減→痔の症状改善 |

乙字湯の設計思想:痔(いぼ痔・切れ痔・脱肛)は「熱毒・瘀血・便秘」の三つが複合した病態として捉えられる。ダイオウで便秘を解消(排便時の努責=肛門への圧力を下げる)し、サイコ・オウゴンで炎症を鎮め、センキュウ・トウキで血行を改善する。

現代医学的には:

1. ダイオウのセンノシドA・Bが大腸蠕動を亢進→便秘解消→排便時の怒責(いきみ)が減少→肛門静脈圧の低下→いぼ痔の充血・脱出軽減

2. サイコのサイコサポニンが抗炎症→痔核周囲の炎症・腫れを軽減

3. オウゴンのバイカリンが毛細血管を強化→出血傾向の軽減

芎帰膠艾湯の生薬組成と「止血」の薬理:

| 生薬 | カテゴリ | 主な薬理作用 |

|---|---|---|

| トウキ(当帰) | 補血・活血 | 血を補い、子宮・腸の血行を改善 |

| センキュウ(川芎) | 活血・鎮痛 | 血の滞りを除き疼痛緩和 |

| アキョウ(阿膠) | 滋陰・養血・止血 | ロバの皮のゼラチン。コラーゲン成分が血管を補強し止血作用。出血性疾患の重要止血薬 |

| カンゾウ(甘草) | 調和・鎮痙 | 子宮・腸の痙攣緩和 |

| アイヨウ(艾葉) | 温経・止血・散寒 | ヨモギ葉の精油成分が止血・子宮を温める |

| ジオウ(地黄) | 清熱・滋陰・止血 | 熱性出血(鼻血・月経過多)を冷やして止める |

| シャクヤク(芍薬) | 鎮痙・鎮痛 | 腸・子宮の痙攣緩和 |

アキョウ(阿膠)は貴重な止血薬で、「血虚(血が不足して出血が止まらない)」の出血に特に有効とされる。現代薬理では:

  • コラーゲン断片による血小板凝集促進
  • 赤血球造血の補助(鉄含有)
  • 毛細血管壁の強化

「妊婦禁忌か要注意か」:処方ごとの判断

| 処方 | ダイオウ | 妊婦への扱い |

|---|---|---|

| 乙字湯 | あり | ダイオウの子宮収縮作用により流早産のおそれ→使用を避ける |

| 芎帰膠艾湯 | なし | ダイオウ・マオウは含まないが、一般用としては自己判断不可・服用前に相談 |

| 五苓散 | なし | ダイオウ・マオウ・カンゾウを含まず比較的使いやすいが念のため相談 |

「ダイオウを含まないから妊婦に無条件で安全」という単純な判断は誤り。芎帰膠艾湯のように出血症状に用いる処方でも、一般用医薬品の自己判断使用は推奨されず、添付文書では妊婦・医師の治療を受けている人は「服用前に相談すること」とされる。登録販売者として、妊婦への漢方薬販売では「医師・薬剤師への相談」を原則として指導する。

痔の漢方(乙字湯)と西洋薬(外用薬)の使い分け:

既存のch3問(痔疾用薬の成分)では西洋薬の外用成分(局所麻酔・ステロイド・止血成分等)を学習済み。乙字湯は内服漢方として便秘・炎症を根本から対処する役割であり、外用薬と組み合わせて使うこともある。排便の改善なしに外用薬のみで対処しても根本的な改善が難しいため、内服漢方での便秘対策が重要。

<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 芎帰膠艾湯=トウキ/センキュウ/カンゾウ/アイヨウ/シャクヤク/ジオウ/アキョウの7生薬・ダイオウ非含有(ツムラ77番)。旧版の「活血薬が子宮収縮を促すため妊婦に危険」という論拠は事実と逆(同処方はむしろ伝統的に切迫流産・安胎にも用いられ、ツムラ77の適応に切迫流産が含まれる)。正答オ(『妊婦にも安全に使用できる』が誤り)は維持可能だが、誤りの根拠を「一般用医薬品として自己判断使用は不可・添付文書で妊婦は服用前に相談・胃腸虚弱者に不向き」に置換。手引き範囲を逸脱する機序断定(活血薬による子宮収縮)を削除。出典:ツムラ芎帰膠艾湯 医療用添付文書。 -->

【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

痔の漢方・乙字湯/芎帰膠艾湯の証頻出度B

第3章 主な医薬品とその作用の他の問題

1
主な医薬品とその作用(かぜ薬・解熱鎮痛薬)
2
主な医薬品とその作用(アレルギー薬・抗ヒスタミン薬)
3
主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
4
主な医薬品とその作用(かぜ薬)
5
主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
6
主な医薬品とその作用(胃腸薬・制酸薬)

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