登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問136:主な医薬品とその作用(生薬製剤・婦人薬・浄血生薬)
婦人薬・血の道症に用いられる生薬に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アトウキ(当帰)はセリ科植物トウキ等の根を基原とし、補血・活血・鎮痛・鎮静の作用を持つ。
- イセンキュウ(川芎)はセリ科植物センキュウの根茎を基原とし、血行促進・鎮痛・鎮静の作用を持つ。
- ウジオウ(地黄)はゴマノハグサ科植物アカヤジオウ等の**茎及び葉**を基原とし、滋養・止血・補血の作用を持つ。正答
- エシャクヤク(芍薬)はボタン科植物シャクヤクの根を基原とし、鎮痛・鎮痙・補血の作用を持つ。
- オトウキ・センキュウ・ジオウ・シャクヤクは四物湯の構成生薬であり、血虚(血の不足)に対する基本処方とされる。
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正答はウです。
ジオウ(地黄)の薬用部位は「茎及び葉」ではなく根(または根茎)です。「地黄」の「地」は「地下」を意味し、地中の根を薬用とすることを示しています。
各正しい選択肢のポイントを整理します。
- ア→トウキはセリ科・根(補血・活血)
- イ→センキュウはセリ科・根茎(血行促進)
- エ→シャクヤクはボタン科・根(鎮痛鎮痙)
- オ→四物湯の4構成生薬(正しい)
語呂:「四物湯の4生薬→とう(トウキ)・せん(センキュウ)・じ(ジオウ)・しゃく(シャクヤク)」で暗記しましょう。「地黄は地下(根)・当帰も根・川芎は根茎」と部位も合わせて整理。
婦人・浄血生薬の基原・薬用部位・作用まとめ:
| 生薬名 | 科名 | 薬用部位 | 主な作用 | 四物湯での役割 |
|---|---|---|---|---|
| トウキ(当帰) | セリ科 | 根 | 補血・活血・鎮痛・鎮静 | 血を補い滋養する |
| センキュウ(川芎) | セリ科 | 根茎 | 血行促進・鎮痛・鎮静 | 血の流れを促す |
| ジオウ(地黄) | ゴマノハグサ科 | 根(根茎) | 滋養・止血・補血・清熱 | 陰(体液)を補う |
| シャクヤク(芍薬) | ボタン科 | 根 | 鎮痛・鎮痙・補血 | 筋の緊張をやわらげる |
各選択肢の解説:
- ア(正): トウキ(当帰)はセリ科植物トウキ(Angelica acutiloba)等の根が薬用部位です。フタリド類(リグスチライド等)・フェルラ酸等が補血・活血・鎮痛・鎮静の薬理を担います。「当帰」という名は「当然血に帰る(帰経)」を意味します。婦人薬の最重要生薬の一つです。
- イ(正): センキュウ(川芎)はセリ科植物センキュウ(Cnidium officinale)の根茎が薬用部位です。リグスチライド・フタリド類が血管拡張・血行促進・鎮痛を示します。「川芎は根茎(こんけい)」と覚えてください(トウキは根とは異なる)。
- ウ(誤・正答): ジオウ(地黄)の薬用部位は根(根茎)であり、茎・葉ではありません。ゴマノハグサ科植物アカヤジオウ(Rehmannia glutinosa var. purpurea)等の根が基原で、カタルポール・レマニオシドA等が滋養・止血・補血・清熱の作用を示します。
- エ(正): シャクヤク(芍薬)はボタン科植物シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根が薬用部位です。ペオニフロリン(paeoniflorin)が鎮痛・鎮痙(平滑筋弛緩)・抗炎症の薬理を示し、芍薬甘草湯の主薬でもあります。
- オ(正): 四物湯(トウキ・センキュウ・ジオウ・シャクヤクの4生薬)は「血虚(血の不足)」を治療する基本処方です。当帰芍薬散・温経湯・四物湯等、婦人科系処方の多くがこの4生薬の組み合わせを基盤としています。
【四物湯の薬理と「血虚」「血の道症」の現代的解釈】
1. 「血虚(けっきょ)」と「血の道症」の概念
漢方医学における「血虚」は、西洋医学の「貧血」と完全には一致しません。血虚は「血液の量的不足」に加えて「血液の質・流れの異常(瘀血・血行不良)」も含む概念です。
「血の道症」は、月経・妊娠・出産・更年期など女性の生理的変化に伴う精神的・身体的不調(のぼせ・冷え・動悸・不安・不眠等)の総称です。手引きには「月経、妊娠、出産、産後、更年期等の女性のホルモンの変動に伴って現れる精神神経症状や身体症状」と記載されています。
2. 四物湯の4成分薬理の詳細
トウキ(当帰)のフタリド類:
- リグスチライドは平滑筋弛緩(子宮・消化管の痙攣抑制)と鎮痛作用を示します
- フェルラ酸(ferulic acid)は抗酸化・抗炎症・血小板凝集抑制(血行促進の一因)の多面的作用を持ちます
- 当帰特有の香りの正体がリグスチライドであり、婦人薬ドリンク等の特徴的な香りはここに由来します
センキュウ(川芎)の血行促進:
- リグスチライド(トウキと共通)・テトラメチルピラジン(TMP)が血管拡張・血小板凝集抑制を示します
- TMPはCa²⁺チャネル抑制による血管平滑筋弛緩で末梢循環を改善します
- センキュウは「頭痛・肩こり・冷え」への応用が多く、血の道症の頭部症状に特に有効とされます
ジオウ(地黄)の補血・滋養:
- カタルポール(catalpol)はD-グルコースと構造が類似したイリドイド配糖体で、腎・肝の機能を補う「補腎・補肝」の効能が示されます
- 鉄分含有が多く、実際に造血補助(ヘム鉄の類似)の側面があります
- 生地黄(なまじおう)と熟地黄(じゅくじおう)で薬性が異なり、生地黄は清熱・止血、熟地黄は補血・滋養に強いとされます
シャクヤク(芍薬)のペオニフロリン:
- ペオニフロリンは平滑筋・骨格筋の過緊張を緩和(筋弛緩・鎮痙)します
- 芍薬甘草湯(シャクヤク+カンゾウ)は「こむら返り」に対する即効性で有名で、ペオニフロリンとカンゾウのグリチルリジン酸の相乗作用が筋痙攣を解除します
- 抗炎症作用も示し、婦人薬(月経痛・更年期症状)から関節炎まで幅広い疾患への応用があります
3. 四物湯から派生した重要処方
| 処方名 | 追加生薬 | 適応の強調点 |
|---|---|---|
| 当帰芍薬散 | ブクリョウ・タクシャ・ビャクジュツ(水滞を取る) | 冷え・浮腫を伴う貧血傾向の婦人 |
| 温経湯 | バクモンドウ・ゴシュユ・カンゾウ等 | 冷え・口唇乾燥・月経不順 |
| 桂枝茯苓丸 | ケイヒ・ブクリョウ・ボタンピ(血行を改善) | 体力中程度・血の滞り・にきび・更年期 |
当帰芍薬散・温経湯・四物湯は手引きに記載のある婦人科漢方処方群であり、構成生薬を通じて相互関係を理解すると、処方選択の論理が見えてきます。
4. YMYL観点:基原の正確性が医薬品選択に直結
登録販売者として、顧客の月経痛・更年期症状の相談に対してトウキ・センキュウを含む漢方薬を提案する場面では、「当帰(トウキ)はセリ科の根・川芎(センキュウ)はセリ科の根茎」という基原の正確な理解が、成分表示の確認と適切な製品選定に必要です。基原の誤認は製品の見誤りにつながりうるYMYL領域のリスクです。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第12節「婦人薬」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。